2day5
エレベーターが止まり、ドアが開く。そこは真っ暗だ。なにも見えない。
「ひとまずライト点けよう」
「うん」
リュックからライトを取り出し、スイッチを入れ灯りを点ける。
「うっ」
照らされた先には首から上がない死体があった。服は血に染まっている。あまり見ていて気分のいいものではない。エレベーターから降りる。エレベーターのドアが閉まると明かりとなるのは僕と紗枝が持つライトだけだ。
「井上早くいかないの」
「いや、怖くその前に車ないの」
「井上がいるし、怖いわけないよ。井上は怖いの」
「……ああ」
正直に言ってしまう。
「暗闇に何か潜んでそうで」
ライトを使えば一部は明るくなるが、それによって余計に暗闇が怖くなる。
「早くこの鍵が合う車を探そう」
「わかった」
駐車場にはまばらにしか車が止められていないのか、なかなか車が見つからない。だがそれによって探す車が減り、更に死角も減ると言うことで前向きにとらえながら、探す。
「見つかんないね」
「ああ」
だが戦闘はあったらしく、撃たれたゾンビや食い殺された死体がそれなりにあった。かなり臭いがひどい。
「ガスマスクみたいなのが欲しい」
「なら探そうか」
「その前に車」
1台の車を見つける。
「中に誰かいるみたいだよ」
「動いてないなら」
中でそれが動く。
「ゾンビかよ」
無視しようとしたのだが、暴れたためかクラクションが鳴り響く。静かにするためにフロントガラス越しにゾンビを撃ち抜く。後ろに倒れクラクションが静かになる。だがそのせいで何かが動く気配。
「紗枝助手席から赤い棒取って」
車に背中を当てて周辺を照らす。
「うん」
「ついでに鍵が合うかも」
鍵を投げる。
「鍵は、合わない」
半円状に順番に照らす。まだ遠くにいるのか見えない。
「あった」
紗枝が駆け寄ってくる。手には発煙筒がある。
「よし」
それを受け取り、点火し投げる。煙は出るが少しは明るくなるだろう。
「3……体」
明るくなりゾンビが見える、ゆっくりだが近づいてくる。
「井上あそこにバイクが」
紗枝が指した方向に1台のバイクが、それ以外には車はない。だがその間にはゾンビがいて倒さなければ通れそうにない。だから構え、撃つ。反動で外れる。
「頭は当たんないか」
だから体を狙う方向に切り替える。当たりはする、だが2、3発当たったくらいでは倒れない。
「弾切れ」
弾が切れたリボルバーをウエストポーチにしまい、ベルトに挟んだ、弾が込められている別のリボルバーを抜く。
「早く倒れろ」
更に3発撃ち込んでやっと倒れる、これで1体だ。次のゾンビに狙いを定める。大分近くにいるために顔を狙う、だが1発はずし、2発目でやっと倒れる。
「次」
「井上には触らせない」
紗枝が最後のゾンビを倒す。
「これで全部」
「井上すごいでしょ」
「うんすごいすごい」
そう言って撫でてやる。倒れたゾンビに目をやらずバイクに近づき、鍵をさす。ささる。
「これか」
確かハーレーと呼ばれるバイクだ、長距離も移動できるように後輪の脇に金属製の箱がある。
「リュックの荷物一部こっちに移そう」
「うん」
そう言ってリュックを下ろし、荷物を移す。移すといっても半分ほどだ。
「井上息荒いけど」
「いや疲れた」
更に緊張したと言うのもあるのだろうか、走りきった後の達成感のようなものがある。半分ほど仕舞うとリュックをお腹の方に背負いバイクにまたがる。
「紗枝」
「う、うん」
紗枝がガチガチになりながら跨がり、後ろから抱きつく。
「よし、まずは町から出よう」
「うん」
消え入りそうな声で、紗枝が答える。それを聞いてエンジンをかけ、バイクを走らせ始めた。