昭和チンピラ爆誕!
よろしくお願いします。
ディザイアシティーの中央通りにある大きな教会を曲がって表町通りに入り、そのまま進んで右手に見える公園を過ぎれば裏町通りに入る。裏町通りの下町風の商店街をしばらく歩くと右手にレンガで出来た3階建ての建物がある。ロクサーヌ商会と書かれた看板があるこの建物がロクサーヌファミリーの事務所である。
共同馬車から冒険者ギルド前で降りる。その時、偶然か神のイタズラかはたまた謎のスキルが発動したか、アハトが纏っていたマントが急な突風により空の彼方に飛んでいった。手を伸ばしたまま固まっていたアハトはやがて周囲の視線から逃げる様にサングラスをかけ早歩きで表町通りに進んで行く。
裏町通りに入りトボトボとした歩きになるアハト。時折足を止め商店街の窓ガラスに写る自分の姿を見ながらため息を吐く。
無いわぁ〜〜、この格好〜。いくらこの身体の特性を活かすスタイルだって言っても、これは無いダロ〜。まずこの黒髪の短い角刈り!今時角刈りってどうよ?・・・まあ、いい。髪型はとりあえず置いとくとして・・・・この服は(怒)あまりにヒドイだろぉぉぉおお!!
(バン!) まずこの、メっちゃテカテカしてる灰色でストライプのスーツ!
(ババン!!) それに青のド派手な柄シャツで龍と虎がカラーverで刺繍されてるヨっ!!しかもシャツの襟をスーツの襟外に出してあるんだよぉー!!!
(ドっカ〜ン!!!) それにシャツの背中にはデカデカと『漢道』て金刺繍入ってるしィーー!恥ずかしくて上着脱げねえええええ!!
・・・靴は蹴られたら刺さりそうなほど尖ってる白のエナメルだし、靴下はラメってる青でしかも脛の半分位まで長さが有るやつだし、ベルトも白のエナメルでバックルは金で『仁義』て透かしで作られてるし、必須アイテムとか言われて装備させられたサラシも巻いてるし、サングラスは◯部警察の大門verだし、・・・・もうヤダぁ〜〜〜。 ←(膝頭を合わせてしゃがみこみ両手で顔を覆い乙女のように泣いてます)
『立ち直るまで、少々お待ちください。』
ちなみに眉も、点と線しかないようなスルドイ感じに設定されそうになったが、泣いて土下座してカンベンしてもらっている。ムーさんは残念そうにしていたが・・・・
やがて、現代日本ではド恥ずかしくてお日様の下を歩けないような "THE昭和のチンピラ "スタイルのアハトは到着したロクサーヌ商会のドアをノックしてから開け、中に入った。
「皆さん、お久しぶりです。覚えていますか?・ァ・・トシです。」
一瞬、今の名を言いそうになり、ロクサーヌの皆に呼ばれていた名を言い直すアハト。
「・・・トシ・・なのか?」と疑問顏の組員のロイ。そして幹部のダンは、
「ん〜?そのイカレtaじゃなくて、イカした格好の奴がトシだってぇ〜?」と首を捻る。
『イカれたって今、言った!しかも含みを持たせて言い直したヨ‼︎やっぱコッチの世界でもメチャクチャ変な格好なんだ!うわ〜〜ん!!』とアハトの心のライフが減った。少し涙目になりながらサングラスを外し、
「・・俺ですよぉ〜・・」と少し拗ねた感じで言う。すると
「おおートシじゃねーか!元気にしてたかよっ!」とロイが言えば、
「オッ!その顔はトシだな。・・なんでそんなヘンテコな格好してんだ?頭でも湧いたか?」とアハトのライフがガリガリ削られるセリフを吐くダン。
「ん〜?随分と騒がしいじゃねーか!」と奥の部屋から舎弟頭のバルザが出て来てアハトの顔を見つけると、
「・・久しぶりだナ。その顔を見ると自分なりに区切りは付けてきたみてーだな。・・歓迎するゼ⁉︎お客人!」
シブいセリフが似合う総白髪のダンディーなオジサマに『バルザさんマジ、カッケぇーー!アニキと呼びてぇー‼︎』と思ったとか・・・・アハトもムーさん話の影響が出てるようだ。
アハトが持って来た土産の、向こう側の酒と肴を皆で飲みながら会話は弾む。
「ウメ〜!このブランデー?ってゆー酒、スゲー美味いなっ!」
「兄貴! このジャーキィ?とか言う干し肉も最高だよ!ホントうめぇよな〜」
「・・ホウ!このチョコナッツとか言う菓子はブランデーに合うナ。」
などともっぱら飲み物、食べ物の話題だが・・・・他は・・・
「そぉいえば、若頭のファビオさんとパルは?」とアハトが聞く。
「頭とパルは仕事で商業エリアに行ってるゼ!」とロイがジャーキーを口に運びながら答える。
「で、そのままお嬢を迎えに行く事になってる。ソロソロ戻って来る頃だな。・・」とバルザが言葉を引き継ぐ。グラスに注がれたブランデーの香りを楽しんでいるその姿はやっぱりシブイ。
「ホント~は俺がお嬢を迎えに行きたかったんだけどなぁ〜」とダンが酔いが回ってきたのか少し赤ら顔で言う。続けて、
