第277話 ~第14小隊② 夜這い~
第14小隊内で自由行動すると、自然とこういう組み合わせになりやすいというのがある。クロムを兄貴と慕うガンマ、気が合う先輩後輩のマグニスとチータ、本物の姉妹のようなアルミナとキャル、そしてシリカとユースが一緒になりやすい、というのが通説だ。まあ、別にいつだってそうだというわけではないけど。
「お前、太るかもとかあんまり気にせず買い食いするよなぁ」
「気にしてなくはないわよ? 一定のラインは決めてるもん」
でも、このシチュエーションでこの組み合わせはちょっと珍しい。8人揃えばまずまずキャルの隣に行くアルミナが、今日はユースとばかり喋っている。キャルはキャルで、アルミナがそんな調子なので、チータが話してくれるルオス豆知識に耳を傾けながら、景色を楽しんでいる。マグニスはマグニスで、少しシリカ達から離れて、観光客の女の子達に声をかけたりしている。まあ、ちょっとぐらいは容認。せっかく遠出の旅行中、異国の女の子に声をかける彼の楽しみを完全に剥奪しては、マグニスの性分に対して流石に気の毒。おイタするなよと釘を刺してはいるが、ああ見えて最低限の分別はつけるだろうから、ぎりぎり信頼していい。
子供のようにはしゃぐガンマを目で追うシリカとクロムは、幼い息子を見守る夫婦のように、何気ない会話を弾ませながら歩いている。時々ガンマが振り返って、手を振り町の見所へと招いてくれる姿は二人にとって可愛く、ここは三人一組で楽しんでいる形だ。シリカは、ガンマだけでなく視界内の限り、身内全体を常に見守る習慣がついているけど。
「最近、前以上にユースとアルミナの距離が近いな。賢蘭祭以来か?」
「ん、おばけ屋敷?」
「おう、それ。あれ以降、アルミナがユースと一緒に行動したがる頻度が高くなった気がするんだが」
確かに言われてみれば、そんな気はする。別に昔から仲の良い二人ではあったが、思い返せば賢蘭祭以降、アルミナがユースを誘って買い物に行くようなことも、ちょっと増えたような。荷物持ちをユースに頼む側面も無いではなかろうし、そういうのは昔からあったけど、それ以外にもアルミナが、自分からユースに声をかけて、一緒の時間を作る機会が増えたような印象はある。騎士館の養成所から帰ってきたユースを、アルミナが玄関まで迎えに行ったりとか、来年の庭の花壇にはどんな花を植えようかという話で、随分長いことユースと話し込んでいたりとか。
「ユースとアルミナは、互いを異性として認識していない風だったんだがなぁ」
「……どうなんだろうな? 年も近いし、気が変わることもあるとか」
「むしろきっかけ一つありゃ、そっちの方が自然な気もするが。元々あいつら、気が合うんだしよ」
温泉街の三方路、分かれ道に置かれた道祖神の石像を眺めるガンマを見守りながらだが、別角度のユースとアルミナの姿も、今のシリカとクロムには見逃せない。お前口の端に粉ついてるぞ、と指摘するユースに、あんたが拭いてよと顔を少し近づけるアルミナのやりとり一つとっても、今まで見たことのない二人の会話だ。その会話自体は、子供かお前はと笑いながらあしらったユースに対し、へへっと笑ったアルミナがハンカチで口元を拭ったので、顛末まで含めれば、らしいやりとりだったと言えるが。
プロンあたりも言っていたことだが、ユースとアルミナが二人でいると、あまりに普通に仲良く歩くので、とっくに付き合っていると思う第三者は後を絶たないらしい。そのせいで私には男が寄ってこないのよ、と、軽口でユースをなじったりしていたアルミナと、俺に言うなよと苦笑していたユースの姿からも、互いが相手をそういう認識でいなかったのは間違いないはず。それでもふと思い返してみれば、結局二人で町を歩くのも全然やぶさかではない感じで、距離の近かった二人。当人らは、そんな関係じゃないとずっと否認してきたし、それが真実だと思うけど、その証言があってなお、あの二人の関係性っていうのはわからない。
