第25回活動報告:掃除とお風呂
掃除とお風呂
活動報告者:山谷勇也 覚得之高校一年生 自然散策部 部員
「2人で買い物かー大丈夫ですかね?」
僕は倉庫掃除をしつつ女性2人で買い物に行く姿を見ながら、ダザンさんに聞いていた。
「夜ならいささか心配ですが、白昼堂々露天市場で狼藉を働くものはいませんから大丈夫ですよ。兵の巡回もしております。あと、言っては失礼かもしれませんが、あのお2人に勝てるような相手がいるとは思えません」
「ああ、そういえばそうでしたね。あれですね、女性を気遣えと教えられていたもので」
「まあ、女性は気難しいですから。と、二階の方は大体終わりましたな。あとは一階ですね」
「そうですね。2人の料理ができるころぐらいには終わらせたいですね」
「ですね。気合いを入れてやれば、お昼には間に合うでしょう」
ということで、僕とダザンさんは倉庫の一階へ移動して、掃除を始める。
といっても、倉庫はただ広いだけで、隅に前にいた住人が使っていたであろう、木箱や袋、ツボが少しあるだけで、それをゴミとして出した後、掃き掃除をするぐらいなのでそこまで時間はかからなかった。
残念なことに、隠し部屋とか地下なども存在しておらず、普通に掃除は終わってしまった。
「ダザンさん。こんな倉庫に一体何を置いていたんでしょうか? なにか聞いてますか?」
「さあ、そこまでは知りません。食料品は小麦以外は長持ちしませんし、保管には向きませんね。それ以外なら武具の類や家具、長持ちする消耗品などですがそんな店舗があったとは聞いていません。ただの物置だと思います」
ただの物置用倉庫か。
田舎とかなら、なんか昔ながらの倉庫があるのは見たことがあるけど。
ここはわざわざ一等地に新築したような感じなんだけど……。
まあ、知らない人に聞いても分からないか。
特に中に問題があるわけでもないから今はいいか。
後で越郁や先輩に話してみよう。何か僕とは違う見かたで何かわかるかもしれない。
「しかし、お2人はまだ戻ってないようですね」
「思ったより早く終わらせちゃいましたからね」
仕方ないので、上の部屋で休みつつ、ダザンさんに色々話でも聞きながら待とうかと思っていると、帰ってきた。
「おや? あれは……お2人では?」
「え? 5人いませんか……って確かに越郁と先輩だ」
5人になって帰ってきた。
いや、詳しくいうと、2人がなんか見たこともない3人の女の子を連れて帰ってきた。
何があったんだろう?
「ゆーや、ダザンさん、ただいまー」
「越郁、お帰り」
「その様子だと待ってたみたいだね。遅くなってすまない」
「あ、いえ。倉庫の掃除はただ不要なちょっとしたごみを出して掃き掃除するぐらいでしたから。で、そちらの3人はどうしたんですか?」
「「「!?」」」
僕がそういって視線を向けると、3人はビクッとしている。
なにかしたかな?
しかし、ダザンさんは納得した様子でその3人を見ている。
「なるほど。食材のついでに奴隷も購入されたのですね」
奴隷?
彼女たちが?
