第12回活動報告:山へハイキング
山へハイキング
活動報告者:宇野空響 覚得之高校二年生 自然散策部 部長
昨今、山登りに対しての意識が変わってきたのはよくご存じだと思う。
テレビでよく報じられる登山途中での遭難事故。
山登りを甘く見ている人たちがたいていそういう目に合っている。
それに伴い登山計画書というモノが認知し始めてきた。
元から存在するのだが、昨今の遭難事故が多発することで注目を浴びて表に出てきたのだ。
どの山に登るのか? ルートは? 予定時間は? 連絡先は? などなど、万が一があったときに、異変の察知、捜索しやすいようにまとめている計画書である。
今回、地元の小さい山ではあるが、それでも立派な山であり、ハイキングコースであっても、ちゃんと登山口に計画書の受付があったことから、昨今の遭難事故における日本全体の危機管理が出来ているということだ。
山一つ上るのに面倒だという意見もわからないではないが、僕的には最近、生きるか死ぬかを何度も経験しているので、こういう面倒な作業も必要なことだと身に染みて理解している。
まあ、難しい話をしたが、そんな面倒なことがありつつ、死の危険もあるのに、なぜ山に登るのかといわれると、それは登った人にしか分からないものがあるのだろうと、今の僕は思っている。
そこに山があるからだ
という名言もあるぐらいだし、万人に共有できる感覚ではないのだ。
僕もこの登山、正直最初は気乗りがしなかった。
なぜかというと、この登山自体が僕の失態で行うことになったからだ。
その失態が何かというと……。
「あ、響。あそこにリスいない?」
この僕の横で一緒に山登りをしている、同級生の時範奏だ。
彼女が僕の心配をして、自然散策部でちゃんと活動できているのか確認するために行われたのだから。
本来であれば、今日から異世界で街を目指し旅立っていたところなのに、私の虚弱が改善されたかという確認の為に延期になってしまったからだ。
だから心底、勇也君や越郁君には申し訳なかった。
「どこだい? ああ、いるね。こんなところにもいるんだね」
そういいながらシャッターを切る。
だが、今はそんなことはない。
事前に里中先生から聞いた、この山登りでの訓練の重要性などや、日本固有の魔物妖怪の有無、調査員がやるべき仕事は異世界側だけでなく、自分たちがまかされている町の安全も守るものであったからだ。
そのことを知る機会を設けてくれた奏には感謝しないといけないだろう。
自然散策部の活動をするきっかけにもなってくれたんだし、奏の存在はこちらの世界の一般人としての視点を持ってくれているありがたい友人だ。
そんなことを考えていると、奏が僕を、いや、手に持っているデジカメを見つめていた。
「ふーん。そうやって記録を取っていくんだ」
「そうだよ。まあ、あとは感想文とか報告書みたいなものは書くけどね」
「思ったよりちゃんとしてるんだ。あとは、響がちゃんと体力があるかだよね?」
「はぁ、まだ信用していないみたいだね。ここまで来て倒れていないし、前も言ったけど、ちゃんとランニングをして鍛えているんだよ」
どうやら奏はここまできたというのに、未だに僕の体力のことを疑っているらしい。
まあ、普通なら虚弱がそう簡単に治るわけもないのだから、奏の反応が普通なのかな?
いや、どちらかというと過保護気味な気がするんだが……。
「はいはい。そういうことはちゃんと山頂についてからね」
「奏は僕のお母さんかい?」
「ふふ、そうかもうね」
「やれやれ」
いつもの会話だが、よくよく考えれば奏がここまで良くしてくれる理由はよくわからないな。
ふむ。
ここは聞いてみるべきかな?
