第42回活動報告:過激な再会
過激な再会
活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
なんか前回も飛ばされた気がするけど、まあいいか。
なにせ、この異世界で初めてみたエロ装備のお姉さんたちを見たのだから!!
剣と魔法の世界でさ、武骨な鎧とかないよねー。
でもさ、このリーフロングの冒険者たちは、なぜか面白い身もない武骨な鎧ばかり。
まあ、サラさんとか、美人さんは多くて、スタイルに合わせて鎧を作っているから、こう体型がわかってエロくはあるんだけど、定番のおへそ丸出し装備とかがなくてがっかりしてたんだけど。
だけど、他の町は違ったみたいで、本日パン屋に訪れた冒険者風のお姉さん2人は、見事にビキニアーマーとエロタイツとローブを着込んだ、THE異世界って感じのお姉さんだった!!
ぐへへ……。
これで、この世界ではエロ装備をしても個性として認められるわけだよ。
日本見たくコスプレ会場でお願いしますとか言われないの。
いやー、私だって恥ずかしいとは思うけど、ああいうのはやっぱり着てみたいじゃん?
女らしさの象徴って感じじゃん。
男の子が鎧を着たがるのと一緒、ファッションも兼ね備えた鎧って感じ?
地球で言うなら婦警さんの制服とか看護師さんの制服とか、キャビンアテンダントの制服って感じ?
こう、ぐっとくるものがあるわけよ。
それでゆーやも篭絡できて一石二鳥!!
と、私の本音はいいとして、表向きは他の村や町の情報を得るための大事な情報源なんだ。
異世界調査部としてのまともな仕事なわけ。
今まではリーフロングで色々地盤固めをしていたけど、そろそろリーフロングの外に目を向けてもいい頃だと思っていたので、ある意味こっちの意味でも都合がよかった。
というか、パン屋を作った意味は情報収集にあるので、本懐を遂げたという感じになるのかな?
さてさて、そういうことがありまして、ただいま私たちはその、エロ装備を着ているお姉さんたちを探しに冒険者ギルドへと来ているのです。
「……ということで、そのエロい……じゃなくて、かっこいいお姉さんたちを探しにきたんだ」
と、今日冒険者ギルドに来た用事をラナさんに話す。
すると、ラナさんは苦笑いしつつ、答えてくれる。
「エッチな恰好ですか。一応、あの装備はかなり高いもので、高位の冒険者や貴族を表すものなんで、そこは注意したほうがいいかと」
「あ、やっぱりそうなんだ? でも、サラさんとかは普通だったよ?」
「サラ様よりも上の冒険者なんです。お金が掛かりますからあの装備は。まあ、確かに煽情的な恰好ではありますが、全身を覆う魔術の障壁防御はありますし、寒暖の調節も魔術も施してあるので、防具が重くなく、マントなどの荷物を持っておく必要がないという利点もあるのです」
ほほー、なるほど。
確かに、そういう利点は大きい。
ただ単にエロ装備というわけではないのか。
私が感心していると、それを横で聞いていたせんぱいが質問をしてきた。
「防具を少なくしてというのは理解できるのですが、あんな煽情的な恰好をする必要はないのでは?」
「うーん。それは人の見る目といいますか。あの恰好をしているのは上位の冒険者や凄腕であるということを示すものですからね。逆に他の変わらない恰好をしていると区別がつかないんですよ」
「……なるほど。あの恰好をすることで、自分たちは上位の冒険者であるということを、示しているわけですか」
ふむふむ。エロい恰好をしているお姉さんは強いという事か。
エロ強い!! なんか良い響き。
「あ、でも、そうなると。男の人も露出系になるの?」
ゆーや以外の男の露出装備は勘弁かなー。
あ、そうか、ゆーやもそういう装備をしても問題ないってことになるのか。
それはそれで捨てがたいかなー?
「いえ、男性はそういうことはありません。あくまで女性冒険者の表現方法になります。……その、他の国では女性が見くびられることも多いので」
「ああ、女性はわかりやすく強いという示すことが必要なわけですね」
「はい。その通りです。まあ、だからといってその装備をしていない女性を虐げていいわけではないですが、スムーズに仕事を受けるためや、トラブルを避けるためにも必要なわけです」
女性の立場が低いから、下手に普通の装備で行くとトラブルが起こって時間がかかるから、露出の多いわかりやすい装備をすることで、すんなりいくようにしているわけか。
……どこの世界でも女性の社会進出は厳しいって話か。
「となると、私たちもエロ装備がいるのかな?」
「いえ、あくまで、強さを示さないといけないと思っている人が装備するもので、サラさんのように普通の装備でいる人もいます。まあ、サラさんのように活動拠点を絞っている人などですね」
「もともと信頼があるってことか」
「はい。しかし、流れの冒険者などはそうはいきませんからね」
「だから、判りやすいエロ装備か……」
うーん。私たちもいずれ、そういう装備をする必要があるのかな?
