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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第30回活動報告:冒険者ギルド再び

第30回活動報告:冒険者ギルド再び




活動報告者:海川越郁 覚得之高校一年生 自然散策部 部員




「……なんか、飛ばされた気がする」

「ん? どうした越郁?」

「いや、なんでもない」


なんとなく、身長が低くて見えずに点呼を飛ばされたような気分になった。

まあ、そこはいいか。

あのあと、3人は夜も深いので部屋で休んでもらったのだが、私たちがそうもいかない。

毎日の報告書を書かねばならない。

これをこなさなければ、異世界調査員として認められないのだ。

有事のことがあれば遅れてもいいのだけれど、必ず報告書という日報は書いておかないといけない。

ということで、私たちは3人が休んだのを確認して、今日の報告書を書いていた。

今日は色々あったからね。

家の掃除や家具設置は無事におわって、その間に奴隷の3人を引き取って、商業ギルドに行って色々手続き?して、商売の方向性を決めて……うわー、色々ありすぎたー。


「はい。2人ともコーヒーだよ」

「あ、どうも」

「……ありがとー、せんぱい」

「あはは、どうやら越郁君は報告書が進んでないみたいだね」


飲み物を持ってきてくれたせんぱいは、報告書が進んでいない私を見て苦笑いしていた。


「うー、今日は色々ありましたから、書かないわけにはいかないものがおおすぎて……」

「そうだね。今日も色々あったね。特に越郁君は」


そうなんだよ。

奴隷を雇ったというか、引き取ったのは私の一存だし、ここにはゆーやとせんぱいの意思は皆無だから、任せるわけにはいかない。

代わりに、3人の初日の人物評価は2人で書いてくれているんだけどね。


「前みたいに冒険者ギルドでの腕試しとかなら業務上必要だったでいいんだけど、あの3人を選んだ理由って、どうしたらいいのかなー?」


流石にケモミミとおっぱいにつられましたとかダメだよねー。

それぐらいは私もよくわかる。


「いやー、僕は現場を見ていないしな。実際どうしてあの3人だったんだ?」

「あー、ファオンはもめてたからなんだけど……ツーチとアンは……」

「そのあと商人さんのおすすめで買ったね。まあ、渡りに船だったし、そこまで悪い奴隷商人にも見えなかったからね。実際、今のところツーチにアンは素直でいい子にみえるけどね。勇也君は3人はどう見えたかい?」

「僕も悪い子には見えませんでしたね。って、これだと僕と先輩の3人の人物評価になってませんか?」

「ああ、そういえば、越郁君がなぜ3人の奴隷を雇い入れたのかっていきさつだったね。んー、さっきの話のまんまでいいんじゃないかな?」

「え? 里中先生に怒られたりしません? だって、ノリで3人を引き取った感じですよ?」

「まあ、ノリも運命と思えばいいからね。というか、そのほかに説明のしようがないよ」

「そうですよねー」

「里中先生に報告するときは、僕も一緒に説明するから、奴隷購入の件はいいとして、問題はツーチだね」

「ツーチ?」


なにが問題なんだろう?

いや、ちょっと幼女趣味なのはいただけないけど、ちゃんとやめてっていえばやめてくれるし、結構物知りだし、礼儀正しい。

あの3人の中では優秀だと思うけど。


「そう、ツーチだ。彼女は奴隷というには色々知りすぎているね」

「どっかのお嬢様だったんじゃない?」

「越郁君のいう通り、僕もそう思う。だがそうなると、ちゃんと話を聞いておかないと面倒なことになるかもしれない」

「どういうこと?」


ツーチが元お嬢様だったらなにか問題でもあるのかな?


「今のところは問題ないけど、ちゃんとした理由で奴隷になるようなお嬢様はほとんどいないだろうからね」

「んん? せんぱいの言っていることがよくわからないよ」

「普通に考えて、奴隷になるっていうのは、よほど食い詰めた人とか借金をした人とか、ファオンが言ったように、騙された人がなるような立場だね。あとは、攻め落とされた国の人たちとか、それはわかるよね?」

「ああ、うん。わかるけど」

「つまり、お嬢様であったかもしれないツーチは、食い詰めたとか借金の末に売られたっていうのはほとんどありえないわけだよ」


ここまで言われて、ようやくピンときた。

定番のアレですな。


「なるほど、ツーチが某国のお嬢様とかで売り払われたなら、いつかその関係で厄介事が起こるかもしれないってこと?」

「その可能性を考慮しないといけないね。下手をするとツーチの関係で周りに被害が及ぶ可能性もある」

「ふむふむ。私たちはどうにでもなるかもしれないけど、ツーチの関係で情報収集が滞ったり、関係者が危険にさらされる可能性があるってやつだね」

「そういうことだよ。逆にファオンやアンはそういう心配はない。だけど、これは悪いことでもない。ツーチがこっちの礼儀や常識に詳しいならこっちとしても助かるし、本当にお嬢様ならその関係を逆に利用することもできるからね」

