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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第41回活動報告:変なお客さん

変なお客さん




活動報告者:宇野空響 覚得之高校二年生 自然散策部 部長




「すまない。ちょっと訪ねたいのだが」

「はい。なんでしょう……か」


そんな話声を聞いて振り返ってみると、勇也君が痴女2人に迫られていた。

そう、痴女である。

1人は鎧をつけている意味がないようなお腹丸出し、足は生足の女性騎士っぽい痴女。

そしてもう1人はなんか神官っぽい恰好ではあるが、露出が多いローブなのでコスプレ痴女。

どっちとも、私よりスタイルがいい。ちっ。

なるほど、越郁君が私などを引き入れて、勇也君をガードしたいわけだ。

世の中にはああいう痴女も存在する。

これ以上、勇也君が彼女たちを相手にするのは危険すぎるので変わるとしよう。


「勇也君。こちらのち……女性たちは?」

「あ、先輩。他所の町からの冒険者の方らしいです。どうやら、仕事で昨日到着したようで、その時にここのパン屋の噂を聞きつけたらしくて」

「ああ、そうだ。なにやら薬のジャムをパンの中に入れて販売している珍しい店があると聞いて来てみたのだが、ここで間違いないようだな」

「ええ、そうです」


うん。

なんでこんなに偉そうなんだろうと思うけど。

こういう態度の方が女性冒険者は舐められないためにはいいかもしれない。

だが、その前にその痴女スタイルをやめた方がいいと僕は思うね。

男を誘っているようにしか見えないし、無用なトラブルを呼び込む原因になりかねないと思う。


「で、少年から君が変わったということは、君がこのお店の店長なのか?」

「そうです」


3人とも店長ですとか言っても混乱させるだけだろうし、ここは素直に僕が店長と言っておいた方がいいだろう。

一応年長ってことで、色々やっているし。

まあ、リーダーシップは越郁君にあるんだけど、それはお店ではなく、異世界調査部の中でだ。


「随分若いな。どこかの商会の娘とかか?」

「いえ。まあ、それよりも何の御用でしょうか?」

「あ、すまない。不要な詮索だった。冒険者ギルドに聞いて昨日来てみたんだがすでに閉店してしまっていて、この時間ならあると聞いてきた」

「なるほど。つまり、ジャムパンをご所望ということでよろしいでしょうか?」

「ああ。頼む」


どうやら、僕たちが目的ではなく、ジャムパンが目的なのは間違いないようだね。

種類はまあ、イチゴと新作でいいだろう。

2人に二つずつ渡された袋にジャムパンを入れて、代金を貰う。

2人はすぐさま、パンをかじろうとするが……。


「すいませんが、パンを食べるのは店内から出て行ってからでお願いします。他のお客様もまっていますので」

「ん? ああ、すまない」


彼女たちは言われて後ろを振り返ると、睨んでくる奥様たちに一歩あとずさり、すぐに店外へと出て行く。

どうやら、一般的な常識はわきまえているタイプの冒険者らしい。

服装は常識的じゃないみたいだけど。

彼女たちが出て行くと、後ろで控えていた奥様たちが集まって再び忙しく、販売を再開する。


気が付けば本日もお昼前には完売しており、私たちは後片付けをしていると、売り上げの確認を終えた越郁君がこちらの手伝いに……。


「ねえねえ。せんぱい、ゆーや、朝の定番の鎧きたお姉さんたちってなんだったの? すっげー、バインバインだったよね!!」


来たわけではなく、朝の痴女の事を聞きたいようだ。

そして、なぜか越郁君はあまり彼女たちに嫌悪感は内容でむしろ嬉しそうだ。


「んー。ああ、ただジャムパンを買いに来ただけだよ。ねえ、先輩」

「ああ、そうだよ。昨日到着してジャムパンの事を聞きつけてきたらしい」

「へぇー。ジャムパンはわずか3日で町にブームを巻き起こしているね!! よそから来たお姉さん冒険者がくるんだからね。ぐへへへ。スケベ鎧はあったんだ!!」


なるほど。

越郁君には美味しそうな痴女に見えたわけだ。

まあ、勇也君を襲おうとしたわけではないし、私が過剰反応なのかな?

