2day6
地下駐車場から飛び出す。
「明るい」
空は明るくすみわたっている。
「それでどこ行く」
「井上に抱きついてる、井上に抱きついてる、井上に抱きついてる」
「おーい」
「井上に、えっなに、ごめん聞いてなかった」
「いやどこ行きたいって話」
「井上と一緒ならどこへでも」
「どこへでもって、なあ聞いてもいいか」
「なに井上」
「何で僕と一緒にいたがるんだ、あったのは昨日だろう」
「まさか私いならいの」
急に大声をあげ、腰に回してある腕がキツくなる。
「うっ、いやそういう訳じゃないんだけど」
「そうよかった」
腕が緩まる。
「井上、私ねみんなに要らないって言われたんだ、学校でも、家でも」
「そう」
「それでね、ひとりで生きて行けるように参加したんだけど、ここでも要らないって見捨てられて、あそこで死のうとしてたんだ。だけど井上が必要って言ってくれたから、私は井上のそばにいるの」
「うん」
重かった、果てしなく重かった。
「だから井上のそばには私がいなくちゃならないの、ううん私だけがいればいいの」
「そう」
重いが別に構わない、大勢と行動したくなかったし、それだけ信用されてれば裏切られることはないだろう。そこまで考えて自分の考えに吐き気がしてくる。
「井上」
「大丈夫、大丈夫だよ」
嫌なことを思い出したが、頭をすぐに切り替える。だが調子は良くならない、だからそれを振りきるつもりではないが、振りきるかのように全速力で南に向かう。
「南に向かうけどいい」
「うん、暖かそうだからいいよ、井上もいるし」
そう言って、高速に乗る。車が多くあってもバイクだからすり抜けられる。車が1台もない高速を全力で進む。
「疲れた」
3時間ほど走行すると辺りは暗くなる、その為にパーキングエリアに止まり、ガソリンスタンドでガソリンを入れる。ガソリンスタンドには電気が通っているのか電気がついていて明るい。
「井上お疲れさま」
「ああ、飯でも食べようよ」
そう言ってハーレーから缶詰を取り出す。
「鯖の味噌煮に、蟹、焼き鳥、それにシーチキン」
缶詰の選択肢が本当になかった。食べられはするが、絶対に足りない。
「冷たい」
「火を起こせるものないよね」
「うん」
せめてガスコンロぐらいは手に入れておきたかったと今更ながら反省する。仕方ないので鯖の味噌煮を冷たいまま食べる。すぐに食べ終わるのだがご飯がほしくなる。
「せっかくここまで来たけど、明日町に戻ろう」
「うん」
それだけを決めてシュラフを開く。
「紗枝先に寝なよ」
「井上が先に寝てよ、疲れてるんでしょ」
「いや徹夜はなれてるし」
「私は疲れてないから」
「………………わかった、けど危なくなったらすぐ起こせよ」
そう言ってシュラフに入る、外は全く寒くないが中に入るだけで何となく落ち着く。そしてすぐに眠りに落ちた。