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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
セシリアとの決闘編
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第173話 Aランクギルドの会合

 ここは、Aランクギルドのホームにある応接室。


 その中のソファーで、セシリアが目をつぶり来客の到着を待っていた。


「まったく、こんな年末に集合をかけるなんて、常識が無いのかしらぁ?」


「お待ちしておりました、マルジェナ様」


 扉を開けて現れたマルジェナが、小言を言いながら対面のソファに腰を落とす。


「爺さんがまだ来てないわねぇ? 年のせいで時間間隔が狂っているのかしらぁ?」


「……」


 マルジェナはセシリアに対して軽口をたたくが、反応を見せない彼女を見て、はあ、とため息をつくと暖かい紅茶の入ったカップに口をつける。


「済まないのう、2人とも。少々病院で時間を取られてしまってのう」


 やや遅れて、第2位ギルドのマスター、クロードが姿を現す。謝罪の言葉を口にしながら、空いている席へとゆっくりと座る。


「爺さんももう歳ねぇ。そろそろ引退した方が良いんじゃないかしらぁ?」


「ほっほっほ、わしもそう実感しておるよ。じゃが、もう少し我が子らが育つまで老骨に鞭を打たねばのぅ」


「揃ったようなので本題に入りましょう」


「……まったく、遊びのない子ねぇ」


 会話を遮って話を進めようとするセシリアに、マルジェナが呆れたような顔をしながらも姿勢を正す。

 セシリアはその様子をチラリと見ると、そのまま話を続けた。


「今日は、国内の優秀な魔法使いを集め、非常時に備えた予備軍の設立についてです」


「予備軍?」


「はい。現状、わが国は自由にギルドを設立でき、仕事の自由も保証されています。これは魔法使いに自由を与えることで、優秀な者たちを国に留めたいという狙いがあってのことです」


「そのおかげで私のような反王政を掲げるギルドも存在できるのよねぇ」


 セシリアは一瞬目を向けるが、反応することは無く更に説明を続ける。


「……ですが、今はギルドが増え、結果的に優秀な魔法使いも分散しています。少人数では荷が重い仕事は結局我々Aランクギルドが担当しています」


「それで、ギルドの垣根を超えた魔法使いを集めた組織を編成したいという事じゃな?」


「その通りです。あくまで権利を奪うことなく、非常時に戦力となる魔法使いの軍を編成する……それが目的です」


 説明が終わり、マルジェナとクロードが顔を見合わせる。


「まずは王都で告知をだします。御二人には特に動いてもらうつもりはありませんが、推薦があれば受け付けます」


「それはわかったが……最終的には誰が選考するのかのう?」


「私に一太刀でも浴びせることが出来た者……それを最低条件にするつもりです」


「へえ、面白いわねぇ。私も参加しようかしらぁ?」


「マルジェナ様の場合は適性検査で落とすことになるでしょう。あくまで国の為の予備軍ですから」


「あっはっは! 冗談も言えたのねぇ、あなた!」


 マルジェナはセシリアの言葉を高笑いする。そのまま、その日のAランクギルドの会合は終わったのであった。


*


 オレはルイーズと一緒に、彼女の家が所有する倉庫を訪れていた。

 中心街からやや離れた場所に位置するここは、リシャール家の領地で作ったワインやその他貴重品が保管されているらしい。


「ここの部屋がワインを保管している部屋ですわ」


「おお、凄いな。種類も数も」


 案内された部屋は壁一面に棚があり、それが天井まで届いていた。

 棚には寝かせられたワインが口をこちらに向けており、選り取り見取りといった感じだ。


「本当に貰っていいのか? 高級そうなものばかりだが」


「構いませんわ。元々ここにあるワインは来客をもてなすためのものですもの。お父様はお酒に弱いからあまり量は飲みませんわ」


 なるほど、貴族特有の見栄を張ったおもてなしという事か。


 豪勢にもてなすことが貴族の力を示すとでも言いたいのかもしれないが、王侯貴族よりもオレののどを潤す方が価値があるというものだ。


「だが、こんなにあると迷うな。……お、良いものを見つけた、これにしよう」


 オレは棚から一本のワインを取り出す。ハレミアの南の方で生産されるものだ。


「それが良いものですの? 一番高価とか……」


「いや、最高級という訳ではない。5万ベルぐらいかな」


「ふうん、安物ですわね」


 どうやらナチュラルボーン貴族様と成り上がりのオレでは、金銭感覚に大きな隔たりがあるようだ。


「……そんな感覚では、貴族以外とは結婚できないな」


「なっ!? よ、余計なお世話ですわ!」


 これはオレの故郷の近くで生産されているものだ。金額ではない価値があるという事だな。

 ぷりぷり怒るルイーズを窘めつつ、ギルドホームへ帰ることにした。


*


「お帰りなさいませ、御主人様」


「ただいま帰ったぞ」


「……これはまた、たくさん持って帰ってきましたね」


「まったく、フリード様は強欲ですわ!」


 結局両手で持てるだけワインを持ち帰ったオレたちを、エミリアと暖かい部屋が迎えてくれた。

 ルイーズはいまだ怒りは収まらずといった感じだが、量はともかく値段なら、足しても倉庫にあった最高級ワイン以下なのだから許していただきたいな。


 ワインを手に入れたが、これだけではパーティーにはならない。エミリアには食材の調達を依頼していたので、様子を伺ってみよう。


「エミリア、食材の方はどうだ? よさげなのは売ってたか?」


「それが、やっぱり冬なのであんまり……。保存の利く干し肉みたいなのはあるんですが」


 これは由々しき事態だな。パーティーといえば、豪華な食事。肉、魚、デザート……。それらが無くては始まらないな。


「デザートはどうにでもなるとして、まずはメインだな」


 うちのギルドメンバーは好みが千差万別だからな。ステラは甘いものが好きだし、ロゼリカはお魚大好きだし……。


「ちなみに、エミリアはどんなのが好みだ?」


「えーと、パンとかチーズとか……普通ですけど」


 なるほど、つくづく手のかからない女だ。何でもできるけど何も求めない、こんな女がいることはオレに奇跡の存在を信じさせるのに十分と言える。


「ルイーズは高級な食べ物だな、聞かなくてもわかるぞ」


「そんなことありませんわ! ……その、ローストチキンとか、子羊のソテーとか、普通のも好きですわ!」


 どうやらナチュラルボーン貴族様と成り上がりのオレでは、普通という言葉に大きな隔たりがあるようだ。

 まあ、好みはわかったので、頑張って高級料理を準備するとしよう。


「やれやれ、仕方ないな。こうなったら自力で調達するとしよう」


「自力でって……あと3日でパーティーですよ?」


「問題ない。この天才に加え、うちには優秀な狩人が2人もいるからな」


「……私を狩人の1人に加えてはいないですよね?」


 キッチンの奥から、もう1人のメイドが顔を覗かせる。だがオレは知っている、アルトちゃんはメイドの皮を被た狩人なのだと。


「頼むぞ、アルトちゃん。皆の笑顔の為に、食材を集めよう」


「人使いが荒いですね。ストライキを起こしますよ?」


「残念ながら我がギルドにそのような制度は無い」


 アルトちゃんはやれやれといった感じだが、頼みを聞いてくれるようだ。デットも多分やってくれるだろうし、さくっと仕事を終わらせて帰ってこよう。


 一番近い森なら、数時間で行って帰ってこれる。早ければ1日もかからないだろう。

 最高のパーティの為に、今年最後のお仕事を頑張るとしよう。


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