4day5
スーパーに入る。正面が全面ガラス張りだった為に中は比較的明るい。
「井上中にもゾンビいるね」
「それにひどく荒らされてる」
囮としたスマホの着信音は聞こえていないのか中にもゾンビが5体ほどおり、うろついている。そして中の様子は凄まじかった。倒された商品棚、ばら蒔かれた雑貨、荒らされたレジ、辺りに広がる血、それに食い散らかされた死体。
「井上食べ物なんてあるかな」
「さぁけどその前に」
再度リュックからスマホを2台取り出す。1台は囮でもう1台はそれに通話するようだ。今度の囮は音を最大にせず半分くらいにとどめておく。そしてそれをスーパーの奥の方にぶん投げる。そしてそれを鳴らし、安全を確保する。
「よし探そうか」
「うん」
明るくはあるがLEDライトをつける、スマホの着信音はあるができる限り音をたてる可能性を減らし、物を探しやすくするためだ。ゆっくりと慎重に歩く。明るくしているのでつまずいたりはしないのだが、食べ物はなかなか見つからない。紗枝が体をつついてきたのでかなり小さな声で訪ねる。
「何」
「井上汚れてない鍋見つけたよ」
「拾っておこう」
音をたてないようにするため、慎重に空である紗枝のリュックに入れる。蓋付きであった。奥へと進んでいく、だんだんと薄暗くなっていく。それにともない、着信音、それと呻き声が大きくなる。だからそちらには近づかない様にしながら、食べ物を探すのだがこの辺りはかなり酷い状態になっている。食べ物がばらまかれ、踏みつけられ、血まみれになっている。さすがに食べられるわけがない。
「棚も倒れてるから探しようが」
「井上あの隙間なら」
紗枝が棚の隙間を照らす。だがかなり小さい。
「無理なんじゃ」
「中に何かないかだけでも確認しようよ」
紗枝のその一言で近づき中を見る。
「パスタか」
そこは乾麺の棚だったようでパスタの袋があった。それもそれなりの量が、未開封で。だが。
「かなり奥だね」
体を入れることはできず、また手だけでは届かないところにある。
「私も試す」
紗枝も同じように体を入れようとする。
「後、少し。ねぇ井上倒れてる棚支えて」
「これを」
その棚は金属製であり1つなら支えられないことはない、だがこの棚の上に隣の棚が重なり、その棚に更に棚が。要するにかなり重いし、音が出るかもしれない。だが辺りの荒れ具合を考えると他の食べ物を見つけられそうにない。それに悩んでいる時間もない。また囮を作る、今度は最大音量だ。それを着信音がしている方にぶん投げ、鳴らす。
「紗枝1回きりだぞ」
もしダメなら諦めるしかない。気合いを入れて棚を、持ち上げる。
「んっ」
かなり重い、だが音は出ていない。そして出来た隙間に紗枝が体を入れる。
「は……………やく」
腕がプルプルと震える。
「取れた、それも一杯」
その言葉と共に、紗枝が隙間から出てくる。それを確認してできる限りゆっくりと棚を下ろす。
「はぁはぁはぁ」
「井上大丈夫」
「はぁ、どれだけ取れた」
「6袋もあったよ」
すべて500gの袋であり、未開封で袋が破れたりしていないので、これでかなり持つはずだ。
「後はせめて調味料か」
辺りを見渡すが無さそうだ。
「そう言うと思って持ってきたよ」
そう言って紗枝が味塩コショウのボトルを見せる。
「よし出よう」
「うん」