「お嬢大丈夫かなぁー。美少女だしなぁー【確かに!】、変なのに見られてないかなぁー【特にお前がな!】、悪いムシが付いてないかなぁー【…いたら殺る!】、心配だなぁー、スゲー心配だなぁー。」 ( 【 】内はアハトの心のツッコミです。)
と言い出し、さらにはどれだけお嬢がカワイイのかを熱く語り出すダン。そこにロイも加わり、側から見れば10歳の少女について熱く語り合っている紳士なお兄さん3人組だ。日本にいたら『ママ〜、アノ人達な〜に?』『しッ!見ちゃいけません!』(110番通報報の後)『H,E,N,T,A,I,に見られているんですッ!助けて国家権力の犬!!』になるだろう。海外ならば『ロリコン見たら発砲許可』になってたかもしれない。
しばらく奥の部屋で四人で酒盛りをしていると
「今、帰ったぞ!」と入り口から声が上がる。ダンとロイは慌てて入り口に向かい、バルザは鷹揚に出迎えに向かいアハトもバルザに続く。
「「お帰りなさいやし、お嬢!頭も、お疲れ様です!」」
「お帰り、お嬢。・・頭もお疲れ!」
「ただいま、みんな!」と人形のようなフワフワ金髪美少女のシャルロットが返事をする。
「・・あ〜、お邪魔してます・・お久しぶりですトシです、以前はお世話になりました〜」タイミング大丈夫かなぁ〜と思いながらもバルザの体の影から出て、おずおずと声をかけるアハト。
「トシさんッ‼︎」 「よおぉ!トシ!」 「久しぶりじゃあねーか!」
シャルロット、ファビノ、パルが嬉しそうに挨拶を返してくれる。特にシャルロットは驚いた顔をしたが直ぐにアハトに近付いて額をアハトの胸に当て
「・・アハトさん、会えて嬉しい・・・」
これにはアハトも参った!『俺はロリコンじゃねぇけど、こいつはヤベエ!こんなに純粋に喜んでもらえるなんて!しかも抱きつくんじゃ無くて、お祈りポーズで額をコツンだよ!可愛いすぎる〜!!ヤバイ!変な感覚に目覚めそう!』と。しかしアハトは耐えに耐え、元は薄汚れたオジさんだが心のピュアな部分を何とか掻き集めシャルロットの頭を人撫でして言う。
「俺も会えて嬉しいですよ、シャルロットお嬢様。」
顔を上げ見つめ合う2人。後ろではダンが『うらやまけしからん!』とばかりに『キィ〜』とハンカチを噛んでいる。
「・・お嬢は会った時からトシの事、大好きですよね〜」とファビオが嫌味でも警告でも無く、ただ事実を述べる様に言う。
「ええ、大好きよ?だってお兄ちゃんみたいなんだもの!」
とファビオの方を向いて、一片の曇りも無い笑顔で言う。これにはファビオも苦笑して『降参』とばかりに手を挙げる。←(後ろではライフが0になったダンが倒れています)
「お嬢、お婿さんじゃなくてですかい?」とバルザがニヤリとしながら聞く。
ボンっと真っ赤になったシャルロットは
「もう!おじ様ったら変なこと言わ無いでっ!」と可愛いくプリプリと怒ると3階に有る自室に走って行ってしまった。
「・・・お嬢にとって初恋ですかネ?」とファビオがシャルロットが走り去った方を見ながら聞けば
「さあ〜?どうなんだろうナ?」とバルザが孫を見る様な目で、同じく走り去った方を見る。
アハトはというと、シャルロットの赤ら顔をみて『・・俺、イケナイオジさんでいいや・・・』と思ったとか思わなかったとか・・・・1つ言える事は、この日アハトの心の奥底に在る "ロリコンの因子" と言う名の "ベへ◯ットの卵"の羽化が促進された。将来、ロリコン狂戦士にならない事を祈る!
ロクサーヌファミリーの事務所で一晩を過ごし、シャルロットが学校に行くのに合わせてアハトも出る事にした。
「トシさん、絶対にまた来るんですよ?」と制服が良く似合いテイクアウトしたくなる可愛いさのシャルロット。(注、人のテイクアウトは犯罪です)
「お嬢の為にも来てくれよ!」とファビオさん。まるでお父さんのようだな!
「困った事があれば、何時でも相談にのるゼ?」と今日もダンディーなバルザのオジサマ、シブイ!
「トシの事は強敵と認めよう!」(byダン) 真性ロリコンは黙れ!
「住むトコ決まったら教えろヨ!」 「遊びにに行くからナ!」(byロイ、パル) ゼッテー来んな!
「一晩厄介になっちゃって、あざーッス!近い内にまた来ますヨ!じゃあ〜」
俺も皆と打ち解けたと思うからこのくらいの挨拶で丁度いい。軽く手を挙げ踵を返し歩き出す。2、3歩進んで 『あっ!』っと気付いた事があったから振り返って皆に言う、
「俺、名前変わったんだ!トシじゃなくてアハト。アハト、ノイン-ドリット・・言うの忘れてた〜!いや〜失敬、失敬!…」
「「「「「「大切な事はちゃんと言え(言ってください)!!!」」」」」」
・・・やっぱ、怒るよねー(汗)、ゴメンちゃい!
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