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自然散策部ではなく異世界調査部だったりします  作者: 雪だるま弐式


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第28回活動報告:お店の方向性と晩御飯

お店の方向性と晩御飯




活動報告者:山谷勇也 覚得之高校一年生 自然散策部 部員




本日僕たちは、午前中、家の掃除と家具の配置を終えて、昼食を済ませたあと商業ギルドに顔を出して、色々話を聞こうと思っていたのだが、思わぬ越郁の行動で日本から持ち込んだ、こちらで売れるかも?と思ったものをゼイルギルド長に見せることになったのだが。


「……これほどあるとはな」

「いやー、思ったよりもあったね」


なはは、と笑いながら、ギルド長の部屋に広がる見本の数々。

一般的なものとしては、小麦粉、塩、胡椒などといった長期保存が可能な食料品や香辛料類。

ちょっと専門的なものとしては、紙、ペン、インク、ハサミなど事務用品系。

希少価値の高いものとしては、刀剣、香水、宝石、貴金属などの嗜好品系。

そして最後に、この異世界で先輩が作った魔法薬品系。


料理なども考えたのだけど、そうなるとお店につきっきりになるので今回はやめておく。

将来的には誰かに教えて、お店を出してもらえるとこっちでも地球のものが食べられるかなという野望はあるので、やらないというわけではない。


広げる見本にまとまりがないのは、何の需要があるかわからないので、とりあえず持ち込めそうなものを持ってきただけだ。

基本的には商店は情報収集の為に開くので何でも屋でもやかったのだけど、思ったよりもいい場所をもらったので、真面目に商売をしないと怪しまれると思い、どれかに絞るためにここに来たわけだ。

まあ、明らかにこの時代にとってはオーパーツの物もあったのだけど、越郁が会話の末、全部先生の教えのおかげということになって見せることになった。


で、それらは数日かかるかと思ったけど、ゼイルギルド長の理解力が高くて日が暮れる前には見本の説明を終えていた。


「……商品としては申し分ない」

「そりゃよかった」

「……申し分ないが、どれもこれも並みの技術で作られたものではない。小麦粉一つにしてもここまで真っ白で、細かいものは見たことがない。塩もそうだ。これで一般人用として安く売りだせば、町にいる他の商人が干上がるな」

「やっぱりかー」


予想通りではある。

この世界からすれば一般人向けの商品でも高品質すぎるのだ。


「そうなると、やっぱり、嗜好品系ですかね」

「そうれが無難な気がするね」


僕と先輩はゼイルギルド長の反応をみてそう話し合う。

食料品であれなのだから、事務系用品など尚のことだろう。

なら、残るは嗜好品系しかない。

一般人には売れないのは情報収集が偏ってしまう気がするが、無理に安売りして町の商人から恨みを買うつもりもない。


「まあ、まて、一般人向けで売りたかったというのは、マンナ様から色々言われたからだろう?」

「うん。そうだよ。こっちの生活とか色々情報を集めて来いって、それが経験になるってさ」


実のところ、異世界調査の仕事なんだけどな。


「ふむ。そういう事なら、我が商業ギルドが買い上げている小麦を売ってもいい。あれなら品質もここまでは無い、一般相手にはちょうどいいだろう」

「あれ? でも、それって税で保管してるものじゃないの?」

「もちろん税とは別の分だ。農家から余っている分を買い取って、商店に卸すわけだ。税の分は基本的に、ガーナン辺境伯様が、いざというときの為に保管したり、兵たちや関係者の食料になるからな」