幸い、周りに人は後ろをついてくる、勇也君、越郁君、里中先生ぐらいだし、距離もあるから、話をしても奏も気にせず答えてくれるだろう。
「なあ、奏」
「なに?」
「これから聞くことは特に他意があってじゃない。ただの好奇心だと思ってくれ」
「ん? どういうこと?」
「奏はなんで僕に良くしてくれる……というのは違うな。なんでここまで気にかけてくれるんだい? 僕からは特に何かしたという記憶はないんだが」
「あー、なんでだろう? うーん、聞かれると不思議よね? 響は美人ではあるけど、人との付き合いは上手じゃないから、受けは悪いわよね」
「……なんというか、ボロボロに言われている気がする」
「ごめんごめん。でも、なんでかな? 自分でもよく分からないわ」
そんな話をしていると、いつの間にか後ろから越郁君が近づいていて、話に入ってきた。
「友達って理屈とかじゃないですからねー」
「そんなもんかい?」
「そうですよ。私と宇野空先輩なんて、それこそ時範先輩より見た目不自然でしょう?」
「ああ、海川さんは元気一杯って感じだものね。響がそれに付き合うと倒れるだけだろうから、意外性では一番よね」
「なるほど。確かに、友達というのは理屈じゃないのかもね」
「そうよ。って、あれお社じゃなない?」
奏が何かに気が付いてそう声をあげ、僕たちもそちらに視線を向けると小さなお社が見えた。
ハイキングコースから少し離れたところにお社がひっそりと立っている。
「……そうですね。お社です。こういう山道にはよくありますね。そしてここは覚得之町の名を関している覚山ですから、登山の無事を祈って建てたんでしょう」
里中先生も話に入ってきて、お社を見つめている。
「でも、あんまり人が近寄った雰囲気がありませんね」
「ゆーやのいう通りだね。道は草木が生い茂ってるし、お社自体もボロボロだね」
確かに、小さなお社には人が通った様子はない。
「まあ、ハイキングコースの中腹ですし、そこまで足しげく通う人もいないんでしょう。時範さんが気が付かなければ、普通は見逃してしまうレベルですし。よくある忘れ去られたお地蔵さんとかお社の部類でしょう」
「確かに、そうですね」
里中先生のいう通り、よくある話だ。
「ですが、見つけたのも何かの縁です。綺麗に掃除するなどの時間はありませんが、お参りする分は構わないでしょう。宇野空さん一応、記録として写真をお願いできますか?」
「あ、はい」
そういわれて、シャッターを切る。
私が写真に収めたのを確認してから、里中先生がお社へ進んでいく。
「皆さん。足元の藪に注意してくださいね。ヘビとか隠れているかもしれませんから」
そういわれると、逆に入り辛いんですが……。
まあ、これはあれだ。
ちゃんと警戒するということを覚えろという、里中先生の授業の一環だろう。
一般人である、奏をちゃんと守りなさいという意味も含まれているんだろうな。
ということで、レーダーの魔術を脳内起動して辺りを探索するけど、ヘビなどはいないようだ。
と、私がそんなことをしている間に、奏はすたすたとお社のところまで歩いて行ってしまう。
「なにしてるの響?」
「いや、ヘビがいるって言われると警戒しないかい?」
「これだけ声を出しているなら、ヘビだけじゃなくて大抵の動物なら逃げていくわよ」
「そうなんだ」
「クマも基本的には人に近寄ったりしないから、クマよけの鈴とか聞いたことない?」
「ああ、あるね」
「ですが、驚いて隠れているヘビもいますので、そういうのが驚いてかみついてきたりしますから、時範さんの入り方はあまり関心しませんね。私のように棒でも持って、藪をたたきながら行くのがいいでしょう。と、説明はいいとして、やはり、あまり手入れがされた様子はありませんね」