「マグニスいわく、アルミナはユースに恋心が騒がないとまで言っていたらしいが」
「……ふーん」
無表情で、あまり関心を示さないような態度のシリカ。いや、その態度はおかしい。一見なんでもない普通の反応に見えるが、シリカって身内の人間関係をすごく気にするタイプだ。かなり昔の話なのだが、アルミナとガンマがちょっと口喧嘩をした時だって、クロムやマグニスはすぐ収まるよと見守っていたものだが、シリカは終始気が気でない様子だったりした。みんなシリカにとっては可愛い第14小隊、特に年下5人。それらが仲良くやっているかとか、シリカは常々気にかけているタイプである。
だからユースとアルミナの関係が以前と違うような昨今で、こんな無関心めいたシリカのリアクションは、全くもって彼女らしくない。その顔と態度は作ったものだろ、とクロムが気付くのはすぐである。
「世間じゃ小隊内でカップルが出来ることはそう珍しくないが、お前としてはそういうのアリだと思うか?」
「……別に、駄目な理由はないだろ」
「仕事と割り切れない職場恋愛だったら、お咎めの対象にはなるぞ」
無表情のふりをしたシリカの胸の奥、明らかにちりちりした何かが見え透いて、クロムも真面目な顔で語りかけている。他意よりまず、シリカに聞いておいてみたいのだ。小隊内の恋愛っていうものに対して、シリカはどういう価値観を持っているかと。
「……ユースがそんな恋愛をするとは、私には思えないけどな」
まあ確かに、とはクロムも思う。それはいいんだが、ユースだけか。
「いや、その……アルミナがそうじゃないって言ってるわけじゃないぞ?」
そりゃそうでしょうよ。どうしてそれを一括で言わなかったのか。何を動揺しているんだと、単刀直入に問い正したい衝動に駆られるクロムだが、ここは耐える。繊細な話題だとはわかりきっていることだから、踏み込み過ぎてはいけないのだ。
「だから、別にちゃんと割り切ってあいつらが、そういう関係になるのなら……」
そこで一度言葉を止めるシリカ。次の言葉に迷っているのは明らかで、クロムは黙って待つのみだ。これほどシリカの胸の内を、はっきりとした言葉で聞きたいと思ったのは初めてかもしれない。
「……いいと、思うけどな」
「そうか。優しいな、お前は」
同時に、優しすぎるとさえ思って。根底には、ユースやアルミナが幸せになってくれる未来を、心から願っているシリカがいるのだ。騎士としてもそうだけど、シリカは普段から、己のことなんかよそに置いて、大切な人の幸せを願えるような人物だ。元々ユースを第26中隊に一度送ったことだって、長い目で見てユースの良き未来に向けたことだったんだから、それは昔から形にも表れていたことである。あの時は、色々思い悩んだ末、失敗だったという結論に至ったけど。
今回は違うと思うんだがな、とクロムは内心で強く感じている。ユースの大切さに自覚がなかったあの時と、今は違うはずなのに。ユースとアルミナの幸せを心から願うシリカが嘘じゃないからこそ、二人がそういう関係になるのって、シリカにすれば全然悪くない話のはず。それがどうして、複雑な顔で時間をおき、単純な答えを導き出すのに時間がかかるのか。ちょっと自分に問いかけてみれば、すぐにわかりそうなものであるはずなのに、シリカが表に出さないのは、未だにわかっていないからなのか。いや、違う。気付いていても、自分に蓋をしてしまう彼女の性分だからに決まっている。シリカもそこまで馬鹿じゃない。
