愚者の集まり③
よろしくお願いします。
1ー③
愚者の集まり
獲物が逃げ出し、シラけた空気に女魔術師と不良シスターは『グヌヌヌ』と睨み合いながらも『はあぁ〜〜』とため息をつきながら席に戻る。
被害ゼロで終わった女の戦い。マスターもカウンターでグラスを磨き始め、客も元の位置に戻り始めて店の喧騒も戻りつつある。
カウンターからパンツを被った顔の上半分を出し、潜水艦の潜望鏡の様に様子を伺っていた騎士崩れの男は争いが終息すると『ウン』と頷き席に戻り出す。
ーーーーー ちなみに、変態◯面の様にパンツを被り匍匐前進でカウンターまで避難した騎士崩れの男とマスターの間で
「・・マスター保護を・・頼む! 俺もシェルターに‼︎」
「被害が飛び火すっかもしれねーから、コッチ来んなや!」←(シッ、シッと野良犬を払う仕草)
「グヌっ・・お宝《エロ本》1冊で何とかッ・・‼︎」←(身を切られる様に血涙流し中)
「熟女に興味はねえ!・・女は12歳までだ‼︎・・助けて欲しけりゃ幼女紹介するかツケ払えや!!!」
という熟女好とロリコンのやり取りがあったのだが・・・・ ーーーーーーーーー
何事も無かった様に席に着く騎士崩れの男。
争いの最中はいつの間にか消えていて、チャッカリ座に戻っている女舎弟。
気を取り直し新しいタバコに火を付ける女魔術師。
ブツを魔法のバッグに入れ、向こうの世界のバーボンを注文する不良シスター。
避難場所から戻りさっそくポッキーを食べ出す女剣士。
「兄さん、姐さん方、チ〜スッ!・・・ほら兄さんしっかり・・」
と若い男がアハトの手を引き入って来た。アハトは『えぐぅ、えぐぅ』と少し涙目で続く。
男は、年の頃は20歳くらいで背は170後半、金髪のロン毛が似合うイケメンでホストの様な雰囲気を持っている。
その若い男の後ろからは15、16歳の少女がアハトの背中を手で押しながら、続いて入って来た。
顎の下まで有る良く手入れされたストレートな金髪。貴族の娘の様な知的で燐とした佇まいと、それに似合う少しキツめの顔。
こちらの少女は軽く頭を下げただけで今の時点で挨拶は無い。
やがて2人がテーブルまで来ると
「兄さん、姐さん方、久しぶりッスネ! 良い情報持って来たんスよッ!・・それはそうとアハトの兄さんどーしたんスか?・・公園の方で見つけたんで連れてきたんスけど・・?」
と若い男がチャラけた感じで大袈裟なジェスチャー付きで話し出せば、少女の方は
「皆さん、久しぶりです。・・アハトさんは、とりあえず涙目だったので兄妹で保護しましたけど・・・」と言ってキレイなお辞儀をし、それから困惑した表情を見せる。
すると、アハトが前に出て涙目で皆を見る。←(捨てられた仔犬が元の飼い主に出会った感じの目です)
すると女剣士以外は『うッ』と冷や汗を一筋流し "スっ" と目線をそらす。女剣士は『ん、何?』と可愛いく小首を傾げアハトの目を見て小さく頷くと、席を立ってアハトの元へ近付いてアハトの頭を撫でる。
女性陣は、『美味しいトコロを持ってかれたゼ!』と言わんばかりに『ぐぬぅ〜』と唸っている。
アハトは女剣士に撫でられながらも4人を見る、もっと見る! さらに見る‼︎ う〜んと見る‼︎! さらにさらに見る‼︎‼︎
「「「「ゴメンなさい」」」」 ・・・・・皆謝った。(とりあえず許す‼︎)
アハトは女剣士に「ありがとう」とTVエヴァのラストシーンの◯ンジ君並の笑顔で言う。その笑顔を見た女剣士は『ポッ』と頬を染め少し俯きながらヨタヨタと席に着く。
『この流れはマズイ!女剣士ルートはこれ以上進ませない‼︎』とばかりにに女魔術師と不良シスターは互いを見て頷き一つ。
流れを変えるべく女魔術師が口を開いた。
「・・悪童兄妹、久しぶりだねぇ〜。まあ、お座りよぉ」と女魔術師。
「嘘情報じゃ・・無いでしょうね?」と、顔だけは聖職者モードになる不良シスター。
