第43回活動報告:エロ装備な理由
エロ装備な理由
活動報告者:山谷勇也 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
「全く、何を考えているんですか!! コイク様だったからよかったものを!!」
「い、いや、寸止めするつもりだったよ?」
「寸止めする前にヤラレテましたよね。死んでも文句言えない状況ですよ!!」
「あ、あいさつみたいなものだったし?」
「どこがですか!! ただコイク様の言ったことが信じられなくてちょっかい出しただけでしょう!! 高ランクの冒険者が何をしているんですか、何を!!」
なんかすごい剣幕でラナさんが怒っている。
それを見た他の冒険者はすぐに目線をそらし、カウンターの方へ歩いていく。
屈強な男の人も例外なくだ。
前のファオンをだました冒険者の時も思ったけど、ラナさんってもしかしてかなりの実力者だったんじゃないかな?
そんなことを思うほど、高ランクの冒険者といわれている、輝きの剣という冒険者たちの人は怒られていた。
「パーティーリーダーのスィリナ様も一体何をしていたんですか!! 止めるのがリーダーの務めですよ!!」
「そ、それは、すぐ終わると思っていたんだが……」
「はぁ……。アノン様と同じようにコイク様の技量を見破れなかったわけですか。では、ナーヤ様も同じですか?」
「ごめんなさい。そう思ってました」
3人ともどうやら越郁の実力を見抜けなかったようで、それを知ったラナさんはがっくり肩を落とす。
「……これが、ランク7の冒険者と知れば周りが落胆しますね」
ん?
ランク7って確か……。
僕がそう考えていると、越郁が口を出す。
「ねえ。ラナさん。ランク7ってなんかすごくいろいろな大変な仕事とかをこなしてなれるランクじゃなかったっけ?」
「ええ。そうです。ランク7以上は複数のギルドや領主など有力者の推薦があってようやくなれるランクです」
「で、その輝きの剣とかいうお姉さんたちと、喧嘩を売ってきたちびっこがそのランク7ってこと?」
「お恥ずかしながらそうなります。一応、彼女たちは二度にわたり、魔物の群れに襲われた街を防衛し、魔物の群れにいるリーダー格を打ち取るという功績を上げてランク7になったのですが……。どうやら、ランクの見直しが必要なようです」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私はいい加減なことをいう、このコイクを……」
「叱ろうとして? それともお仕置きでもしようとしましたか? それで返り討ち。さらには冒険者ギルドどころかリーフロングを危険にさらしたと?」
ラナさんあまりの怒りようと言葉に3人は首を傾げる。
「はい?」
「ラナさん。落ち着いてくれ。よくわからないが、なにをそんなに怒っているんだ? 冒険者ギルドやリーフロングが危険になるというのはどういうことだ?」
「えと、よくわからないのだけれど。ラナさん、この3人はパン屋さんじゃないのかしら?」
なるほど。
この3人は僕たちの素性を全くしらないで、ああいう行動をとったわけだ。
まあ、知らなくても当然かな? 昨日やってきたみたいな話だったよな。
「……この方たちは、マンナ様のお弟子様たちで、リーフロングのご領主様である、ガーナン様からもくれぐれもといわれているのです」
「……え? マンナ様って、あの噂の?」
「確か、不帰の森からドラゴン引きずって出てきた魔術師だったか」
「みんなが噂しているから、嘘だとは思わないけど、その人のお弟子さんがこの3人ってことですか?」
そんなことやったんだ。
どおりでマンナ様万歳!! みたいな感じなわけだ。
「そうです。そして、実力の有無は今確認したばかりですよね? 私がどれだけ肝を冷やしたかご理解いただけましたか?」
そういってラナさんは笑顔のまま、ズゴゴゴ……という効果音がありそうな迫力を醸し出していて、それを見た3人がようやく、自分たちがどれだけまずいことをしたと自覚したのか、慌てて頭を下げ始める。
「す、すいませんでしたー!!」
「申し訳ない。アノンを注意するべきだった!!」
「私も傍観していてすいませんでした!!」
それを見たラナさんはこっちに振り返り……。
「どうしましょうか?」
「どうしましょうって。別に私は被害ないから気にしてないけど?」
「越郁が文句ないなら僕も言うことはないかな」
まあ、本気で切りかかろうって感じはしなかったし、あの程度でどうにかなるなら、先生に怒られそうだしな。
「まあ、謝罪も受け取って当人である越郁君もいいといってますし、僕たちとしてはいいですが、冒険者ギルドとしては何か処罰でもあるんですか?」
「新人にちょっかいを出すとか、チンピラのやることですからね。依頼を出すお客様にもいい印象は与えませんので、礼儀指導の受けなおしですね」
「ちょ、ちょっとまった。確かに私が悪かったけど、今回は仕方ないでしょう。下手な自信家の新人が不帰の森に行くみたいな言動したんだから、それを止めるためにもやったんだし!!」
なるほど。
アノンさんのあれは悪意からしたわけではなく、お節介としてしたわけか。
どうりで、殺気とかは感じなかったんだな。
自信家の新人は確かに言って聞くようなことはなさそうだしな。
「だからといって、何も詳しいことを聞かずに、ナイフを突き出すことが認められるわけがありません」
「うぐっ」
で、ラナさんの言う事ももっとも。
アノンさんが先走ったという事実は変わらない。
だけど、事情を聴くに情状酌量の余地はあるかな?
