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法騎士シリカと第14小隊  作者: ざくろべぇ
第2章  彼女に集った七重奏~セプテット~
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第17話  ~再会~



 晴れてよかった。


 夕暮れ前に家の前に立つアルミナは、つくづくそう思っていた。なにせ今日は、海を隔てた北の町、ラルセローミに遠征していた4人の仲間が帰って来る日なのだ。新しい仲間の第14小隊への加入、先日こなした任務や、濃密な訓練が大変だったなどの土産話――話したいことが沢山ある。


 そろそろ仲間達が帰って来る時間だ、とアルミナが家の前で再会の挨拶を考えている間、家の周りの花壇に水をやりながら手持ち無沙汰を解消するユースが、手伝えよー、とアルミナをなじる。チータも今日初めて顔を合わせる第14小隊メンバーに興味はあったが、家の中で杖を磨きながらゆったりと待っている。シリカも家の前に呼び子が二人立っているので、自室で騎士団への報告書などをまとめながら、ゆっくり待機する形だ。


 家の前でごろごろとくつろぐ野良猫をアルミナが撫で、愛で、暇を潰し始めてから数分後。路地の遠くからよく見慣れた人影が歩いてきた。


「来たっ! 目標補足!」


 射手の定型句を気前よく唱えたアルミナの声に反応して、家の周りを箒で掃いていたユースが顔を上げる。その目に映ったのは、なるほど、仲間の人影と確信できる特徴的なシルエットだった。


 向こうもこちらのことに気がついたのか、途中から足を速めてこちらに駆け寄ってくる。その後ろに馬に乗った二人の人影が見えたが、前を走るその小さな仲間の姿が最も目立つ。


「ユース! アルミナ! ただいま!」


 年相応に平均的な身長のユースよりも、頭ひとつぶんほど背の低い少年。その背中に、自分の身長ほどの大きさの巨大な斧を背負った少年が、快活な第一声を放った。その風貌が路地を駆けると、通行人の多くがその特徴的な大斧に振り返るものだ。


「おかえり、ガンマ! 元気してた?」


「アルミナも元気そうだな! ユースは!?」


 ガンマと呼ばれた少年は、今日も健康的な肌の色と明るい浅黄色の髪も相まって、澄んだ水に映る太陽のように明るい笑顔を見せてくれる。胸と肩だけを守る軽装の鎧だけを身に付け、カジュアルなズボンと皮のブーツを纏う姿は、騎士の真似事を楽しむ無邪気な子供によく似たものだ。元気いっぱいのアルミナよりもさらに大きな声を放つ姿には、ユースも、お前と一緒で元気にしてたよと笑うばかりだ。


「うふふ、ガンマもお土産話あるだろうけどさ。私達もとっておきのお知らせ持ってるんだよ」


「え、なになに!? 勿体ぶらないで教えてくれよ!」


 久しぶりの再会に、ガンマもハイテンションで体が落ち付かないらしく、軽鎧の肩部が何度もかちゃかちゃ音を立てている。まだ秘密だよ、と焦らすアルミナをガンマが急かして、二人で勝手に盛り上がっている姿に、街ゆく人々が二人のやりとりをくすくすと見守るものだ。


 家の中まで届くような二人の話し声に、玄関の戸を開けてシリカが顔を出す。日頃と変わらぬ落ち付いたその表情にもどこか、再会に向けて柔らかい期待が表れていた。


「あ、シリカ隊長! ただいま帰りましたです!」


「ご苦労様、ガンマ。相変わらず敬語が固いな」


 年若い部下との再会で少し表情がほぐれていたシリカの顔が、ガンマの挨拶を聞いてさらに柔和に。ぽんぽんとガンマの頭を撫でる背の高いシリカの手を、ガンマは気恥ずかしそうに後ずさって逃れる。


 ユースとアルミナがそんな様子を笑い、ガンマもやめろやめろと照れ笑いを浮かべたちょうどその頃、ガンマを追う形で家に近づいてきていた一頭の馬が、少し離れて止まった。


 馬にまたがる長身の大男は、後ろの少女に降りよう指示し、男の陰からこれまた小さな人影が馬を下りる。少し距離があって挨拶するには微妙な距離感に、アルミナも目線を送りながらも焦れている。しかし、馬から降りた小さな少女がぱたぱたと近寄ってくる姿を見て、一気にアルミナの興味がそちらに傾いた。


「キャル!」


 ぱあっと顔色を輝かせたアルミナに近付く、ガンマよりもさらに背の低い少女。キャルと呼ばれた小隊いち小柄なその少女は、アルミナに近付きつつも、まずはシリカの方に顔を向ける。


