殺しと名
よろしくお願いします
最初の勇者候補の一団を見送り(スルーして)、後から来る勇者候補の一行を待つアハト達。
女舎弟達は監視していた場所で的を待ち、戦力などを分析しながら的を尾行してアハト達と合流する手筈になっている。
「・・Betrayal・・裏切りですか・・・同郷だからといって『仲間』だとか『信じられる』とは言いませんが・・・チョッと遣る瀬ないですね・・」
不良シスターがアハトに気を遣い声をかける。
「・・裏切った理由は、俺たちアウトローの様なシンプルな原理じゃ無くて、さぞかし御大層な訳が幾つもあるんだろうサ・・まあ、どんなに理由を付けったって命関わる裏切りしてるんだ。後は命の取り合いしかねえから、俺たちがココに居るって訳サっ」
アハトが一旦言葉を切り、続けて
「・・気〜使ってもらって、ありがとな・・」
「・・アー君・・・アー君が何とも思ってなければそれでイイの。」
とアハトの手を取り、その豊かな胸に抱く不良シスター。←(『ラブフィールド展開!うひょ〜チャンス到来‼︎』心の声です。)
何ともこそばゆいラヴイ空気が漂う中、互いの目が合ったその時!・・・・ 通信機から・・
ピ〜ピ〜、ガーガーー、 【・・アー、アー・・テス、テス。そこのデカビッチ(欲求不満デカ女)!アハトから離れなッ‼︎・・そうだ、そうだぁー!アニキにくっ付かないでくれヨッ‼︎・・・ハァ〜、お前ら何やってんだ。じきに的が来るって時に〜・・・】
「・・・・・・」「・・・・・」「・・・・」「……」「…」
何とも言えない空気になり、口を開け微笑したまま固まる不良シスター。
暫く固まっていたが
バギィ、バギバキバキ という通信機を破壊する音と共に目を見開き覚醒し、大きく口を開らいて暴走したエヴァの如き咆哮をしようとする不良シスター。
それまでアハトと不良シスター、というか不良シスターの一方的ラブフィールドの所為で、空気の様な存在になった女剣士が、ナイスなタイミングで食べかけのポッキーを不良シスターの口に突っ込んで人差し指を立て『しぃ〜〜〜』というジェスチャーをする。
「ングっ‼︎』っと大声を出す前に口を噤む不良シスター。やがて気まずそうに2人を見て
「・・ゴメンナサイ…」と、女性にしては大きな身体を縮こまらせて謝った。この時の仕草が『あっ、カワイイ・・』とアハトが思ったのは秘密である。
やがて草が揺れ木々の間から女魔術師達が現れる。
小声で『アニキィ〜』と言いながらルパンダイヴをしようとした女舎弟の襟首を捕まえた騎士崩れの男がアハトに声をかける。
「後、1刻くらいで来るゾ。」
「アホガキ共(勇者候補達)とその紐(取り巻き貴族とその護衛達)は?」
「付いてなかったねぇ。冒険者5、騎士が2ってところさぁ〜」
と女魔術師が不良シスターを軽くニラミながら『フン』と鼻を鳴らす。
「クっ!」と小声を洩らしながらも我慢をしてシスターモードで質問をする不良シスター。
「・・ガード(護衛)の数が減っていますが、本命(勇者候補)の数は3のまま?」
騎士崩れの男に襟首を掴まれたまま "ぶら〜ん" と宙に浮いている女舎弟が答える。
「間違い無く3ですヨ姐さん。・・声も拾って確認してるから大丈夫だよ、アニキィ!」
アハトにも安心してくれと言わんばかりに、アハトに話しを振る女舎弟。
「・・ガードが減った理由は、先に通った勇者候補達に有りッて感じか・・・」
「だろうな・・」何か思うところが有りそうな騎士崩れの男。
「ツイてる事は変わらないんだからサ〜、そのツキに乗っかるって事でイイんじゃないの?」と女舎弟が騎士崩れの男の手から逃れて言う。
「そうだねぇ〜。・・じゃぁ〜、ソロソロ持ち場に着いてパーティーを始めようじゃぁないかい?」女魔術師が皆を促す。
「始めるか。」 「ウスっ!」 「ああ。」 「ええ!」 「・・了解」
と、アハト、女舎弟、騎士崩れの男、不良シスター、女剣士が了承し、6人皆で一瞬目を合わせ1回頷くと方々に散って行った。
そして半刻ほど過ぎ、2台の幌馬車が餓狼達の餌食になろうとしていた・・・・
絶好の狙撃ポイントだと思う。木々の枝が相手からワタシの姿を隠してくれる。木の枝を渡れば狙撃ポイントも移動できるし・・。木々や野山の移動はエルフの血を引く者ならば容易い。そしてワタシの仕事は2台の馬車の御者を仕留める事だ。
最初の馬車は冒険者の馬車のようだ。20歳くらいの若い冒険者風の男が1人で御者をしている。
