第44回活動報告:同業者からの情報収集
同業者からの情報収集
活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
「この鎧は結構悩んだのよー」
そりゃそうでしょうとも。
ただのレオタードに装飾をあしらって、しかも腹部とか切り抜いているんだから。
なかなかお目にかかれない、エロ装備だ。
もう、どこに防具の意味があるのか疑わしいレベルの装備だよね。
スィリナとナーヤさんは、まだこう鎧とかローブって感じはあるけど、アノンのこの姿はただの変態、痴女。
いやぁ、いい世界に来たもんだ。
「私は斥候や弓兵だからね。下手にゴテゴテしたのを着るとかえって行動しずらいのよ」
「だから、そういうタイプになったんだね」
「そうそう。わかっているじゃない。コイク」
まあ、あれだ。
地球で言うボディースーツ、ライダースーツ、みたいなものなんだろう。
エロいからそれでよし。
ペタンコでも劣情を引き起こさせるいいものを見た。
「とそういえば、さっきスィリナさんから装備を預けているってきいたけど、とってきたの?」
「いや、これは予備よ」
「予備?」
「そう。スィリナやナーヤもだけど、この装備のいい所は薄くてかさばらないから、予備を持ち歩けるのよ。そういう意味でもお金が掛かるんだけどね」
「なるほどねー」
確かに、冒険に靴の予備とかそういうので荷物はかさばっていく。
鎧も予備があればいいだろうが、全身を覆う鎧などを一式別に持っていくというのは邪魔でしかない。
しかし、このエロ装備であれば、無駄に薄い……じゃなくて、必要なところ以外は削ってあるから、予備の持ち運びも楽にできるのか。
思ったよりも、現実的な理由がるんだな。
鎧だって整備しないと使えないんだし、予備ぐらいは持ってるよね。
サブウェポンだってみんな持っているんだし。
こんな魔物が徘徊する世界で、剣一本、つまりメイン装備だけで出歩く冒険者はそんざいしない。
新人は金銭面的に厳しくてもてないだろうが、普通の冒険者はメインの武器に、万が一損失した際に使える武器がないというのは命に関わるので、もう一個武器を持っているのが当たり前だ。
これは地球の軍隊でも同じことで、メインウェポン系はアサルトライフルとかサブマシンガンなどで、サブにハンドガンやナイフを装備している。
弾切れなどで、リロードするより、ハンドガンやナイフで攻撃する方が速かったりするという理由もあるのだが、攻撃手段が無くならないようにということだ。
銃とかは剣と違って故障するからね。
ジャムると大変なんだよ。
と、そんな話をしていると、家についた。
「じゃ、遠慮なくどうぞー」
「お邪魔しまーす」
「失礼する」
「お邪魔するわね」
私がそういって迎え入れると、3人とも挨拶をして中に入ってくる。
こういう所は普通なんだし、冒険者ギルドのことは、こっちにもある程度問題があったんだろうね。
不帰の森っていうのは禁句みたいだ。
ここらへんは後日ラナさんと話して考えてみよう。
無用な争いは御免だしね。
「どうぞ、こちらの椅子に」
「お茶を用意してくるよ」
ゆーやとせんぱいはそういってテキパキと準備をしていく。
入ってきた3人は1階のリビングの物が物珍しいのか顔をきょろきょろさせている。
「なにこれ。ランプにしてはえらく明るいけど」
「魔術か?」
「んー。感じには感じるんだけど、何か根本的なことが違う気がするのよね」
まずは電球に対して、3人の興味が集まる。
おー、流石、僧侶っぽいナーヤさん。
魔力で発電をしているってところがわかっているのかな?
