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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第32回活動報告:知らないことばかり

知らないことばかり




活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員




「まったく。奴隷から解放されたというのに、また奴隷になりたがるなんて、ファオンの神経がわかりません」

「そうかな? わたしはふわふわのベッドとか、美味しいご飯はうれしい」

「そうだよなアン。それが大事だよな。コイク様たちの下なら幸せなんだよ」


そうやって、また3人集まってわいわい話している姿を見ると、これでよかったと思えるよね。

流石に私も、ファオンを再度奴隷にって言うのは抵抗があったんだよ。

でもさ、騙されたファオンは多少お金を持って冒険者に戻ってもまた同じようなことが起こりそうだと思ったんだよね。

そうなるとこっちも寝覚めが悪いし、また買い戻す羽目になれば無駄でしかない。

本人の希望なんだからと、自分を納得させてファオンをまた奴隷として受け入れた。


……むむ。私ってひどい女?


そんなことを考えていると、不意にポンと頭に手を置かれる。


「大丈夫。越郁は別にファオンを使いつぶそうってわけじゃないんだろう? それなら、奴隷と名のついた現代社会の契約社員ってところじゃないか?」

「ゆーや」

「そうそう。奴隷を買ったというなら、昨日3人を一緒に買った僕も同罪だしね。大事にすればいいんだよ。僕たちが主人、社長でよかったと思わせればいいんだ。果てはそのまま社員にでもなってもらえばいい」

「せんぱい」


そうか。

そういう考え方でいいのか。

ファオンをまた奴隷にしてしまったという罪悪感があるけど、考え方によっては、奴隷は契約社員みたいなものだよね。

こういう所からじわじわと奴隷を引き入れて行けばいいわけか。

里中せんせいの言っていた奴隷戦略ってやつの足掛かりなわけだ。


「よし。なら、ちゃんと稼いで、3人を食わせてやらないとね」

「そうだな」

「うん。頑張ってお店を盛り上げよう。そうすれば里中先生の訓練についていけなくても、こっちで雇ってあげられるからね」

「あ、そういえば、そうだった」


言われて思い出したけど、この3人。里中せんせいと会わせる可能性があるんだった。

うむ。あの訓練で心折れて逃げ出さないように、ちゃんと私たちが心をつなぎとめておかないといけないのか。

……ファオンとツーチはいいとして、アンはまだ小さいからなー。ごく一部は私を大きく上回っているけど。


「まあ、そこは今すぐってわけじゃないですし、まずは安定した生活を目指しましょう。そうしないと訓練も何もないですから」

「そうだね。まずはここでしっかり生活できる土台を作ろう」

「じゃ、予定通り、商業ギルドに荷物の受け取りにいこー!!」

「「「おー」」」


6人で仲良くそう声を上げていると、モッサのじいちゃんが話に加わってきた。


「盛り上がっているところすまないが、ちょっと仕事の話をいいかのう?」

「仕事ですか? さっきの冒険者たちのことではなくて?」

「ああ、別件だ。君たちにとって来てもらいたいものがある」

「僕たち指名ってことは、不帰の森がらみですか?」


せんぱいがそういうと、モッサのじいちゃんはうなずいて横にいるラナさんに視線を向けると、ラナさんが一歩前に出て説明を始めた。


「ヒビキ様のいうように、今回の仕事は不帰の森で生えている、特殊な薬草を持ち帰って欲しいという依頼です」

「特殊な薬草というと、だれか重病でも?」

「いえ、冒険者ギルドの方で中級回復薬を多く確保したいのです。商業ギルドでその薬草を頼むと高くつきますので」

「ああ、別の場所でも取れる薬草だけど、安上がりで揃えて、冒険者に配りたいってことかな?」


私がそういうと、ラナさんがうなずく。


「これは常時依頼としてコイク様たちに出しておきますので、不帰の森に仕事やマンナ様の報告などで行ったさいには探してもらえると嬉しいです」

「いや、ラナ。そういういい方はよくないのう。回復薬のあるなしは命に関わるからな、不帰の森に行くなら、探してきてくれ。頼む」


モッサのじいちゃんがそういって頭を下げる。


「まあ、急ぎじゃないなら大丈夫だけど」

「ああ、特に急ぐわけでもない。仕事のついでに覚えていてほしいってやつじゃ。もうすぐ、この町お抱えの魔法薬師のばあさんが引退じゃからな。せめて材料だけでもこっちで揃えておかなければ、中級回復薬の値段が跳ね上がってしまうからのう」