というか、僕たちが助け出さないとこのまま連れて行かれそうな感じだな。
それはまずい。話を聞くためにここまで来たのに本末転倒になる。
となると、こっちから助け船だすしかないか。
「ラナさん。僕たちはこの輝きの剣の人たちに用事があるんで、今回は実害なしってことで、許してもらえませんか」
「え?」
「アノンさんが越郁に手を出した件は、軽い手合わせってことにしてもらっていいですから。な、2人とも」
僕がそういうと、越郁はすぐにうなずいて、アノンさんは全力で頭を上下に振って肯定しする。
「いいよー。お話してくれるなら」
「するする!! ということで、手合わせだったんで、ラナさん勘弁して!!」
「……はぁ。わかりました。ただの手合わせなら礼儀指導をする理由はありませんね。しかし!! 輝きの剣の皆さんは今回のことはちゃんと反省してください!! いいですね!!」
「「「はいっ!!」」」
ラナさんは僕たちの意見を聞きつつ、最後にしっかり輝きの剣の人たちを絞めているあたり、やっぱりこのギルドでは逆らわない方がいいタイプなんだろうなと改めて思った。
「で、こちらを見ている皆さんは、私に何か御用でしょうか? 今からカウンターにもどりますので、どうぞ来てください」
と、笑顔でカウンターに戻っていくが、誰もその席に座りたがらない。
うん、やっぱりラスボスなんだろう。
「こほん。さて、ここで話すのもなんだし、僕たちの家に来ませんか?」
静まり返っている中、先輩がそう告げる。
「え? 君たちの家っていうと……」
「パン屋かい?」
「そうです」
アノンさんとスィリナさんの質問に先輩が答えると、ナーヤさんが手をたたいて喜んだ。
「いいじゃない。これでジャムパンが食べ放題ってことよね?」
「いやー、流石にジャムパンばかりだと胸やけするから、普通に料理するよ」
「あら、残念」
「まあ、食べたいならだすけど。私たちは食べないよ」
「それでいいわ。やったわよ。アノン。ジャムパンそれだけじゃなくてまだ色々あるんだから、食べ放題よ。というか、ジャムパン潰れちゃったわね」
「ああ!?」
そうえいば、アノンさんに越郁が渡したジャムパンは無残にも押さえつけられた時に下敷きになって無残な姿をさらしていた。食べ物は大事にしないとな。
で、指摘されて気が付いたアノンさんはがっくりと膝を折っていた。
「そういう所も考えないで、喧嘩を売ったお前がどう見ても悪いな。パンを貰っておいていきなりあれはないな。今ならそういえる」
「そうねー。あれはないわね」
「うぐぐ……」
いきなりのことで色々動揺していたみたいだけど、落ち着いたのか今はスィリナさんとナーヤさんはアノンさんにダメだしをして、アノンさんも自分が悪かったと認めているのか、特に何も言い返さない。
その姿をみて反省しているのはわかるので、僕たちもこれ以上とやかく言うつもりはない。
というか……。
「ジャムって砂糖で煮詰めているから、べたべたしない?」
「うん。べたべた。最悪」
アノンさんのお腹にはべったりとイチゴジャムが広がっていた。
それをつまみながら嫌な顔をするアノンさん。
自業自得ではあるけど、べたべたは気持ち悪いよな。
「とりあえず、服を着替えないといかないし、行こう」
「そうだね。ちょっと宿によるよ」
そんな感じで、僕たちは輝きの剣がとっている宿に移動を始めたのだが。
「うぉっ!?」
「きゃっ!?」
という感じで、通行人に驚かれるのはアノンさん。
そりゃそうだ、腹部をイチゴジャムで赤く染めていれば驚くよな。
遠目からは血がべったりついているようにしか見えない。
「ぷくく……」
「わらわないでよ!? コイクが私をぶっ飛ばしたせいでしょう!?」
「いや、元はといえばアノンが喧嘩吹っ掛けてきたのが悪いよねー」
「ぬぐぐぐ……」
こんな感じで、ちびっこ2人の仲はそこまで悪いようには見えない。
「しかし、ヒビキたちには悪いが。未だに不帰の森やマンナ様のお弟子というのはなかなか信じがたいな」
