緩んだ騎士と剣士
よろしくお願いします
二流といっても腐っても冒険者だ。御者の男が倒されてからの行動は早い。内側から燃える幌を切り裂き馬車の外に出て来る。護衛対象者を見れば、勇者候補達は驚きの余りバラバラの行動をしている。冒険者達に『助けるのは無理だ』という想いが過る。
勇者候補達が2人はバラバラに逃げだそうし、残り1人が焼き殺されようとしているのを目撃すると、冒険者達は護衛よりも自分達の生存を優先し2人づつで離脱をはかる。
街道を外れ、背が高い草木が茂る土地を山側に向かい走る男女2人の冒険者。
後ろを走っていた女の冒険者が 『ギャッ』と短い悲鳴を上げ、胸の心臓の辺りから飛び出ている槍の先端を見ながら崩れ落ちる。
悲鳴に反応して走るのを止め、後ろを振り向いた20代後半と思われる冒険者の男はそこで、黒い鎧兜に顔まで黒く塗った男と出会う。
最短で標的の護衛の1人を葬る。
背後からとか、女性だとかは関係無い。此処は戦場だ、油断は死を意味する場所だ。倒せる時に倒すのは当たり前の事だ。嬲る、言葉を交わすなどは蛇足で有り、無意味で無駄だ。矜恃やプライドも必要無いだろう。騎士を辞めてからの自分はソレを知った。『全てが関係無い、生きれば勝ちで負ければ死。それが戦場だ』と。しかし、『人は考える生き物で気持ちは必ず有る』そう言ったのは剣の師だったか?、アハトだったか・・?。ああ、そうだアハトだ。さらにアイツは『好きにやれば良いんじゃね〜の?良いトコ取りでも、自分でルールを決めても、それがオレ流って感じでさッ!』とも言ってたな。まったく、アウトローのアイツに酒の席で目を開かせられるとは。だから俺も、ジョーイ流・・チョッと語呂が悪いな⁉︎ ジョーイ - ヴァン - バローズ 流の生き方をしてる。もっとも、その生温くもあり辛辣でもある悪徳の道《生き方》は世間ではアウトローと言われているが。
背後から殺ったせいか昔の事を少し思い出していたみたいだナ。
その間、男の冒険者は緊張した表情で此方を観ていたが、焦れてきたのかジリジリと後退を始める。
フ〜、やっぱり二流か。目線は動きっぱなし、山の方面から狙撃があったのに、立ち止まるはわ、後ろ向きで後退するわって悪手過ぎるだろ!・・ダメだ、気持ちが乗ってこねーワ。
俺はゆっくり片手を上げる。すると冒険者は一瞬ビクリと動きが止まるが、俺が直ぐさま攻撃し無いとわかると、すぐにまた少しづつ後ろに下がっていく。
俺はハンドサインでマリーに連絡をする『援護射撃しろ』と・・・・・・…………
( 3分経過 )
遅いワッ‼︎ マリーのヤツ〜!どーせ、スコープでアハトを見て『ハァハァ』しててコッチの事なんか見てねぇ〜んだろうけどナッ!後で説教だッ!!!
冒険者の男との距離が10m位になっちまった。ヤバイ!気が抜け過ぎた!
男がナイフをこちらに投げ、向きを変え全力疾走を始める。ナイフは体の位置をズラす事によって簡単に避けられたが、こちらのスタートが遅れた。
スグに俺も走りながら、仕方なく通信機でマリーを呼び出す。
『おい!マリー‼︎ 聞こえてるか? 1人逃しちまった!援護してくれっ!』
『・・・・え"えぇ〜、オレぇ〜幸せ時間中なんだけどぅぉ〜?・・チッ! しょ〜うがねえ〜なぁ〜。おサルの兄さん!貸しイチだからナっ!』
『サル言うなッ!』
1発の銃声の後、続けて2発目3発目の銃声が辺りに響く。倒れている冒険者の男の処に油断無く近付く。
頭に1発、胴に2発。キッチリとタマを取っている。 "さすがだなマリー"と思っていると
『ちなみに利息はミイチ(3日で1割)だから、ヨ、ロ、シ、クッ! ジョーイの兄さん?ウっキっキっキィ〜!』
・・・・・・・・・・・・殴りてぇ‼︎ メッチャ殴りてぇぇぇ〜・・・
・・・こんな巫山戯たやり取りとジョークの間に人の命が消える、そんなアウトローの世界。これが今の戦場。ココが俺の戦場だ!
馬車からカラナ大河に向かって走る30過ぎと思われる冒険者の男と、まだ少女と呼べる見た目の冒険者の女。男が少女に声を掛け励ましながら2人は走っている。
少女が気を配っていなかったからか、それとも男が少女に気を囚われていた為か、2人の冒険者は目の細い最悪な者と出会ってしまう・・・・・
街道から大河までの土地は、岩や木は少なく草や枯れ木は胸の辺りまである。しかし所々にポッカリと土が見え、岩や草木が何も無い場所が幾つか有る。
そんな一つの場所で全身が紺色のサムライと冒険者をMIXした様な出で立ちで、右目をその紺色の髪で隠したポニーテールの女が自然体に佇む。
私の前に、二人の冒険者が立っています。男性の方が少女を庇う様に私に剣を向けています。
顔が似ていないので、親子では無いと推察しますが恋仲なのでしょうか?
