7day5
血の臭いが立ち込める中、奥へと進んでいく。歩みを進めるほど足に嫌な感触がするが無視をする。そんな中でも紗枝はなにも気にしている様子はない。
「井上また人が倒れてるよ」
大量の犬の死体の中に人の死体が、5人分ある。これも食い千切られている、それも前よりもひどく千切られているようだ。
「この人達武器持ってないみたいだよ井上」
躊躇いもなく、死体をかき分け武器を探していたようだ。
「………奥に進もう」
「いやちょっと待ってくれ、なにか聞こえないか」
サブマシンガン持ちがそう言った為に耳をすます。確かにこれから進む先から、なにか聞こえる。足音のようだ。全員が武器を構える。ライトで照らす。
「犬だ」
それも10匹ほど。照らされたことに気づいたのか、それともたまたまだったのかは知らないが、それが走ってくる、ぞんびよりも速い。
「撃て」
全員が発砲する。音が反響し響く。
「当たんない」
「くそっ」
的が小さく、動きが速いからなかなか当たらない、弾だけが減っていく。
「よしあたっ、う"っ」
妙な声を聞きそちらを見る。犬が1匹拳銃持ちの1人の喉元に飛び付き噛みついていた。その男はその犬に押されて倒れていく。
「おい、長谷川」
長谷川というのがその男の名前のようだ。
「井上」
紗枝の声を聞き、長谷川に噛みついているゾンビを狙い、撃つ。耳元に風を切る音。そして何かがぶつかり押し倒される。体が濡れていく。
「井上無事」
「あ、ああ」
ぶつかってきたなにかを確認する。それは頭をなくした犬であった。紗枝の手には拳銃が、女の子には似合わない大きいものであった。
「あたりに動くものはないか」
「長谷川、おい長谷川」
体に乗っている犬の死体を、紗枝の手を借り退ける。体に痛みはない。
「井上怪我ないよね」
「ないはず、けどそれより長谷川は」
長谷川の様子を見に行く、だがそれはもう怪我人ではなく、ただの死体であった。喉元が深く咬み千切られている、これは医学の学習なんかしなくても、死んでいるとわかる。
「長谷川、おい長谷川」
「おい八木やめろ」
サブマシンガン持ちがもう1人の拳銃持ち、八木に声を掛ける。八木は長谷川の死体を揺するのをやめる。彼は泣いているようだ。
「くそっ、分かってるよ、わかってんだよ」
「なら静かにしろよ」
「…………分かった、落ち着く」
八木は落ちていた長谷川の銃を拾い、仕舞う。
「………早く、こんな場所から出よう」