なるほど。

そういう事情なら仕方ないね。


「えっと、せんぱい。そのたぐいの薬草ってあるんじゃない? とりあえず、今ある分は渡してあげたら?」

「んー。それがいいかもね。とりあえず、どんなものか教えてもらわないとね。ラナさんどんな草なんですか?」

「あ、はい。こちらにどうぞ、確か在庫がございますので……」


そのあとは、モッサのじいちゃんと別れて、ラナさんにその薬草の見本を見せてもらったんだけど……。


ドザッ。ドザッ。


結果、お金がパンパンに入った袋を二つも渡された。


「すげー。中級どころか、上級回復薬の薬草まで生えてるのか、不帰の森って」


そんな風にお金に驚くことなく、せんぱいが取り出した素材に驚いていたのはファオンだった。

私やゆーや、そしてせんぱいは、なんで不帰の森の中でどこでも生えているような草がこんなに高値で取引されるのかが理解できなかった。

ああ、そういえば、不帰の森って裏ダンジョンみたいな場所だっけ?

そうなると貴重な材料が落ちていても不思議じゃないのかな?


「でもせんぱい。そんなにすごい薬草って鑑定でてました?」

「うーん。いや、魔法薬に使うために適した草で、魔力含有率が高いとかで、その中に上質のとか、高品質のとか、だったからこの薬草自体の価値は分からなかったなー。名前はラナさんから教えてもらった通りなんだけど……。あれだね。人にとっての価値観は鑑定には載ってないみたいだね。まあ、当然だね。移り変わるからね」

「あー、表記が変わるってことは、だれか鑑定のスキルの監視者がいて、随時調整しているからってことになりますしね」

「うん。それに、地域によって適正価格なんて違ってくるからね。鑑定はあくまでもそのモノの性質を調べるためのスキルみたいだね」


どっかのゲームみたいに、適正価格とかズバッとでてくる便利スキルではないのか。

いや、ちゃんと性質とか品質とかはでているから、便利といっても間違いではないよね。

求めすぎというやつか。


「もっと、この世界の常識を調べないと、こういう価値観はわからないね」

「結構大変ですね。毎日、露店やお店に顔を出して相場を覚えないといけないですね」

「あー。それってさ、リーフロングの市場価格みたいなのを調査するってことだよね? 案外、報告書に使える?」


私がそういうと、2人ともキョトンとした表情になるが、すぐにうなずく。


「つかえるね」

「つかる。そういう情報は十分報告に書いて問題ないというか、僕たちの方でも書き留めておく必要がある」

「ああ、そっか。商売しようって話だしね」


報告だけじゃなくて、私たちが商売するには大事な情報だよね。

まとめて置くのは大事なことになる。

そんなことを話していると、3人でわいわいやっていたファオンが私たちの話に加わってきた。


「なあ、しじょうかかくを調査ってどういうことなんだ? コイク様?」

「ん。えーとね。簡単にいうと、この町の物の値段を調べるんだよ。それを書類に書き留めておくんだ」

「書き留めておくとどうなるんだ?」

「そうだねー。ファオンは、冒険者をしてたから、町に着いたらどこが安いとか高いとか比べて買わない? というか前の町とか村に比べてこれが高いとか安いとかあるでしょ?」