目の前にあるお社をよく見て見るが、やっぱり里中先生のいう通り、忘れ去られたお社なのか、ところどころボロボロになっている。
お供え物を置く場所であろうところには、お茶でも入れていたのか、カラカラに乾いた湯呑とお茶請けのお皿が置かれていた。
「少し失礼いたします」
里中先生はそういって手を合わせたあとに、お社に巻き付いている蔦を軽く取り払って、お茶を入れ、お茶請けにお菓子をお供えして、再び手を合わせてつぶやく。
「今日は、覚山に登山に参りました。本日はお騒がせしますがよろしくお願いいたします」
僕たちも同じように手を合わせて、拝む。
本日はお世話になります。
「さ、挨拶は済ませたし行きましょう」
そういうことで、僕たちは再び山を登り始めた。
お社にお参りしたおかげか、道中、天気が崩れることなく、もうすぐ山頂というところまで来たのだが、少し問題が発生していた。
「はぁっ、はぁっ……」
「奏。大丈夫かい?」
「だい、じょう、ぶ」
予想外という事ではないが、登りきる前に体力が尽きてしまったようだ。
奏も女性だからね。
運動部でもないし、そこまで体力があるわけがない。
すでに高校二年。真面目な学生は、受験勉強に備えて本腰を入れるころで、運動は部活でも入っていない限りおざなりになって当然だろう。
「……本当、に、響は体力、がついたのね」
「まあね。といっても、流石に歩いているだけで、ここまでぜーぜーいうのは、奏も運動不足じゃないのかい?」
「思った、よりも、山登りは体力使うのね……」
そんな奏の状態を見て、里中先生が心配そうに話しかけてきた。
「時範さん。別に無理をする必要はありませんので、落ち着いて息を整えてください。具合が悪くなったりしていませんか?」
「……ふぅ、はい。ただの運動不足ですから気にしないでください。少し休めば、よくなりますから」
「そうですか。では、少し休憩しましょう。宇野空さん、時範さんのそばにいてあげてください。私たちはこのあたりの撮影をしてきますので、カメラを借りますね」
「あ、はい。どうぞ」
そういわれて、僕はデジカメを里中先生に渡す。
「山谷君と海川さんは体調に問題はありませんか?」
「いいえ。大丈夫です」
「私も平気ですよー」
「でしたら、見える範囲で少し撮影をしてきてください。時範さんは大丈夫といってますが、休んで体調が戻らない場合はすぐに引き返しますから」
「「はい」」
里中先生はそういって、2人は対して僕の代わりに撮影をし始めた。
その言葉は奏にも聞こえていたのか、僕でも聞き取りにくいぐらいの小さな声で……。
「……ごめん。私が足引っ張ってるね」
と、凄く申し訳なさそうな顔で言ってきた。
「気にしないでいいよ。奏はちゃんと今日に備えて訓練してなかったから仕方ない。僕だってひーひー言って頑張ってきたんだから、これぐらい差があって当然さ」
「ははっ、まさか、響に体力で負けるとは思わなかったわ」
「うん。僕もよくこれだけ体力が付いたと驚いたよ。継続は力なりってやつさ」
本当にね。
あれだけ毎日血反吐吐いてれば誰だって体力はつくだろうさ。
そんな話をしていると、山頂から降りてきたのだろう、おばあさんがこちらに気が付いて近寄ってきた。
「おや、お嬢ちゃん。そっちのお嬢ちゃんは大丈夫かい?」
「あ、はい。ちょっと疲れただけみたいです」
「あはは、そこまで心配しなくても大丈夫ですよ」
「ふぅむ……そのようだね。ちょっと待ちんさい。こういう時はちゃんと水分補給が必要さね」
そういって、おばあさんは水筒を手に取って、お茶を注ぎ、奏に手渡す。
「えっと、これは?」
「体にいいお茶だよ。のみんさい」
「どうも、いただきます」
好意を無駄にする理由もないので、奏は受け取ったお茶を飲む。
すると、ちょっと顔をしかめる。
「うん? 不思議な味? いや、これはドクダミ草の香り?」