「ふむふむ。でも、私たちに卸して他のお店とか困らないの?」

「そんな極端に買い込むわけじゃないんだろう?」

「そこまで買う予定はないけど、量って確保できているの?」

「……? ああ、そうか。コイク殿たちは不帰の森から来たんだったな」

「そうだけど?」

「反対側は大規模な麦畑だ。基本的に、うちは小麦粉は余っている。ここから他の町に輸出してるぐらいだからな」

「あー、そうなんだ」

「そうでもないと、こんな辺境の土地だと食品が高騰して平民が食えなくなるからな」

「まあ、安く売ることはしないけどな」

「えー」

「飯屋が商業ギルドより仕入れている値段より安かったら、そっちで買うことになるだろう? それは問題だ」

「あー、そこの問題か。じゃ、大麦とかないの?」

「ん? 大麦か? あれは水で混ぜてもなかなか混ざらないからな、小麦と比べると数は少ないな。あれをどう使う気だ?」

「あれ? 粒で食べることしないの?」

「粒で?」


なるほど。

ご飯のように麦飯という概念がないのかな?

そんなことを考えていると、先輩が横から話しかけてくる。


「ライスのような食べ方をするんですよ」

「ライス? ああ、水で炊くのか。でも、そのままだと味はそんなについてないと思うが?」

「そうじゃないんだよねー。あれは噛めば噛むほど味がでるんだよ。というか、あれと一緒に何かを食べるっていうのがメインになるかな」

「ふむ。ああ、虫みたいで不評だったな」


なんか聞いたことがあるな。

ライスは白い粒だから、虫の卵みたいに見えて嫌う人もいるって。

今の地球ですらそうなんだから、中世ヨーロッパのような文化レベルだとかなりそういう意見は多そうだな。


「ああ、そういう感じになるんだ。まあ、美味しいから今度やってみるよ」

「美味しくなるなら歓迎だな。大麦の使い道が増えるからありがたい。大麦は結構余っているからな、こっちは安く提供できる」

「うひゃーやったね。ということは、うちは大麦小麦粉販売店って感じかな」

「あとは、こっちの嗜好品や宝飾品の販売だが、これは店奥でこっそりやるか、それとも商業ギルドの方で売買を行うかだな。そうしないと、平民も商人も貴族も買いにくいだろう。お互いに気を遣うからな」

「あー、そっか。なら商業ギルドでこっそり売ってもらった方が、ファオンたちの安全にもなるかな」

「そうだな。店の安全にもつながるだろう。そうなると、不帰の森の素材もこっそりにした方がいいな」

「そんな一般に需要のないのは冒険者ギルドか商業ギルド専売でしょ?」

「まあな」


不帰の森の素材もある意味貴重品だから、下手に店頭で売るとトラブルの元だな。

ここはしっかり大麦、小麦粉の販売で固定したほうがいいのかもしれない。

そう考えていると、不意にゼイルギルド長が先輩の作った薬に視線を向ける。


「この回復薬事態はそちらが言う通り、取れた腕がくっつくとかの効果なら、やりすぎだが、この回復力を落とした回復薬を販売するならいいだろう」

「ほかの魔法薬販売とぶつかりませんか?」

「ぶつかるにはぶつかるのだが、魔法薬を作れる調合師のばあさんがな、そろそろ引退といっていてな。後継者もいないんで、こっちで販売してくれるなら助かるだろう」

「えーと、町に一人ということは、やはり魔法薬は高価なもので?」

「ああ。でも、競合相手が一人で、そのばあさんも引退する。この町の市場で魔法薬を売るなら独占状態だな。まあ、魔法薬を販売するには領主の許可がいるんだが、そこはコイク殿たちはすでにクリアしているだろう」