でも、あの格好はねー。


「そうえいば、変に露出の多い装備だったよな。ゲームみたいに」

「だよね。あれ実用性ないよね」


勇也君も僕と同じ感想を持っていたので、僕の感性がおかしいというわけではないのだ。

だが、それに反対するように越郁君が口を開く。


「ロマンがあるんだよ!! きっと何かの魔法の効果で強い防御力があるんだよ!! いい体がエロい服装でただで見放題!! それを否定するなんて許さん!!」


……なんでこういうところは残念かな。


「……それって、普通に体を覆って魔法、魔術で防御効果を高めた方が効率の性能もいい気がするけどね」

「いっちゃだめ!! せんぱい、それはいっちゃだめ!! 日本じゃコスプレでさえなかなか見れないんだから、メイドさんとか喫茶店で指名料にテーブルチャージ料もいるんだよ!! 異世界万歳!! エロ方面で!! サラさんはガチガチの鎧装備で残念だったけど、これは希望が持てるね!!」


どういう方向での希望だよ。

……報告書に、いかがわしい装備発見とでも書くつもりかな?


「ま、越郁の病気はいいとして、この分だと凄い魔法の剣とかはありそうですよね」

「そうそう!! こうエクスカリバーとか光の断剣とか!!」

「なるほど。現代兵器に匹敵する魔道具が存在する世界もあるって先生は言ってたし、あのいかがわしい鎧になにかあるのか調べるのはそれにつながるのか」


この世界の戦力調査に繋がるわけだ。


「いやいや、そんなことより先輩。これは私たちがああいい格好をしても問題なってことですよ?」

「いや、あんな恥ずかしい格好はしないよ」

「あれが、この世界の普通。トレンドだったりするかもしれないから!!」

「そんな馬鹿な」


そんな痴女な世界に勇也君を連れだせないね。


「こう考えてください。ゆーやが先輩のエロ装備でコロッと行くかもしれないよ?」

「ほう?」


それは聞き捨てならない。


「ゆーやはああいうエロ装備でしてみたいとかいってたし」

「うぉい!? 越郁!!」

「よし。あの格好がこの世界で流行りであるなら、不満ではあるけど、着てみよう。郷に入っては郷に入っては郷に従えというしね」

「おーい!? 先輩まで!?」


この点に関しては勇也君がまじめすぎるのがいけない。

そろそろあきらめて、ハーレムを築けばいんだよ。

そうか、私が真面目では勇也君も開き直れないわけだ。

だから、越郁君は私から解放的になれと言いたいのか。


「と、ゆーやが慌てるのはいいとして、どうします? あの冒険者とあってみます?」

「うーん。そういえばどれぐらいこの町にいるのとかは聞いてなかったね。他の町の話を聞くためにもこっちから聞きに行くべきかな?」

「別に、あの人たちでなくてもいいんじゃないですか? サラさんとかドーザさんも他の町にいったことはあるって言ってましたし」

「ゆーや、それはいつでも話を聞ける相手だから別にいいんだよ。2人の活動範囲は主にこのリーフロングの不帰の森だし」

「越郁君の言うように、外を拠点に持っている人たち話を聞くのとは違うだろう。情報の鮮度とかね」

「まあ、それはそうですが……」

「なら、夕方、3人が起きてから仕入れはいつものように任せて、私たちはあの2人を探しにいこう」

「それがいいだろうね。下手すれば明日にでも出て行くかもしれないし」

「わかりました。とりあえず、後片付け終わらせてしまいましょう。お昼ご飯もありますし」


そんな感じで、お店を片付けを終えてお昼ご飯を済ませてのんびりしていると、3人が起きてきた。

大体5時頃に戻ってきて、今はお昼の2時ぐらいだ。

約7時間とちょっとも寝ているんだからと、普通なら思うが、あの先生のしごき……ではなく指導。休みの日には一日寝て過ごしても不思議ではない。


「おはよー」

「……おはようございます」

「ふにゃ」


3人とも予想通り、頭が爆発している。

ドライヤーはないからね、タオルで拭くだけで、すぐベッドで寝てたらそうなる。

まあ、予想していたので、暖かい濡れタオルを持って3人の頭をこっちも3人で整える。


「コイク様、さんきゅー」

「ヒビキ様、毎日申し訳ありません。今日こそはと思っていたのですが」

「ユーヤ様ありがとー」


顔をついでに増えてあげたので、しっかり覚醒して返事もはっきりしている。

後は僕たちが手を貸さなくてもいいかな。