男性の方が私に語りかけます。『この娘だけは見逃してくれないか?』と。
私は逃すつもりはありませんが、動かずに観察を続けます。すると少女の方が男性の方の手を引き、
『ダリオさんも一緒に逃げようよ!サイもきっと無事に逃げて待っていてくれるよ!』と語ります。サイという方は恋人さんなのでしょう。少しだけ羨ましいという気持ちが芽生えます。
考察するに、このダリオさんと言う男の方はサイさんと仰る方の父親か、この冒険者達の隊長を務めていて良く慕われているのでしょう。しかしながら状況を考えますと、そのサイさんという方は間違い無く亡くなっているはずです。皆が分担して向かう手筈になっていますし、後方に補助のマリーさんもいます。先程、再び銃声も聴こえて来ましたので、彼方は状況が終わったのでしょう。
ダリオさんと言う方が再び口を開き『・・ダメか?』と私に聞いてきます。私は小さく首を横に振ります。今度は少女が『見逃してよ、お願いだから!狙いは私達じゃ無いんでしょ⁉︎』と叫びました。
なので私は隠していない左目をもう少し見開いて、蒼く縦に割れた悪魔の獣眼を二人に見せながらこう言います。
「・・見逃すのは否。…故に死して骸を晒せ・・」
魔法の袋と召還魔法、それに空間魔法の応用によるリリウムさんが作った新しい魔法。この魔法専用の手袋をはめた私の左手に鞘に収まった刀が出現する。身体に力を入れず自然体のまま構えます。
少女も短剣を抜き魔法の詠唱に入ろうとする。ダリオと言う方も腰を少し捻り剣を持った右手と右脚を引いて突きを放とうとする。
アハト殿に見聞させて頂いた抜刀術。魔法と組み合わせ研鑽を積んだ事により、さらに素晴らしい技へと昇華できたと自負している。その刀術を只、放つ。
"水滴の弾けた粒子、その粒子がさらに弾けるその瞬きのような刹那な瞬間。その技を開放する "
ダリオさんが居た場所の後方に移動している私。手には抜かれた血塗りの刀。私の前には余命幾ばくも無いダリオさんの上半身と切断された下半身が転がっている。
『逃,げロ・イ, ケ…』とダリオさん最後の言葉に反応して少女が走り出します。
刀を振り付着した血を飛ばし、もう一度抜刀術をする為に内刀します。先程より相手との距離が開いてしまったので、私が少し腰を落とし脚に力入れ身体を進めようとした時、ある気配に気付き抜刀術の体勢を解きました。
リリウムさんの魔法が逃げ出した少女の行く手を遮る様に、数枚の大きな土壁を出します。
迂回しようとした少女は土壁の死角からテレサさんの脛脚蹴りによって片脚を壊されたようです。
「・・メグ。いら無い手助けでしたか?」聖職者状態のテレサさんの登場です。
「さっさとトドメを刺しておやりよぉ〜メグ。」今度はリリウムさんがやって参りました。
言われて少女のほうを見れば、地を這う様に腕だけで進んで行こうとしています。
『・・イ、嫌だ。 サイにぃ サイに、会うんだッ! それでっ…』少女の声が聞こえます。
この殺しは、任侠道の道を選んだ私の仕事で生き方。でも、私は少し後悔しました。・・冒険者のお二人を初見で瞬殺して差し上げれば良かったです。
「「メグ・・」」
リリウムさんとテレサさんが促します。お二人も同じ女性として、また任侠の者として思う所が有るのでしょう。
「 ・・・・・ごめんなさい。」と、少女に声をかけ私は少女を一刺しで絶命させました。
リリウムさんとテレサさんから慰められながら合流する場所へと歩いて行きます。
先程の殺しの事を思うと心が重くなります。
私は別段、嗜虐趣味など有りません。ただ、刀剣や刀剣術が好きなだけなのです。
しかし私は思います。何故私は普通の人々と意識の相違が有るのか?何故アハト殿達と同じ渡世人との相違を感じてしまうのか?歩きながら考えますが答えは出ません。
合流場所へと着くとジョーイさんとマリーさんもいらっしゃいました。しかしアハト殿はまだ来て居ない様です。こんな日はアハト殿の側に居たいです。
アハト殿が煙草を吸いながらのんびりと歩いて此処へと向かって来ます。遠くよりアハト殿の顔を見ると何時も想う事があります。
私、マーガレット、ラスターはアハト殿の剣に成りたいと願っています。剣であればアハト殿の傍らに居られると思うので。
私も女です、女として共に在りたいという想いもあります。しかし私には剣以外は何も有りませんから。
そう・・私は一介の剣士、そして殺戮者。それ以上でも以下でも無いのだから。
お読み頂きありがとうございます