「……ただいま、帰りました」


「うん、元気そうで何よりだ」


 小さな声とともにほんのり笑顔を見せるキャルに、シリカはそう答えた。風吹かば柔らかくたなびきそうな、ふわりとした萌黄色の長い髪を携え、桜色のスイートピーを模した髪飾りをつけた姿は、その小さな体と幼い顔立ちも手伝って、まるで花の妖精のよう。袖のない新緑のレオタードに身を包み、色気よりもか弱さを醸し出す肩と細い腕を晒す風体を見れば、誰もはじめ、彼女が優秀な傭兵として戦場に立つような人物とは思えないものだ。膝下まで届く緑のブーツで脚の半分は隠れているものの、さすがに太ももを丸々晒しているのでは恥ずかしいようで、腰に巻いた薄手の絹で膝上は隠されている。風が吹くたびその間から脚が見えるが、それでも色香があまり漂わないのは、その幼い風貌ゆえだろう。


 お前どうした、と言われそうなぐらいそわそわするアルミナの方を、キャルが向き直る。


「……ただいま、アルミナ」


「おかえり! キャル!」


 他の誰を迎えるよりも一番嬉しそうな笑顔で、アルミナはキャルを迎え入れた。この後にも二人、小隊の仲間におかえりを言う機会があるはずだが、これ以上の満面の笑みを見せることは無いだろうと簡単に推察できる姿だ。


「抱きつくなよ、アルミナ」


「しないわよ。人の目があるもん」


 ユースの注意にアルミナはしれっと答える。人前じゃなかったら抱きつくのかよ、とガンマが突っ込むと、キャルもくすくすと笑った。


 その様子を遠目で伺いながら、馬にまたがった男もくっくっと笑っている。シリカがそこを見定めて、なかなか挨拶しに向かってこないその男に歩み寄った。ユースもそんなシリカを追う形で同じ場所へ向かい、シリカを追い抜いて馬のすぐそばに立つ。


「お疲れ様です、クロムさん。おかえりなさい」


「ん、ただいま。お前は相変わらず礼儀正しいな」


 第14小隊の良心はお前達だけだよ、とその後に付け加えて、クロムと呼ばれた大男はユースの苦笑いを誘う。若くして黒髪と白髪の混ざった剛毛、厚い胸板と太い四肢のせいか、彼のここまでの半生が穏やかなものでなかったことを匂わせるクロムは、大柄な肉体のせいもあり、いつ見ても貫録を感じさせてくれる人物だ。馬からユースを見下ろすクロムのそばにシリカが辿り着くのは、ユースが彼と挨拶を交わしたほんの少し後。


「おう、シリカ隊長。エレム騎士団騎士クロムナード、ただいま帰りましたよ、っと」


「私が近づいてようやくご挨拶か。上官には自分から近付いて頭を下げるものだぞ」


 口ぶりはそう言いつつ、シリカの表情は極めて柔和なもの。不躾な語り口を一応の形として咎めはするものの、心から批難している様子はまったく感じさせない口調だ。


「報告書は作ってあるから、後で渡す。たいしたことは書いちゃいないがね」


「わかった。それよりも、任務内容以外のお前達の活動報告の方が気になるな」


「長い滞在期間だったから、積もる話になっちまう。それも後でじっくり話すよ」


 馬を降りずに見下ろす形で、3階級上の上官とため口で話す平騎士。シリカよりも年上とはいえ普通は許されるものではない行為だが、それをシリカが認めている時点で、両者の関係は上官部下の単純構造以上に繋がった仲であると見てとれるだろう。


「この後、訓練は?」


「いや、いい。ユースやアルミナにはもう稽古をつけた後だし、お前達を労う時間を作るさ」


「助かる。騎士のナリを振る舞うだけでも疲れるんでな」


「ご苦労様」


 騎士を名乗りながらも土色のアーミーパンツと、タンクトップの上に黒いジャケットに身を包むクロムは、どちらかと言えば郊外の酒場などでよく見る、典型的な荒くれ傭兵に近いものがある。傭兵上がりで騎士暮らしがあまり肌に合わないと自認するクロムは、立場を加味して騎士らしい態度を人前で見せることも多いが、こうして身内だけと向き合う時にはすっかり肩の力を抜く。軽く胸を張って伸びをして、ふうと息をつき気楽に笑う姿を見ると、遠征で騎士様らしく振る舞う日々に余程疲れていたと見えて、シリカもくすりと笑いを漏らしてしまう。


