3day2
バイクで高速を疾走する。
「それで井上今日はどうするの」
「デパートに行こうと思う、物資が足りなすぎる」
今朝は焼き鳥缶を食べたのだが、主食が欲しくなる味だった。それに冷たいのも辛いし、物が必要なことがわかる。だからそれらすべてが集まるところであるデパート、もしくはそれに匹敵する程の物が手に入りそうな所に行こうとは思うのだが、気が進まない。
「デパートか、楽しみだね」
「いや、気が重い」
「そうなの」
「物が多いから人とか居そうで」
「それはいやだね」
「ああ」
話ができるくらい余裕があればいいのだが、ゾンビに囲まれていて大変とか、他者をすべて拒絶して人もゾンビも躊躇いなく襲ってくる、といったような状態であれば諦めようかと思う。
「はぁ」
「そんなに嫌なら行くのやめれば」
「いや、物は必要だから行くよ、と言うか1時間もバイク飛ばしてきたから今さら引き返したくない、んあれは」
前方に人影が見える。
「1人で歩いてるね」
こちらに気づいたのか大きく手を振っている、だからかなり離れた所で止まる。銃に手をかける。その人影は意図に気づいたのか両手を見える位置に上げたまま近づいてくる。
「井上あれ何してるの」
「こちらに危害を加えないことをアピールしてるんだと思うよ」
人影が男であり大型リュックを背負っていることが分かるところまで来た所で止まる。
「すまない、この先で休めそうな所はあるか」
「わからない、だがここからバイクで1時間ほど行ったところにガソリンスタンドと自販機があったぞ」
「そうかそれだけでも助かる」
「じゃあな、紗枝あいつを警戒しといてくれないか」
「うん」
バイクを再度走らせる。襲ってくると言うことはなかった。
「ふぅ」
見えなくなるところまで走り、一息つく。
「井上さっきのあれ」
「いや、襲われてバイク奪われたりしたら嫌だったから離れてたんだけど、向こうも意図を理解してくれてよかったよ」
「なら向こうが聞いてきたこと答えたのは」
「別に隠すことでもなかったし、失礼なことをした詫びとして」
向こうは気にしてはないだろうが、気分的な問題なので深くは考えていない。だがそこまで考えてふと思う。
「なにか物々交換でもしたらよかったかな」
「でも交換するものあるの」
「………ないな」
考えてみたのだが、こっちもギリギリだし、向こうは1人であるので余計な物を運んでいる余裕はないだろう。つまりどちらも交換するものはない。だから諦める。
「結局取りに行くしかないか」
「そうだよ」
だから全力で高速を突き進んだ。