表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
日頃の感謝の気持ち編
114/198

第113話 ダンスバトルは唐突に

 週末の舞踏会に向けて、オレとルイーズはダンスの練習を始めていた。


「……言うだけのことはありますわね」

「ふっ、当然だ。オレは学園の首席卒業生だからな」

「学園にダンスの実習は無かったと思いますけど」


 外野からの野次を受け流しつつ、練習を続ける。

 しかし、身長差を靴で補ったものの、歩幅は誤魔化しきれないし、慣れないヒールのせいかステップもぎこちなく感じる。


「ルイーズ、大丈夫か? 足取りがおぼついてないぞ」

「心配ご無用ですわ」


 本人がそういうのなら、それ以上は聞かないでおくとしよう。子供じゃないのだから辛くなったら言ってくるだろう。

 できるだけこちらに体重を預けるように手を貸しつつ、2時間ほど練習を続けた。


*


 ついにやってきた、週末の舞踏会。

 今宵、貴族のボンボンどもは本物の天才を目の当たりにするだろう。


「お兄様、格好いいです!」

「当然だ、できる男は内面が見た目に出てしまうからな」


 オレの姿を見て、ステラが声を上げる。

 本日のオレは練習の時と違い、赤髪をしっかりオールバックにまとめている。これがオレのフォーマルスタイルだ。天才感、3割増しと言ったところか。


「準備できましたわ」

「おお、なかなか華麗だな」


 ルイーズも着替え終わったようで、2階の部屋から降りてきた。練習の時と同じようなピンクのドレスだが、腕にピンクのひらひらが追加されている。


「……それだけですの?」

「ふむ、少女のような可愛さだけではなくセクシーさも兼ね備えたドレスはまるで花開く前の(つぼみ)のよう。それでいてしっとりとして濃厚な味わいは……」

「もう、適当な誉め言葉なら言わない方がマシですわ!」


 どうやらお気に召さなかったようだ。

 茶番は終わりだ、もう既に外では馬車が待機している、とっとと向かうとしよう。


「行ってらっしゃいませ、御主人様!」

「ああ、今夜は夕食は要らないぞ」


 玄関でメイドに見送られながら、出発することにした。


「ルイーズ、一応聞いておくが貴族に知り合いはいるのか?」

「……顔を知っている者なら何人かいますわ。友人というほどの者ではないですけれど」


 やれやれ、何人ほど舞踏会に集まるのかは知らないが、アウェーになりそうだな。

 会場は中心街からさほど離れておらず、10分もかからないぐらいで到着した。ホールのような場所だが、オレには縁がない所だな。


 受付で招待状を見せ、中に入っていく。まだ開始にはしばらく時間があるはずだが、既にそこそこ人が集まっているようだ。

 周囲には白いクロスの掛けられたテーブルが並び、中心はダンスの為にスペースが開けられている。


「おっ、酒があるぞ」

「もう、いっつもそれですわ!」


 テーブルの上にはグラスが並べられている。まだ封は開けられていないが、恐らく機を見てグラスにワインが注がれるのだろう。

 軽食も出るらしいので、楽しみにしておくとしよう。


「それで、酒とダンス以外には何をするんだ?」

「……わかりませんわ」

「ふっ、貴族の自覚が足りないな」


 オレの腕が勝手に動き出し、ほっぺをつねる。魔法で無言の抗議という事か。

 ルイーズは参考にならないことが分かったので、周囲の貴族どもの様子を伺う。当然と言えば当然だが、うふふおほほと談笑しているようだ。


 忘れかけていたが、貴族の評価もギルドのランクを上げるには不可欠だ。隙を見て顔見知りぐらいになれると今後の役に立つかもな。


「こんにちわ、フリード様、ルイーズ様」

「これはこれは、えーと、トロトロ……」

「コートニー・トロロープさんですわよ、フリード様!」


 この子は以前依頼を受けた子だったな。我が友人に告白して撃沈したコートニーちゃんは、白いドレスを着てオレたちに話しかけてきた。

 やっぱり人脈って大事だな、折角見つけた顔見知りなのでこの子から情報を聞くとしよう。


「私としたことがお恥ずかしい、お2人が舞踏会に来ているなんて今まで知りませんでしたの」

「いや、オレたちは今回が初参加だからな。コートニーちゃんはよく来るのか?」


「ええ、貴族の嗜みとして、できる限り参加させていただいていますの」

「そうか、立派な心掛けだな」


 貴族には貴族としての立ち振る舞いがあるという事だな。金も地位も使い方次第なので、見識や人脈を広げるのは悪いことではない。


 親心としては、ルイーズにも人脈を広げてもらいたいところだな。他の子と違ってルイーズの周りに集まるのは、ギルドメンバーを除くとファンクラブ会員の小太りのおっさんばかりだからな。