そういえば、あんまり綺麗とはいいがたい服だし、裸足だな。
首輪もついている。
いや、奴隷ってのを見たことないから、そういうファッションだと思ってた。
というか奴隷という発想がなかったんだろうな。
「ダザンさんあたりー。なんか生きのよさそうな子がいてね。ゆーやには悪いと思ったけど、ついでにゆーやの分も買ってきた」
「僕の分って、モノじゃないんだから」
ついそんな言葉が出てきしまった。
この世界でなくても基本的に奴隷はモノ扱いなのは地球でも当たり前だった。
だからこんなに嫌悪があるのだから。
「ふむ。ユウヤ様はちゃんとそういう所はわきまえておられるのですね」
「ダザンさん?」
「いや、奴隷というとモノ扱いする輩が多いもので。奴隷という立場であっても人であります。粗雑に扱えば忠誠など芽生えない。使い捨ての補充ができると勘違いしている輩が多いのです。そういうのはいつか背中を刺されますね」
「へー。なんか貴族って奴隷ごときがって言いそうなんだけど」
「コイク様のいう通り、そういう輩が多いのも事実です。が、こんな辺境ではそんな身分にこだわる理由はないのです。ともに手を取り合いこの地で生きていくのですから。ガーナン辺境伯様のやり方なのです」
「好感がもてるね。そういうのは」
「身分だけで、飯が食えると勘違いしてるのが多いですから。中央、王都の馬鹿共は。汗水たらして領民が食料ほはじめいろいろなものを作っているのを知らなすぎる。そして、その手助けをするのが貴族の役目だというのに……」
ダザンさんは腹立たしそうに吐き捨てる。
これは追及すべきじゃないな。
「と、それより。その子たちを買ってきたってことは従業員ってことだろう?」
「あ、そうそう」
「この子たちの分のご飯も作らないとね」
「よし。手伝うよ」
「私も手伝いましょう」
そう思って僕とダザンさんは前に出たのだが、越郁は待ったをかける。
「2人は庭にさ、お風呂を作ってよ。この子たちこの通り汚れてるからさ」
「お風呂って言うのは大げさだけど、魔術でちょっとした水浴びはさせてやれるだろう?」
なるほど。
確かに、掃除した家に彼女たちを上げるのは……。
「って、それなら最初から越郁や先輩がお風呂作って、僕とダザンさんが料理つくった方が効率よくないか? 女の子だし、お風呂に入れるのは2人だろう?」
「ゆーや。私が自分でご飯を作るって言ったんだ。そこは女子として意地があるわけよ」
「いや、その子たちだって、お腹すいてるのに目の前でおあずけは辛いんじゃないか?」
「そこは大丈夫だよ。露店で少しだけど食べさせたから。これはちゃんと私たちの手伝いができるか確認する意味もあるからね。大丈夫。3人ともそこまで衰弱はしてないから」
そういうことか。
能力とかを確認するためでもあるのか。
それなら仕方ないかな。
「わかった。じゃ、僕とダザンさんはお風呂作るよ」
「任せたよー。ゆーや」
「何か色々すまないね」
「いえいえ。出来たらまた戻ってきますよ」
再びダザンさんと庭の方に戻ってくる。
今度は倉庫には行かずにそのまま庭で簡易的なお風呂を作ることになったが。
「ついてきてなんですが、私は魔術はさっぱりでして、ユウヤ殿にお任せになります。私としては井戸で水を汲んできて体を拭け。ぐらいだと思っていましたが、お風呂を作れとはなかなかすごいですね」
「そうですか? あ、お風呂ってやっぱり珍しいですか?」
そういえば、普通にお風呂って言ってたけど、リーフロングの城でもお風呂の案内は無かったし、中世ヨーロッパに準ずるならお風呂ってのは相当裕福じゃないと入らないんだっけ?
「珍しいです。わざわざお金がかかる水を浸かるためだけに温めもする代物ですからな。一応城にも浴場はありますが、あるだけです。体を拭くだけで事足りますから」
やっぱりそういうものか。
「あれですよ。不帰の森では色々体に付着するから、ちゃんと体を清める必要があるんですよ。毒虫とかついてたりしますからね」
「なるほど。水に浸かれば虫は溺れる。理にかなっている」
適当なことを言ってダザンさんは納得する。
不味い。後で口裏合わせておかないと。
「しかし、魔術でお風呂を作るとはどうするのですか?」
「えーっと、まずは土の魔術で地面から土を盛り上げて固めて……」
家に近いところにまずは簡易的な長方形の4、5人が一気には入れそうな箱みたいなのを作って、水を入れても濁らないようにしっかりと固める。
