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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
美食の国ビストリア編
103/198

第102話 いざ大海原へ

 翌朝。

 オレたちは朝食を済ませ、再び海沿いへと来ていた。目指すは海賊が拠点にしているという離島だ。


「御主人様、どうやって海賊たちの元へ行くつもりですか?」

「当然、魔法で行く。船は妨害されてしまうようだからな」

「御主人様も妨害されたらどうするんですかっ!」

「何とかなるだろう」

 エミリアは心配してくれるが、海賊に会いに行くには海を渡るしかない。空を飛ぶ魔法使いがいないのだからな。


 オレは、金の鎖をジャラジャラと生み出す。あまり重いと邪魔なので、太さは小指より細い。

 これの片側を地上に繋いでおけば、海上で迷子になっても無事に帰ってこれる寸法だ。


「鎖で命綱を作るにしても、どうやって行くつもりですか?」

「そこで錬金術奥義・金の玉だ」

 鎖のもう片側には、人が入れるほどの金の球体を生み出し海に浮かべる。これでぷかぷか海の旅に向かうとしよう。


「天才号完成だ。これで海賊島を強襲するぞ」

「……推進力はどうするんですか?」

「オレにはフラウがいる。腕に海水を貯めて、それを後ろに放出するのを繰り返せば問題ない。ここにきてフーリオールとの同盟が活きたな」

「ええっ、僕も行くのっ!?」

 フラウは予想外だったようで驚いているが、オレは当然のごとく戦力として数えている。

 いよいよ出発するとしよう、球に人が入れるくらいの穴をあけ、フラウを投げ込む。オレも中に入り込み、入り口を閉じ始める。


「ちょっと待ってください、私も行きます!」

「……わかった」

 最終的にエミリアも乗せ、3人で向かうことにした。


*


「この扱いは酷いよ、フリードさん……」

「頑張れ、お前が倒れたらオレたちも共倒れだ」

 フラウは金の玉から両腕を外に出した状態だ。水が入らないように隙間なくみっちり腕を拘束されているので大変だな。


 オレからは見えないが、玉の外では一生懸命腕を動かして水を吸っては吐くを繰り返しているのだろう。

 空気穴と採光の為に少しだけ穴をあけ外を伺うが、それなりの推進力で進んでいるようだ。


「御主人様、外の様子はどうですか?」

「うーん、まだ見えないな。港がかすかに見えるぐらいは沖に出たから結構進んではいるが……」

「もう腕が疲れたよ〜」

 わずかな光を利用して、漁師から奪ってきた方位磁石を確認する。向きも合っているし、このまま進み続ければ大丈夫だ、多分。

 出発してまだ30分ほどだが、目的地が見えないと精神的に疲れるな。


「僕、ちょっと水が飲みたいな」

「口に含む程度にしておけよ、トイレに行きたくなったら垂れ流しだ」

「そ、その時ぐらいはこの状態から解放してほしいな……」

 持ってきていた革袋の口を緩め、フラウの口元へ近づける。固定された状態で顔だけこちらに向けてくるが、鳥のヒナに餌付けをしている感覚になる。

 少し口元が濡れてしまったので、エミリアが拭いてあげている。


「うう、赤ん坊みたいで情けないよ〜」

「頑張れ、フラウ。お前がこの船の心臓なのだ!」

「わかってるけどさ……」

 フラウのストレスが溜まってきている。可哀想に、こんなことになってしまって……。


「……! ちょっと、なんだか波が強くなってませんか?」

「本当だな、穴を閉じておこうか」

 『錬金術』で穴を塞ごうと、金の玉に触れたところで、怒声が聞こえてきた。


「お前たち、何者だ! 変なものに乗りやがって」

「……どうやら、海賊のお出ましだな」

 金の玉から顔だけを覗かせると、いつの間にか近くに船が寄っていた。

 海賊船だと思うがあまり大きくない船だな、頑張って乗っても10人が精いっぱいって感じだ。


 船上には3人の人間が見え、中心にいる男がリーダーのようだ。

