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14day1

「井上先輩どうしました」

「いやなにも」

 職場で後輩に聞かれる、これは夢だ。

「そうですか、けど何か辛そうに見えますけど」

「本当になんでもないよ」

「それならいいんですが」

 後輩に話すわけにはいかなかった、巻き込みたくなかった。

「よしじゃあ仕事しようか」

「はい」

 パソコンの電源を入れたところで目が覚める。


「起きたか」

 あの男がそこにいた、紗枝たちは走り疲れてぐっすりと眠っていたようだ。

「しかしあんなにゾンビに追われるなんて何をしていたんだ」

「銃撃戦」

「なるほどな、この辺りは荒れたやつらが多いからな」

「そうだったのか、そういえば名前は」

「山口だ」

「そうか、なら山口助かった」

「いやこっちこそあの時の情報と安全な休憩所は助かったからお互い様だ、気にしなくていい」

 あの時とは、多分3日目の朝のことだろう。会ったのはそれだけなはずだ。

「詳しい話はおいといて、ひとまず移動しよう、後の2人を起こしてくれ」

 山口にそういわれ、紗枝たちを起こす。

「あなた、おはよう」

「おはよ~パパ」

「荷物をまとめてくれ、隣のビルに移動する」

 リュックに荷物をまとめる、と言ってもそんなに多くはない。

「ついてきてくれ」

 寝ていた場所から離れ、上に向かって階段を登る。10階分登った頃に階段を登るのをやめ、部屋に入る、そこには梯子があった。

「これで渡る」

 その梯子は隣のビルとの橋代わりになっていた。

「パパこれ渡るの」

「多分」

 その梯子は当たり前であるが下にネットのようなものはなく、踏み外せば下に落ちるしかなさそうだ。

「パパこわい」

「行くしかないのか」

「ああ、正面から出られるが、ゾンビがうろうろしてるから危険だぞ」

 出れなくはないが、かなり危険だろう。

「行こうか」

「わかった」

 まず僕から渡る、梯子の上に踏み出す。下を見ないようにしながら不安定な梯子を渡る。だが不意に揺れ下を見てしまう。そのために高さを意識してしまう。足がすくむ。

「あなた」

「大丈夫」

 紗枝に声をかけられ、下から意識を離し、前に進む。踏み外さないように、1歩1歩確実に歩く、歩くことだけに集中する。足が隣のビルに到達する。渡りきったのだ。振り返り手を振る。それを合図に紗枝がすぐに渡る、彼女はためらいなく渡った。その次は菜々美だ。彼女は怖がっていた、当たり前だ、かなり高いのだ。だがゆっくりだが確実に渡る。時間はかかったが、渡りきった。最後は山口だが彼は慣れているのかすぐだった。

「よしここが目的地だ」

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