「わかるかい? まあ、ドクダミ茶とかは、普通飲まないだろうからね。ほれ、そこに生えているだろう? このお山のドクダミは普通のドクダミより効果が高いといわれていてね。年寄りたちはこうやって、自分で詰みにくるんさね」
そういって、おばあさんは袋に詰まったドクダミ草を見せてくれた。
なるほど、山菜採りのおばあさんといったところか。
僕がそんな感想を思っていると、おばあさんは奏から空になったコップを受け取って、またそれにお茶を注ぎ、今度は僕に差し出してきた。
「そっちのお嬢ちゃんもどうだい?」
「あ、いただきます」
というか、拒否権ないだろう。
すでにお茶を入れているんだから。
これが、年寄りの強さというべきか。
そう思いながら、お茶を流し込む。
奏の言ったように、普通のお茶の味ではない。
ドクダミの香りが口の中に広がる。
普通に美味しい。
「うん。気に入ってもらえて何よりだよ。でも、ひ弱そうに見えたお嬢ちゃんには必要なかったかもね」
「どういうことですか?」
「思ったよりも、体を鍛えているようだ。いやいや、人は見かけによらないね。あの、先生さんの指導のたまものかい?」
「え、あ、はい」
おばあさんの視線の先には、越郁君たちと一緒に撮影をしている里中先生がいる。
「なるほどなるほど。ということは、これは余計なことをしたかもしれないね」
「?」
おばあさんはそんなことを言っていそいそとリュックを背負いなおして、立ち上がる。
「さて、私はそろそろ降りるよ。お嬢ちゃんたち、あと少しで山頂だから頑張りんさい」
「あ、はい」
「お茶、ありがとうございました」
「気にしなさんな。ただのお返しさね」
「「?」」
そういって、おばあさんは山道をしっかりとした足取りで下っていく。
「……すごいわね」
「日課みたいになっているんだろうね。って、奏、気が付けばずいぶん息が整ってきたね」
「あ、ほんとだ。よっと、先生!! ご迷惑をおかけしました。回復しましたから山頂に向かいましょう」
奏は一気に立ち上がり、里中先生へ向かって軽く走って近寄る。
「え? もうですか? ……無理をしているようには見えませんね」
「はい。もう元気になりました」
「ですが、無理をして同じようなことにならないように気を付けてくださいね」
「あはは、気を付けます」
「では、山谷君、海川さん、時範さんも十分に休めたようですし、山頂に向かいますよ」
「はい」
「はーい」
ということで、僕たちのハイキングは再開して、さほど時間がかからず山頂に到着した。
「うひゃー、きれいだねー。ゆーや、あそこって私の家かな?」
「いや、方向逆だから」
「切り開いている関係で、残念ながら、見えるのは覚得之町の東端ですね」
里中先生のいうように、残念ながら、僕たちが普段過ごしている学校は山頂からは見えないようだ。
まあ、見ようと思ったら、横にある森をかなり切り開かないといけないだろうから、仕方ないか。
しかし、越郁君のいう通り、綺麗だ。
目の前に広がる景色、自分の住んでいる町をこうやって、見下ろすというのはなかなかあることではないからね。
「本当に綺麗ね。自然散策部も侮れないわ」
「そうだろう?」
体調が戻った奏も気持ちよさそうに、風に当たりながら、眼前に広がる景色を楽しんでいる。
「さあ、時間は速いですが、お昼にしましょう。幸い、他に人がいませんから、独占ですね」
「やったー。ゆーや、御飯!!」
「はいはい」
越郁君は待ちに待っていたようで、勇也君に作らせたお弁当を催促しているらしい。
まったく、普通なら逆だろうにと思いつつ、こっちもお弁当を広げる。
「僕たちも御飯にしようか」
「あ、うん。というかさ、山谷君が、海川さんのお弁当だしてるの?」
「ああ、彼が彼女の分を作ったんだろうさ」
「え? 普通逆じゃない?」
