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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第33回活動報告:異世界市場調査

異世界市場調査




活動報告者:宇野空響 覚得之高校二年生 自然散策部 部長




さて、ファオンに関する冒険者ギルドのトラブルは片付き、商業ギルドで約束通り小麦粉と大麦を仕入れた僕たちは家に帰り、さっそく商品開発に取り組むかと思ったが、まずは現地の商品を知らなくてはいけないので、一旦、露店へと市場調査にのりだした。

流石に6人固まって動くのは無駄なので、2人1組で露店やお店を見て回ることになった。


「よろしくお願いいたします。ヒビキ様」

「うん。よろしくね。ツーチ」


僕はツーチと一緒だ。

越郁君はファオン、勇也君はアンと一緒に見て回っている。

組んだ理由はとりあえず、僕たち異世界出身と、現地人のコンビが目的だ。

彼女たちは僕たちよりもこの世界に長くいるから、その分知っていることもあるだろうと思ってのことだ。

まあ、アンは幼いから勇也君の方はあまり実りはないかもしれないけど、元冒険者のファオンや、いいとこのお嬢様だったであろうツーチの知識を知るにはいい機会だろう。


「じゃ、色々見て回ろうか」

「はい」


ツーチは僕の声に返事をして、しかっりとメモ帳を持って調べる準備は万端でいた。

正直、僕は越郁の方がいいと言う思ったが、すんなりとグループ分けを受け入れて、こうやってしっかりとサポート体勢を整えているツーチに内心驚いていた。

いや、奴隷としてという意味なら正しいことなんだろうけど、越郁君みたいな小さい子が大好きって発言が尾を引いているのかな?

僕が意識しすぎなのか。ツーチにとっては軽い冗談のつもりだったのかもしれない。

と、そんなことはいいか。

まずは、パンだね。

このリーフロングで主食として食べられているパン。

一般的に売られているパンはどんなもので、どんな価格なのか調べよう。

まだお昼前なので、露店には人があふれている。


「しかし、こうも露店が多いと、店を構える方はちゃんと儲かってるのかな?」


こっちに人を獲られているようにいるように見える。

そんな僕のつぶやきにツーチが返事をしてくれる。


「おそらくですが、こういう露店は供給が安定しませんので、見物も兼ねている人や、掘り出し物で安いものを探している人が主だと思います」

「ああ、なるほど。確かに、露店はそういう側面があるよね。となると、小麦粉とかの主食の材料とかは、普通にお店で扱っているのか」

「はい。そうだと思います。パンなどを露店で売るわけにもいきませんから。焼き固めたものだけになるでしょう」


ふむふむ。

ツーチのいうように、出来立てが売りのパンはこういう露店には向いていないよね。

それで思い出したけど、このリーフロングに限ってなのか、この異世界の文化なのかはよく分からないけど、乾パンみたいな、焼き固めたパンというのはすでに長旅のお供という形になっていて、普通の食卓、というか、リーフロングお城では地球のに比べると幾分荒いが、僕たちでも十分食べてパンだと思える代物だった。

ものすごく硬いパンとかをイメージしてたんだけど、まあいい誤算だった。

それでもフランスパンみたいな固めのパンが主流だけどね。


「となると、パンを調べるにはパン屋かな?」

「はい。そうなると思います。ですが、露店にはよその町の品物から、果ては隣国の物までありますので、見て損はないかと」

「なるほどね。ここら辺の物流を調べるにはもってこいなわけか」


ツーチに言われて納得。

露店が盛り上がっているのは、よその町からの旅商人目当てであって、自分の町の品物は店で買えばいいという単純な理由。

そして、それで理解したけど、この世界の物流っていうのは、主にこの旅商人が担っているんだ。

町から町への取引というのは確かにあるけど、それは決められた間での決められた品物だけの物流であり、さも当然のように僕たちに聞こえるが、本当に決められたモノだけなのだ。

現代の地球のように、面白そうだから、これから需要が出てくるだろうという予測を立ててというのを行政が行うほど余裕がないし、そのような大規模な商売を行える商人がいないのだ。