 同世代の友人を作って欲しい、これがオレの願いなのであります。


「ちなみに、貴族以外の人間はいるのか?」

「はい、音楽家や芸術家など、その分野で地位を築いた方々もお見えになってますの」

「なるほど……。わかった、ありがとう」


 適当に情報を得たところで、一旦コートニーちゃんと別れることにした。失恋したばっかりでパートナーも当然いないだろう、あんまり時間を奪っては可哀想だ。


 オレはルイーズに手を差し出す。ルイーズはその手を取ろうとするが、一旦停止し、オレの肘に手を絡めてきた。

 当然、手を繋ぐより体が密着する。


「こちらの方が良いですわ」


 ルイーズをエスコートしながら、会場を歩くことにした。知り合いはいないだろうが、ルイーズと同世代の子がいれば話しかけてみるとしよう。


「あっ、お前、どうしてここにいるニャ!」

「……おやおや、会場を間違えたのかな? 仮装ガールズがいるぞ」


 オレの目の前には、毎度おなじみの第1ギルドコスプレ部隊が姿を現していた。


 失念していたが、そういえばこいつらは幹部連中が貴族中心だと聞いたことがある。

 この豹柄少女もうさ耳少女も貴族だったという事か、人は見かけによらないな。


「誰が仮装ガールズだニャ!」

「ピーピー(さえず)るな。我々は常に落ち着くべきだ、貴族なのだからな」

「……フリード様は貴族じゃありませんわよ」


 豹柄の耳をピクピク動かしながら、シャオフーが威嚇してくる。やれやれ、血気盛んなことで。

 彼女たちの後ろをちらりと見ると、コスプレ部隊の知り合いらしきものがこちらを見ている。第1ギルドのメンバーか、それとも支援者か……。


「何故お前がここにいる、貴族じゃないはずだろ!」

「シェレミー君、寝食をともにした仲間ではないか、邪険にするな」

「気安く呼ぶな!」

 うさ耳少女が突っかかってくる。久しぶりにあった気がするが、まったくうるさい奴だ。


「ふん、そんなかっこいい姿で擬態しても、この私の眼は誤魔化せないニャ! どうせ、酒でも飲みに来たんだろう!」

「馬鹿を言うな、オレたちはダンスがメインに決まっている。今夜お前たちは思い知るだろう、いかに今までの自分たちのダンスがおままごとだったのかをな」


「ほーう、大した自身だニャ! いいだろう、今夜のダンス、どちらが上か勝負だニャ! 負けたら何でも言う事を聞いてもらうってのはどうニャ?」

「そうだな、じゃあ肩を揉んでくれ」

「はいニャ! ……って、まだ負けてないニャ、先に命令すなっ!」


 やれやれ、オレに勝負を挑むとは余りにも自殺行為。第1ギルドの鼻、ボキボキに折ってやるとしよう。


「ちょっと、そんな約束をして大丈夫ですの?」

「安心しろ、オレは敗北を知らない男だ。それとも、負けるとでも思っているのか?」

「そっ、そんなことありませんわ! 私はハレミア侯爵家の1つ、リシャール家の一人娘、勝利だけが似合うレディーですわ!」


 少し焚きつけてやると、ルイーズもやる気になってきたようだ。ここで目立てばルイーズのことも知れ渡って、少しは顔見知りもできるかもな。


「ふん、シャオフー隊長はコンウォール公爵家のお嬢様だ、貴様らに勝ち目はない!」

 ……実は格上だったようだが関係ない、貴族は平民の手によって倒されるものなのだからな。


 会場にはどんどん人が入ってきたようだ。騒がしくなってきた周囲の雰囲気とともに、オレの闘志もボルテージが上がってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