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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
アルトちゃんの秘密編
123/198

第122話 3ギルド同盟

「ふう、やっと準備が終わったな」


 出発当日、オレたちはやっと戦争準備が完了した。

 金を惜しまず馬車を5台も借り、1台は人員輸送、もう1台は衣食住等の生活用品、残りの3台はフラウ特製の兵器が乗っている。


「はあ、戦争に行くなんて……」

「なんだ、当日にもなってまだ決心がつかないのか? 安心しろ、オレがやられてもエミリアが魔法で治してくれればいい」

「安心する要素ありませんけど……」


 心配性のエミリアはまだグダグダ言っている。戦争だって初めてではないし、もう少し堂々としていればいいのにな。

 まあ、突然『戦争最高です、御主人様!』と言われても反応に困るので、このままでいいのかもしれない。


 出発まであと2時間と言ったところだが、集合場所には他の者は見えない。少々早く来すぎたか。


「フリード様……」

「ルイーズ、留守番を頼むぞ。居残り組ではお前が最年長だ、しっかりやってくれ」

「分かっていますわ。私は立派なレディーですもの、やり遂げて見せますわ!」


 今回の留守番はステラ、ロゼリカ、ルイーズだ。調理技術壊滅組だが、何とかなるだろう。戦争に連れていくよりかはマシだ。


「フリード、これを持って行って。お守りとしてぬいぐるみを編んだんだ」

「ん? ああ、わかったロゼリカ。預かっておこう」


 なんとも可愛らしい、手のひらサイズのぬいぐるみだ。髪の毛が赤い人間を模しているようだが、もしかしてオレか?


「じゃあ私はこれを。リシャール家の紋章が入ったブローチですわ」

「壊さないようにしないとな。大事にしまっておこう」

「あう、その、お兄様……! 私、渡すものが何も……」


 ルイーズも続いてオレにお守りを渡してくれたが、ステラは何も準備していなかったのだろう、おろおろとしてしまっている。


「別に何もいらないぞ。戦争が終わったとき、無事に姿を見せてくれればそれでいい」

「わ、わかりました、お兄様! 期待に応えられるよう頑張ります!」

「……どっちが戦争に行くかわかんないね」


 ステラの頭を撫でてやると、元気な返事が返ってきた。

 別れの挨拶も終わったことだし、あとは出発を待つだけだ。エミリアは忘れ物がないか、馬車の中を覗いているようだ。


「早いな、ヴァレリーよ」

「ローズか。待ってたぞ、こちらは準備万端だ、早く行きたくて皆ウズウズしている」

「……それはヴァレリーだけのようだが?」


 出発時間まであと30分程と言ったところで、ローズが姿を現した。オレたちの馬車で相席する予定なので個人の荷物と思われるバッグしか持っていないようだ。


「クロード様は結局参加されないのか?」

「我々とともに行動する予定だったが、思い直されてメルギスに向かうことにしたようだ。第1ギルドが確実に勝利すれば我々の負担も減ると考え、支部にいる幹部たちを集めているところだ」


