第1話 Sacrimony その1
針間六郎の家の扉が叩き落されたのは、午後1時11分でした。家に並んでいる無数の時計がすべてそれを示していた。
「針間六郎!謀反及びアポトーシス令状への怠慢及び反抗で、あなたをここで死刑します!」
そう断言した警官の後ろから五人の軍服な人たちが現れて、我が家のごとくに針真家の中に入った。
「何をしていますか?お父さんは何をしたと言うんですか?!」
「ふうみ、奥へ行きなさい!」
針間六郎は焦って娘であるふうみを逃がそうとしたが、警官はすでに彼女を気づいた。
「針間ふうみとお見受けしますね。いいんです。彼女に罪はないので、手は出すまい。皆の衆、かまえ!」
中に入っていた五人はスチーム銃を出して六郎に向けた。
「待ってください!」
ふうみが前に出て父を庇おうとした。
「針真ふうみ!お下がり!でないと、あなたも死刑にしかねます!」
「でも!」
警官が眉を潜めて宣言した。
「社会は一つの機械に等しい!各歯車がまともに回らないと、機械が壊れてしまう!そうならないように、歯車が機械を壊す前に、つまり、害を為せる人がその害を成す前にこのピリナースの町はアポトーシス令状をだす!あなたはそれに逆らうなら、我々カスパーゼ警官隊があなたも死刑します!」
ふうみが動かなかった。
「アポ令なんて聞いたことない!なんで父さんにアポ令が出てる?」
「ふうみ、下がって!」
六郎が娘の腕を掴んで、彼女の気を自分にむけた。
「アポ令は本当さ。退いてくれ、ふうみ」
ふうみが唖然として父に振り向いた。
「父さん...」
だがそれと同時に警官はその涙もでる光景に屈せず、部下に冷静に命令を出した。
「かまえ!」
部下たちが構え直した。
「針間ふうみ!あなたも死刑する!」
「きのう、夜遅くまで仕事場にいたんだ、俺。よく覚えておけ、ふうみ」
「何を...」
意外な発言にびっくりしているふうみが手に何かが入っているを気づいた。きっと、父に入れられていたでしょう。彼の手の温もりをしっかり感じていたから。そして、次の警官の命令が響いたと同時に、六郎の手が彼女の手を強く握って、手に入っている物に何らかのボタンが押された。
「うて!」
その次何が起きたのか、ふうみが解らなかった。ただ、銃声が轟き、体に向かって弾丸が飛んでくることを見た。
そして、そのさらに次に彼女は一人で同じ部屋にいて、家に並んでいる無数の時計が1時15分を示していた。
外は暗い。
午前1時15分だ。
扉も叩き落とされていない。