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天使な幼女と都市伝説  作者: 麒麟太郎
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第1話 未確認幻想ガール その1

 第1話 未確認幻想ガール その1


 俺は今とてつもなく困惑している。

 理由は一つ、今朝の話である。


 二十歳になってから俺はフリーライターとして、隠れたパワースポットや心霊スポットを取材して、情報を提供することで生活資金を得ていた。しかし、この時代に残された秘境などそう見つからず、結局親の仕送りが頼みの綱だった。


 そんな時だった。あるオカルト系雑誌の編集者がアパートを訪ねてきたのは。

 奴はこう言った。「ある場所を長期取材してきて欲しい。月給百万だが、どうだ?」と。


 即返事をしたよ。「もちろん引き受けますよ!」って意気込み入れてな。

 都内だし、アパート貸してくれるらしいし、こんな美味しい仕事ないだろ?

 親に迷惑かけないためにも、俺は東京最凶の街、『伊吹原いぶきはら』へと向かった。


 そしてアパートを前にした今、ようやく事の重大さに気付いた。

「あんな美味しい仕事、絶対裏がある…」

 まずこの伊吹原という街。どんな恐ろしい場所なんだと思い前日にパソコンに『伊吹原』と入力し検索してみると、ヒットはあるものの、そのほとんどにアクセスすることができなかった。


 この時点で明らかにヤバイ感じがするが、その時の俺はもうすでに百万円を手に入れたかのようにバカ騒ぎをしていたので気にも留めなかった。


 そして、アパートにも問題があった。

 見た目は綺麗なアパートだが、誰も住んでいる気配がない。『孤独は友達』がモットーの俺にとってはこの上ない環境だが、伊吹原自体が都内のどこにでもある静かな街だったので、誰もいないアパートは明らかに異質だった。


 さらにもう一つ、アパートから異質なオーラを感じ取ったので、アパートを隅々まで観察することにした。


 奇妙な植物が一面に根をはる庭、異常に窓が汚い七号室、その七号室のドアにもたれかかる天使、その天使を遠目から観察するおじさん……


 ああ、あのオーラを放っていたのはあそこにいる天使か。どうりで眩しかったわけだ。


「…天使ィ!?」


 思わず叫んでしまう。その瞬間、遠目に天使の様子を伺っていたおじさんがこちらを凝視する。

「なんだ貴様ァ!お前に天使は渡さん!」

 おじさんが叫びながら天使のもとへ駆ける。理由は分からないが、あの子を狙っているようだ。俺は誘拐かもしれないと思い、おじさんが直接手を出すまで様子を見ていた。


 おじさんは天使のもとに辿り着くと、その細いぐったりとした腕を、死んでも離さんと言わんばかりに強く掴んだ。


 見兼ねた俺は、「ちょ、何やってりゅんれすか」と生まれつきの滑舌の悪さを応用した座敷わらし語でなだめようとするが、伝わらなかったらしくおじさんは天使を連れて立ち去ろうとする。

 慌てて追いかけるが、路地に逃げ込んだ二人を視界にとどめておくのに精一杯だった。


 その時だった。

 おじさんに抱えられていた天使が目を覚ましたのだ。

 刹那、おじさんの体は、まるで自分の時間だけ巻き戻るかのようにその場に天使を残してこちらの方向に吹き飛ばされてきた。


 まずい、このままだとおじさんとの正面衝突は避けられない。急ブレーキをし、なんとか止まることはできたが、おじさんの勢いは落ちず、俺の体を巻き込みアスファルトに不時着した。あわわわわ、と鈍い音がする。


 いや全然鈍くねぇよ


 声の主は天使だった。幼い女の子の姿をしている。いや、天使の姿をした幼女が正しいのか?でもあの力は…


 慌てる幼女は白いワンピースを揺らして淡い紫色の髪を垂らし、俺に声をかけた。


「あのぅ…だ、大丈夫です、よね?」






葛城カツラギ 永遠トワ…俺。

性別:男

能力:なし

小学時代のあだ名:座敷わらし、地縛霊

家族:父、母、妹



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