女が母親になる上でしてはいけないいくつかの事
酒を飲んでいる。いつも使っているショットグラスがないので、ウオッカを口に含み、オレンジジュースで流し込む事で、スクリュードライバーを口の中で作っている。
今日は、ほのぼのとした育児についてのエッセイを書きたいと思う。
その一。女である事を見せない事。
これは、成長する過程、一番最初、母親が、人間を一人を作った事への自覚が足りない時に、起こりうる。
性愛は、母性愛と、似て非なる。
もし、子供がそれを、感じてしまった場合。言葉にできずとも、それを肌で感じてしまった時、子供は、母の愛を、信頼できなくなる。結局の所、自分への愛ではなく、母が、母自身を愛するため、自分を愛しているように見せかけているのではないか、と、思い込む。子供がそこまで考えない、という浅はかな考えは、捨てるべきだ。子供は動物に近い。動物は、考えるのではなく、肌で感じる。
一生、愛というものを、信頼できなくなる。
例をあげよう。父親が幼くして死別した、片親の親子が居たとする。
母親は、ペニスが恋しくて、仕方がない。
ヒモのような、ろくでなしの、男の家に、子供を連れて行く。
そこで、適当に、子供が見て喜ぶようなゲームを深夜までやり、子供を適当に、喜ばせる。(子供は本当には喜んでいない。母親に喜んで欲しいから、喜ぶのだ。)
そして、早く寝かしつけるように、しむける。
後はわかるだろう。
その二。混乱した家庭に子供をおくこと。
いうまでもなく、してはいけない。家庭全体が混乱し、笑顔がなく、常に、怒鳴り合っているような家庭。子供の精神に、間違いなく変調を来す。
母親は家庭に居つきたがらないので、時間があくと、外に出る。子供は夕方、目が覚めると、誰も居ない家か、母親以外の好まざる誰か(母親が嫌いなものは、子供も嫌いなものである。)と一緒に居る。子供は一人で、泣き続けるしかない。
また、そういう家庭では、絶えず喧嘩が起こる。
その時、一番してはいけない事。子供を、喧嘩の武器として使う事だ。
母親の事を好まざる同居人は、母親だけでなく、大抵の場合、その遺伝子を持つ子供をも攻撃する。それだけで、子供の精神には、莫大な傷跡を残す。それだけでは、大体は終わらない。
後々、母親が、同居人を責める際、その事を何度も何度も持ち出す。(女というのは、往々にしてしつこいものだ)子供は、何度も何度も、同じ痛みを繰り返す。自分の言われた事は、そんなにも、ひどい事だったのか。そんな事を言われる自分は、生きている価値がない。
そういう場合子供は、自傷行為を起こす事もある。自分がどれだけ痛いか目に見えて、抗議行動を起こせば、混乱が落ち着くと感じての事だ。
しかし、こういう道のりを繰り返してきた母親は、それすらも何か劇場の、異世界の、悲劇の一種へと仕立てあげ、同居人を責める。
子供は、絶望する。自分という存在よりも、家庭内という戦場において、母親は、自分の軍隊が優勢に立つ事の方が、重要だと思っているのだ、と完全に感じる。
そして、一般的な家庭に遊びに行った時、普通の家庭に生まれたかった、と泣き叫ぶ事になる。
その三、母親が自分の定規で、子供の適性を測り、否定する事。
子供の頃は、大体、途方も無い、馬鹿みたいな事に憧れる。
その時、母親がしてはいけない事。あなたのような人間には、そういう事はできない。と、頭ごなしに否定する事。そして、自分のさせたい事をさせる事。
子供は、興味のある事でしか、成果をあげられない。
その、一つの大きなチャンスを否定し、させない事は、将来における、大きな損失である。
また、実際にくだらない事でもやらせておけば、大人になるにつれて、そのくだらなさに気づき、子供が大人になってから、そのくだらない事に熱をあげずに済む。
その四、子供を放ったらかしにし、物だけ与えておくこと。
子供は、受動的になる。とても、自分では、世界を変える事なんて出来ない、と思い込む。
既成品は、確かに質が高い。当然だ。子供の頃、物だけ与えられて育った子供ではなかった、大人が作っているのだから。
もし、子供を、何の創造性もない、消費者にしたいのであれば、行う事もいいだろう。
その五、正気を失わない事。
遺伝子の問題もあるので、難しい事だとは思う。
母親自身が絶望的な状況に陥った時、決して、決して、正気を失わない事。
決して、糞と小便を垂れ流しにし、口を開ければ、妄想の世界を口にし、子供を誰かとは理解できているのに、子供だと理解できないような、そういう状態に陥らない事。
子供は、親を殺そうとする。それは、間違いない。あまりに、子供の領分を、遥かに超えている。首を締める。気道を圧迫し、亡き者にしようとする。そして、自分も警察にでも捕まれば、とりあえずは、救われると思う。
そういう時は、慌てず、やめて、と一言言えば良い。
子供は泣きながら、自分の部屋に帰り、酒を煽り、ハイになる薬とダウナーになる薬を山ほど飲み、大声で歌を歌いながら、自分の腕と胸にカッターナイフで文字を刻み、起きれば何か、人生が変わっていると思い、眠りにつく。
ここまで、全てをやってしまった後、一番してはいけない事。
最後に、子供を愛する事だ。
子供は一生、その母親の事を忘れられなくなる。いくらひどい人生だと思っても、その事を思い出す。
その時、子供がやっている事を、褒めるのもよくない。まさか、こんな事が出来るとは思わなかった。子供は、自分に才能がないとわかっても、一生それを続ける。そうすれば、もう一度、母親のような存在に、愛されると思い込むからである。
子供をまったくの不具の、出来損ないにしたければ、そうするのも悪くはない。
以上が、子供という、一人の人間を大人にするまでに、してはいけない、いくつかの事だ。
何も遺せない女が、何も遺せない男と快感を求めセックスをし、中出しされ、精子が卵子に着床し、何も創造性がなかった自分たちを慰めるため、それを愛の結晶だとか、くだらない、ラッピングされた言葉で誤魔化し終わった後。
その、女の方に読んで欲しい。最低限、してはいけない事だ。まだまだ、してはいけない事、するべき事はある。しかし、俺にはあまりうまく書けそうもないので、うまく書けそうな、いくつかの事柄だけ書いた。
きちんと守れば、とりあえず、最悪の人間が生まれる事だけは防げる。きっとその子は、きちんと両脇を、笑顔で包まれた、男か女に、挟まれるだろう。
今俺は、何人かの遺影の近くで眠っている。
その俺の心は、まったく、静かである。