 御一緒できなかったのは残念だが、考えは理にかなっている。メルギス奪還に成功すれば、ハレミアを襲おうとしている部隊も窮地に立たされるだろう。


 それに第3ギルドのギルドマスターのような大物が我々に加勢したら、相手も警戒するだろう。

 相手が作戦を変更すると、現時点での優位性が失われる。敵の襲撃に慌てて国境に兵を派遣した、と相手に思わせるのが重要だ。


「分かった。少し早いが出発するか」


 結局第2ギルドの支援は受けられそうにないし、第1ギルドも期待できない。人手不足感は否めないが、出発することにしよう。


「待て、フリード・ヴァレリー」

「……これはこれは、第1ギルド様が何の用だ?」


 フルネームで呼ばれ振り返ると、この前第1ギルドを訪れた時にいた黒髪美少女が姿を現した。後ろには他に男女3人が控えており、合計4人分の目がこちらを見ている。


「セシリア様の命令により、我々4人が力を貸すことになった。私は探知系魔法『衛星掃査線(サテライトライン)』を持つサレナだ」

「それはありがたいな。よろしく頼む」

「……貴様ではない。我々は、第3ギルド『ユグドラシル』に力を貸せとの命令だ」


 ……オレをフルネームで呼んだくせに、どうやらCランクギルドに従う気はないらしい。握手の為に差し出した手をそのまましまう。

 代わりにローズが手を取り、ここに共同戦線が完成した。


 仲間外れの我々は出発することにしよう。


*


 馬車は王都を出て、きれいに整備された道を進む。方角は北西、ハレミアとウイスクの国境だ。


 オレたちの馬車に乗る予定だったローズは作戦会議の為、第1ギルドが用意した馬車に乗ることにしたようだ。

 そのため馬車にはギルドメンバーしか乗っていない。エミリア、デット、フラウ、アルトちゃんだ。


「今、こっそり私のことも戦力に数えていませんでしたか?」

「……何かおかしかったか?」

「いえ、別に」


 アルトちゃんの質問を質問で返すと、続きは返ってこなかった。やれやれ、相変わらずだな。

 オレにナイフを向けた仲なのだから、もう少し距離が近づいているかと思ったが。


「あの、アルトさん。僕、フラウって言います! いつも依頼を受けさせてもらってありがとうございます!」

「それが私の仕事ですから」


「う、うん……。あっ、そうだ! いつも仕事が早いから助かってるってフリードさんが言ってるよ。敏腕受付嬢だっていつも褒めてるんだ!」

「そうですか、ありがとうございます」


「……うう、フリードさん、僕、嫌われてるのかな……?」


 積極的なフラウがアルトちゃんに話しかけるが、無表情に返答され嘆き悲しんでいる。

 勇気は認めるが、アルトちゃんは一筋縄では勝てないぞ。オレが正しいコミュニケーションの取り方を教えてやろう。


「アルトちゃん、そういえばこの前あげたお土産はどうだった? 食事に(いろどり)が追加されたのではないか?」

「……岩塩の事ですか? 助かっていますよ、毎日ゴリゴリと削る羽目になって、調理時間が無駄に伸びていい暇つぶしです」


「それは良かった、いつも暇そうだしな。今度はもっと良いものを手に入れてこよう」

「希望を言わせてもらうと、何もないのが最高のプレゼントですよ」


「そうか、では今度は形に残らない思い出を提供してやろう、観光旅行とかどうだ?」

「ありがたい話ですね、プレゼントなのに時間を奪われるとは予想していませんでしたよ」


 何というグッドコミュニケーション。年の功が出たな。

 こうやるんだぞ、といった表情でフラウの方を見ると、ジト目でこちらを見返す。


「……僕より辛辣じゃん」

「分かっていないな、言葉の裏を読みたまえ」

「人の反応で実験をしないで頂きたいですね。……部外者の私は現地に着くまで静かにしておきますよ」


 アルトちゃんはそう言うと、本を取りだし適当なページを開く。

 しばらく見ていてもページが一向に進まないので、『話しかけるな』という雰囲気づくりのための小道具であることは間違いない。


 ふっ、そんなものが通用する相手ではないというのに。しかしアルトちゃんの気持ちを汲んで、しばらくは話しかけないでおこう。心の整理だってまだ追いついていないはずだ。


「御主人様、ローズ様たちは作戦会議をしていると思いますけど、どう動くつもりでしょうか?」

「十中八九、時間稼ぎをするつもりだろう。第1ギルドがメルギス王都を落とすまで耐えられれば勝利なのは間違いないからな」


 エミリアの問いかけに、オレが予想を答える。多分オレの想像があっているはずだ、天才なのでね。

 ただ、作戦が遂行できるかは別の話だ。アルトちゃんの情報も、結局は10年以上前の情報でしかない。現在どんな魔法使いがいるかはわかっていないのだ。


「なるほど……。じゃあ、頑張って耐えなくちゃですね」

「馬鹿を言うな。戦争が終わるまで耐える? オレの考えは逆だ、ウイスクに攻め込み、聖女を殺す。これが戦争の勝利条件だ」

「な、何を言ってるんですか!」


 オレの言葉にエミリアだけでなく、フラウとデットも驚きの声を口にする。

 アルトちゃんもさすがに反応し、こちらに顔を向けた。


 仕方ないな、オレがこの戦争の真実を教えてやろう。天才的予想という名の真実をな。


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