この世界は、基本的な商人を守るような法整備はもちろん、魔物や盗賊が普通に存在している。

それにより、商売で稼ぐというのは、地球よりもさらにリスキーなのだ。

支店を出すなどというのは、本当に大商人だからこそできることであって、普通の商人はこうやって露店で色々な町や村をめぐりならがら、仕入れと販売をやっていくしかない。

襲われればそれで終わり。

いや、まあ、地球の商売も一発という面はあるから、あまり変わらないのかもしれないけど。盗賊とかの被害はなさそうだけどね。

それらのことから、露店にあるのは珍しいものであれば遠方の物から、よく見かけるものであれば近いところからの品物だというのがわかるのだ。


「ふむふむ。値段は大体鉄貨5枚前後ってところだね」

「はい。一般人相手ですから露店は」

「それもそうか」


露店って言うのは主に一般人が相手であって、お偉いとかお金持ちはお店を利用する。

身の危険があるっていうのもあるだろうけど、お祭りみたいな伝統という露店でもないから、ここに来る意味はあまりないだろうね。


あと、気が付いたのが、露店の食べ物売りというのがほぼ存在しない。

食べ物というのは、食材という意味ではなく、文字通り食べ物を売る店の露店だ。

分かりやすくいうなら、日本でいうタコ焼きや、焼き鳥、焼きそばなどといったものだ。

もちろん、固焼きのパン、乾パンなどや、干し肉を扱っているところはあるが、出来立てというのはほとんど存在しない。

その理由も自分がその場を見て納得した。

そんな出来立てを提供できる道具が存在しないのだ。

食材を保存しておけるクーラーボックスもなければ、焼くためのコンロだって存在しない。

そこからわかると思うが、食材の確保や火を扱うことがこの町では非常に難しいのだ。

食材はまあ、なんとかなるとしても、火については、一歩間違えば火災になりかねない。

簡単な焼き売りやスープを売るにしても、それなりの場所と燃料、商品以外の料理を作る道具などモノが必要になるし、後片付けも一苦労だ。

それなら、普通にお店で売っていた方がやりやすいだろう。

あとは、よほど料理に自信があって、ここで稼いでいずれはちゃんとしたお店をというのでやっているのだろう。


「しかし、やっぱりジャガイモは安いねー」

「それはそうです。物によっては体調を崩すどころか、死に至りますから、よほど食べ物に困っていない限りは手を出しません」


この世界においても、やはりジャガイモはこういう不遇の扱いらしい。

昨日も露店で見かけたが、完全に捨て値で売られている。

5つで鉄貨1枚ときたものだ。

まあ、地球で品種改良されたものとは違い大きくもなく、小ぶりではあるが、これで約100円というのはね。

ジャガイモはどんな土地でも育つ便利な作物なんだけどな。

だが、代わりに連作障害の原因なるので、そういう意味でもあまり食べられてこなかったんだろうな。

芽や緑色の部分に毒があるというのはなかなか気が付かないらしい。

となると、これは案外いい商売のネタになりそうだ。


「よし、このジャガイモを買っていこうか」

「え? 食べるんですか!?」

「うん。このジャガイモには毒がある部分ははっきりと分かっているからね。そこさえ注意すれば美味しい食べ物だよ」


そういって、ジャガイモを買おうとすると、その話を聞いていたのか、露店のおじさんも話に加わってきた。


「なあ。嬢ちゃん。今の話は本当か? 毒の部分がわかるとか……」

「ええ。この芽の部分と緑色の部分ですね。ここが芋特有の毒が含まれている部分なんです。これを取り除いてから、調理すればいいんですよ」

「はあ。本当か?」

「証明しろというのは、誰かに食べてもらうしかないですけどね」

「まあ、そうだな。しかし、その話が本当ならジャガイモはこれから売れるかもしれないか?」

「そうですね。僕もこのジャガイモを使って料理を考えてみようかと思いますし、もっと数を安定して供給できるなら助かりますね」

「なるほどな。まあ、どうなるかわからんが、そのジャガイモをつかった料理とやらが出来たら俺にも食わせてくれ。そうすれば、しっかり作るかもしれん」


そんな話をして、ジャガイモの料理を今度持っていくという話になった。

あの人は近場の村で他の野菜と一緒にジャガイモを育てているそうで、基本的にジャガイモは貧乏人用ということで育てているらしい。

それなりに、ジャガイモにも需要はあるようだ。

まあ、世の中の人が全員裕福なわけではないから、当然の商売だね。


「いや、これで方針が決まったね」


僕は買ったジャガイモの袋を掲げながらツーチに言う。


「方針といいますと、そのジャガイモを使ったパンを作りになるおつもりで?」

「そうだよ。まあ、ちゃんと証明実験とかがいるけどね。うちの商品をたべてお腹痛くなったとか、言いがかりつけられても困るから、商業ギルドや冒険者ギルドに頼んで試食してもらおう。そこから安全性の宣伝だ」

