19day4
荷物の点検も、濡れた服を着替えることもなく。バイクを目指し進む。
「あなた鍵は」
「大丈夫持ってるよ」
急いでいてもそれだけは確認しており、ちゃんとポケットに入っている。空が、町がだんだんと明るくなっていく。それにともないそこかしこから銃声が聞こえる。増えたゾンビと戦っている人がいるのだろう、だからといってどうすることもできないが。
「パパ菜々美達は大丈夫なんだよね」
「ああ大丈夫」
弾もそれなりにあり、移動手段も持っている。この辺りの安全なところは知らないが、最悪中央の町のホテルを目指せばいい。あそこならば誰かしらいて、それなりに顔が知られているので、比較的安全だろう。
「そう言えば銃は動くんだろうか」
ふと気になる、だが動かなくてもここに留まると言うことは選択できない、だから例え荷物がすべてダメになってしまっていても前に進み逃げるしかなさそうだ。
「止まれ」
バイクのそばまでたどり着く、バイクのそばにはゾンビの影は見えない。だが船のせいで反響したのか、本当はすぐそばにいるのかは分からないが、ゾンビの呻き声だけは聞こえる。
「紗枝回りを警戒しといてくれない、僕と菜々美でバイクの準備してくる」
「あなたわかった、私に任せて」
それだけを頼み、銃を背負い直し、リュックを背中から下ろす。更に紗枝のリュックも預かり、足音をたてないように静かにバイクへと近づく。髪に付いていた水滴が垂れる。音がたってもほとんど聞こえないとは分かっていても、何となく不安になる。そろそろと歩みを進める。ゾンビは近くにいないから大丈夫と言い聞かせる。後ろでは紗枝が銃を構え警戒してくれている。そうしてやっとバイクへとたどり着く。たどり着いたところで静かにバイクへと荷物を積んでいく。呼吸が荒くなる。そしてやっとの思いで荷物をしまいきり、バイクへと股がる。だがそのとき紗枝が銃を撃つ。
「あなた」
船からゾンビがぞろぞろとやって来る。
「逃げるぞ走れ」
ゾンビを脇目にエンジンをかける。1発でかけることに成功する。だからアサルトライフルを構えゾンビに向けて撃つ。
「えっこれショットガン」
金属の薬莢ではなく、シェルの残骸が飛び出る。だがそれほど大事なことでもないので乱射していく。
「あなた乗った」
紗枝の声が後ろからする。
「ならこれ」
紗枝にショットガンを渡し、バイクで船のそばを後にした。




