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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第72回活動報告:現場を調べるのは捜査の基本

現場を調べるのは捜査の基本



活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員



「ようやく朝だねー」

「だな」

「んー」


私はそういって背伸びをする。

草原の海から太陽が昇る姿がまぶしい。

しかし、いい加減、野宿も飽きてきた。

夜の交代警戒も同じく。

無駄にやることないのに起きているのが辛い。

まあ、幸い。携帯ゲームをやってたから問題なかったけど、ゲームがなければ寝てたね絶対。


「でも、先生はあまり焦ってなかったな」

「うん」


そうそう。

昨日、テントに入るフリして、せんせいの所に報告に戻ったんだけど、今回の陸竜が人為的に放たれたということについては特に問題視をしていなかった。

どちらかというと……。


『そちらは、色々介入すれば、私たちの日本、もとい異世界管理局との交流きっかけになりそうですからね。海川さんたちの経験を重ねるにはちょどいいでしょう。そろそろ、普通の冒険や、町での暮らしに飽きてきたところでしょうし。それより、中間テスト、大丈夫ですか?』


と、言われて、私は口ごもってしまい、せんせいに心配そうな顔をされた。


「というか、なんか陰謀が渦巻いているってことより、私の成績の方が心配なのかーって思った」

「まあ、先生だからな。部活動に傾倒して成績わるくなってとか、駄目だろう?」

「……わかるけど、なんか現実って感じがして嫌だ」


異世界に来ているのに、ここ最近ずっと勉強の話ばかりで嫌になってくる。

分かってはいたけど、なかなか、異世界と地球の両立というのは難しいね。


「いや。越郁が普段から勉強してればなー」

「それは、勉強ができる奴のセリフ。できない人の気持ちは分からないよー」

「といってもさ、僕や先輩だって、あの学校で平均点以上ぐらいが取れるぐらいで、別に進学校で上位の成績とか、全国模試で1位とったとかいう話じゃないんだから、別に勉強ができるって話じゃないと思うんだけどな」

「そんな、頂上決戦なんかどうでもいい。がんばっても、点が取れない気持ちがわかるまい!!」

「……いや、威張るなよ。とりあえず、勉強だな」

「いやだ!! 遊びたい!!」

「はぁー。そこが問題だろうが……」


というか、私からすれば、なんでゆーややせんぱいは、目の前にこんな楽しそうな転がっていて、勉強なんてつまらないことが出来るんだよ!?