「・・・おヒサ・」と少し照れているのをポッキーを咥えて誤魔化しながら、チラリと悪童兄妹の方を見る女剣士。
騎士崩れの男は軽く手を挙げ挨拶の代わりにしている。
「悪童!元気そうだな! 妹の方は相変わらず・・胸は・・・まだ・・」と妹の胸を見ながらニヤリとしながらハッキリと言わない女舎弟。直ぐさま悪童妹が
「私の胸は未来があるんです!あるハズです‼︎ 貴方程度の胸は超えてみせます!!!」
とムキになりながらも、日本から仕入れた知識のお祈りの仕草で "パンパン" と2度手を鳴らしてから手を合わせて拝む。もちろん目線は女魔術師と不良シスターの胸をガン見しながらだ。
女魔術師と不良シスターもこれには 「拝まれてもねぇ〜」「・・悪童妹の胸に幸あれ・・」と小声で言いながら苦笑している。
悪童兄が女性達に気の利いたセリフを吐こうと口を開けようとしたが、アハトの言葉によって遮られた。
「 悪童。お前の情報、仕事はいつ頃になりそうだ? 」←(アハト復活しました)
「・・再来月くらいですネ。情報の確認にどうしても1ケ月程時間がかかるもんで・・・」
チャラけた態度はそのままだが、目は少し細くなっている悪童兄。そして、さらに悪童兄は続ける。
「開始までに時間はかかりますが、ヤマはデカイですよ!・・現金は金貨4000枚(4億円)以上。その他の荷が、ざっと金貨2000枚(2億円)といったところッスネ。」
悪童兄の話しが終わる。具体的な大きな金額が出てもこのメンバーは 『ふ〜ん、そうなんだ。』とばかりに表情や態度の変化は無い。
「・・・それって・・強盗? 」
珍しく女剣士が小さく手を挙げて質問する。
「ハイ。ある商会が桜市に仕入れと買い付けに行くんですヨ。まぁルート上の何処かで、仕掛ける事になると思うッス。」
「・・20日前にもう一度話しをする・・・って感じか?」騎士崩れの男が言う。
「そういう事になると思います。皆さん参加して貰えますか?』と今度は悪童妹が普通の話し方で言う。
「・・では、その方向で進めてもらうということで・・・全員いいですか?」と不良シスターが皆の目を見ながら促し、全員返事はしないが軽く頷くことで話を纏める。
悪童兄妹も酒を注文し、8人に増えたこのテーブルはカオス(混沌)に突入する事なく時間が経過する。
しばらくして、悪童兄妹が1杯飲み終えると2人は席を立ち
「・・情報の為にアレコレ動かないとイケナイもんで・・・」と頭を掻きながら悪童兄。
「ごめんなさい。兄も私もまだ仕事があるので・・」頭を下げながら悪童妹が言う。
「・・・ああ、わかった。」 ←(いつの間にかエロ本を見ていて視線を本から外さない騎士崩れの男)
「〜仕事の件、頼みましたよ」←(優しい微笑をしているが豪快に酒を煽り『くぅぅ〜うめー』とオヤジくさく息を吐いて話す不良シスター。)
「まぁ〜、しっかりとおやりヨ」←(タバコを吸いながらオトナの女の色香漂う笑みをする女魔術師。)
「・・・・・・・」←(『俺の後ろに立つな!』という雰囲気を出し、ゴル◯になりきっているのか何も言わず親指を立てて返事をする女舎弟。)
「・・・ヒョう、フ、へ、ひぇ(気を付けて)・・・」←(相変わらず酒の肴にポッキーを食べてる女剣士。2箱目)
「・・・下手打つ(失敗する)なよ・・」と一瞬、『俺も何か(色物的な意味で)したほうがいいのか?』と思いながらも無難に返し、『オレ達、アウトローというより色物集団に見られてるかも・・・』と生き様に心配をし少しへこむ(気落ちする)アハト。
悪童兄妹が帰り6人になったテーブル。
ーーーその席に座る人物達は誰も口を開いていない。皆静かに酒を飲んでいるーーー
・・すると・・・
フフ、クスっ、あはは、ふッ、ニヤリ、ニヤニヤ と偲び笑いが始まった。
バーボンが入ったグラスを片手に皆を見回して不良シスターが言う。「フフフ、わたし達を出し抜けると思っているのでしょうか?」
