5話 他人の命なんかどうでもいい、妹お前だけが生きてればいい
「ほらよ、今日の昼飯だ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「…お前らちゃんと仕事してんだろうなぁ?」
「!!し、してます!」
「!」
「…本当かぁ?」
「し、してますよ!証拠としてやったじゃないですか!」
先程まで俺達がこそこそと話しているのを見ていたのかしらないが今日はやけに食いついてくる、うざったらしいにも程がある
「…ッチ、仕事してる途中に私語すんじゃねぇぞ」
「っはい・・・」
「は、はい・・・」
こ
こんな腐りきった落ちぶれた世界でも仕事中には私語は慎むこと、何故かこうなっている
「・・・はぁ、仕事っていう仕事してるんじゃねえんだから私語ぐらい良いじゃねぇかよ、なぁ?」
「う、うん、そう、だよね」
「?どうした?」
「う、うんこんな生きてるのも大変な状態なのに仕事中は私語禁止って、どうなのかなって・・・私達いつ死んじゃってもおかしくないのに・・・」
「・・・あぁ」
生きているのも精一杯、そんな状況下の中私語禁止、これはあまりにも酷すぎる事、と言うよりあの上司たちは社畜が抜けていないのかもしれない、それか現実逃避をしている可能性もある
「まぁ、そんなこt」
俺が妹に言おうとした瞬間だった、とてつもない地響きが起こった
「っ!?」
「!!な、なに!!?」
妹は驚愕と共に立ち上がり四方見渡した、それに続いて俺も急いで立ち上がった今回のこの地響きは前とは何かが違う、振動まで伝わってきた
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
きゃぁああああああああああああああ!!!!
「っ!!」
「・・・x」
俺達は急いで悲鳴が聞こえた場所へ走った、ちなみに俺達が居る場所はほぼ壁と近い場所、だから門の場所にも近かった
「きゃぁぁぁぁぁ!!助けt」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺達が見たもの、それは人がやつら、化け物達によって次々と捕食されている所だった、そしてその化け物達の背後には破られた門があった
「っな…なっ・・・!!!」
「っぁ…ぁ…!!!!」
「おい!!何の騒ぎだって…っお、ぃ・・・なんだよ、これ・・・!!」
後ろから声が聞こえ振り返ると俺達の上司が愕然としながら呆けていた
カランカランカランカラン!!
「!!」
「!!」
この街の中心部にある鐘がなった、それは街中に知らせる合図
『緊急事態です!!やつらに・・・やつらに門を破られました!!』
たったこれだけの知らせ、だがこの知らせは大混乱の元となる
おい!!退け!!
きゃぁ!!
「!!っお、おい!!妹!!!早く、早く逃げるぞ!!!」
「っ!!に、兄さん!!」
背後からどんどん迫ってくる化け物達から逃げようと俺は妹の手を握り思いっきり引っ張り逃げようとしたが
「っ!!お、おい!!なにしてんだよ!?」
「に、兄さん待って!!あそこに、あそこに赤ちゃんが!!」
妹、こいつは大のお人よしで優しいヤツ、他人の不幸が見ていられなくて自分を犠牲にする自己犠牲野郎だ
「っ!?何言ってんだよ!!お前!!こんな時に!!赤ん坊なんか見捨てろ!!」
「!?な、何を言っているの!?見捨てられるわけないよ!?」
「ッ!!今は緊急事態なんだよ!!赤ん坊なんか助けてたら俺達も死ぬことになるんだぞ!?」
「!!私はそれでも!」
パチン!!!!
