思考を柔らかくする文Ⅱ
『人は自分に賛同してくれる人といると快適だが、自分と賛同しない人といると成長する』という言葉をご存知だろうか。フランク・A・クラークという人の言葉である。
これは、当然のことである。自分に賛同してくれる人といると、現状に満足することができ、安心感を得ることができる。これは、人間というのは常に他人との隔たりを感じ、人に自分がどういう風に思われているのか、という不安の中で生きているからである。自分に賛同してくれることで、その不安はなくなる。だが、この安心感は盲点を生む。欠点に目を向けることができない。欠点より利点が大きいからそれでいい、という風に考えてしまう。
一方、賛同しない人といるとどうだろうか。自分は修正を強いられる。賛同してもらえるために、自分の意見の補強か修正をしなければならない。再度自分の意見を構築しなおすということは、もともとの意見を考え直し、さらに深く考える必要がある。よりよい意見でない限り、賛同しない人を納得させることはできない。更新するということは、改善することに近しい行為なのだ。
逆境は人を成長させる。賛同しない人といるということは、その相手に対して自分も賛同していないことを示す。
つまり、賛同してくれる人と一緒にいるということは、相手を賛同しているということにもなる。
『人に賛同していると快適だが、人に賛同しないと自分は成長する』
とも言えるのである。賛同してくれる人に囲まれるか、賛同してくれない人に囲まれるか、それは自分が作り出すことができるのだ。
会社を経営するときにもこのことは考えられる。
社員が社長に賛同してだけいれば、社長としては快適かもしれない。だが、会社としては何の成長も得られない。
社員からの反対意見を取り入れられる経営者こそが成長することができるのだ。
居心地の良いところに向かうだけでは、何も変わらない。
居心地の悪いところを、居心地の良いように開拓することこそが、人間の成長に不可欠なことなのである。