言いたいことは山ほどあったが、クロムはこの話題に対してここで打ち切ることにした。同時に、これでも少し踏み込み過ぎたかなと反省しながらだ。仲良く笑い合いながら歩く、夜の街灯に照らされたユースとアルミナを眺めるシリカの目が、隠しきれないぐらい寂しそうだったから。きっと彼女の中でももう答えは決まっているのに、どうしたらいいのかわからなくなっているのだろう。
頑張れよ、と激励してやることさえ、今のシリカにはしない方がいい横槍なのだ。彼女が自分で、やがて答えを見つけていくしかない。
楽しい町巡りを終え、旅館に戻って大広間にて夕食を召し上がり、楽しくお喋りして就寝。明日は朝からルオスの温泉街を歩こうという計画だから、今日の眠りは早くでいい。遊ぶだけでも体っていうのは疲れるし、良き明日の目覚めのためにも、この日の第14小隊のおやすみは早かった。
借りた寝室は4つ。アルミナとキャルの部屋、クロムとマグニスの部屋、ユースとガンマとチータの部屋、そしてシリカが一人で寝る部屋だ。男女割りの寝室なのだが、この民宿は寝室の数がちょうど4つであり、その上で第14小隊は男女が両方奇数だから、2人1組4室が組めない。まあ、自然とこうなる。
各自が自分達の寝室に向かい、夜話に花を咲かせる流れもあるだろうが、一人のシリカには話相手らしきものもおらず、眠りにつくのが早かった。お喋りしたいなら隣部屋に行ってもよかったのだけど、こういう旅行の一夜というのは、同世代の者同士で、日頃話さないようなことを語り合う好機でもあるのだ。それを意識したシリカが、誰の邪魔もするまいと早くに床についたのもまた、周り優先という彼女の心根の賜物だろう。
床に敷いた布団に身を休め、静かな寝息をたてて深い眠りについていたシリカ。隣部屋の、夜更かしして話し込んでいたアルミナ達でさえもが寝静まる頃といえば、もう日付が変わった時間帯のことだ。第14小隊が眠る2階は静まり返っており、1階で民宿の人たちが、今日の仕事はここまでかなと床につき始めた時間帯、空高くには朧月が昇っている。
ふと、真夜中の民宿の中で、体を起こした者がいる。第14小隊の一人。彼はこっそり部屋を抜け出し、とある人物の部屋に向けて、静かに、ゆっくり歩いていく。誰にも悟られないよう、こっそりとだ。
シリカの部屋の扉に手をかけたその人物は、きぃ、と木製の扉を鳴らし、彼女の部屋に入っていく。思ったよりも、扉の軋む音が大きかったことに、まずかったかなと表情をしかめ、真っ暗な部屋の奥に入っていく。灯り無く、カーテンも閉じられて月光も差し込まないシリカの眠る一室は、本当に真っ暗闇で何も見えない。
片目だけ閉じ、闇に慣れさせていた瞳で、ぼんやり室内の様子を視認するその人物は、部屋の真ん中に敷かれた布団を確認する。目を凝らし、確認すれば、シリカの寝顔もぼんやりと確かめられる。こっちが顔であっちが足か、と確かめて、シリカの寝顔を覗き込む。慎重にここまで来た甲斐もあってのことか、シリカが目を覚ましている様子はない。
ゆっくりと脚を上げたその人物は、シリカの体を跨ぐ形で、彼女の体の上に立つ。そしてゆっくり体を沈め、その腰をシリカの腹の辺りに置いたのだ。体重をかけないよう、ゆっくりと。その瞬間、何者かが自分の体の上に乗っていることに気付いたシリカが、深い眠りから一転ばちりと目を開けた。
「静かに……!」
突然のことに混乱必至のシリカの体に覆いかぶさり、その掌でシリカの口を塞ぐ。彼女を極力怯えさせないよう、素早くも優しくだ。目が覚めていきなり、誰かが自分の上に覆いかぶさっているという事態に、目をぱちくりさせるシリカだが、布団越しの誰かの脚が体を挟んでいて、寝起きのシリカは身動きが取れない。
