第68回活動報告:再び村
再び村
活動報告者:宇野空響 覚得之高校二年生 自然散策部 部長
ナラリーさんとは最初はギスギスしたけど、道中で仲良くなれたし、みんなもそれぞれ納得してくた。
トラブルもなかったので、大木な木下で一泊した後は、日が暮れる前に村へと問題なくたどり着いた。
幸い、村の方は特に変化はなく、僕たちの姿をみた自警団の人たちが歓声を上げて、それで村が騒がしくなったのが一番の大事だったとか。
「よく、連れてきてくれました。皆様。そして、わざわざこのような村の為に兵士を派遣してくれてリーフロングの領主様に心からのお礼を」
そういって、村長さんは深々とお礼をいう。
「いいよー。気にしないで」
「村がまだ無事でよかったです。私は冒険者ギルドから派遣された職員のラナと申します。これからはこのナラリー様が兵士たちのまとめ役であり、領主代理として森の調査に当たりますのでご安心ください」
越郁君はそう返した後に、ラナさんはそう自己紹介したあとに、ナラリーさんを紹介する。
「よ、よろしくお願いいたします。私はナラリー・リーフロングと申します。父に代わり、この度は森の調査の計画と指導を承りました」
「ほお。ご領主様のご令嬢がわざわざですか」
「はい。陸竜の出現はこの村のみならず、リーフロングはおろかこの周辺の町や村に大きな被害をもたらしかねません。それを見過ごすことはできないと父、ガーナン様は仰っています。あと、言いにくいのですが、村から避難したいのであれば、リーフロングで受け入れるとおっしゃられております。今回の調査で原因は探りたいのですが、それができるともわかりませんので」
ナラリーさんがそう告げると、村の人たちは一瞬静かになるが、すぐに村長が口を開く。
「ご配慮ありがとうございます。何かあれば頼らせていただきます」
「はい。こちらが何かあった時受け入れてもらうための書状になります」
なるほど。ガーナンさんも村に何かあった時の為にすぐ避難先を用意していたわけか。
まあ、流石に今すぐ逃げ出せとかではなく、リーフロングに避難場所はあると教えただけだが。目の前の危険があったわけではないから、村も今すぐ避難をと言われても首を傾げる人は多いだろう。
「と、門の前で長々と引き留めて申し訳ありません。中へどうぞ」
「あ、いえ。失礼します」
とまあ、こんな感じで村とナラリーさんの出会いは好調だと言っていい状態だった。
そのあとは、兵士や私たち冒険者の人たちは村の人たちが用意してくれていた食事を食べたあと、ちょっと夜遅いが代表の私たちは村長さんたちと今後の予定を話し合うことになった。
ちなみに、そのほかの兵士さんたちは、物資を卸したり、野営の準備をしてもう明日に備えている。
村長さんたちは、各家庭に泊まってもらおうといってたんだけど、調査や陸竜などの件があるから、兵士たちは集まっていた方がいいということで、広場の一角にテントを張ることになったのだ。
ま、それはそれとして、僕たちは調査についての話を村長さんたちに話して、明日の方針を話し合っている。
「……という感じになっています」
「なるほど。森の外周をですか」
今話しているのは主にナラリーさんで、ラナさんが補佐といった感じになっている。
旅の当初はどうなるかと思っていたが、越郁君のおかげか、それともこれが本来の彼女だったのか、穏やかに村長さんたちに懇切丁寧に説明している。
都会にいって変わってしまったとかいうやつなんだろうか?
まあ、元に戻って幸いだった。
村でこじれると調査はとても難しいものになっただろうから。
そんな感じで僕が考えている間に話は進んでいく。
「たしかに、あんな大きな魔物が外から入ってきたのならその痕跡はあるでしょうな」
「はい。私たちはその痕跡を探して外周を周る予定です。村の方には兵士の半分を護衛として置いていく予定ですので、なにかあればその時は兵士たちに相談をしてください」
「ありがとうございます。しかし、森の外周となると、野宿で?」
「そうなります。一応、20日ほどの予定ですが、どう思われますか?」
「20日ですか。それなら恐らく大丈夫でしょう」
しかし、外周で20日となると、人間の歩行速度が時速4、5キロだから、6時間歩いたとして30キロ、それが20日間で外周600キロか。
大体、東京から大阪を過ぎて四国あたりかな?