「そっか、だから先に事情を知っておくことが重要なわけだ」


先に知っておけばこっちは驚いたりしなくていいし、逆にそのことを利用できるだろう。

ツーチも隠し事をしないですむし、無茶な行動に出るようなことはないだろう。

これはツーチを守るためでもあるね。


「じゃ、ツーチの人物評価は先輩がまとめて、僕がファオンとアンを担当します。越郁は先輩がいったようにとりあえず、3人を買ったいきさつを書くしかないね。フォローは僕もするからさ」

「うん。ありがと。じゃ、さっさと書いて報告書だして、明日にそなえよー」

「「おー」」



どう報告書を書くかを話し合って決めたおかげで、それからは特に詰まることなく、本日の報告書を書き上げ、里中先生に渡しに行くことになった。


「はい。今日もお疲れ様です。で、なんでまた3人一緒なんですか? 報告書の受け渡しですよね? まあ、中で話を聞きましょう」


里中先生は3人一緒に来た私たちに首を傾げつつ、家の中に迎え入れてくれて、とりあえず、私たちは報告書を呼んでくれと言って報告書を渡した。


「ふむふむ。……なるほど。昨日の今日で奴隷を購入とは思い切ったことを、と思いますが、まあ、このぐらいの理由がないと買うのには抵抗がありますよね」


と、報告書の内容を見てあっさり納得してくれた。

てっきり、軽率過ぎとかお叱りがあるかと思ってたんだけど。


「で、その奴隷の3人の今のところの人物評価ですね」


そういって次はゆーやとせんぱいが書いた3人の報告書をパッと流し見ただけですぐに顔を上げた。


「初日でわかることなんてたかが知れてますからね。これから大変だと思いますが頑張ってくださいね。見込みがあるようでしたら、私が指導しますから」


そうりゃそうだよね。

一目見て初対面の人の善し悪しがわかれば誰も苦労はしないか。

こうして、悩んだ里中先生への報告書は特に問題なく渡し終わり、私たちはそのまま家に戻って、ぐっすり寝た。



翌日、予定よりも簡単に報告が終わったおかげで、すんなり寝れた私は寝坊することなく、朝起きることができた。


「二度寝したい」

「あきらめろ。冒険者ギルドにファオンのことを説明しないといけないんだから」


が、私にとってはあまりいいことではなかった。

ささっと朝食をすませたら、すぐに冒険者ギルドに出向くことになった。

ファオンが嵌められたという件だ。

悪質な冒険者が同じ町にいるのは流石に私としても勘弁してほしいから、こうしてちゃんとゆーやとせんぱいについていっている。


「でもさ、ファオンはともかく、ツーチやアンも連れて行く?」

「越郁君。顔見せも兼ねているって言っただろう? 悪質な冒険者がいるならなおさらしておかないとね」

「ああ、そういえばそんなこといってたね」


そうか、ツーチやアンの安全確保のためでもあったんだ。

だめだ。

いつもよりかなり早い時間に起きているせいか、すんなり起きたわりには、体が二度寝しようぜと言っていて、頭があまり働かない。


「コイク。なんかふらふらしてないか?」

「あの、コイク様。大丈夫ですか?」

「だいじょうぶ?」

「あ、うん。ただ眠いだけ」


奴隷3人にも心配されるが、どうにも頭に入ってこない。

昨日変に里中先生にだす報告書の為に頭使ったせいかなー?

そんなことを考えていると、冒険者ギルドに着いたのか、結構騒がしい。


「朝一に行くべきかと思ったけど、結構人が多いですね」

「そういえば、朝一は仕事を受注する冒険者が多いって言ってたね。これは先に商業ギルドで小麦粉とかを貰ってくるべきかな?」


ゆーやと先輩はそんなことを話していたんだけど、あまり話を聞いていない私は立ち止まることなく、人の多い冒険者ギルドへと迷うことなく足を進めていく。


「越郁、待て」

「どうしたんだろうね。わざわざ人混みに入っていくなんて」


いや、何も考えてないだけ。

気が付いた時には、周りが汗臭いおっさんばかりになってた。

その強烈な臭いのおかげで一気に覚醒して、思わず叫んだ。


「くっさ!!」


声が聞こえたのか、一斉に汗臭いおっさん冒険者たちが私たちのことを見る。

うん。

正直すまんかった。

お風呂とかないから、これぐらいの臭いがデフォルトだよね。

これからモッサギルド長と話す予定もあるから、無駄なトラブルは避けたいので普通に謝ってしまおうと思っていると、一組の冒険者の集団が声を上げる。


「あ、ファオン!?」

「は? あ、ほんとだ。おい!! どういうことだ!? ちゃんと後始末したんじゃないのかよ!!」

「いや、確かに売り払った。金は分けただろう」


そんな馬鹿なことをいう3人の冒険者たちがいた。

……なに? お約束?