「あるな」

「それを、記憶だけじゃなくて、記録に残して商売で使うんだよ。例えば、小麦の安いところから高いところにもっていって売れば差額分がもうけになるでしょ?」

「あー、だから町の売っている物の値段を記録を残して、他の町や村に行ったときに売ろうってことか」

「そうそう。ファオンだけじゃなくてツーチやアンも協力して値段を調べてきてくれると助かるな」

「お任せくださいコイク様」

「まかせて、コイクさま」


そんな話をしている間に、商業ギルドに到着したので、一旦話は終了。

昨日約束した小麦粉と大麦を受け取りにいく。

朝の卸売は終わっているみたいで、人は昨日と同じく静かだ。

卸売値とかも調べないといけないから、近々朝に行って調べないといけないんだろうな。

まあ、そこはいいかまずは小麦粉と。


「ん? そういえば、どうやって小麦粉ってもらうの?」

「詳しくは聞いていないね」

「受付に聞いて、一旦ゼイルさんに話を通した方がいいだろう」

「そうだね。すいませーん。おねーさん、いいですか?」


私はいいながら、受付に座っているおねーさんに声をかける。


「あ、コイク様。それに皆様。お待ちしておりました」

「あれ? 私たちのこと知ってる?」

「ええ。昨日、ダザン様の話しを伺っていたのが私です」

「ああ、昨日の。コイクといいます。お世話になりました。そして、これからもよろしくお願いします」


私はそういって、ちゃんと挨拶をする。

すると、受付のお姉さんは少し驚いた顔をしたけど、すぐに丁寧にあいさつを返してくれる。


「私は受付のノーアと申します。これからもよろしくお願いいたします」

「で、ノーアさんお待ちしてましたっていうと……」

「はい。昨日のギルド長とのお話は伺っております。コイク様たちが到着次第、ギルド長室へお通しするように言われております。どうぞ、こちらに」

「あ、どうも」


ノーアさんに案内されて、昨日と同じように商業ギルドのギルド長室へと入る。

そこには、ゼイルさんがいて、書類とにらめっこをしていた。


「やっほー。ゼイルさん」

「来たな。コイク殿たち」


声をかけると、すぐに顔を上げて、書類を横に置く。


「仕事の邪魔だった?」

「いや。通常業務だから気にしないでくれ。コイク殿たちとの交渉の方が大事だ」


ああ、そうか。

なんとなく、まだ私は知り合いのじいちゃんに会いにきたような気分だけど、ゼイルさんや、モッサのじいちゃんとかから見れば、仕事相手なんだよね。

ここら辺の感覚は直さないとね。

私にとってもこれは仕事なんだから。

ファオンたちも食べさせていかないといけないんだから、そこらへんは気合いを入れなおさないと。

うむ。社会人はすごいね。

両親とか、こういう責任を背負って生きているんだと実感できた。

そう思っていると、ゼイルさんはすぐに仕事の話を始める。


「で、小麦粉と大麦だったな」


これが、ビジネスマンってやつなんだろうな。


「うん。でも、最初は色々実験してみるから、そこまで多くはいらないよ」

「あー、普通に小麦粉を売る前に大麦で料理を作ってみるとか言ってたな。小麦粉の方も何か作ってみるのか?」

「うーん。何か特製のパンでも作ってみようかなーって。ほら、私たちは白い小麦粉あるからさ」

「なるほどな。あの高品質の小麦粉を単体で売り出すのはあれだが、あの小麦粉を使ってパンなどを作って売るのは問題ないな。建前上は商業ギルドから仕入れているといえば、やっかみもないだろう」


色々実験してから、売り出す。

それが大事だよね。

残念だけど、調べてみた結果、白い小麦粉はこの文明レベルじゃ精製するのは厳しいので断念した。

地球の現代の小麦粉はロール製法とかいう機械をガンガンつかってつくるものだから、こっちでやるのは今の段階じゃ無理だった。

だから、パンだけでもということになった。


「うちのお店の目玉商品をつくるよ」

「そうだな。そうなれば、客もあつまるだろう。で、どれぐらい欲しい?」

「うーん。とりあえず、6人が一週間使うぐらいかな? 足らなくなったらまた買いにくるから」

「わかった。6人が使う一週間分だな。ノーア。聞いていたな。用意しろ」

「はい。わかりました」


ノーアさんはそういって、部屋を出て行く。


「しかし、真面目だな。商品を作ってから店を開くか。お金に余裕があればこそだな」

「いや。お金に余裕がないと商売なんてできないでしょう? 仕入れとかもできないし」

「それをわかっていない奴も多い。一発を狙って何も調べず、ただ売れるだろうというわけのわからん希望的予測を立てて、金を借りてだ。結果、借金まみれで奴隷というのはよくある」

「うわー。そんなのが多いんだ」


なんで、そんな商売が成功すると思うのか不思議だ。


「まあ、学がないからな。数字の計算もそこまでできないのに商売をしているのも多くいる。露店にいったとき、お金の計算が遅いと思っただろう?」

「まあね」


そういう教育制度がないから、商売に対しての知識がないのも当然だね。

やっぱり、現代の日本の教育制度っていうのはすごいんだな。

こういう所で実感するよ。

そんな雑談をしている間に、ノーアさんが小麦粉と大麦を用意してくれた。

6人分を一週間となると結構量があった。

これを普通に運ぶなら重くて面倒だったろうけど、こっちにはアイテムボックスという魔術があるのだよ。

ということで、ささっとアイテムボックスの中に放り込む。


「便利なものだな。アイテム袋ではなく、魔術によりアイテム袋を再現しているあたり、マンナ様の弟子だというのがわかる。並みの魔術師ではないな」


そんな風に関心しているゼイルさんをよそに、小麦粉を回収した私は振り返る。


「お金はいくら?」

「あー、今回はいい。昨日、見本でもらったものがすごかったからな。あれで十分、半年の小麦粉をタダでくれてもおつりがくる」

「あー、やっぱりそれだけ、出まわったらまずいものがおおかった?」

「多かったな。他の物があるならまずは私に見せてくれ」

「うん。そうするよ。さて、じゃあ、そろそろ帰って商品開発頑張るね」

「ああ、頑張ってくれ」


ということで、私たちは無事に商業ギルドで小麦粉と大麦を手に入れて、家にもどるのであった。

さて、まずはパンかな?

あれ? かまどとかどうしよう?

いまさら、そんなことを考えるのであった。








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