誰かが自分の目の前で、口元に指を立て、しぃっと訴えかけていることだけはわかる。夜襲めいた出来事に鳥肌の立っていたシリカだが、向こうの態度からしてそうでないのは何となくわかる。シリカが落ち着き、目の前の相手に害意がないことに気付くまで、その人物も動かない。黙って、シリカが騒がずに自分を受け入れてくれることを待つように。
あれ、これ、もしかして……と、シリカの脳裏に閃きが走る。世の中には夜這いなるものがあるそうだが、まさかこれは、と、シリカの胸が騒ぎ立てるのだ。自分に覆いかぶさる誰かの胸が、布団越しに自分の胸と密着している感覚が、そういう発想に彼女を引きずり込んだのかもしれない。布団越しでもわかる、相手のがっしりした体つきは、男のそれだと容易に確信できるからだ。
鼻をつく、ライムの香り。視力で確認できない、目の前の相手から得られる唯一の情報だ。一瞬まさかと思ったが、これは温泉上がりのユースが自分に吹き付けていた、体が温まる香水の匂いと同じもの。その一事がようやく脳内でひとつの情報として固まった瞬間、シリカの柔らかい胸の奥で、その心臓が高鳴り始める。
「……落ち着きましたか?」
小声で、優しく諭すように語りかけてくる言葉が、シリカの耳をくすぐった。いつの間にか、小さく動かさずいられなかった手足の騒ぎも、落ち着きを取り戻している。目の前の誰かが、あいつだと思った瞬間から、まるで体のすべてを相手に委ねてしまったかのように。全身から力の抜けたシリカの胸中、強く打つ心臓の鼓動ばかりが加速していく。
口を押さえていた誰かの手が、そっと離れた。闇の向こう、近い高さで自分を見下ろすのが誰なのか、シリカの目には見えていない。口が自由になったシリカは、問いかける言葉を口にする直前、ごくりと口の中のものを飲み込んで。
「ユース、か……?」
「……………………」
震えるような声を絞り出したシリカの目の前、その人物は何も応えない。焦らすように、間をおかれたような沈黙が、シリカにはとても長く感じた。恋焦がれるように返答を待つシリカの前、その人物は口を開く。
「あの、俺……マグニス……」
今度は小声ではなく、実にばつの悪そうな声で。は? と頭が真っ白になったシリカの目の前、口の前に立てていた指を顔から離し、マグニスが指先に小さな火を灯す。真っ暗闇の中、シリカがマグニスの顔を、マグニスがシリカの顔を確認し合う光が生じる。
すごい速さでシリカが顔を逸らした。今、完全に乙女の顔になってた。別にこういうつもりではなく、ちょっと夜這いめいた雰囲気を出し、夜話に花でも咲かせに来ようとしていたマグニスだったのだが。計らずして、えらいものを見てしまったような気がしてならない。
「すまん」
「……別に、気にしてない」
マグニスがあぐらをかく目の前で、布団にくるまってそっぽ向くシリカ。絶対に気にしている。マグニスも、あまりに予想外の展開になってしまったせいもあって、からかう気にもなれやしない。ひそひそ声で自分の声だとわかりにくかっただろうし、貴族の夜這いを真似て自分らしくない口調を作ったりもしたけど、まさか自分をユースと勘違いされるなんて、予想の斜め上も斜め上。確かにライムの香水も、ユースのつけていたものと同じ匂いだったけど。
それにしたって、ユースがこんな夜這いめいた真似するわけないだろうに。シリカ不在の時期、彼女の部屋に入ることすらためらっていた奴が、ノックもせずにシリカの部屋に忍び込んでくること自体まずまずあり得ないことじゃないか。だいたい夜這いめいたことをする度胸があいつにあるなら、あんな奴には絶対育ってない。
「シリカも案外スケベなとこあんだなぁ」
「っ……うる、さい……」
頭だけ布団から出して向こうを向いていたシリカが、頭までもぞもぞと布団に隠してしまう。死にたい消えたいダニにでもなってしまいたいという、羞恥に満ちたシリカの思念が、嫌というほど溢れている。