理解に苦しむね。


「と、そんなことはいいとして、朝日が昇ってきたから、せんぱいとラナさん起こすねー」

「わかった。朝食の準備しておく」


ま、暗い話はここまでにしておいて、今は冒険者としてのお仕事が大事。

ということで、私はテントで寝ている2人を起こす。


「おはよー」

「……ん? ああ、もう朝か」

「ふぁ。おはようございます」


2人とも、声を掛けるだけで素直に起きてくる。

うーん、なんでこんなに寝起きがいいのか不思議だ。

私はゆーや、アンになんどか揺すられて起きるのになー。

それも、まだ寝ぼけ半分。

たまーに、今回のようなワクワクしている楽しいイベント中だと、自分からスパッと起きることはあるけどね。

そんなことを考えていると、2人はさっさと、服を整えて、横に置いてある武器を手に取り、テントの外へといそいそと出てくる。


「うーん。よく寝た。ラナさんはどうですか?」

「ええ。私もゆっくり休ませてもらいました。しかし、本当にこのテントはありがたいですね。雨風に打たれる心配もありませんし、コンパクトですし、とてもありがたいです」


そういって、ラナさんは僕たちが持参してきたテントを見てしみじみという。

確かに、基本的に屋根付きテントなんてこっちのは存在せず、帆立て馬車をそのままテント代わりにするだけで、徒歩での冒険は野宿でテント無し地面にごろ寝が基本だ。

この地球は日本の便利テントに比べると雲泥の差だろう。

しかも、異世界管理局産の特別性だから、実は色々と性能が高い。

物理的にも魔術的にもだ。

まあ、ラナさんの前でそのぶっ飛んだ性能を見せつけるわけにもいかず、普通のテントとして使用したんだけどね。

と、そこはいいか。


「今、ゆーやが朝ごはんの準備してるから、もうすぐ食べられるよ」

「みたいだね」

「はい。今日も美味しそうですね」


横ではゆーやがいそいそと朝食の準備をしている。

まあ、準備といってもアイテムバックからパンとシチューを取り出しているだけなんだけど。

しかし、バリエーションに難があるかなー。

今度はサンドイッチとかを作ってストックしておこうかな。

他の料理は、調味料とかの件を聞かれるかもしれないから、なしなんだよねー。

無論、カップラーメンも。

いやいや、まてよ。

既にこっちは特殊な文化の所からやってきたって言う認識はあるわけだから、案外カップラーメンとか出しても、異文化でごり押しできる?

というか、異文化なのは事実だし。

どうせ、最終的にはどうどうとやるんだし、……うむ。一考の余地はありそうだね。


そんなことを考えているうちに、ゆーやが朝食の準備を終えて、みんなで食べる。


「ふうー食べた。美味しかった」

「だね」

「ええ。朝から、しかも野宿で温かくて美味しいものをいただけるのは幸せです」

「まあ、用意してあったものを出しただけですけどね」


ラナさんの過剰な誉め言葉に、ゆーやは苦笑いをするが、本人は大まじめで言っているのは昨日のことから知っている。

まあ、ナラリーのチームは干し肉と干した果物が精々だろうから、恨まれているってのは嘘じゃないと思うな。

と、そんなことはいいとして今は……。


「で、朝ごはんも食べたことだし、これからどうするの? テントを片付ける? それとも、昨日言っていた周りの調査して目印を探してみる?」

「そうですね。面倒ですが、一旦テントは片付けましょう。目印を探して少しこの場を離れるかもしれません。その時、テントや荷物の監視に人を割きたくはありません」

「わかりました。すぐにテントを片付けますね」

「じゃ、パパっとやってしまおうか」


せんぱいの言うようにパパっと10分ぐらいでテントを畳んだ後は、昨日言っていた木につけているであろう目印を探して辺りを歩き回ることになったが、やはりというか、目印は見つからず、人がいた痕跡もないことから、ナラリーさんたちはまだこの足跡現場にたどり着いていないという結論になった。