「じゃ、軽くご飯を食べて、商業ギルドと魔法薬屋に仕入れよろしく」

「お金はこの袋にいつものようにいれてるから」

「物取りの場合は自分たちで解決しようと思わないこと、近場の商業ギルド、冒険者ギルド、僕たちを頼ること」


と、いつものように業務と注意事項を伝える。

彼女たちも頷いて仕事に出ようとするが、今日はまた別の予定がある。


「あ、そうそう。今日はちょっと用事で冒険者ギルドに行くから。場合によっては帰りが遅くなるけど、気にしないでせんせいの所に行っていいからね」

「冒険者ギルドって、仕事?」

「いや、今日、お店によその町からの冒険者が来てね。話でも聞こうかなと思っているんだよ」

「なるほど。ヒビキ様たちが言っていた情報収集の一環ですね」

「ああ。だから、こっちは気にしなくていいから。家の留守は気にしなくていいからね」

「はーい」


3人は僕たちの予定を聞いて、仕入れの仕事に出て行く。

家の管理は魔術での防衛機能があるから泥棒とかは気にしなくていいんだよね。

それを突破できるぐらいの実力があれば、それはそれで僕たちの異世界調査員としての仕事を全うできるというものだ。


「じゃ、私たちも行こうか」


3人を見送ったあとで、僕たちも家を出て行く。

お昼を過ぎたので、人はもうひと頑張りと仕事にいそしんでいるか、町の通りはそこまで人はいない。

ここ1週間は家でパン屋の開業で忙しかったので、町の様子をゆっくり見るのは久々だ。

なんというか、こういう仕事の時間は閑散としているというのは、異世界でも変わらないらしい。

どこかの主婦たちが立ち話をしているか、子供が走り回っているぐらいだ。

物騒なイメージのある中世ヨーロッパぐらいの文明レベルの異世界だが、平時はそこまでないのだ。

まあ、毎日人死にが沢山でるようならそんな町に人が住み続けたいと思うわけがない。

と、そんな風景を見てそう思っているうちに冒険者ギルドに到着した。


「やっぱり、お昼は静かだねー」


冒険者ギルドもお昼頃は同じように冒険者は出払っていて静かなものだ。

情報を集めているとか、訓練場で練習している人が数人いるぐらいで、受付のカウンターはガラッとしていた。

さて、カウンターの人は選び放題だけど、誰に聞こうかなと思っていると、カウンターの人から逆に声がかかった。


「あ、コイク様。どうかされたんですか?」


そういって、カウンター席から立ち上がったのは、よくよくお世話になっている受付のラナさんだ。


「やっほー、ラナさん。ちょっと情報が欲しくて来たんだ」

「情報ですか?」

「うん。と、その前に。はい、ジャムパン。よかったら食べて。働いているみんなの数がわからなかったから、適当に入れてるから足りないなら半分ことかにして分けてね」


越郁君が本題に入る前に、色々お世話になっているラナさんにパンの入った袋を渡す。

パンが嫌いだったらどうしようというのもあったけど、まあ嫌いなら他に人が食べるだろうということで、持ってくることにしたのだ。

でも、その心配は杞憂だったようで……。


「わぁ。これが噂のジャムパンですね。まだ食べたことがなかったんです。みんなも食べてみたいっていってたんで、ありがとうございます。ちょっと置いてきますね。みんな、数はあるからまずは1人1個ずつよ!! 多く食べたらつるし上げるからね!!」


嬉しそうにパンの入った受け取り、他のギルドの職員へ牽制をして、裏の方へ持っていく。

声がかなり真剣だったから、よほどうれしかったんだろう。

ジャムパンごときでといえばおしまいだけど、あれだけよろこんでもらえるよ作った側としては嬉しい限りだ。


「お待たせしました」

「ラナさん。食べたら感想お願いします。まだまだ色々改良できるかもしれないんで」

「わかりました。ヒビキ様任せてください!! と、すいません。情報をという用事でしたよね?」


でも、流石受付嬢。

ちゃんと僕たちがここに訪れた理由は覚えていて、話を促してくれた。


「はい。今朝のことなんですけど……」


そして勇也君があの冒険者のことを話し始める。

さて、彼女たちに会えるのかな?





間違って越郁を飛ばして響を二回目。

すんません。今度から気を付けます。

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