「まあなんだ、これでお前もわかっただろ。なっ」
さほど軽口ではなく、さすがにやり過ぎたばつの悪さを声に醸し出しながら、マグニスは確認の一言。あまり煽ったり横槍を入れるようなことはしないつもりだったが、ここまでのことになってしまったら、知らんぷりしている方が白々しいだろう。突然の夜襲に驚きつつも、あんな顔で、誤解した誰かさんを迎え入れる覚悟をしていた時点で、他意ないなんて言い訳通用するわけがない。
「……なっ?」
「…………」
悪かったから何か言ってくれよ、というトーンで語りかけるマグニスに、布団の中でごそごそ動いて振り向くシリカ。目だけ布団からひょこっと出すシリカは、睨みつけられると思っていたマグニスの予想に反し、部屋の灯りに照らされてようやく目が出たことがわかるぐらい、目力がない。紅く染まっているであろう頬は布団に隠れているが、耳まで真っ赤なので顔の色も簡単に予想がつく。
「……別に、前からわかってたし」
「前からってのは、いつから?」
「……ラエルカン」
ああ、意外と前からだ。ユースと一緒にディルエラを撃退した後ぐらいからか。
「あれから数ヶ月経つってのに、あんまりお前それを表に出してこなかったよな」
「……それどころじゃなかったし」
「魔王ぶっ倒した後で、充分それどころだったじゃねえかよ」
「……そんなの知らない」
都合が悪くなったら、きゅっと布団を持ち上げて目を隠してしまうシリカ。誰だこいつ、これがあのシリカなのかと、マグニスも目を疑いたくなるような反応だ。ただまあ、シリカもそういう自分の気持ちに無自覚でなかったのはわかったので、それはマグニスにとっても確定新情報である。
元々弟のように可愛がってきたユースへの見方が、どこで変わったのかを色々聞き正してみたかったが、これ以上好奇心で詮索してもしょうがないので、マグニスは立ち上がる。いいもの見れたしいいもの聞けた、ちょっと気の毒なへこませ方をしたのは不本意だったが、今日はこれ以上踏み込まない方がいいだろう。
「じゃあ、まあ……頑張れよ。仮にもお前、俺が一度惚れた女だし、幸せになって欲しい人ではあっからさ」
「…………」
そう言って、マグニスはシリカの部屋から出て行こうとする。無言で見送るだけであったはずのシリカが、扉を開けた瞬間のマグニスの名を呼び、引き止めたのはやや意外。
「どうした?」
「…………」
布団から目だけを出して、寝そべったままマグニスを見上げるシリカが、無言でマグニスを手招きする。顔の横からちょこんと出した手でだ。ちょっと涙目になったシリカの表情は、堅物の日頃からは想像できない、えらく乙女じみた眼差しである。元々顔立ちは可愛らしいんだけど。
「……なんだよ?」
何か相談でもされるのかと思い、マグニスはシリカに歩み寄る。顔のそばに腰を降ろし、やや近くシリカを見下ろす形だが、ふるふるとシリカは小さく首を振る。手招きする手を、しつこくひらひら動かしている。弱々しい目、しかし何かを言いたげなシリカの顔に、首をかしげながらマグニスが顔を近づける。
射程圏内に入った瞬間、布団の中から飛び出したシリカの平手が、凄い勢いでマグニスの頬をひっぱたいた。完全に油断していたとはいえ、戦い慣れているマグニスがよろめいて後ろに背中から倒れる威力だ。寝そべった状態からこのフルスイングパワーを繰り出すシリカの筋力と瞬発力は、流石法騎士もとい未来の聖騎士様だ。
「寝ろ」
「はい、スイマセンっした」
ぷいっとマグニスに背を向けて、丸くなったシリカから逃げるように、マグニスは足早に退出した。ああ痛い痛い、やっぱり怒らせるとおっかない奴だと思う。




