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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第46回活動報告:この先を考える

この先を考える




活動報告者:山谷勇也 覚得之高校一年生 自然散策部 部員




「ほう。これは……」

「美味しいわね」

「コイク、お代わり!!」

「はいよー」


日本式のビーフシチューを作ってみたがどうやら好評のようだ。

こっちの世界のビーフシチューは、文字通り、肉と野菜を入れて煮込むだけのものだ。

同じだと思うだろうが、全然同じではない。

まずスープはトマトをベースにデミグラスや色々香辛料や作ったモノではなく、水だけだ。

どちらからというとボルシチ系になるのかもしれないが、煮込むという点ではシチューというのは間違いではない。

パンを作り始めてから、近くの宿屋兼飲食店に行ってシチューを頼んだ時は驚いたもんだ。

まあ、シチューという食べ物自体もそこまで古い食べ物ではないらしく、16世紀ごろのフランスでようやくといった感じだ。

元々、トマトは毒のある食べ物という誤解を受けていたこともあって、割と最近というまでは新しくもないが、そこまで古くもない食べ物だ。

無論、お肉や、野菜などといった材料を豊富に使うところで、その供給を満たせる生産体制を整えられた社会があるかというのも問題になる。

と、シチューの歴史はいいとして、このリーフロング一帯ではシチューというのは水ベースで煮込んだものが基本で、トマトなどをペースト液状にしてスープに味付けをするというのはないのだ。

だから、口に合ってなによりだ。

パンの消費にも貢献してもらえるから、スィリナさんたちの訪問はありがたい限りだ。

パンは暇があれば、色々開発していて、アイテムボックスに時間の経過なく保存できるので、溜まる一方だったのだ。


「この四角いパンはこういうシチューなどによく合いますね」

「だよなー。好きに大きさもかえらるしー」

「うわー、ファオンさん。分厚いです」


そう、今みんながシチューと一緒に食べているのは食パン、正式名称はパン・ドゥ・ミーといわれるものだ。

意外と、この食パンの歴史は浅く、18世紀ごろに出てきたもので、金型に生地を入れて焼くという発想が浮かばなかったようだ。


「しかし、こんな味の深いシチューは初めて食べた」

「ええ。はじめは茶色で何かしらと思ったけど、これはすごいわね」

「え? なに? 2人とももういらないの? 私が食べてあげようか?」


そういって、手を伸ばすアノンさんをバシッと叩いて撃退する2人。


「いたい!? なにするんだよ!?」

「今は、料理の感想をいっているんだ」

「そうよ。ごちそうになってるんだから、ちゃんと感想ぐらいいいなさいな」

「え? 美味しいにきまってるから、お代わりしてるんでしょ」

「まったく」

「ごめんねー。アノンはエルフだから人の社会には疎くて」

「いやいや、これでも随分長く人の国にいるんだから、疎くないよ」

「なら、何も考えてない馬鹿だな」

「そうねー。ギルドのことも考えるとただの馬鹿よねー」

「なんだとー!?」

「「「あははは」」」


そんな感じで、にぎやかに晩御飯は進んでいく。


「そういえば、アノンってエルフだよね」

「んー。そうだけど?」

「さっきの話しからすると、エルフが人の国にくるのは珍しいような感じに聞こえたから」

「あー、まあ、珍しいかもね。そういう所も知らないのか」

「不帰の森から出てきたという信憑性が増すな。今更疑ってはいないが、なるほどな。そういう風にこちらの常識を知らないのは困るわけだ」

「私たちからすれば当たり前のことを知らないってのは不便ね」

「そうそう。だから色々知りたいわけ。で、アノンの話だけど」

「まあ、珍しいと言えば珍しいけど、とても珍しいってわけでもないかなー」

「どういうこと?」


アノンさんの返答に、俺たちは首を傾げる。


「アノンの説明はアバウトだからな。もともとエルフ族は長命ということで、人と生きる時間が違う。そこの関係だけではないと思うが、種族ごとで国を分けている」


まあ、よくある話だ。


「それで、昔は戦争とかしていたらしんだけど、今ではすっかり和解して、交流は普通にあるの。人は技術を、エルフは魔術をって感じね。国お抱えの魔術師のトップのほとんどはエルフってことが多いわ。野心とは無縁だからね」

「そうなの?」

「もともと、種族違いってことで、人の国の王にはなれないわけでもないけど、反発がすごいからね。そこまでして人の王様になりたいなんて考えるエルフはいないんじゃないかなー。そういう感じで、安全ってみなされるんだよ」