なるほど。

魔法薬だけは、競合相手がいないような状態か。


「材料となる薬草はこちらで用意して、そこの仕入れ値から価格を決めていい。えっと、その様子だと、薬を作れるのは、そっちのヒビキ殿か?」

「いえ、性能の高いものでなければ、勇也君も越郁君も作れますね。教えて問題がないのであれば、きっと使用人の3人も覚えられると思います」

「ほう。薬を作る秘術を教えてもいいのか?」

「薬が多ければ、その分助けられる人がいますからね。暴利を貪っても私たちとしてはなんにも意味はありませんから。もっとも、簡単な薬の作り方のみになりますが」

「ああ、こっちの調査があったな。そんなので金稼ぎに腐心しても意味ないか。ま、こっちとしても助かる。そっちの簡単な薬でもこっちからすれば驚きのモノだからな」


そんな感じで、売買契約と、僕たちの店の販売物が決まった。

お礼に、今日持ち込んだ見本品のいくつかをタダで譲って、恩を売っておくことにする。


「そこまで気にしなくていいんだがな。ま、もらえるものはもらっておこう。何かあれば頼るといい。情報でもなんでもできることなら協力しよう」

「ま、それはおいおいで。一番大事なのは、この子たち3人の安全だね」

「わかっている。その使用人の3人は何かあればすぐに頼るといい。コイク殿たちの店にトラブルがあるのは問題だからな」

「ありがとう」

「こら、ファオン。ありがとうございます。ゼイルギルド長」

「ありがとうございます」


3人も自分たちの安全保障につながるので、ちゃんと挨拶をしている。

とりあえず、これで商業ギルドに来た目的は達成したな。


「じゃ、そろそろ帰ろう。外も陽が暮れている」

「え? あ、本当だ。思ったより長く話しちゃったね」

「長い時間相談に乗ってくれてありがとうございます」

「いや、こっちとしても有意義な話だった。細かい商品の売買についてはまた明日だな」

「そうだねー。ゼイルさんまた明日ー」

「お世話になりました」

「失礼します」


また明日続きを話すということになって、商業ギルドを出て、家路につく。


「あ、そういえば、ダザンさん今日はありがとうねー」

「今日はお世話になりました」

「商業ギルドに着いてからはほったらかしですいません」

「いえいえ。お役に立てたようでなによりです」

「でも、これでダザンさんの案内は終わり?」

「ふむ。まだ冒険者ギルドと商業ギルドを案内しただけですからね。他に案内するところはありますが……。商業ギルドとの話を先に詰めたほうがよさそうですし、数日開けたほうがよさそうですね」

「こちらの都合で振り回してすいません」

「いえ、これが仕事ですから。何か用があれば、城の方へ訪ねていただければ、私とは連絡が取れると思いますので」

「わかりました。商業ギルドとのことが終わりましたら、またお世話になります」

「はい。遠慮されずにお気軽にどうぞ。ああ、巡回の兵士にもコイク様たちのことは伝えておきますので、何かあれば兵士にも言っていただいてかまいません」

「色々本当にありがとうね。これは、お礼に家で晩御飯も食べていく?」

「いえ。申し出はありがたいのですが、妻と子供と約束がありまして」


あ、そういえばそんな話してたな。

すっかり忘れてた。


「あー。こんな時間まで引っ張り回してごめんね。家までもうすぐだし、もうダザンさんは家族の所に行ってあげて。2人もいいよね?」

「ええ。ダザンさん、ご家族の所へ帰ってあげてください」

「僕たちは大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。では、また後日」

「うん。またねー」


そんな感じで、ダンザさんとも別れて、家に戻ってきた。

流石に、お城へこの3人を連れていくのはためらわれたというのもある。

幸い、家の準備は出来ているので、3人が寝泊まりするのに問題はない。

今日のうちに後片付けが出来てよかった。

いや、後片付けが出来ていたから、越郁も連れてきたんだろうけど。


「じゃ、晩御飯はダザンさんもいないし、適当にカップ麺とかでいいよね」

「「「かっぷめん?」」」


いや、何も考えてないのかもしれない。

この3人がいるのに晩御飯をインスタントラーメンで済ませようとか、なんて説明するつもりなんだよ。


「おい、越郁……」

「いや、案外いいかもしれない」

「先輩?」


越郁を止めようとしたら、横から先輩から逆に止められた。


「どうせ、これから僕たちのことは知っていくんだ。小出しにするよりも、さっきのぜいゼイルギルド長のやり取りもあったんだから、ここは全部マンナ様のおかげでということで一気に押し切った方がいいかもしれない」