泥水になれば意味ないからな。
そのあとは、体を洗う場所もしっかり整えていく。
まあ、残念ながらシャワーは作るのは大変でもないか……。
バケツに穴をあけたやつを上につるすタイプならだれでも簡易的なシャワーを使えるだろう。
湯桶と湯椅子を用意してと……、大体内装はこんな感じかな。
あとは、この内装に合わせて、壁を作って、水はけの方は隣に池でも作ってそっちに流すようにして、隣の部屋は脱衣所だな。
脱衣所は適当に銭湯みたいにしておこう。
これで、風呂上りでも少しはゆくっりできる。
出来上がってみれば、コンクリートに囲われた四角い窓が申し訳程度にあるお風呂が出来ていた。
まあ、これが精一杯だ。
最後に、水の魔術でお風呂場を満たして、温めればお風呂場の完成だ。
「……お見事。というか、あっという間でした」
「彼女たちはお風呂が好きなので、よく作ってたんですよ」
元々、お風呂があるかどうか怪しかったので、自分たちで簡易的に作れる方法を模索して練習していたのだ。
「魔術とは極めるとここまで便利なものなのですね。拠点の構築があっという間でした。これは、どれぐらいの強度なのですか?」
それを聞かれるとちょっと困る。
里中先生に鍛えられたおかげで、僕たちはコンクリートブロックレベルぐらいだと簡単に壊せる。
でも、それはこっちの一般兵士的にはどれほどな強さなのか分からない。
昨日、手合わせしたサラさんやドーザさんだと出来そうだとは思うけど。
「剣でやってみろって言うのはあれですね。ちょっと待ってくださいね」
すぐに足元からコンクリートブロックと作ってわたす。
流石に剣で切り付けろとは言いにくい。
剣がダメになったら申し訳ないし。
「ほう。思ったより硬いですね。これなら十分に防壁として使えそうです」
コンコンとコンクリートをたたいてそんな感想を言うダザンさん。
「これを簡単に作り出せる魔術。素晴らしいです。確かにこれがあれば不帰の森でも生きて行けるでしょう」
「まあ、これを使えるようになるまで大変ですけどね」
「それはそうでしょう。あのマンナ様に鍛えられるというのは想像もつきませんからな」
と、そんな雑談をしていると、作った離れの風呂場に越郁たちがやってきた。
「やっほー。いい感じに出来てるのが見えたから来たよー。もう全部出来てる?」
「ああ、大体は。あとは石鹸とかシャンプーとか消耗品だな」
「そっちは僕たちで出すよ。申し訳ないけど先にお風呂いただくね」
「はい。どうぞ、元からそのつもりですし」
「私は何も手伝っていませんでしたが、どうぞごゆるりと」
そういって中に入っていく越郁と先輩、そしてこちらを驚きの表情で見ながらついていく奴隷の3人。
「やっぱり、もう少し加減したほうがいいんですかね? 奴隷の子たちかなり驚いてましたよ」
「んー。力を示すという点ではいいのではないですか? 問題はその土地の有力者たちに警戒されかねないことですが、そこは幸いマンナ様のおかげでユウヤ様たちはしっかり受け入れられておりますし。奴隷たちも安心して仕えることができでしょう。弱い主だと盾にされると思ってしまいますし」
「なるほど」
確かに、力を見せたほうが弱く見えるよりは安心するだろうな。
有力者とか権力者に警戒ってのは、まあ今後の課題かな。
リーフロングでは幸い、ダザンさんが言ったように最初から里中先生が手回してくれていたから楽だ。
本当に、ここで色々やるのに便宜を図っていてくれたんだなと思う。
「ところで、ユウヤ様」
「なんですか?」
「私たちはお嬢様方が入浴中はどうしたらいいのでしょう?」
そういえばどうしたらいいんだろう。
お風呂簡単に終わるけないよな……。
「……先に昼食作って食べます?」
「それは、まずいでしょう。コイク様は自ら腕を振るうと言っておられましたし……」
「ですよね。じゃ、僕の部屋でお茶でも」
「お邪魔させて頂きます」
「いえ、なんか越郁がいろいろ申し訳ないです」
そんな話をしながら僕の部屋に入ってお茶を出す。
「いえいえ。女性とはそういうモノですから。といただきます。」
「どうぞ遠慮なく。で、その様子だとダザンさんは結婚を?」
「ええ。惚れた弱みといいますか、女性はたくましいですな」
「あはは……」
どの世界も女性は強くたくましいらしい。
「ユウヤ様はコイク様やヒビキ様という女傑ですからなー。苦労しそうですな」
「そう見えますか?」
