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三田と羽柴の結論

 本日は雨にて、外の体育は中止となった。

 それを嘆いていたのは村本だった。


「ああサッカーやりたかった……」

「あれ? 村本はそんなにサッカー好きだっけ?」


 教室で着替えながら羽柴がそう訊ねる。


「俺のロングシュートで志賀さんに惚れなおしてもらうチャンスが……」

「大丈夫だろ。志賀は村本のことまず惚れてないから」


 めそめそと女々しく泣く村本を無視し、三田は着替えを済ませる。


「でも体育館の授業のほうがいいと思わねぇか?」

「うん、確かに」


 頷く羽柴。しかし村本は首を傾げた。


「なんでだ?」

「お前ホント駄目だな。体育館のほうが近くで見れるだろ」

「何を?」


 三田は肩をすくめる。


「女子の体操服姿に決まってんだろ!」

「お前らの思考マジすげぇな」

「いや、村本が子供脳なだけだと思うけど」


 三田の言葉に村本は「子供脳じゃねーよ!」と反論する。


「早く行こうよ。チャイム鳴るよ」

「だな」


 三人はぞろぞろと体育館に向かう。

 サッカーからバスケに授業が変わり、ラッキーだったのは羽柴だった。

 ひょろっとした体型からはあまり思われないが、バスケはバスケ部に勧誘されるほど得意だった。結局部活は科学部に納まったのだが、バスケの授業はバスケ部にも負けない活躍を見せるのだ。


「あーくそ! 羽柴ちょこまかと動きすぎだろ!」

「三田が遅いんだよ」


 友人の悪態に羽柴は悠々と答えた。他の種目では運動神経の良い三田には敵わないのだ、こんな時くらいは余裕のある返事をしたいところである。

 練習試合が終わり、羽柴は喉が渇いたので外の水道に向かった。


「羽柴」


 先客は柿崎だった。

 彼女は白の上着にハーフパンツを履いていた。

 それだけでも素晴らしいというのに、柿崎はなんとポニーテールをしていた。普段大人っぽい柿崎が可愛らしく、でも柿崎らしさは失っていない。その姿が眩しいこと眩しいこと。

 テンションの上がる自身を抑え、羽柴は笑いかける。


「柿崎さん。お疲れ様。女子はバレーだよね」

「うん、まあね」


 柿崎は俯きながら顔に落ちた髪を耳にかけた。


「柿崎さん今日の髪型すっっごくいいね!」


 ぱっと顔を上げた柿崎は嬉しそうだった。


「そ、そう?」

「やっぱり思った通り、柿崎さんはポニーテールがよく似合うよ」

「あ、ありがと。でも、さ」

「ん?」

「その、羽柴がバスケ得意なんて意外だった」

「はは。バスケ以外はダメなんだけどね」

「でも……ちょっとかっこよかったよ」


 そう言うと、柿崎はその場を駆けて行ってしまった。

 しかしその後姿から覗く耳が赤いのは気のせいだろうか?

 羽柴は柿崎の姿を見つめながら、どきどきとしてしまった。





 放課後。

 例のごとく、三田と羽柴は教室でだべっていた。村本も一緒だ。


「……ああ、志賀さんとお近づきになりたい!」

「クラスメイトのくせに話しかけもできないお前じゃ一生無理だろ」

「ひでぇな三田ぁー!」

「他のクラスならともかく、同じクラスなんだから話しかけるきっかけなんていっぱいあるのにね。村本はただのチキンだよ」

「はーしーばー!」

 

怒った村本は三田と羽柴を睨みつける。


「じゃあお前らはどうなんだよ! 倉野と柿崎狙いなんだろ!」


 そう言われ、三田と羽柴は一瞬体の動きを止めた。


「ほら、三田! 柿崎といい感じになってるか? なってないだろ!?」

「まぁ……」

「ほらな! 羽柴も倉野と仲深めてんのか?」

「あんまり話ししてないけどさ……」

「だろだろ!? お前らだって俺と変わんねぇよ!」


 偉そうな村本から、三田は視線を羽柴に向けた。


「あの、さぁ。俺、押し女子は柿崎から変えようと思ってるんだが……」

「……奇遇だね。僕も変えようかと思ってるんだ」


 三田は顔を赤くして見上げる倉野を、羽柴は自分の髪をいじる子供っぽい柿崎を、それぞれ思い浮かべた。

 男子中学生。

 単純だと言われればそうなのだろうが、それはそれで立派な青春であった。




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