いや、私たちの場合はガーナンのおっちゃんとかのコネはあるし、手紙とかもらって行けばいいのかな?
まあ、興味はあるし、持っておいて損はなさそうだよね。
「えーと、話がずれましたが、その冒険者たちから色々お話を聞きたくてお探しということですね」
「あ、はい」
エロ装備の話に夢中になってたよ。てへ。
「確か、スィリナさんたちは、数日はリーフロングの町で武具の整備をしている間に見物するとか言ってましたね。宿の方は確か……」
おう、個人情報保護法とかは無いらしく、あっさりと教えてくれる。
いや、ある意味有名人で仕事のできる人だから、居場所がはっきりしている方がいいのか。
しかも、不純な動機ってわけじゃないし、仕事の仲間みたいなもんだし、いいのかな?
まあ、情報は普通に聞けたし、いいかなーと思っていると、不意に冒険者ギルドに誰か入ってきたようで、話声が聞こえてきた。
「信じられない!! 私の分も買ってくるって言ってたのに!!」
「いや、だから、1人2つまでだったんだ」
「そうなのよ」
「2人ともなに馬鹿なこと言ってるのよ!? 合計で4つあったんでしょう!! 私の分1個ぐらい確保できたでしょう!!」
「「ごめん。美味しかったからつい全部食べた」」
「こどもかー!!」
なんか探しいので振り返ってみると、今朝お店にきていた、私たちが探している訪ね人2人がなんか、私と同じくらいのちっこい子に頭を下げて怒られていた。
「えーと、ラナさん。あの人たちで間違いなですか?」
「あ、はい。スィリナ様、ナーヤ様、アノン様です」
ゆーやが確認を取り、やはりあの3人で間違いないようだ。
3人パーティーだったのかー。
まあ、とりあえず、挨拶にいこうかな。
そう思って近づいていくと、なんか話は進んでいて……。
「私の分を買ってきてよ!! 今すぐ!!」
「いや、もう売り切れだと思う」
「すごい人だったし、あれだけ美味しいから」
「むきーーー!!」
「落ち着いてって、あ」
「あら」
「こら、まだ話は終わってないよ!!」
どうやら、2人は私たちのことを覚えていてくれたみたいで、こちらに視線を向けてくれる。
「今朝はどうもー」
「やあ」
「ん? 知り合い?」
2人が反応を示したことから、怒っていたちびっこ子も、私たちに視線を向けてくる。
「ああ、知り合いだ」
「助かったわ」
「助かった?」
「彼女たちが、今の話しのパン屋の主だからな」
「ええ」
「はぁー? こんなちっこい子がパン屋の主?」
そういって私を見つめてくるちっこい奴。
テメエもサイズはそんなに変わらんだろうが。
「いや、パン屋の主はその後ろの女性で、彼女は従業員のはずだ」
「ふーん。なるほど。で、えーと、私たちに話しかけてきたってことは何か用かしら?」
今度はせんぱいを見つめて品定めしながらそういうちっこい奴。
私、こいつ嫌い。生意気。
で、質問されたせんぱいは、とりあえず口を開く。
「あ、えーと。用事があったのは確かですけど、なにか、お話していたようですが? そちらはいいんでしょうか?」
「ああ、ただ君たちが作ったパンをアノンも食べたいって言ってな。余っているのなら、譲ってくれないか? もちろんお金は払うし、その用事とやらも、内容次第では聞いてもいい」
「なんか、私の我儘みたいになってるけど、この2人が私の分を残すのすっかり忘れて食い尽くしたのが悪いんだからね」
「まあ、そうだけど、パン1つにここまでこだわるのもお子様よね。明日でもいいじゃない」
「うがー!! もとはといえばそっちが美味しかったっていい笑顔でいうからでしょう!!」
「2人とも落ち着け、今は人と話しているんだから。というわけで、恥ずかしながらそういう事情で今ちょっともめているんだ」
なるほど。
うちのパンが美味すぎて仲間の不和というか、妙なことになっていると。
ゆーやとかなら気にしないんだろうけど、女性はこういう美味しい物は気になるからね。
このちっこい奴はジャムパン食べれなくて悔しがっているわけか。
そう考えると、子供だから仕方ないかと思える。
とりあえず、事情は分かったし、予備がないわけでもないので、アイテム袋から取り出す。
これで、話が聞けるなら安いものだからね。
「うわっ!? え、え!? アイテムバック!?」
なぜか驚く、アノンといわれたちっこい奴。
いや、後ろの2人も私のアイテムバックを見て驚いていた。
ああ、珍しいものだっけ。
まあ、説明をするにもとりあえずパンを渡そう。
「はい。これがうちで作っているジャムパン」
「あ、ありがとう。えーっと、幾ら?」
「ああ、それはいいよ。用事を聞いてくれれば」
「いや、流石にパン一個で仕事なんかしないよ? 私たち優秀な冒険者なんだから」
「ただ別に大変な仕事ってわけじゃないよ。この町以外のことを知らなくてね。お姉さんたちは色々冒険してきたって聞いたから、その話でも聞ければなーって」
「ああ、なるほど。それならいいかな? 2人はどう?」
「私は構わない。話すだけでジャムパンなら文句はない」
「そうね。私も問題ないわ。町の見学はしてきたし、後は待つだけだからね。こういうのもいいでしょう」
3人とも特に問題はなく、私の用事を承諾してくれた。
「と、そういえば自己紹介してなかったね。私はアノンっていうんだ。見ての通りのエルフで、この輝きの剣の狙撃手だよ。で、こっちのでっかいのが……」
「私たちは別にでかくない。アノンが小さいだけだ。私はスィリナという。このパーティーのリーダーを務めている。見ての通り前衛の戦士だ」
「私はナーヤっていうの。主に魔術のでの補佐がメインね」
なるほど。
前衛、後衛、そしてサポートか。
バランスは悪くないのかな?
