1day
2話目です
「やあやあ皆さんこの度は私達のシミュレーションに協力いただきありがとう」
大型モニターに人影が写り、陽気な声が響き渡る。
「今回は新作のゲームのテストプレイができるとか1000万手に入るとか内申点やらにいい影響とか色々聞いてきてるだろうが」
溜めが入る。
「全部本当だよ~」
かなりバカにした言い方だ、だが誰もなにも言わない。さてここはとある研究所で作られたVRシミュレーターの臨床実験とでも言えるものに参加し集められ、装置を被せられ今に至る。
「大抵こう言ったものだと草原なんかだろうが摩天楼なのには理由があるのさ」
そうここはビルなんかが立ち並ぶ街中、だが僕たち以外には誰もいない。
「私達のシミュレーションによる研究は人が緊急時にどのような行動をとり、そこから逃れるためにどれだけの行動をとれるのか的な研究さ」
「そんなことはどうでもいいんだよ」
誰かが声をあげる。そうとう人がいるためか見えない。と言うか多すぎる僕と一緒に来たのは20人ほどなのだがここには1000人以上いそうだ。
「ははっしっかり聞いといた方がいいと思うけどね、まあ略すとできる限り正確にするためにここはすべて現実と一緒さ、感覚も体力も力も痛みも」
「ああっ」
「簡単に言うと首を切られたら首を切られた痛みが100%伝わる。ははっ楽しいね」
動揺が広がる、あのモニターの人影がいってるのは首を切られたら首を切られた痛みがすべて伝わる。つまり死ぬかもしれないと言っているのだ。
「いいデータが集まってきているよ、さてここまでは君達を危機的な状況に追い込んだわけだけど今度はこの危機から助かる方法を教えよう。1つは規定日時の32日を生き抜くこと、まあ今日も含めるから実質31日さ」
辺りはもう夕暮れ時だ、その中で例の人影だけが明るい。
「2つめはこれだ」
「うわ」
「なんだ」
何かしたようだが人で見えない、だがだんだんと見えてくる白い円柱だ。
「今上がってきた円柱は、ゲーム的に言うと個人用シェルターだ、この中に入ったらもう安心、目的の32日目まで安全に過ごせるさ。少し狭いけどな」
そのときはじめから着ているスーツのポケットに重みが。
「さてと今送った物はこのシミュレーションで使えるスマートフォンだ、ああガラパゴス携帯の方がいいときは言ってくれ今のうちなら交換するさ。まあそれは置いといて今の品にはさっきのシェルターの出現場所と出現時間が表示される参考にしてくれ。だけども表示されてない隠しシェルターもあるから探してみたらどうだい」
少しいじると僕のスマホの番号が表示される、番号は「031758」になっている。たぶんこれを他のスマホに入力すれば電話ができるのだろう。
「さてと最後のサービスだ」
またポケットに重みが。取り出すと拳銃が現れる。
「グロック18、いや短い気がするから19かな」
「拳銃さ、弾は手に入りやすくなってるから探せばすぐにみつかるさ。さてとすべての話はこれで終了だ、さてと君たちに訪れる危機についてだけど」
遠くの方から悲鳴やら銃声が。
「歩き回る死体、ゾンビさ」
呻き声。何かを引きずるような足音。何かがこちらに向かってきている。
「じゃあ頑張れよ」
モニターが消える。
「くそっまじかよ、弾は」
「1発だけ、自決用だな」
「なら逃げないと」
「いやその前にあれ使おうぜ」
「誰が使うんだよ」
「私が」
「あれは罠だ」
辺りが騒がしくなるのに合わせて、逃げる人も現れる。だから僕も逃げることを選択する。と言ってもすぐ近くにあるマンションだ。最新式ではないのかオートロックではないが空いてる部屋があれば少し位は安全を確保できるだろうと思った為だ。まずはエレベーターを使い各階の非常ドアを閉じながら上がっていく。
「これで上に鍵の開いた部屋があれば」
1つ1つ扉を開けて調べていく。だがどの部屋も鍵をかけていて開く部屋が。
「あった」
ポケットに入っている銃をとる。中を確認しながら。
「誰」
扉が急に開き、顔をぶつける。
「私を殺しに来たの、そうでしょそうなんでしょ」
「いや僕は」
「みんな私に死んで欲しいから学校でも家でも、関わる人みんなだからお前もそうなんだ」
女、いや少女が捲し立てる。
「ここは私がやっと見つけた安全な場所なの、だから誰も入れない、近寄せない。私に関わるな」
その少女の後ろで動くなにかが。何かを引きずるような足音、たぶんゾンビだ。だが少女は気づく様子はない。だから顔をぶつけたときに手放してしまった銃をとる。
「ひぃ」
後ろのゾンビを狙う、頭を撃てば1撃だろう。
「いやまだ死にたく、ない」
銃を持っている右腕をぴんと伸ばし、そのニノ腕に頬を当てる。銃と腕が一直線になるようにする。左手は右手の上に重ね、引き金を引く。パン。
「撃たれた、撃たれたよ」
「撃たれてない一先ず部屋に入ろう」
「撃たれたから」
「撃ってない」
「嘘よ、私は嫌われてるから撃たれるのよ」
「嫌ってない」
「なら私が必要」
「ああ」
「必要と…………されてる」
「まずは入ろう早く」
「うん」
中に入る、ゾンビにさわって何か感染とかしたら嫌なのでできる限り触れない。
「後もう疲れてるから明日にしような」
そう一方的に宣言すると眠りについた。布団は汚れていないベッドがあったのでそれを使わせもらった。