なるほど、そういうすみ分けがしっかり出来てるんだな。

この世界はこの世界で色々あって、ちゃんと自力で解決しているんだ。

だから、先生はこの世界を良く調べろって言ってるのか。

力を得たからといって、何も知らないじゃダメだって。

この世界に僕たちを呼び寄せたかもしれない「女神」とかいう存在に言いように使われないようにって。

……今のところ「女神」からの連絡はないけど、今後もそうとは限らない。

いつ何かに巻き込まれないとも限りらない。

何も知らないまま、周りに流されるのを避けるために色々情報を集めろって言ってるんだな先生は。

最悪、その女神と戦うことも辞さないっていってたし。

というか、人を誘拐している時点で、先生というか異世界管理局の女神の評価はただの誘拐犯って感じだけど。


「と、そんな感じで、100人に1人はいるぐらいかな。珍しいと言えば珍しいし、珍しくないといえば珍しくない」

「なるほどねー」

「でも、それなりに珍しいなら、奴隷を狙ったりって言うのはあるんじゃないのかな?」

「ヒビキの言う通り、そういう目的で狙うやつもいるけど、世の中そういうのは普通にあるからね。狙われやすいぐらいだし、エルフの奴隷は条約で厳しく条件がついているから、持っていると逆に色々面倒なんだよ」

「はー、そういう所もしっかりしているんだ」

「エルフと関係悪化するのは、人としては今更よろしくないからね」


奴隷にする方が逆に怪しまれるってことか。

後ろめたいことがなくても嫌だな。

正規で奴隷として手に入れてても、疑いの目を受けるのは色々とよくない。


「アノンの話だと、エルフはエルフで国を作っているような感じだけど……」

「作ってるよ。主にエルフたちはそっちに住んでいるよ。こっちに来るのは観光とか、人生経験を積みたい連中かな。エルフは長寿な代わりに数がそこまで多くないから。そういう意味でもエルフは数が多い人と付き合いは大事なんだよ。食料面とかは特にね。人にとっては大昔でも、エルフにとってはちょっと昔の戦争で数を減らしたからね。そういう意味でも今の状態は喜ぶべきことかな」


色々思惑があるんだな。

人にとっては大昔でも、エルフにとってはちょっと昔ってのも言われればその通りなんだけど、言われないとあまりピンとこないな。

里中先生の所はどうなんだろう?

……うーん、プライベートだし聞いていいものやら、困るね。


「ねえ。エルフってお肉食べないってイメージがあるんだけど……」

「あー、そういう連中もいるにはいるけど、普通に食べるよ。ただの好き嫌いって感じ。森に住んでいるからそういうイメージがあるだけで、普通に人より人数は少ないはいえ、食料はいるからね。冬場とか狩りでもしないと飢えるよ。そういう意味でも、人との交易は助かるんだけどね。外部から食料を育てなくても、狩らなくても手に入れることが出来るんだから」

