5day5
バイクのエンジン音が鳴り響くまでの間、武器の点検を行う。使っていないので問題ないはずだが、手持ち無沙汰であるので繰り返し何度も行う。AKはフルオートにあわせてある、使わないに越したことはないだろうが、使おうとしたときに使えないのは避けたいからだ。こちらが準備しているのが分かったのか屋根の上にいる男も、荷物をまとめているようだ。電話がなる。
「なあ、あんた俺に手を貸す気はないか」
「今貸してるだろう」
「いや、それは石井のためだろう。そうじゃなくて俺のために手を貸す気はないかってことだ、まぁ簡単に言うとこいつを持ち逃げしよう」
「持ち逃げ」
「ああ、あの野郎にこいつを届けても、また明日には探索の日々だ。だがこいつを他に必要としてる所と取引すれば、シェルターくらいは手に入る。そしたらこの世界とはおさらばだ」
「要するに裏切れと」
「そうじゃない、有効活用するだけだ」
「裏切るつもりなら助けない」
言葉に怒りが籠る。
「………分かったよ今回はあの野郎とあんたに助けられたんだ、ちゃんと届けるよ、だからそんな怖い声出すな」
「それならいい」
「だからちゃんと助けてくれよ」
エンジン音が響く、紗枝が用意できたようだ。ゾンビがその音につられて、はしごから離れていく。だからその隙に、駆け足ではしごに近づき、持ち上げる。
「重っ」
2階から3階まで届きそうなはしごなのでかなり重いが気合いで持ち上げ、立て掛ける。置いた時に音が出るが、ゾンビたちはバイクの方に向かっていたので気付いてないか気付いていても戻ってくるまで時間がかかるはずだ。立て掛けたはしごを使い、大型のリュックを背負った男が降りてくる、その間は銃を構え周囲を警戒する。はしごを降りている男が声をあげる。
「ゾンビが戻ってきてる」
「なら急げよ」
そう叫ぶとバイクに向かったゾンビがこちらに向かってくる。やはり置いたときの音に気付いたようだ。先手を打つかのように発砲。だが、反動が強く当たりにくい。だから単発に切り替える。少しでも反動を弱めるためだ。拳銃よりも威力があるのか3発ほどでゾンビを倒せるのだが、倒している数よりもやって来るゾンビの方が多い。
「降りた着いてこい」
「ああ」
男に背後を警戒して貰いながら、ゾンビを撃ちつつタンクローリーに向かって後退する。弾が切れたのでマガジンを交換。その時もマガジンは捨てずに回収しておく。再度撃ちまくるのだが、段々と数が増え、距離を詰められていく。
「どこに居たんだよ、こんなに」
「エンジンかけるからちょっと待て」
最後のマガジンを差し込む。ゾンビとの距離が近いので、フルオートに戻し、撃ちまくる。だがそれだとすぐ弾が切れる。
「まだかよ」
「急かすなよ」
AKを捨て、リボルバーを抜く。それを躊躇いなく頭を狙い撃つ。エンジンがかかるまでの辛抱だ。1丁、また1丁と弾を撃ち尽くし、4丁目を抜いたときエンジン音。
「乗れ」
AKを拾い上げ、タンクローリーに乗り込む。
「よっしゃ出るぞ」
タンクローリーが動き出す。
「はっはっは、やったぜ」
「はぁはぁはぁ」
走ったりしていないが息が切れている。
「やったな、相棒」
「…………ああ」
「ならホテルまで戻るか」
タンクローリーに乗り、ホテルまで戻ることになった。バイクのあったところを見ると、そこにはバイクはない、多分先に戻ってくれているのだろう、そう信じておきたい。そう思いながら外を眺めていた。