なので……。



「あー、平和だー」

「そうだな」


私たちはこうして、のんびりと日向ぼっこをしていた。

いや、これは決してさぼりというわけではなく、再び同じ場所に立てたテントを守るためにこの場に待機しているのであり、仕事の一環なんだよ。

ちなみに、せんぱいとラナさんは馬車の跡の近くをより詳しく調べている。

ま、馬車がきたってことは人がいたってことだし、その馬車を乗ってきた人の痕跡でも見つければ何かわかるかもしれないという希望からだ。

しかし、ああいう、地面に這いつくばって調査する姿を見ていると何か思い出すんだよねー。


「あ、思い出した」

「いきなりどうした?」

「ああ、ほら、せんぱいとかラナさんが地面をしらみつぶしに調べてるじゃん」

「地面には草が生い茂っているから、面倒そうだけどな。背丈もそれなりにあるし、しゃがんでるから先輩たちの姿はみえないよな」

「うん。面倒そうだね。ってそういうことを思い出したんじゃなくて、ほら、警察の一場面に似てない?」

「警察の? ああ、現場の鑑識とかそういうのか?」

「そうそう。鑑識。犯人を見つるぞーって感じ」


ドラマでよくやるやつ。

実際やっているところとか、初めてみるというか、私たちの身内がやることになるとは思わなかったけど。

いや、本物の鑑識じゃないから、違うと言えば違うんだろうけど。


「まあ、同じようなものだしな」

「そだね」


犯人を捜そうというのは、同じだし、ドラマでやっていることと変わりないだろう。


「実際やると地味でなにも出てこないけどね」

「あ、先輩」


気が付けば、せんぱいが戻ってきていた。

背丈の高い草の中で捜査していたせいか、顔が汚れている。


「おつかれさまー。はい、タオル」

「ありがとう」

「で、ラナさんはどこ?」


せんぱいは見えるが、ラナさんは見えない。


「まだ、もう少し探すって言って探しているよ」

「そっかー」


私はラナさんがいるであろう、草原を見つめるが、どこにいるのかよく分からない。

背の高い草ってのは、身を潜めるのには便利なんだーって、的外れな感想を抱いたりした。

そんなことを考えていると、草原の中からひょこっと、人の頭が飛び出てきた。

あれは、ラナさんだ。


「おーい。ラナさーん」


とりあえず、声を掛けてみると、その声に気が付いたラナさんがこちらを向いて、手を振ってきたので、私も振り返す。

しかし、意外と遠くまで行っている。


「結構、遠くまで行ってるんだ」

「遠くと言っても精々200メートルぐらいだけどね。そうそう、ラナさんに教えてもらったんだけど、草原の中を移動すると迷子になる人がそれなりにいるんだってさ」

「え? 草原で?」


周りはこれだけ開けているのに?


「僕も聞き返したよ。だけど、話を詳しく聞いて納得。背の高い草原の中では方角がわかりにくいんだ」

「「あー」」


そりゃそうだ。

ある種、森の中にいるようなものだよね。


「だから、ラナさんは馬車とそれを連れてきた人たちは、その背の高い所を通ってきたんじゃないかって思っている。隠れるからね」

「なるほど。陸竜なんてものを乗せた馬車とか目立つし、背の高い草原の中を通ってくるしかないってわけですね」

「勇也君のいうとおりだよ。でも、流石に馬車を先頭で進むのはリスクが高い。つまり……」

「誰かが先行して、道を作るってこと?」


私はなんとなくそういうと、当たりだったようで、せんぱいが頷く。


「道を作るといっても多少、草を切るぐらいだけどね。それは見つかったんだよ」

「それってすごくないですか?」

「うん。それをたどれば一気に犯人わかるんじゃない?」

「みんなが揃えば、そうなるだろうね」

「「あ」」


そうだ。

今は私たちだけしかいなかった。

勝手にその馬車が通った後を追うわけにはいかないか。


「だから、今は何か近場に相手がわかるモノでもないかと探しているんだよ」

「なるほどねー」

「あ、でも、そうなると、もう森の調査は終わりってことになるんですかね?」

「どうだろうね。そこは、ラナさんやナラリーさんの判断だろうけど……」

「ナラリー様がどう判断するかはわかりませんが、私としては森の調査は終わりですね。すでに陸竜の追跡は森を抜けていますから。陸竜は一匹だと確認もおそらく出来ましたし、村の方も安全だと判断できます。ゴブリンも戻っていましたしね」


気が付けば、ラナさんが草原の方から戻ってきていた。

いつの間に、さっきまで遠くにいた気がするけど、まあラナさんは強いし、あのぐらいの距離は一瞬だよね。


「ラナさん、おかえりー。何かみつかった?」

「いえ、残念ながら。ですが、分かりやすい道は残っていますので、それをたどればある程度はわかるでしょう。あとは、ナラリーさんたちのチームと合流してからですね」

「じゃ、ここでしばらく待機ということですか?」

「そうなります」


うへー。ここでずっとやることのないキャンプかー。

なかなか辛いなー。


「ナラリーさんたちとはどのぐらいで合流できると思いますか?」

「そうですねー。互いに出発して3日目ですから、外周を回っているナラリーさんたちは距離や荷物を考えて、大体長くても2、3日までには到着するかと。そうでないと、森の外周を20日以内で回れませんからね。そして20日と言っても、帰りの時間も計算されてますから」

「となると、今日は来ないかもしれませんね」

「そうですね」


その話を聞いた私は、そのまま寝転がることにした。

だって、もうやることないし。

何かあったら起こしてといって、私はお昼寝をするのであった。





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