「……そうですか?」

「こそこそ、この3人に隠れて美味しいものを食べるというのも罪悪感が湧くし、この3人のうち1人を育てるにしても、そういう肩身の狭い思いをさせないといけなくなる。というか、ある種の差別になるし、上下関係をつけることが大事な社会だ。下手すると不和の原因になりかねない。どうせ、3人とも鍛えてはみるんだろう?」

「まあ、越郁が選んできましたし、そうなるかと……」


確かに、今後隠していくのは面倒だし、様子を見てだれか1人だけを選んでもそれはそれで面倒でしかない。

僕たちにとって喜ぶべきことは、3人全員がしっかり僕たちのこと知って、フォローしてくれるようになることだ。

時間をかけたところで、3人全員が信頼できるかわからないなら、一気にやってしまった方がいいと思ったのか。


「さてと、好きな奴を選んでね」

「なんだこれ?」

「見たことのないものですね」

「なんか絵が綺麗です」


越郁はすでに3人にカップ麺を選ばせている。


「まあ、越郁君はあれだね。良くも悪くも本当に引っ張って行ってくれる。うだうだ変に考えるよりはいいかもね。僕も越郁君の行動には驚かされたけど、結果的にはいい方向に向かっていると思う。彼女は昔からあんな感じなのかい?」

「そうですね。いっつも突っ走ってる感じですけど。先輩のいうように、結果的にはいい方向ってのが多いですね」


もちろん失敗もあるから、僕がフォローに回っているんだけど。

かといって、尻込みしている僕よりはマシだろう。


「なるほど、勇者っていう立場を与えたこの女神様の判断はある意味間違っていないのかもね」

「そこだけはそうかもしれませんね」


僕に勇者とか任せられても、越郁のようにできる自信はない。


「ゆーやとせんぱいはなんにする?」


そんなことを話していると、3人は選び終わったのか、僕たちの番になっていたようだ。


「しかし、これって……」

「そうそう。戻った時に買ってきたやつだよ」

「ここまでは買ってなかったなー。僕も今度は大量に買い込んでおこう」


適当に僕たちもカップ麺を選んだあとは魔力で動くケトルを使ってお湯を沸かしつつ、3人にカップ麺の作り方を教える。


「はぁ? この中身を入れてお湯をいれるだけ? それだけ料理ができる? そんなことあると思うか、ツーチ?」

「……私は存じませんが、コイク様たちがわざわざ嘘を言う理由もございませんし、これで出来るなら料理する手間が省けていいと思います」

「それよりも、ファオンさん、ツーチさん、このケトルって道具すごいね。お湯が簡単に出来てるよ。ほら、湯気が」

「「おー」」

「便利な魔道具だな」

「私たちでも使えるのでしょうか?」

「はいはい。それよりも、お湯をいれるよ」

「「「はい」」」


そんな感じで3人は、越郁のいうことに従って、思ったよりも過剰に反応はしないで、思ったより今の状況を受け入れていた。


「あとは3分待つだけ」

「3分ってどれぐらいだ?」

「さあ? 時計は貴族様の館ぐらいにしか……」

「どのぐらいでしょう?」


あ、そうか、時計ってのは貴族だけの時代だっけ。


「あそこの丸いやつが時計だよ」

「あれ?」

「どう見るのでようか?」

「わかりません」

「ゆーや任せたー」

「勇也君の頑張ってくれ」


そういって、僕に説明を丸投げする2人。

さて、3分の間に時計の説明が終わるかな?

まあ、とりあえず簡単に、あの長針が3メモリ動いたら3分ってことを教えたらいいかな。


「おー。3分がどれだけかをさっさと教えたね。てっきり全部説明するかと思ってたけど」

「まあ、それが妥当だろう。さ、3分経ったし、いただこうか」


そんな感じで、僕たちの比較的貧しいはずのカップ麺晩御飯は始まり……。


「うわ!? うめー!!」

「こんなふんだんに香辛料を使った食べ物があるんですか……」

「すごくおいしいです!!」


と、3人には大好評であり、他のカップ麺も食べてみることになり、ちょっとしたラーメンパーティーのようになった晩御飯であった。








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