「それは、マンナ様のお弟子というだけであれですしな。実力もしっかり冒険者ギルドで見せていただきましたしな」
そんな雑談をして不意に疑問があった。
「そういえば、強い女性とかは珍しいんですか?」
「ん? どういう意味ですか?」
「あ、いえ。何というか、実力者というか、権力者とかいうか、女性だからという感じで……」
「ああ、女性だから政治にかかわるな。戦いに関わるなという話ですな。他国では聞きますが、我が国では有能であれば男女などは問いませんな。よき人材に男も女も関係ありませんから」
「そうですか。よかった、越郁とかああいう性格なんでひやひやしてたんですよ」
「確かに、コイク様は言葉を飾りませんからね。女性を見下しているところであれば騒動になりかねませんね。まあ、マンナ様のお弟子様ですから、喧嘩を売った相手がボロボロになりそうですが」
「あ、そこも聞きたいんですけど。先生や僕たちをかなり評価してくれていますけど、どれぐらい強いんでしょうか? 不帰の森では先生と兄弟弟子しかいなくてどれぐらいの強さがあるのかよくわからないんです」
「ふむ。そうですね。私が聞くかぎり、不帰の森の奥から帰ってきたという人物は何かしら大きなことを成し遂げたという話が多いですし、私から見ても3人やマンナ様は並みの騎士では相手になりませんね。おそらく、我が国の剣術指南役や、他国で指折りの騎士、あとは冒険者でいうランク10といわれる英雄クラスではないかと思っております」
「うーん。逆にそこまで持ち上げられても実感がありませんね」
「まあ、不帰の森で過ごしていたのですからそんなものでしょう。世間のことは徐々に知っていただければと思っております」
「これからも色々教えてもらえると助かります」
「いえいえ。お任せください。個人的にもユウヤ様やコイク様、ヒビキ様は好感が持てますから、喜んで協力させていただきます。ま、ガーナン様がお許しになられる限りですが」
「それだけでもありがたいです」
そんな感じにダザンさんに色々この地方の話を聞いていると、お風呂から上がった越郁が部屋にやってきた。
「お、いたいた。お風呂から上がったから、2人とも汚れを洗い流すといいよ。それから、みんなでお昼にしよう」
「わかった。でも、お客さんがいるんだしノックぐらいしろよ」
「あ、ごめんごめん。じゃ、いってらっしゃい」
相変わらず適当だなー。
「お風呂入りますか?」
「ええ。珍しいですし、よろしければご一緒します。作法などは知りませんので教えてもらえればありがたいです」
「そこまで難しいものじゃないですよ。湯船につかる前に言ったん桶にお湯を入れて体を洗うとかです」
説明をしながら、自分たちが作った離れのお風呂へとやってくる。
「ここの棚に来ているものを置いてください。あ、タオルとかは持ってませんよね。こっちを使ってください」
「おお、ありがとうございます」
しかし、裸になったダザンさんの体はかなり鍛え上げていてがっしりしたアスリートのような体をしている。
「すごく鍛えているんですね」
「はは、そういっていただければ嬉しいです。日々鍛錬が大事ですからね兵士は。で、こちらの桶ですか?」
「はい、そうです。こうやって……」
湯船にあるお湯をすくって体にかける。
ザバー……。
ふう、いいお湯加減だ。
「こうですか?」
ザバー……。
「おお、なかなか心地いいですね」
「じゃ、あとは……」
それからダザンさんに石鹸やシャンプーなどの使い方を教えてのんびりとお風呂で掃除で汚れた体を洗い流す。
「ふー、いい湯ですね」
「確かに。こうやって体を綺麗に洗い流して浸かる湯船は気持ちいいですね」
ダザンさんはお風呂を気に入ってくれたようで、気持ちよさそうにお風呂に入っている。
「と、そろそろ上がりましょうか」
「ああ、そうですね。コイク様やヒビキ様を待たせていました」
お昼を待たせているので、あまり長湯はできないので上がると、越郁たちが迎えに来ていた。
「思ったよりも長かったね」
「ああ、ダザンさんに教えていたからね」
「いやー。お風呂というのはいいものですね。ガーナン様にも報告してお風呂が普及してれるといいのですが」
「へえ。それはいいや。ダザンさん頼むよ」
「はは、できるといいですね」
「そうだね。と、3人もまってるし、ちゃんとした紹介もあるから、雑談はそこらへんで、家に戻って食事にしよう」
そういうことで、家の掃除とお風呂設置が終わりようやくお昼を食べることになるのであった。




