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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
間章 束の間の休息
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第152話 品評会

 国王の就任記念パーティーがついに明後日まで迫ってきた今日この頃。

 オレはルイーズの家で、ドレスの品評会を行っていた。


「このドレスはどうですの?」

「うーん、可愛い」

「じゃあこっちは?」

「うーん、可愛い」

「……さっきからそれしか言ってませんわね」


 そう言われても、オレは男だからな。可愛いか可愛くないかしかわからないのだが。


「ルイーズ、ちょっとそれはエレガントが過ぎないかい?」

「私は立派なレディですもの、これぐらいが丁度良いですわ」


 エリオットも品評会に参加しているが、父親なりに一生懸命評価しているようだ。

 それにしてもエレガントなんて、日常会話で使うワードだったのだな。


「もう、2人とも! 真面目に見てくださいな!」

「仕方ないだろう、ドレスの良し悪しなど平民には判断がつかない」

「こんな時ばっかり平民を盾にしないでくださいませ!」


 平民が貴族に虐められる、これが国の縮図という事か。


「服装ばかり気にしてもしょうがないぞ。人の価値は見た目では決まらない」

「だからと言ってはしたない服で向かうのは非常識ですわ」

「それはその通りかもしれないがな……」


 やれやれ、このままだと平行線だ。

 パーティーも大事だが、オレはこの時期に金を稼ぎに行きたいのだが。


「どれもしっくりきませんわね……」

「そうだルイーズ、ちょっと待ってて」


 早くしっくり来て欲しいと思っていたところ、エリオットが何かを思いついたようにその場を離れると、やがて1着のドレスを大事そうに抱えてきた。


「まあ、立派なドレスですわ!」

「これは母さんが生前着ていたものだよ。貴族のパーティーでこれを着た母さんを見た時、あまりの美しさに心臓が止まったよ」

「気に入りましたわ! 私、これを着てパーティーに望みますわ」


 どうやらこの貴族を殺す服がルイーズもお気に召したらしい。ひとまず一件落着だな。


「よし、話は終わったな。じゃあオレは『魔法市』に行ってくる」

「『魔法市』……? ああ、去年の」

「今年もこの期間に金を稼がないとな。デットとも約束しているし」

「では、私も手伝いますわ!」


 一気に上機嫌になったな、自分から手伝いを申し出るとは。

 オレの腕に手を絡めてくるルイーズを連れて、寒くなってきた街へと繰り出すことにした。


*


 デットとも合流したオレたちは、早速自分の店を出すために空いているスペースを探す。

 今年は例年より盛り上がっているせいか、なかなかいい場所が見つからないな。


「出来れば目立つところで店を出したいのだがな……」

「まあ、どこでもいいんじゃないか? わ、私がちゃんと看板娘として注目を集めて見せよう」

「多少売り上げが落ちるかもしれないが、仕方ないな。適当なところに出すか」


 出遅れてしまったので多少は目をつぶるしかないな。大通りから道を一本外れたところにスペースを見つけたので、準備を始める。


「ちなみに去年はどれぐらいの売り上げがありましたの?」

「50万……いや、500万ぐらいだったかな」

「まあ、たったの」


 少し見栄を張ったが、悲しい返事が返ってきた。悲しいかな、この世は格差社会なのだ。


「……わかりましたわ。このルイーズ、フリード様の為に一肌脱ぎますわ!」

「何をしてくれるつもりだ?」

「私に腕相撲で買ったらもう一つおまけしますの。これで客足倍増間違いなしですわ!」


「なるほど、おまけに釣られた浅ましい貧乏人どもから金を搾取するわけだな?」

「……そこまでは言っていませんわ」


 去年と同じ出店というのも芸がない。ここは彼女の意見を取り入れてみるとしよう。


*


「えい! ふふっ、これで50連勝ですわ!」

「あちゃー、おじさんまた負けちゃったよ」


 店を出して約1時間ほど。たった今50人目の客が敗北を喫していた。


 ……これは、素晴らしいな。さっきからひっきりなしに客が訪れ、今では行列になってしまっている。

 中にはリピーターまで居るほどだ。さっき負けたおじさんも、また最後尾に並んでおり、どうやら10本目の枯れない花を購入しそうだ。


「どうですの、私のアイデアは! おまけをつける作戦、当たっていますわ!」

「ああ、そうだな……」


 これはおまけのお蔭ではなく、ルイーズのお蔭だと思うが。

 そうとは知らないルイーズはニコニコとご機嫌で、そんな機嫌のいい美少女がいるものだからおじさんも群がってきている。


「ルイーズたん、次は僕が相手なんだな!」

「あっ、いつもお店の方に来ている方ですわね! 今日も負けませんわよ!」


 これは何かの法律違反ではないかと心配してしまうのだが。まあ怒られたら撤収するまでだな。


「なあ、フリード。私はもしかしていらないんじゃないか……?」

「そんなことは無い。最初の客はデットを見て、ここに店があることを知る。ちゃんと役立っているさ」

「それならいいんだが……」


 月並みな言葉で看板娘を励ましつつ、横目でルイーズの様子を眺める。

 結局、夕食の時間まで客は集まり続け、過去最高の売り上げを達成することができたのであった。


*


「今日の稼ぎは約6時間で20万ほどか。上々だな」

「ちょっと、本当に去年500万を稼ぎましたの? 花一輪で100から1000ベルなんて、いくら売っても足りませんわ!」

「……」

「何で黙るんですの!」


 この国では困ったら黙秘権が認められている。ここは権利を行使するとしよう。


 新築のギルドホームに近づくと、美味しそうな匂いが漂い始めた。オレの予想はシチューだ。

 早く暖かい部屋の中で、夕食を楽しむとしよう。


「ただいま帰ったぞ」

「あっ、御主人様、これを見てください。一昨日の『M-1』の……」


 部屋の中では、エミリアが机の上に何かを広げていた。

 綺麗に折り畳まれているが、これはメイド服か?


「手紙も入っているな。どうやら迷惑をかけたお詫びの品らしい」


 これは『M-1』を主催したメイドギルドからの贈り物のようだ。賞品として用意していたが、どうせ勝てると思って会場には持ってきていなかったらしい。


 名前は、プリンセスメイドドレスというようだ。プリンセスとメイドとは対極の存在に感じるが、なるほど、上質な布地を落ち着いた雰囲気と色使いでまとめ上げている。

 ちゃんと2着用意されている辺り、さっと作ったわけでは無くちゃんと優勝賞品として用意されていたようだな。


「丁度良いな、これでパーティーに行けばいいのではないか?」

「確かに私の持っている服よりかは高級かもしれないですけど……」

「オーダーメイドではありませんので、ちゃんとサイズが合っているか確認しないといけませんね」


 キッチンにいたアルトちゃんも近づき、メイドとオーダーメイドをかけたナイスギャグをかます。

 だが、アルトちゃんの言う通りだな。もしかしたらきつかったり、どこかがスカスカだったりするかもしれない。


「よし、食後にお披露目会をするか」

「わかりましたけど、ちょっと恥ずかしいですね……」

「サイズが合わなかったら私が調節するよ」


 いつの間にか近くに寄っていたロゼリカも服を眺めて言葉を発する。

 お裁縫大好きの血が騒ぎ始めているようだが、自分の服はもうできたのだろうか?


 正直この2人は常識人側だと思うので特に心配はしていなかったが、折角だし確認しておこう。

 あまり期待していなかったが、こうやって近づいてくるとパーティーというのも楽しみになってきた。


 立派なドレスに期待しつつ、まずは夕食を楽しむことにした。


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