32day+α
あの日から大分時間がたった。僕は今政府の管理しているマンションで生活をしている。あの日からのことを少し振り返ろうと思う。
気がつくと僕は、身動きひとつ取ることができなくなっていた。ピッピッピッという音がやけに大きく聞こえていた。
「………………」
「………」
「………………………………………………………」
そこには誰かいるようでなにかを言い争っていた。そこでまた意識が途切れる。
意識を取り戻す。ピッピッピッという音がやけに大きく聞こえているだけなので、意識を手放した。
「………………」
今度は声がして意識を取り戻す。
「………………え」
言葉が聞こえる。え、え、え…………。そういえば紗枝はどうなったんだろう。そうだ紗枝は。こんなところで寝ている場合ではない、体を動かせ、動かせ、動かせ、動かせ、動かせ、動かせ。
「いのうえ」
声がはっきりと聞こえる。辺りが慌ただしくなる。そんなことはどうでもよく体を動かすことに意識を集中させる。だが押さえつけられる。まぶたを触れられ強制的に開かせられる。眩しい。
「奇跡だ」
奇跡とはなんのことだろう、だがそこでまた意識を手放してしまう。
「井上起きてよ」
誰かに起こされる。体は少しだけ動く。だから目を開く。
「井上」
「お………」
「井上」
誰かに抱き締められる。そして見る、ぼやけてはいたがそれは。
「さ、え」
「うんうんおはよう井上」
紗枝がいた、そして紗枝が泣いていた、何でかはわからない。だが気になるのは紗枝の髪型が変わっていた。
「井上、井上」
辺りが騒がしい、だが気にせず紗枝の頭を重い手で撫でる。
「井上さん」
知らない男性が入ってくる。
「回りがわかりますか」
頷く。
「これは何本」
そう言って指を3本立てている。
「3」
そう答える。だんだんと意識がはっきりしてくる。紗枝がやけに重たく感じる。
「それでここがどこだかわかりますか」
「わからない」
「あなたここは病院で3年間も寝てたのよ」
そう言われた後、どうしてそうなったかの説明を受けた。簡単に言えば、出欠多量によるショックで心配停止になったらしい。その後集団誘拐事件の人質解放のために来ていた警官につれられ、この病院に収容。収容した後に緊急手術により一命をとりとめたものの、脳死判定を受け、延命治療を受けさせられていた。そしてそれが目を覚ましたのだ、奇跡と言っても過言ではないらしい。
「それでなんですが井上さん、意識を取戻し次第取り調べを」
「患者が意識を取り戻したのか」
「ちょっと」
「1つだけだ、最後お前人を撃ったのは襲われたから、違いないな」
急に男が入ってきて、急にそう聞かれたので頷く。
「そうか、なら正当防衛に該当するな」
そう言うとその男は出ていった。
「すいません井上さん、さっきの人は刑事さんで今回の事件被害者が多く相当焦っているんですよ」
どうでもいいので聞き流していた。
また日が過ぎた。今はリハビリに精を出す。
「あなた大分歩けるようになってる」
担当が紗枝だったのが驚きだ。何でも僕を観るために資格を取ったらしい。
「いやそうかな」
と言ってもこの病院で働いているわけではないので、担当できないはずなのだが、リハビリを行うに当たり顔を知ってる相手の方がやり易いだろうと医者が許可を出したらしい。一応本職の人もいるので問題はないはずだ。
「そろそろ退院できるかな」
「それくらい歩けていれば大丈夫ですよ」
退院の目処が立ちそうだった。
そして退院し、政府の管理するマンションに越してきたと言うわけだ。
「あなた、どうしたの。まだ傷痛むの」
「いや大丈夫」
そこで僕は紗枝と2人で暮らしている。
「そう、後あなた菜々美からメールが来てるよ」
「そっか後で見とく」
菜々美は簡潔にいってしまえば孤児となり、今は施設にいる。メールでやり取りしてはいるが、いつか引き取りたいとは思っている。
「そ、ならあなた」
「ああ」
そして今は、デスゲームが終わり、日常に戻り、そして僕らが歩むべき道を。
「行ってきます」
生きている。
これで最終話です
応援してくれた皆さん本当にありがとうございました