8day4
それから2時間ほどたっただろうか、何も状況は変わっていなかった。僕は紗枝の頭を撫で続け、紗枝は撫でられ続け、八木は目をつぶり、サブマシンガン持ちは腕を組ながら立ち、壁に背を預けていた。誰も何も話すことがなかった。そんな中八木が尋ねてくる。
「なあ、これに参加する前は何をやってたんだ」
「何をってなんだよ」
「いや働いてたとか色々あるだろう」
「そう言う八木は、何やってたんだよ」
「俺か、俺は大学生だよ」
「そうだったんだ」
「あぁ長谷川とは親友だったんだ、だから無理矢理あいつを誘って」
「そっか」
「それで、サブマシンガンを持ってるあんたはどうなんだ」
「佐藤って言え、って名乗ってなかったか。まあ俺はIT関係の仕事をしてるな、今回は敵情視察の意味合いで来たんだがこんなことになるなんてな、どれだけの技術を持ってるんだか」
「それで井上は」
僕に尋ねてきた。だから答える。
「ただのサラリーマンだよ」
「サラリーマンってどこの」
「えっと」
「「井上が答えにくそうなこと聞かないで」って会社」
紗枝と言葉が被ってしまう、だが八木達には聞こえたようだ。
「そっか悪いな」
「あの大会社か、けど」
佐藤は何かをいいかけるがやめる。そっちの方が僕も嫌なことを思い出さなくてすむから、聞き流す事にする。
「それで紗枝さんは」
「………………学生」
八木に尋ねられ、紗枝は渋々と答えていた。
「学生が多いけどなんかあったけか」
「夏休みだったから参加したんだよ井上」
「俺もだな」
「そっか夏休みだったんだな」
「はぁ、休みがある学生に戻りたいよ」
僕と佐藤はため息をつく。
「そう言えば佐藤さん、IT関係の仕事についてるなら何か分かったことは」
「あったらこんなもの握ってないよ」
そう言ってサブマシンガンを見せる。
「何もわからないのか」
「当たり前だ、こんな現実のように感じられるシュミレーターなんか始めてみた」
「けど普通にVRMMORPGとかあるからそれの応用とか」
「あれはな比較的簡単なんだ、一昔前にあったMMORPGをただ自分の感覚として出来るようにしただけなんだから。だけどこいつは違うこいつは細部にわたるまで作ってある」
「分かりにくいんだが」
「簡単に言うと、この中でVRMMORPGやったことあるやつは」
僕はその手の物はやってなかった。この4人の内やっていたのは八木だけだ。
「なら聞くが、八木のやっていたゲームの防具にポケットはついていたか」
「いや、ついてなかったけど」
「ああ、それが普通だ。ついていたとしてもアイテムボックスが開くだけで終了だろう、だが今来ている服はどうだついているだろう、物をちゃんとしまえるだろう、これが細部にわたるまで作ってあるってことなんだ」
「いや、よくわからないんだが」
「例えばになるがポケット、つまりアイテムボックスの中にあるガラスを運べというミッションがあったとする。ゲームだとアイテムボックスに仕舞いこんで何回かヒットすれば壊れて失敗という感じだろう、だがここではリュックなんかに入れたガラスが、歩くだけでリュックの他の荷物に当たり、壊れてしまうことだってあり得るわけだ、つまり物1つ1つにガラスがぶつかるとどうなるかの情報が詰め込まれている」
「なるほど」
何となくだが分かった気がする、このシュミレーターは現実を再現しきっているらしい。そしてそれは今までにはなかったものであると言う事なのだろう。
「井上、小難しいことはいいから何か食べない」
「………そうしようか」