「僕もそれは同意だけど、あれが彼と彼女の当然の関係らしいよ」
「はぁー。何というか、便利な彼氏ね」
「はは、便利ね。でも、それだけじゃないさ」
「そんなのは見てわかるわよ。不思議なくらい信頼しあっているもの。あれ、幼馴染ってやつなの?」
「そうらしい」
「ふーん。山谷君を警戒してたけど、これは可能性はないかー」
「どういう意味だい?」
「いや、唯一の男の子でしょう? 響に手を出す可能性があるかなーって思ってたけど、あれを見るとねー」
「ははは……」
残念ながら、僕が勇也君に手を出している状態なんだがね。
しかも、恋人、越郁君の同意付きで。
勇也君本人はどうもその気がないみたいだけど、僕としては好ましい男性だからね。
何としても振り向いてもらうつもりさ。
そのために、異世界調査員でもあるからね。
「ま、そこはいいとして、あのおばあさんって、何時ぐらいに登ったんだろうね」
「ああ、そういえば、さっき会ったときはすでに下っていたから、僕たちよりも早くだろう? だから5時、6時ぐらいだろう? 僕たちがここに到着したのは6時半ぐらいだし」
「でも、車とかなったよね?」
「あー、近くの家の人じゃないかな? ほら、少し下ったところに民家が数件あっただろう?」
「となると、徒歩であそこまでだから、やっぱり5時くらいかな? 暗い中よく歩けるね」
「まあ、昔のと言ったら失礼かもしれないけど、そういうのが当たり前の時代だったからじゃないかな」
「なるほど」
そんな話をしていると、里中先生がこちらにやってきた。
「なんの話ですか? なにか、登山途中に誰かとすれ違ったみたいな話ですが?」
「あれ? 里中先生気が付きませんでしたか? 私が疲れて休んでいる間に山頂から降りてきたおばあさんがいたんですよ。ねえ、響」
「ええ。里中先生たちは撮影してたから気が付かなかったのでは?」
といいつつ、違和感を覚える。
里中先生が人の接近に気が付かないとかありえるだろうか?
しかも、お茶を貰ったりして、それなりの時間その場に留まっていた相手に対して?
「で、お茶をいただいたりして、少し話したあと、下って行ったんですよ」
「お茶ですか?」
「はい。美味しいドクダミ茶でした」
「……そうですか。よい出会いでしたね」
「はい」
里中先生も不思議に思っているのか、少し思案顔をしたのだけれど、すぐに笑顔に戻って、奏と話に興じる。
僕もそのあとは、勇也君や越郁君と雑談をして、のんびりして休憩時間を過ごしているうちにおばあさんの疑問は頭から消えて行って、最後に写真を撮ることになった。
「はい。タイマーは合わせました」
先生が戻ってきて、覚山山頂の標識と一緒にみんなで写真を撮る。
「さ、早いかもしれませんが、そろそろ降りましょう。山はのんびりしているとすぐに日が暮れますからね」
そういうことで、僕たちはそのあとすぐに山を下る。
帰り道は不思議なことに、奏は息を切らすことなく、下山した。
「うーん。なんか、山を登って逆に調子が良くなったかもしれないわね」
「どういう理屈だい。普通は疲れるだろう?」
「でも、調子がいいんだし、あれね。パワースポットとかいうやつじゃないかしら?」
「そんな胡散臭い」
ああ、僕がそれを言っちゃだめか。
と思いつつ、やっぱり口にしてしまうのは、お約束という奴だろう。
そんな会話をしているうちに、車は学校へと到着し、解散となる。
「まあ、結局何事もなく、ハイキングが終わって何よりです。では、ゴールデンウィークが明けたら、今回の活動の感想文、または報告書を提出してくださいね」
「「「はい」」」
まあ、僕たちは明日から異世界調査員としての試験が始まるんだけどね。
今日の山登りは前哨戦といったところかな?
「じゃ、響。帰ろうか」
「そうだね」
いや、今日の一番の収穫は、奏を説得できたことかな。