「・・まだまだ修行が足りない・・」と髪に隠れていない左の糸目を少し開き青い獣眼をみせ、ニヤリと笑う女剣士。
"ふッ" とニヒルに笑い「コッチもとっくに情報は掴んでいる。・・・オレ達と喧嘩したいなら、それはそれで "アリ" だがナ。」と『何時でもかかって来んかいィ!』とばかりに騎士崩れの男が凄む。
「あははハハハ・・・あいつらバカですねぇーアニキ達を担ぐの10年早いッつーの。・・でも、アニキに吹かし(嘘)言ったのだけは許せないですよ。・・・・殺りますか? 1言、言って貰えればオレ飛びますよよ!(ヒットマンになる)」とエルフのクウォーターながら高い魔力持つ女舎弟が、魔力の燐光を纏い無表情顔で言いながら殺意を出す。
クスクスっと色香ある大人の女には似合わない、少女の様な笑いを洩らした女魔術師。だがそのギャップが彼女を魅力を増している。そんな女魔術師が言う。
「まあ〜、あの兄妹もカワイイもんじゃないか〜、自信があるトコロなんか特にねぇ〜?」
アハトも珍しくニヤニヤと笑い女舎弟の頭を撫で、その怒りを鎮めながら
「あの兄妹の事はその仕事の時にでもお仕置きするとして・・・・」
と話しながら女魔術師に目配せをし、小さく人差指を立て空中に円を描く仕草をする。
無言で合図に気付いた女魔術師が小さく呪文を唱えて魔法を発動させる。するとーーー
先程までの店の喧騒が急に全て聴こえなくなる。まるで無人の雪山に1人で佇む様な感覚を一瞬感じて現実に意識が戻る。女魔術師の結界魔法がこのテーブルの周りを包んでいて、キチンと機能している証拠だ。
「これでイイかい? で、今日の本題は何だっていうんだい?」結界を張り終えた女魔術師が言う。
他の4人もアハトの顔を見る。アハトはニヤけた顔を引っ込め
「仕事だ」と短く答える。すると不良シスターから 「でぇ?」と短く質問される。
「1人、レンガ1個(1千万)と向こう側の品を帯2個(200万)分。・・残り20日で隣国の勇者候補パーティーの1つを皆殺しにする。」アハトが答える。
「・・的の戦力は?」騎士崩れの男が鋭い目付きで問う。
「勇者候補が3人で、レベルが全員C。大したチートは持ってねえ。他のお守連中は、騎士と冒険者でBが9人、AとCが2人づつ、場合によって貴族のアホガキ共が私兵を連れてピクニック(一緒にに付いて来る) に来るかもしれねえ」
「・・支払いになってやっぱり金貨で・・なんて事は無いですよね?」確認する不良シスター。
「無い。・・前金は仕事を始める前に100(万円)だ。」すかさず返すアハト。
「・・・美味しいねぇ〜。このメンツで、円で貰えてボーナス付き、・・やらない手は無いねえ〜」
「・・獲物が少ないけど、仕事だし、旨味十分・・・やる。 」
と女魔術師と女剣士。そして深く頷く騎士崩れの男。
「もちろん私もやりますよ?」今日1番の笑顔で答える不良シスター。
「オレはアニキの舎弟だからナ! 否が応も無く付いてくだけさッ!」とアハトに撫でられた頭に手を置き、もの凄く嬉しそうに答える女舎弟。
全員の返事を聞き立ち上がるアハト。
「じゃあ、そーいうコトで行きますか〜」
と、ゆる〜い感じで言うアハトだが、アウトローらしい悪漢の笑みを浮かべ歩き出すアハトに、皆も席を立ち続いて行く。
歩き出したアハトが何時ものように女舎弟に店へのチップという名の迷惑料を渡す。
女舎弟は受け取った小金貨を下から手のスナップだけで放り投げた。
投げられた小金貨はキラキラと光り、空中で緩やかな弧を描きながらアハト達が座って居たテーブルに向かって行く。
やがてテーブルの上の1つのグラス中に吸い込まれる様に落下した。
ーーーー チャリッ、 チャリーン ーーーーーー
小金貨がグラスに当たるその音は、とても綺麗な音色でマーシズBARの店内によく響いた。
お読み頂きありがとうございます。
なるべく急いで次話を投稿出来るよう頑張ります。