19day5
「どけぇっ」
ゾンビで溢れる町中をバイクで疾走する。
「紗枝」
「分かった」
紗枝が銃でゾンビを撃ち殺し、その隙間を縫うようにバイクを操作していく。
「そう言えば紗枝の銃は」
「弾切れてたから捨てちゃった」
「そっか」
急いでいたから仕方がない、それに弾がないなら捨てた方が軽くなり、体力の消耗を抑えられるだろう。
「パパ寒い」
移動手段もあり、武器もある僕たちにとって今ある問題はただただ寒いと言うことだ。日は昇っているのだが、まだ気温がそれほど高くない上に、濡れた服でバイクに乗っているため、吹いてくる風で体温をどんどんと奪われていく。
「パパも寒いからもう少し我慢してくれ」
体力の消耗が激しい菜々美のために速度を落とす訳にもいかないので、励ますことしかできない。それほどまでにゾンビが多かった。今ビル街の大通りを走っているのだが大通りにも、その脇道にもゾンビがうじゃうじゃといた。もし転びでもしたら30秒も持たずに死ねるだろう。ハンドル操作に繊細な注意を払う。どこかから銃声が聞こえる。それに叫び声も聞こえる。だがそれらをすべて無視する。無視せざるをえない。助けるには武器も少なく、移動手段もなく、そもそも助ける気すら起きない。
「うぉっ」
倒れていた何かを轢く、バランスを崩しそうになるがなんとかこられる。
「あなた空になったのは」
「捨てろ、菜々美僕のウエストポーチから」
「うん」
菜々美が僕のウエストポーチを漁る、本当なら外して渡せばいいのだが、それだとウエストポーチのベルトに挟んだ銃を落としてしまうからこうするしかなかった。
「あったよパパ」
「なら紗枝に」
ほとんど怒鳴り声だ、それほどまでに気を抜きたくなかった。やっと高速への入り口を見つける。
「あった」
そこにはゾンビは少ししかいない、あそこまでいけば逃げ切れる。そう信じながらバイクのアクセルを更に回す。また何かを轢く、だが今度はバランスは崩さない、その何かは空のリュックとかだったのかもしれない。だがそんなことも気にする余裕はなく前に進んでいく。
「あなたあとあっ」
「パパ道が」
高速の入り口がなぜゾンビが少ないかがわかる、爆発の衝撃で飛ばされたコンテナの破片と車が道を塞いでいた。だがそうとわかっても止まるわけにも曲がるわけにもいかない。
「紗枝、菜々美失敗したらごめん」
その捨てられたであろう車は、本当は出口だったのか正面がこちらを向いていた。そして僕達の乗っているバイクも後部が荷物で重くなっていた。だから気合いで、後ろに体重をかけ、フロントを持ち上げる。そして前輪を車へとかけ、アクセルを最大にまわっ。
「行けぇぇぇぇぇぇぇぇ」