「万が一、毒に当たったらどうするおつもりですか?」

「それはないんだけど、まあ、ほら、魔法薬の話があっただろう?」

「あ、ヒビキ様が解毒薬を調合してお渡しに?」

「そのつもりだよ。こうすれば、ちゃんと試食を手伝ってくれると思うからね」

「それならば、いけますね」


で、そのあと露店をめぐってみたが、特にこれといったものはなく、近場の村の特産品の網籠だったり服だったりと、そういう村の資金集めに来ている人がほとんどだった。

ちゃんとした商人は基本的に店舗に向かうよね。

まあ、流れの商人とかは、隣国の服とかを扱っていたが、値段は安くて銅貨で高いものは銀貨数枚とかなり値が張る。

露店で数万円というのはちょっと地球ではそうそうお目にかかれないだろう。


「しかし、このリーフロングは辺境なんだろう? それにしては結構、商人が来てるんだね」

「それは、恐らく不帰の森の素材を欲してだと思います」

「ああ、貴重な素材が多いんだっけ?」

「はい。というか、不帰の森を防ぐためのリーフロングですから、隣国も存在しませんし」

「え? 隣国とは不帰の森を挟んで存在するって聞いてるけど」

「ありますが、向こうも不帰の森の抑えでこちらに攻め込むようなことはありませんから。ですから、魔物以外ではこの近辺は平穏なのです」

「ある意味で、不帰の森が安全保障になっているわけか」

「はい。ですので、結構遠方から来られる商人もいると聞いています」


なかなか特殊な場所なんだね。リーフロングっていうのは。

そこら辺の話しも詳しくガーナン辺境伯様に聞いてみれば、いい報告書になるかもしれない。

この異世界の情勢なんかわからないからね。

と、そこはいいとして、僕もそろそろツーチに質問してみるかな。


「いやー。ツーチは本当に物知りだね。どこかの商家の娘さんだったりしたのかい?」

「……」


僕の質問に答えることなく沈黙するツーチ。

ふむ。やっぱり、あんまり聞かれたくないことなのかな?

でもねー。ツーチのこの物知り具合は僕たちにとってはありがたいけど、逆に脅威でもあるんだよね。

下手をすればファオンの時とはくらべものにならないぐらいの話しになる可能性もあるから、なるべき素性と奴隷になった経緯は聞いておきたい。


「……ツーチ。賢い君ならわかっているとおもうけど、君の素性が分からないと、ファオンのようなトラブルに見舞われる可能性がある。なにより、僕たちはそれなりに異常な集団だからね。うかつにそういうことに巻き込まれるのは避けたいんだ。大丈夫。話してくれればいいだけだから、特に追い出したりはしないよ」

「……損得勘定ができるのであれば、所持しているだけで問題があるのであれば、追い出すべきです」

「おや? ツーチはそんな立場の人なのかい?」

「……」


私の切り返しにすぐに口を閉ざしてしまうツーチ。

ふーむ。やっぱり何か問題があって奴隷になった子なんだね。

いや、誰しも問題がなくて奴隷になることはないだろうけど。

でもここで、違いますと言えないのが、ツーチのいいところでもありわるいところでもあるんだろうね。


「まあ、今すぐってわけじゃないよ。ツーチが僕たちを信用できると思った時に言ってくれればいい。案外、知らないうちに問題が解決していたりもするかもしれないからね」

「……よいのですか? このような不忠者を傍に置いて」

「何をもって不忠とするのかって話にもなるけどね。ツーチは僕たちを害するために黙っているのかい?」

「そのようなことはありません!!」


今度は僕の言葉を力強く否定する。

ちょっと驚いた。

ツーチも僕が驚いたのが分かったのか、すぐに頭を下げる。


「……失礼しました。ですが、私が奴隷に落ちてから一番の幸運と呼べるのはヒビキ様、コイク様、ユーヤ様に買われたことです。ですから、私からヒビキ様たちを害するようなことは決してございません」

「あ、うん」


とりあえず勢いに圧されて生返事をする。


「私が経緯や素性を話さないのは、優しぎるヒビキ様たちだからこそです。今日のファオンへの対応を見て確信いたしました。私が事情を話せばきっと、何とかしようと動いてしまわれるでしょう。特に、コイク様は……」

「あー、そうだろうね」


越郁君はやりかねないね。

まあ、それはそれでこっちも色々報告書に書くことが増えるからいいんだろうけどさ。

でも、今やられると店舗開業とかの準備に追われているから、大変になるのは目に見えている。


「よし。ツーチ。越郁君には話さないようにね。話す気になったら僕か勇也君に言うといい。君の言う通り、越郁君だとちょっと暴走するかもしれないからね」


僕がそう口に人差し指を当てて言うと、ツーチは驚いた顔をした後に、微笑んで……。


「ヒビキ様。それはコイク様に悪いのでは?」

「でもねー。何かトラブルがあると、後片付けとか大変だからね」

「なるほど。今はその時ではないということですね」

「そういうこと。じゃ、今は今の仕事を頑張ろう。あとはパン屋だね」

「はい」


そんな感じで、僕とツーチの市場調査は進んでいくのであった。




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