とりあえず、名前を呼ばれた本人を見て見ると……。


「お前らっ!!」


うん。

怒ってるね。

いまにも飛び掛からん勢いだ。

だけど、それをさせるわけにはいかない。


「ファオン。ダメだよ」

「うぐっ!!」


奴隷の契約の魔術のおかげでファオンは飛びかかることなくその場で硬直する。

いや、奴隷契約とかどうかなーと思っていたけど、こうやって術的に動きを止められるから、案外便利? 暴走とかを抑えるにはかなりいいかも。


「コ、コイク。あいつらが……」


そんなことを考えている間に、ファオンは恨み憎しみを込めて私にそうつぶやく。


「わかった。あいつらがファオンの言ってたやつらって言うのはその言動からよくわかる。でも、ここで飛び掛かったらだめだ。他の人に迷惑だからね」

「でも……」

「まずは、受付で話を聞いてみよう」


そう、そこからだ。

あの3人組がファオンを嵌めて売り払ったとしても、正規手続きで売ってたら何も言えない。

まあ、何が正規の手続きかはわからないけど、そのことも含めて受付で聞けばわかるだろう。

幸い、私たちを騙そうなどと思う人はこの冒険者ギルドの職員にはいないだろうからね。


「……わかった」

「よし。じゃあ、あれは無視していこう。みんなもいいね」


私が確認を取ると、ゆーや、せんぱいもちろん、ツーチやアンもちゃんと頷いている。

さて、あの連中はどう動くのかなー。

そう思いつつ、あの連中を無視をして受付の所へ進んでいこうとすると……。


「ちょっとまて!!」


なんか後ろから声が聞こえたけど、名前を呼ばれたわけじゃないから止まらない。

ファオンはピクンと反応したけど、手を引っ張って連れて行く。


「おい!! 聞こえてるんだろう!!」


無視。

とりあえず、受付に行って話を聞くのが先。


「あ、ラナさん」

「コイク様? お仕事でもお探しで?」 


ちょうどいいことに向かった受付にはラナさんがいた。

私たちが冒険者登録をしたときに受付をしてくれたお姉さんだ。


「でも、しばらくはお店を開く準備で忙しいと聞いていましたが?」


小首をかしげる動作は小動物を思わせて可愛い。

うむ。定番の受付嬢といやつだね。

と、そこはあとでだ。

今はファオンのこと。


「うん。それで間違いじゃないんだけど、そのお店の店員をさ奴隷で見繕っていたんだけど」

「はあ、奴隷ですか……」


そしてラナさんは私からゆーや、せんぱいと視線を変えて、ファオンで止まる。


「あれ? あなたはファオンさんですよね?」

「あ、ああ。覚えてくれてたんだな」

「いえ、覚えているというよりも、お亡くなりになったとパーティーの方からお聞きしました……」

「おい!! 待てって言ってるだろう!!」


ラナさんが話している途中で、ナイスタイミングで当事者が参加してきた。


「この人がそのファオンのパーティーメンバー?」

「はい。そのはずですが?」

「とりあえず、このファオンは私が奴隷として売られていたのを買ったんだよ」

「奴隷として売られていたですか!? どういうことですか、ファオンさんは死亡したと報告を受けましたけど」

「あ、いや、それは……」


後ろから追いかけてきた男はしどろもどろになる。

さらに後ろから他の2人も追いかけてくる。

さて、当事者はそろったようだし、こっちも話を進めようかな。


「ファオン曰く、この3人に嵌められて売られたって言ってるんだけど、どうなのかなーって思って話を聞きに来ました」


私がのんきにここへ来た理由をいうと、状況を察したラナさんの目が鋭くなり、3人を見つめる。


「……わかりました。すみません。そちらの3人もお待ちいただけますね? やましいことがなければ、逃げる必要はないはずですから」


そんな言葉をラナさんが言っている間に、分かりやすい3人はすぐに外へと駆け出す。

とっさに私が捕まえようと思ったけど、他の冒険者に取り押さえられていた。


「どういうこと?」

「彼らが犯罪者の場合、報奨金がでますからね。あそこまでわかりやすい行動をしたのですから」

「ああ、なるほど」


私が納得して捕まえている冒険者を見るとサムズアップをしてきた。


「おっさんナイス!!」

「おう!!」


私もサムズアップを返すといい返事をしてくれた。

うん。

この3人の冒険者はクソかもしれないけど、他の冒険者たちはこのおっさんみたいに気のいい人達の方が多そうだ。

と、結構騒動の渦中のはずなのにそんな感想を持った。









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