随分大きい森だ。これだけ大きい森だと、どんな生態系でもありそうなんだけどな。
……いや、この場合は日本と同じ感覚で考えてはいけないのかな?
でも、ちょっとまてよ。僕たちは半日ほどで森の深部と言われるところまで行ったんだから、20日かかるってのは大げさか。
食料が20日分って言ってたし、帰りに2日かかることを考えても16日で回る予定だから、まあ、精々大きくても外周500キロってところだろう。
調査もして移動速度はさらに落ちるだろうし、実際の大きさはさらに外周は小さくなるだろうけど、それでも1県ほどの大きさな気がする。
まあ、それぐらいの大きさだと、ドラゴンなんか住んでいるなら見ている人ぐらいはいるだろうし、村の人が知らないって証言はおかしいよね。
日本と違って、山のてっぺんとか険しい場所があるわけでもないからね。
「あとは、その外周調査に合わせて、今一度、森の中への調査に少数で臨みたいと思います」
そういうのはラナさんだ。
その話は初耳でみんなラナさんを見つめていた。
「理由は主に2つ。ヒビキ様たちが陸竜を撃破したところに何か新たなるヒントがないか? もう一つは、冒険者ギルドからの派遣である私も森の様子を見てみたいというのがあります。これを報告して、問題がありそうであれば、村負担ではなく、ギルドが自主的な調査依頼として冒険者を派遣できる可能性があるからです」
なるほど。今までは村の報告から動いていたのが、冒険者ギルドが森に問題ありとみて、魔物や素材を回収するという名目で冒険者を定期的に派遣できるかもしれないということなのだ。
そのための必要な魔物や素材を調べるための調査でもあるのだ。
「なるほど。それは村としては喜ばしいことです」
村長さんたちはそういってあっさり納得してくれたけど、ナラリーさんはどうなんだろう?
そう思って視線を向けると、頷いて納得しているようだった。
「確かに、村に兵士を置くだけ、森の外周を回るだけでは、と思っていましたが、これはいい案だと思います。しかし、これは父の方には?」
「もちろん承諾はいただいております」
「はぁ、父はこれに反対するようなら勝手に動けとでも言っていたのでしょうね」
「はい。その通りです。ですが、そのようなことはないと思っておりますが?」
「ええ。その森の調査に反対などしません。森の様子を伺うというのも必要でしょうし、森の中の指揮はラナさんが取られると思っていいのでしょうか?」
「ええ。それで、冒険者の方はコイク様のパーティーを連れて行きたいと思っています」
「なるほど、陸竜を森の中で撃退するのであれば、コイクさんたちが一番ですね。外周の方で出会ったなら、輝きの剣やサラさん、ドーザさんもいますから問題ないでしょう」
ふむふむ。理にかなっているけど……。
僕はある点に気が付いたけど、ナラリーさんも気が付いたようで。
「外周の調査の責任者、リーダーは私ということですね」
「はい。その通りです。輝きの剣やサラ様、ドーザ様たちはいますが、あくまでも外周の調査のリーダーはナラリー様になります」
「わかりました。ご期待に沿えるよう頑張らせていただきます」
そう。森の外周の調査はナラリーさんに任せるということだ。
しかも、仲のいいというか、理解をしてくれる越郁君抜きで。
おそらく、越郁君がいないときの態度を見るという目的もあるんだろう。
まあ、初対面の時にあれだけやらかしたから、当然なのかもしれない。
いつまでも越郁君がフォローできるわけじゃないんだからね。
「そういえば村長さん、コイク様たちが出て行ってからの森の様子はどうですか? 何か変わったことなどは?」