魔力を直接使うわけじゃなくて、電力変換しているから、流れが変に感じるんだと思う。
「あっちの、カチコチ言ってるのって時計?」
「あんな小さなものがか?」
「見たことないわね。ねえ、コイク。あれって……」
「アノンの言う通り時計ですよ。うちの所の文字で書いてあるから読めないと思いますけど」
「うひゃー。本当に不帰の森の中からでてきたって感じだ」
アノンは電球や時計を見てそんな感想を漏らした。
なるほど、まだやっぱり信用していなかったか。
まあー。疑う気持ちもわかるかな。
アノン本人は無駄に新人が死なないようにっていう意図もあったんだしね。
そんな感じで、色々興味を示す3人に説明をしていると、ゆーやとせんぱいがお菓子とお茶を持って戻ってきた。
「お待たせしました。どうぞ」
「紅茶はこっちで勝手に選ばせてもらったよ」
「ありがとー。って、なんだこれ?」
「ん? この食べ物は……小さいパンか?」
「みたいね。ちっちゃい丸パンだわ」
3人とも小さい丸パンを見て変な顔をしている。
まあ、それもそうか。
この世界というか、一帯なのかはしらないけど、1人分のパンと数人分のパンというサイズしか存在しない。
具体的に言うなら、大、中しかサイズないのだ。
小さいパンは用意する意味がないのだろう。
まあ、大、中を切って出せばいいのだから、わざわざ小さいパンを作る意味を見出せないのだろうね。
だから、小さいパンを出すのは一旦様子を見てということになったのだ。
ちょうどいいことに、3人が来たから試してみようと思ったんだろうね。
もちろん、中にはジャムが入っている。だからお菓子って部類なんだよね。
「中にジャムが入っています。まあ、お試し用というか、通常のパンよりも小さくすることで、販売価格を抑えられるから、もっと買いやすくなるかなと」
「へー。難しいことはよくわからないけど。あのサイズのを食べると一個二個でお腹一杯になるから、私としてはありがたいね」
そういって、アノンはひょいと小さいパンをつまんで口に入れる。
「うわー、あまーい。これがジャムか。納得、これならすぐになくなるね」
「ああ。ジャムは甘くて美味しいな」
「そうねー。そして、この小さいのはいいと思うわ。女性だけじゃなく、ちょっとつまむって感じでお手軽だから、誰でも食べると思うわ」
スィリナとナーヤも同じように小さいパンに手を伸ばしてパクパク食べていく。
どうやら好評のようだ。
「しかし、ジャムをこんなに使って採算がとれるのか?」
「そうよね。ジャムって砂糖も使うでしょう? いくら使う量が少ないっていっても、ジャムの量自体が多いわけじゃないし、生産とか間に合うの? たしか、ジャムって薬でしょう?」
「ああ、そこは問題ないですよ。ガーナン辺境伯様にハブルおばあさんにもジャムの生産許可をもらっていますし、砂糖の供給も商業ギルドと契約していますから」
「……本当に、色々とこの町では優遇されているのだな」
「そんな相手にアノンが喧嘩売ったわけか。ばかねー」
「バカっていうなー。2人だって止めなかったでしょう」
「まあ、それは悪かったが、今後はやめておけ。今回はコイクたちが穏便に済ませてくれたが、相手がどこぞの御曹司だったりしたら庇いきれん」
「そうね。私たちも止めるけど、アノンも自重しなさい。声を掛ける程度にしておきなさいよ」
「うん。そうする」
流石に今回のことで懲りたのか、素直に返事をするアノン。
権力者相手は力でどうにかなるのは稀だからねー。
まあ、冒険者ギルドにお貴族様の人がお忍びでくる時点で、そういうことは理解していると思うけど。
無用なトラブルを避けるためにも喧嘩腰っていうのはやめた方がいいよね。
と、そこはいいんだよ。
こっちの目的を達成しないと。
「で、パンの感想はいいとして、お話聞かせてもらっていいかな?」
「ああ、すまない。そういう約束だったな」
「でも、どういう話を聞きたいの?」
「私たちも知っていることは限られるわよ?」
「別にそんなに難しいことじゃないよ。私たちはほら、不帰の森から出てきて、ここ最近の情勢とか全然しらないんだ。まあ、そこはガーナンのおっちゃんとかに教えてもらっているからいいとして、近場の町の様子とか、危険な場所とか、そういうのが聞きたいんだよね」
そう、国としての情報、情勢関連はガーナンのおっちゃんや、冒険者ギルド、商業ギルドで色々教えてもらっているからね。
個人的な感想を聞きたいわけだ。
生の声ってやつ、紙片とかお偉いの感想ではなく、そこで生きる人のってやつだ。
「なるほど、そういう話か」
「本当に、お話って感じね」
「いいんじゃない? お金儲けの話を教えろって話でもないし」