「なるほど。共存共栄って形になってるんだ」

「そうそう」


そんな感じでエルフの話は終わり皆で一旦お茶を飲んで一息ついていると、ツーチたちが席を立つ。


「輝きの剣の皆様。本日は貴重なお話を聞かせていただき本当にありがとうございます。私たちはそろそろ訓練の時間になりますので、先に離席することをお許しください」

「訓練か。そうだな。コイクたちについていくには並大抵では務まらんだろう」

「大変ねー。頑張って」

「日中は仕事、夜は訓練。結構ハードだね。ま、気を付けてね」


3人は快く見送り、ツーチたちはこれから先生の訓練が始まることになる。

今日は沢山食べてたし、きついだろうな……。


「しかし、必要とは言え、こんな夜から訓練か」

「あまり無茶はダメよ? 特にあの小さいアンちゃんとかは」

「だねー。コイクたちのレベルについてこれるのなんてそうそういないだろうし、あまり自分たちと同じように周りの人も強く成れると思ったらだめだよ」

「こればかりはアノンの言う通りだな。彼女たちもやる気があって頑張ってはいるんだろうが、そういう差というものは存在する。あまり、期待しすぎないことだ」

「そうね。まあ、適度がいいかも」


不意にそんなツーチたちに気を遣うことを言うので、僕たちは顔を見合わせた。

やっぱり無理だったのか? という不安ではない。


「まあ、ダイジョブだよ。僕たちも同じだったカラネ」

「ソウソウ」

「人は強くなれるんですよ」


僕たちこそ、スィリナさんたちから見れば強くなれないと思われる一般人だったんだから。

確かに、能力とかを貰ってはいるけど、そんなのは世の中二の次だというのを思い知った。

人はどれだけ苦労を、苦行を耐えてきたかが大事なのだ。

強さとは力や身体能力だけを指す言葉ではない。

弱くても強い人なんてごまんといる。

強くて弱い人もたくさんいる。

大事なのは、いざというときに行動を起こせるかだ。


「……と、そこはいいとして、スィリナたちは私たちが今後他の町にいくなら、お勧めの所ってある?」

「おすすめか。何を目的に行くのかというのを聞かないとな」

「だよねー。まあ、分かりやすくいえばこの国を知るにはって感じだけど……そうなると王都だよね?」

「まあ、そうだな。国を知るには国の中心に行く方がわかりやすいだろう。しかし、それをためらっているというのは、……権力争いが嫌か」

「おー、スィリナもよくわかってる」

「それを理解しているコイクたちに驚きだな。コイクたちの故郷もそういう権力争いはよくあるのか?」

「まあねー」


よくあるというか、どうなんだろうね。

毎日のごとく、選挙票の集めに必死になっている感じだよな。

お互いに足の引っ張り合いをしているような感じがしてならない。


「私たちも、ファオンが言った防衛線をくぐりぬけて、王都へ赴いたが、そこでひどい勧誘だ」

「雇ってやろうっていうのは当たり前で、自分たちの女になれってのもあったわよね」

「なんのために冒険者やってるか理解してないよねー」

「まあ、国に仕えるのが目的ならこの上ないほどいい話なんだろうが、そういうのが目的なら最初から兵士になっている」

「使える駒はほしいんでしょう。あれは利用してやろうって顔だったわ」

「とまあ、王都の連中は戦力確保に忙しいね。そこにコイクたちが行けば、必ず取り込みがあると思うよ。名前を知られていないから、無理な取り込みとかもあるかもしれないね」

「だな。それでコイクたちが逃げて指名手配になりかねないな」

「でも、ガーナン辺境伯様からの手紙一筆でももらえれば問題ないようにも思えるけどね」

「ここのガーナン様は王都では結構顔がきくんだよ。不帰の森の素材とか、防衛を一身に担っているからね」


やっぱり、ガーナンさんに一筆もらった方が穏便に済むか。

でも今までお世話になっているし、色々気が引けるんだけど、これは仕方ないかな。

王都に行った方が色々情報を得るのに好都合なのはスィリナさんたちの話からも間違いないだろうからね。

となると、何かガーナンさんから仕事を受けて、その代わりに一筆もらうって感じがいいかな。

僕がそんなことを考えている間に、コイクが話のお礼をいう。


「ありがと、参考になったよ」

「いや、この程度で今日の失態が返せるとは思ってないなからな。他に何かあれば言ってくれ」

「といってもねー。他になにか欲しい物もないからねー」

「んー。ならコイクたちが王都行くときに私たちが付いていくってのはどう? それなら、コイクたちも迷うこともないし、舐められることは冒険者と私たちの知り合いに限りないと思うけど?」

「えー? でもさー、コイクたちはいつ王都に行くかもわからないんだよ? その間の生活費どうするんだよ?」

「いや、私たちは冒険者だしな。そもそも、不帰の森での仕事をこなしに来たんだ。多少、この町にいる時間が伸びても問題ないだろう」

「そういえば、どの程度この町にいるつもりなの?」

「目的物が不帰の森の中にあるからな。依頼の方も手に入れば届けてくれという程度だから、最低一年は見ているな」

「結構長いね」

「そうか? ここまで強力な魔物がいる土地だ。この程度は普通だと思うんだが」

「ひょいひょい活動拠点を代えるわけにもいかないからね」

「そうそう。移動も一苦労だし。しばらくはここでお仕事だよ」

「いや、アノンはさっきと言ってることが違うから」

「いやいや、コイクたちが行くってことは、ファオンたちも来るんでしょう? 彼女たちがものになるのはどう見ても3年以上はいると思うけど……」


なるほど。アノンさんはアンたちのことを考えてそういったのか。

うーん、彼女たちの実力を示す機会があればいいんだけど、というか、下手に強くなりすぎていないことを願う。

そっちの方が説明が面倒だから。

一旦、色々ファオンたちと話をする必要があるかな?

と、そんなことを考えつつ、スィリナさんたちを家に泊めて、色々話をしながら夜は更けていくのであった。


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