「いえ、特に変わりはありませんな。というより、森に近寄っておりませんから。流石に陸竜がでた森に狩人も踏み込みたくはないですからな。陸竜に追い立てられた魔物と今度こそ鉢合わせするかもしれませんし」
村長のいうことは尤もだけど、それだと……。
「あの、村長さん。それだと食料などはどうしているんですか? 狩猟が出来ないと大変なんじゃ」
僕は気になって聞いてみると、少し意外そうな顔をした後、笑顔に戻る。
「いや、ご心配かけてもうしわけない。まあ、確かに動物が取れないと長い目でみるときつくなりますが、別に今日明日で食べるものがなくなるということはないですよ。狩人が村の人全員腹いっぱいの獲物をとってこれることなどありませんし、獲物が取れない日もよくあります」
「ああ、基本は畑ということですか」
「ええ。そうでもないと、定住はできませんからね」
「確かに、早合点でした」
よくよく考えればその通りだ。
森の狩りだけで村人全員が食べていけるわけがない。
となると、残りは畑で食べ物を作るしかないのだ。
「ですが、森の中で得るのは動物だけではありませんから、山菜や果物が取れなくなるのはキツイですね」
なるほど、だから長い目で見ると、この土地で暮らしていくのは困難になるわけだ。
それを聞いたナラリーさんは口を開く。
「一応、陸竜が出たということは事実ですので、防衛の関係上、この村は拠点として扱う可能性があります。ですから、その関係で、食料の購入に関してはなるべく安く仕入れられると思いますので、負担にならないようにと父に掛け合ってみます」
「ナラリー様のご配慮に深く感謝いたします。しかし、一番なのは森が平和になることですな」
「そうですね。その平和になるきっかけを調査で見つけて見せます」
「はは、しかし、自然現象ということもあります。ナラリー様や皆さまの安全を第一にしてください。理解ある皆さまがいなくなれば、それこそ本当に私たちが困ってしまいますからな」
「「「あはは」」」
そういって、みんなで笑う。
下手をすれば役に立たないという意味で侮辱とも取られなかったけど、冗談とナラリーさんも受け取ったようだ。
これなら、大丈夫そうかな?
とりあえず、話を聞く限りは、村のみんなは陸竜が確認されて以来、森には入らず、畑や草原の方で採れる動物などを主にしているらしい。
僕が心配したよりは、そこまで食べるには困っていないようで本当によかった。
まあ、森だけに依存してたら、森に入れない時期とかもあるだろうから、ちゃんと他の食料を得る手段はあるよね。
そんな感じで、村長さんたちと明日以降の打ち合わせをした後は、すぐに休みについて、明日に備えることになった。
「ふぁ、明日からまた森かー。なんか野宿ばっかりだね」
「そりゃ、森の調査だし、冒険者なんてこんなもんだって、スィリナさんやサラさんたちも言ってたじゃないか」
「だね。冒険者って言うのは、やはり気楽だけというわけじゃないみたいだ」
僕たちは村長さんたちが用意してくれた前の時と同じ部屋で横になってそんな話をしていた。
どうやら、越郁君は野宿ばかりの日々にちょっと不満のようだ。
「ま、それよりも、正直、あと20日ほどで学校なのが、メンドイ」
「勉強はしてるだろう?」
「何か他に問題でもあるのかい?」
「うーん。勉強は見てもらっているからいいんだけどさ。なんというか、ほら、五月病というか、夏休み以上の2か月ぐらい休んでるからさ、なんか億劫になってきた」
「「あー」」
越郁君の不安に僕たちは納得する。
確かに、僕たちの体感では2か月近く学校に行ってないからね。
色々不安がある。
先生が言った友達の件はともかく、長期休んでいた感じでの感覚のズレみたいなのは後日報告したほうがいいかもしれないね。
そんな雑談をしたあと、僕たちは眠りにつくのであった。