3人とも私たちの希望を聞いて少し以外そうな顔をしつつ、快く承諾してくれた。
「ギルドで助けてもらったし、ジャムパンも貰ったから、そういう話をしても採算は合う気はするがな」
「どうする? そういうお話も聞く?」
「まあ、そうだね。コイクたちの実力なら問題なさそうだし」
そして、追加でなんかお金になりそうなお話をしてもいいと言ってくれるのだけど……。
「それって、危険なんでしょう?」
「そりゃそうよ。簡単に大金が手に入るなんてのは、お貴族様相手か、厄介な魔物、大規模盗賊相手って相場が決まってるんだから」
「じゃ、そういうのはいいや。別にお金には困ってないし」
「……冒険者らしくないわね。コイクたちは」
「こっちのことを知るのが仕事だからね。お金がいるのは、生活費の為ってぐらいだから」
「まあ、ここにある魔道具を見ても、かなりの物だと分かる」
「ここの物を売りさばくだけで一財産よね」
「情報得るには冒険者ってことか……。まあ、間違いじゃないよね。私たちとこうしてあったんだから」
「というわけで、まずは近場の町から。アノンたちは近くの町から移動してきたんでしょう?」
私がそう聞くと、スィリナが頷く。
「ああ、近場といえば近場だ。このリーフロングから馬車で10日ほどの所にある、ドゥーケイという町から、商隊の護衛としてこちらに来た」
「商隊の護衛ってことは、このリーフロングには特に用事は無し? 商隊の商売が終わったら帰るって感じ?」
「いや、もともと、私たちもこのリーフロングに用事があったんだ。それで商隊の護衛は渡りに船だった」
「ごはんも出て、お金も貰えるからね」
「なにより、馬車があるから、通常の移動は楽だしねー」
「へー。このリーフロングに用事があったんだ」
「まあ、具体的にはコイクたちがきた不帰の森だ。貴重な素材や強力な魔物などが多数いるということで、腕試しも兼ねてだな。不帰の森の素材を欲しいという依頼も受けている」
「手に入ればって程度だけどね」
「そんな感じで準備をしていたら、コイクが不帰の森の出身なんて信じられないこというからね。さっきのは最悪のタイミングって感じかな」
「なるほど。商売敵にもなりえたわけだ。ま、そこはいいや。私たちが聞きたいのはドゥーケイってところの話しかな」
私はリーフロングの話はやめて、ドゥーケイの話を頼む。
「ドゥーケイの町の話といってもな。このリーフロングのように不帰の森があるわけでもない。名物などあったか?」
「どうだったかしら? ああ、ワインとかの生産地じゃなかったかしら?」
「ああ、そうそう。その手の仕事が冒険者ギルドでは多いよね」
「へー。ぶどうの収穫とか?」
「そうだ。その運搬や、ぶどうやワインをねらった魔物や盗賊などの退治だな」
「町の規模は、リーフロングよりは大きいかな。こっちは最前線のような感じだしね」
「まあ、こっちは不帰の森からの魔物の迎撃が目的の町だしね。何かを生産するのが目的じゃないし。幸い不帰の森からの希少な素材があるから、冒険者とかの出入りが多くて、それに伴い商人の出入りや、物好きの人が移り住んでくるけどね」
なるほど。
やっぱりリーフロングは田舎だというのは本当らしい。
ここで過ごすのは命知らずのような認識みたいだ。
「で、なんでドゥーケイにいたの? なんか聞く限り、目ぼしい仕事があるような町には聞こえないんだけど?」
「目ぼしい仕事というのをどう定義するのかは分からないが、冒険者ギルドの仕事が普通にあるぞ。まあ、私たちは王都の方からドゥーケイの方へ来たんだが」
「王都の方が冒険者ギルドはさみしいわね。軍が常駐しているし、王様のおひざ元だから、魔物とか盗賊は少ないわね」
「まあ、その分、お店の手伝いとか、商隊の護衛仕事とかは多いけどね。トータル的に仕事は王都の方が多いくらいだよ」
「このリーフロングの仕事を見て見たが、他のギルドよりも圧倒的に魔物退治などが多いから、そういう意味ではここが異常だ」
ふむふむ。
他の町は、魔物退治の割合が少ないのか。
というか、私たちは特に冒険者ギルドで仕事受けたことはないけど。
初日にオーク売っぱらっただけだし。
……それを考えると、冒険者の仕事の話をされてもよくわかんないんじゃね?
他所の町のことも同じだ。
話しを聞く前に、私たちの基礎知識が全然足りない?
と、今更ながらそんなことを思うのであった。
まあ、この3人とは仲良くなって繋がりを持つのは役に立つだろうから、悪い話ではないよね。
エロ装備も知れたし、そこが一番のいい情報だね。
そんな感じでお話は、スィリナたちの冒険活劇を聞くような感じになっていた。