私としてはもう1人ぐらい前衛がいたほうがいいと思うけど、アノンが短剣も持っているから前衛も多少はこなせるのかな?
と、私たちも自己紹介しないとね。
「私は越郁っていうんだ。不帰の森にある町からちょっと用事で出てきたんだ。冒険者ギルドに登録はしているけど、今は知っている通り、パン屋をやってるよ」
「はぁ? 不帰の森から? なに変な冗談を……」
アノンは私の言う事が信じられなかったのか、すぐに口を挟むが、まだこっちの自己紹介の途中なので、せんぱいが間に入ってくる。
「すみません。その話は自己紹介のあとということで。僕は、響といいます。越郁君と同じように不帰の森からの出身です」
「どうも。勇也といいます。以下同文ですかね」
とりあえず、簡単に名前だけの自己紹介を終える。
で、アノンが再び口を開く。
「で、3人とも不帰の森からでてきたって? 馬鹿にしてる?」
「いや、全然」
私はそう答えると、アノンがいきなり腰の短剣を抜いて、私の顔へと……。
ボゴンッ!!
「げふっ!?」
届くわけもなく、空中に蹴り上げられて、宙を舞う。
アノンのナイフが届く距離ということは、私の足も十分に届く距離なのだ。
銃の引き金を引くよりも、投げるナイフ、武器をもって切り付ける、それよりも拳と蹴りの方が速いというのは至極当然の話し。
だが、有名本で優秀な冒険者というのは本当ならしく、蹴られて空中にいるのにもかかわらず体勢を整えて、天井に足をつけて、こっちに飛んできた。
曲芸の域だね。
懲りずに、また短剣を私に向けてくるんだけど……。
ドズンッ!?
「うきゃっ!?」
そのまま背負い投げしてやって、ナイフを持っている手も極めて、奪い取り、うつぶせになっている上から組み伏せる。
「ぬぐぐ……」
なんか意地で起き上がろうとしているが、組み伏せているので、動けるわけもなく、極めている腕に少し力を入れると……。
「ひぁっ!?」
関節外すのが得意でもない限り、この痛みはそうそうなれるものでもない。
そもそも、この世界に関節技って言うのが存在するのかしらないけど。
「で、ラナさん。これどうするの? 冒険者同士のもめごとだけど、どう見てもこれが仕掛けてきたんだけど、やっていい?」
こう、ぽっきりと。
「あ、だ、駄目です!? お気持ちはわかりますが、抑えてください!! スィリナ様!! ナーヤ様!! アノン様を!!」
ラナさんに話を振ると慌てて、2人のお姉さんにお叱りの声をあげる。
「あ、ああ。すまない。自業自得とはいえ、アノンを離しやってくれないか? ちゃんと面倒は見る」
「ごめんなさいね。アノンが迷惑をかけて」
「……と、2人は言ってるけど。アノンからは何かないのかな?」
「ぬぎぎ……」
「もうちょっとひねってみようか」
きゅっとね。
「ひぎぃ!? わ、わかったわよ!? 私が悪かったわ!! だからその変なのやめてよ!?」
うーん。こんな気の強い子の「ひぎぃ」は何か来るものがあるね。
ま、降伏宣言は聞いたし、拘束を解いてあげると、大人しく立ち上がり、こちらを見ながら口を開く。
「……不帰の森から来たってはなし、詳しく聞かせて」
「いいけど。その前に、ラナさんをどうにかしてね」
「え? あ……」
私が横にずれると、そこにはラナさんがいい笑顔で仁王立ちしていた。
うん。最初から分かっていたよ。
彼女は怒らせてはいけないタイプだってね。