 船の影には漕ぎ手も何人か見える。


「助けてくれー! 観光客だが、波にさらわれて沖に流されちまったんだ!」

 オレの作戦、それはちょっと遭難しちゃった馬鹿な奴を演出し船に乗り込む作戦だ。

 フーリオールでも通用した迫真の演技、見抜かれるはずがない。


「なんだと、それは大変だ! 早く助けなければ!」

「ちょっとフェリペ王子、よく見てください! 鎖が沖の方につながっています!」

「なっ! ……手前、騙しやがったな!」

 くそ、鎖に気付かれたか。隣にいる女はそれなりに洞察力があるようだ。

 だが、それよりもこの口の悪い男が王子だったとは。海賊をやっているのが王子という情報はあったが、まさかこんな雰囲気だとはな。


「王子、お下がりください! 私の『波瀾万丈(サージングビロウ)』で海の藻屑にしてあげましょう!」

「ふん、そうはさせるか!」

 女が魔法を使う前に、オレが生み出した鎖を相手の船に放つ。先を鍵爪状にしたそれは、船にしっかりと突き刺さった。

 それを手繰り寄せ、一気に船に接近すると、そのまま金玉から飛び出し乗り込んだ。


「なっ!?」

「お前たちが海を操る魔法を持っていることは既に知っている。オレの魔法の範囲まで近づいたのが運の尽きだったな」

「くっ……王子、下がってください!」

「王子、ここは我々が!」


 王子を守るように、両脇にいた者が前に進み出た。1人は海を操ろうとした女で、持っていた杖で戦うつもりだがオレに勝てる道理はないな。

 もう1人の男の魔法は不明だが、剣を持つ腕が震え腰が引けている。戦闘向きの魔法使いではないと判断した。


「くっくっく、オレに勝てると思っているのか?」

 オレは掌を一度合わせると、それを開きながら掌の間から鉄の剣を生み出す。オレの魔法の正体をカモフラージュしながらも雰囲気で相手を威圧する。


「いくぞ、うわあああっ!」

「ふっ、避けるまでもない」

「……なに!? 素手で、剣を……!」

 相手の振り下ろした剣を手の甲で受け止める。鎧をつけてないオレに止められたことに驚いている隙に、再び鎖を生み出し男を捕らえた。


「お前も戦うか、女よ」

「う……」

 一瞬で1人を絡めとられ、明らかに不利を悟った表情だ。海を操る魔法使いがここまで近づかれた時点でオレの勝ちは揺るぎないがな。

 オレは追い詰めるようにして少しずつ前に進み出る。狭い船上で、すぐに残りの2人は追い詰められてしまった。


「もういい、オレたちの負けだ! 降参だ、降参!」

 王子は両手を上げ叫ぶ。やれやれ、やはりオレの完全勝利に終わってしまったな。

 一滴の血も流さない勝利、まさに天才の技といったところか。


「ちょっと、フリードさん! 助けて〜!」

「……あ」

 後ろを振り返ると、オレの乗ってきていた金の玉がひっくり返りそうになっていた。

 エミリアはともかく、腕が固定されているフラウが大変だ。


「早くこれを外してよ!」

「……悪い」

 中を覗くと、腕が下の方に向いており、逆立ちするような格好で固定されてしまっていた。

 急いで手を外すと、海賊船に乗せることにする。


「御主人様、無事でよかったです……!」

「もう、腕が攣りそうだったよ!」

「悪かったな、今度何か買ってやろう」

 フラウは御立腹のようだ。まあ、オレが完全に悪いので、今度埋め合わせをしてあげるとしよう。


「子供? それにメイドも……。 手前ら、親父に雇われた刺客じゃないのか?」

「言っただろう、観光客だって。少し話をさせて貰えないか」

 3人は顔を見合わせどうするか思案していたようだが、結局は勝てないと判断したのかオレの頼みを聞くことにしたようだ。


「風が強い。船内で話そうぜ」

 ちょっと時間がかかってしまったが、やっと話ができそうだ。

 王子の誘いに乗り、船の中へと入っていった。


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