「まあ、それは仕方ないですよ。機会があれば実力をみせることもあるでしょう」
「でも、そんなことが起これば、今度こそ私たちがラナさんに怒られそうよね。で、ユーヤはなんでそんなに離れてるのかしら? お話しない?」
「あ、はい」
僕はナーヤさん言われて、3人のそばに近づく。
今までは少し離れて歩いていた。
理由としては……。
「ユーヤも魔術師か。しかしな、らしく無い。気を悪くしてないで欲しいが、全然魔術師らしい恰好にみえないんだ」
「そうよねー。服は確かに珍しくて質もよさそうだけど、なんというか、魔術師っていうよりお貴族様て言われる方がまだわかるわね」
と、僕をじろじろ見てくる、スィリナさんとナーヤさんにある。
越郁がいうエロ装備をつけているから、目のやり場に困るんだ。
下手に見ると、スケベとか言われそうなんだよな。
「不帰の森の中とこっちでは文化が違いますから」
「そういうものか」
「まあ、色々お国柄って言うのはあるわよね。でも、なんかユーヤ自身、私たちから距離を取って気がるんだけど。やっぱり、さっきのこと気にしている?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
僕から言うのはあれだよな。
どうしようかと思っていると、先輩が間に入ってきて……。
「お2人とも、僕たちのところでは、そういう薄い装備は見なかったもので、目のやり場に困っているんですよ。勇也君は男ですし」
直球で言っちゃったよ。
僕がスケベ目的で眺めていたとかいわれそうだなー。
だけど、僕から言うよりはマシなのかな?
「……ああ。なるほど」
「そういえば、そんな恰好だったわね」
あれ?
本人たちは意外そうな顔をしている。
「ユーヤは真面目なのだな」
「そうね。私たちは女性の冒険者だから、こうでもしないと舐められるのよね。無論、この恰好で言い寄ってくるのもいるけど、それをぶっ飛ばして実力を示すっていうのもあるのよね」
「なるほど。お2人ともあえてそんな恰好をしているのですね」
「そうだ。最初は恥ずかしかったが、それ以上に、この装備をすることは私たちの実力の証明みたいなものだ」
「ええ。今じゃ慣れたものよね。逆にそういう視線で見てくる相手はある意味やりやすいのよね」
この2人はこの姿で動くことに自信を持っているわけか。
それにこの姿の使い方も心得ていると。
なんというか、世の中生きていくには大変案だなと思う。
芸能人みたいなものなんだろうな。
「ということだ。勇也君。あまり気にしなくていいようだよ。かえって気を遣わせてしまうみたいだ」
「みたいですね。スィリナさん、ナーヤさん申し訳ない」
「いや、かまわない。むしろ好感が持てた」
「そうね。変な視線でよってくるより、こっちを気にしていたってのは評価はたかいわよ」
「どうも。で、不意に思ったんですけど、アノンさんは普通の服装のようですが?」
「ああ、整備で預けている。あと、普通に町を歩くときは、普通の服装でいいからな」
「良くも悪くも目立つからね」
「そうですか。アノンさんもお2人のような装備を持っているんですね」
「そうだが、まあ見た目があれだからな」
「ぺったんこでしょう? だから、色々大変だったのよ」
「うっさいそこ!!」
「そうだー!! ぺったんこは希少価値があるんだー!!」
なんか、越郁とアノンさんが怒りながらこっちにやってきた。
妙な絆でも芽生えたらしい。
「わかったから、近寄るな」
「宿に着いたんだから、さっさと着替えてきなさいよ」
「むきー!! 覚えていなさいよ!!」
そういって、アノンさんは宿屋に入っていって、さほど時間もかからず戻ってきた。
「どうよー。コイク。これが私の装備よ」
「へー。かっこいいねー」
「あら、わかる?」
まあ、装飾は綺麗でかっこいいといっていいんだろうけど、局部ぐらいしか隠していないすごい装備だ。
あれでなんで防御力があるのか本当に不思議だ。
この世界はやっぱり不思議が一杯らしい。