「っ!!・・・え…」
「妹!!綺麗事ばっか言ってんじゃねぇぞ!!こんな世界に綺麗事なんてもう通用しねぇんだよ!!」
「っ!!にい、さん・・・」
「父さんと母さんから貰った命を粗末にすんな!!自己犠牲なんていうくっだらねぇ事今してんじゃねえよ!!」
唖然としている妹の手を引っ張り俺は走った、最低な事をしたと思う、だがこの選択は絶対に間違っていなかったと俺は思う、何故かって?そんなの決まってんだろ俺の大切な家族を、大切な妹を、大切な人を助けたんだ、何も間違ってなんかない
「はっはっ・・・」
「っはっはっ・・・」
この世界は弱肉強食、生まれた時から決まってる事だ、弱い者は負け、強い者が勝つ、弱いヤツなんか助けてたらいくつ命があっても足りない、もうこの世界に綺麗事なんか何も通用しない
「誰かぁぁぁぁ!!助けてぇぇぇぇ!!」
「うわぁぁぁん!!うぁぁぁぁん!!」
「っ!!あっ!!」
「ッ!!妹!!!」
「っ!!っ!兄さん離して!!!あの人達死んじゃうよ!!」
「!!いつまで綺麗事ばかり言ってんだよ!!お前は!!」
「っじゃ、じゃあ兄さんだけ逃げればいいでしょ!!」
「!?は、はぁ!!?」
妹は俺の手を無理やり解きそう言った、信じられなかった何故そこまでして他人なんか助けようとするのか俺には理解できなかった
「私はあの人達を見捨てられない!!そんなに逃げたかったら兄さんだけ逃げればいいでしょ!?」
そう言い妹はその人達の元へ行こうとした
「ッ!!ふざけんじゃねぇぞ!!」
「っ!!」
俺は妹の腕を思いっきり握り引っ張った、行かせないように握った骨が砕けるくらい思いっきり
「お前・・・俺がどんな気持ちで止めてると思ってんだよ!!?」
「!!に、兄さん…」
俺はなんとしてでも止めようと必死だった、だから多分俺は泣いていると思う
「何で家族を、自分の家族をそんな奴らの所に行かせられると思うんだよ!?」
「っ・・・」
「好きなのに・・・」
「・・・え?」
「愛してるって言ったくせに…あれは嘘だったのか・・・?」
「!!う、嘘じゃないよ!!」
「・・・だったら、尚更行かせるかよ」
「っ!!に、兄さん!?」
俺は思いっきり引っ張り行かせないように思いっきり抱きしめた、本当バカだこんな生きるか死ぬかって時に
「俺もお前の事愛してんだよ、何で愛してる人をそんなヤツらの所に行かせると思うんだ?」
「!!に、兄さん・・・」
俺の言う事に対し赤くなっている、ますますアホだ、俺達はこんな時に何をしているんだ?
「俺はお前が大好きなんだよ、お前と結婚したいんだよ、お前の彼氏になりたいんだよ、お前と子共作りたいんだよ」
「っ…」
「そんな大切な人を何で俺がお前をあいつらなんかの所に行かせると思うんだ?ふざけすぎだろ」
そこで俺はもう時間がないと思い抱きしめたまま妹を引きずりながら行こうとした
「…!!に、兄さんな、何言ってるんっ!!?」
もう時間がない、これ以上は時間がないと思い行動に移すことにした
「っはぁ、これが証拠だ、俺はお前を愛してんだよ、絶対行かせねぇからな」
「…ぅぅ…」
泣きそうになる妹を無視し俺は街の一番奥へ行った、そこには沢山の人が居た、みんなバスに乗っているらしい、何故ガソリンが余っていたのかは知らないがこれで逃げられる、俺と妹はそのバスに乗りここから約10キロ先の街へ行った、その街へ行く途中俺達が居た街から断末魔、悲鳴、色々と聞こえた、他にも人が喰われる音と
「・・・ごめんな、妹…」
「・・・ううん、ごめん、兄さん…私…!!」
「・・・なんも悪くねぇよ、俺が自分勝手すぎたんだ」
「!!私がわっ!」
これ以上の会話は無駄だと思い俺は妹を抱きしめた、強く強く
「…ごめんな、引っ叩いちまって」
「…ううん、兄さん…ありがとう…」
何故妹が礼を言ったのかわからない、でもそんな理由より妹が生きていて良かった、これだけでも凄く嬉しい
「…妹、俺お前の事好きだ、愛してる」
「…うん、私もだよ…」
辺りが落ち込んでいる中俺達は暖かい空気を放っていたと思う、実に平和ボケか何かをしているのだろう