2台目の馬車は2人の騎士が御者席に座っている。こちらの馬車にターゲットが乗っているのだろうう。
今回は魔法(精霊魔法)を使った狙撃をする必要も無い。今の私の武器である狙撃銃も以前使っていた弓もやることは変わりない『構えて狙って打つ』それだけだ。
今回はアハトさんに貰ったM-16A4を使う。片腕の私に短時間で複数の標的を始末するにはオートマチックを使うしかない。高い命中精度を求められるのなら特殊な精霊魔法を使用してボルトアクションを使うが今回は必要無いだろう。片腕になったあの日から生き延びる為に必死に努力して使えるようになった銃は、もはや体の一部となってる。
まずは騎士の方から始末する。スコープを覗き構えて後は合図があれば引き金を引くだけ。
難しい事は全てアハトさんが考えてくれるし導いてもくれる。ワタシは・・マリーシア- レクサは、あの人を信じてただ付いて行くだけだ。ワタシの目的の為、そして何度でも『マリ』とアハトさんに呼んでもらう為に・・・
合図が来た。カウント10から始める。・・・・・4・3・2・1…
アタシと女剣士が街道から歩いて正面から馬車に近付く。ゆっくりと歩き馬車まで後、20m程に近付いた時3発の銃声が鳴った。
良いタイミングだ!後でマリーの嬢ちゃん(女舎弟)を誉めてやらないとねえ〜。
見れば、騎士が1人の、冒険者が1人、屍となって馬車から落てるよ。もう1人の騎士は御者席で死んでるようだねえ〜。
アタシも自分の仕事をする為に前と後ろの馬車に弱めのファイヤボールを放った、そうしたら後ろの馬車の幌が燃えて中から茶色い髪した黒目小僧が出て来たんだよ〜。
しきりに回りを見てるけど反応が鈍いねえぇ〜・・オヤ?ようやくコッチに気付いたねぇ。じゃあ〜悪いけど逝ってもらうとしようかネッ!
準備してあった魔法を発動させて、5m程の蒼い炎の竜を出現させるのと同時に、コチラに気付いた勇者候補に蒼炎竜を向かわせる。
アぁ〜、てんでなっちゃいないねぇ〜。魔法(炎の竜)を見て顔を引き攣らせて対処出来ない(魔法を止める)なんて、本当に勇者候補かい?茶髪に黒目はナントカ-ウィザードってゆう二つ名を持ってるって話しだったけどねぇ〜・・炎の蒼竜が素早く小僧に巻き付いて、体全部を炎に包んだけど、・・もう終っちまったヨ。まぁ、巷で『マッドウィッチ』なんて呼ばれてる、この " リリウム姐さん "の敵じゃあ無かったってコトさねっ! ギャーギャー騒いでいたのはほんの少しだけサ。すぐに静かになって後は肉の焼ける音と匂いだけ・・・後には骨も残らず黒いシミ(黒い焦げ跡)がってネ!・・・成仏しておくれよ?
相変わらず、エグイねえ〜リム(女魔術師)のヤツ!まぁ死体が無けりゃ神官も葬儀の際に楽ってモンだけどサ〜・・・・オッ!来たキタぁ〜!ビビってコッチの方に逃げて来た勇者候補のガキが キ・タ・ゼッ!一瞬止まりかけてまた走り出したけど・・ああっ!シスター服見て安心しやがったな?・・あちゃ〜!ワイルド系か〜タイプじゃね〜んだよなぁ〜⁉︎ まッ、サッサと終わらせますか‼︎
ワタシは笑みを浮かべ両腕を横に広げてガキが来るのを待った。金髪碧眼で短髪のガキは『たっ、助けてぇ‼︎ えっ、イや、い、えっとお、お、お俺と一緒に逃げましょう』なんて抜かしやがった。ふ〜ん?ちったぁ漢気魅せてんじゃん!でも、ごめんナ?お姉〜サン、あんたを殺らなきゃなんねぇ〜んだワ!
アタシは、恐怖から逃げる様にアタシに抱き付いてこようとする少年を交わして素早く背後を取る。コブラツイストを掛け一気に力を入れる。一瞬で脛骨、背骨、腰骨が砕ける音がして少年は "だらん"と身体を弛緩させた。
少年!ホントは頭ぶん殴って爆散させてやろーかと思ってたけど、漢気魅せたご褒美ダ‼︎最後は評判の美人シスター、" テレサお姉サン " の胸の中で逝かせてヤッたんだから、勘弁してくれよナ!
勇者候補の少女は目の前で焼かれる少年を見て、踵を返して一目散に逃げる。すでに、もう1人の少年も少女に構う事なく逃げている。
『なぜ?』『何で?』『どうして?』と自分自身に疑問の言葉を掛けながら少女は走る・・・恐怖から逃げる為に走る・・・生への執着を持ってひたすらに走る・・・
逃げて、逃げて、走る - 走る - 走る -
今、少女の頭の中はそれしかない。
少女の走る道の前方に ーーーー 灰色の服を着た男が佇んでいた ーーーーー
少女は思う
死にたくない、死にたくない、死にたくない。・・・生きたい! 生きたい!! と。
お読み頂きありがとうございます