「久しぶりだな、ユース。元気にしていたか?」


 クロムに聞かれると、微妙なところ。彼が自分に言う"元気にしていたか"というのは、騎士としてはたらきはどうだったかという意味合いが強い。シリカとクロムを除けば、第14小隊で騎士という称号を持っているのはユースだけだからだ。


「ええ、まあ……」


「その調子じゃ、またシリカに叱られてばかりか。まあ、厳しい上官様だから致し方ないがね」


「こら、クロム」


 心外だと言わんばかりの表情で目線を送るシリカに、クロムは低く笑って応じる。本当のことを言ったまでだ、と言わんばかりの顔つきが妙に自信満々で、シリカもこれ以上何も言う気になれなかった。


「まあ、いい。それよりもだ」


 シリカが話題を転換する。3人の第14小隊メンバーが帰ってきた時点でずっと気になっていた疑問を、ようやく問いかけやすい空気が出来たからだ。


「マグニスはどこに消えた」


「色街に消えてったよ。いない時点でわかってんだろ?」


 一瞬でシリカの目の色が暗く染まった。おっかなくて一歩彼女から離れるユースと、予想済みの反応を笑いを殺して受け止めるクロムの反応が、実に対比を利かせている。


「あのだな……お前が首に縄をつけてでも……」


「あいつお前の言うことすら聞かねえじゃねえか。俺が何言っても無駄ってもんよ」


 諦観丸出しで逆に清々しい顔を浮かべるクロムに対し、シリカは胸の奥から心底深い溜め息をつく。彼がそういう人物だとは元々知っていたけども。でも。


「とりあえず、馬を騎士館に返してくる。帰った頃には夕飯が出来てるとなお嬉しい」


「ああ、わかった。7人前用意しておくよ」


 クロムの知る小隊メンバーの数は7人。共に遠征していた4人と、シリカとユースとアルミナだ。シリカの今の皮肉の口調は、今ここにいないマグニスの頭数を省いた数字を語っている。だとすれば、料理の数が1人前多い気がしてならない。


「ん、1人増えたのか?」


 今のやりとりだけで、その真実まで辿り着いたクロムにユースがぎょっとする。むしろそれを含めて通じると思っていたシリカは、何事もなかったかのように次の言葉に移る。


「傭兵だ。後で紹介するよ」


「そうか、楽しみだ」


 それだけ言って、馬を騎士館に向けて歩ませるクロム。彼の背中を見送るユースが、今の会話の裏にあった含みをしっかりと理解するには、また少しの時間を要するのだった。











「――チータ、といいます。よろしくお願いします」


 クロムが帰宅した場で、改めてチータは自己紹介した。6人の第14小隊メンバーを前にして、多少の緊張も匂わせないたたずまいは、ある意味もっとも彼らしい。


「すでに見知った者もいるだろうが、この場を借りてもう一度挨拶しておこう。私はシリカ=ガーネット。この第14小隊の、隊長を務める身だ」


「ユーステット=クロニクス。みんなと同じように、ユースって呼んでくれていいよ」


「私、アルミナ。これからもよろしくね、チータ」


 名を名乗るにあたって姓を重ねるあたり、礼節を重んじる騎士としての姿勢が表に出ていると感じ取っていいだろう。アルミナは自身の姓にあまりこだわりが無いのか、かしこまった場以外ではこうして名のみを語る傾向がある。


「俺はクロムだ。よろしくな」


 騎士でありながら姓まで語らぬ、大雑把な者もここに約一名。隣のシリカが、肘でこつんとクロムの腕を突く。


「せめて名前ぐらいはだな」


「別にいいんじゃねえの。それ以外に呼び名もねえだろ」


 ダメ、と目で語るシリカに押され、クロムはかりかりと頭をかく。さぞ、面倒くさそうに。


「あー、フルネームで言やぁクロムナードだ。まあ、クロムとでも呼んでくれ」


 そして姓は語らない。クロムは騎士であるため、姓まで口にするぐらいの態度を期待したかったシリカであったが、事情を知る彼女はそれ以上のことを敢えて求めなかった。


「俺、ガンマ。よろしくな」


「……キャルといいます。よろしくお願いします」


 相次ぐ名乗りに方々会釈を返し、それぞれの名前を頭に刻むチータ。あまり他者に関心を示さない素振りをよく見せる少年だが、この態度はそうでもなさそうだ。事実、


「――シリカ隊長から、他に4人のメンバーがいると聞いていましたが、3人しか?」


 こうして問いかけるだけの姿勢は見せている。質問の内容にはシリカが渋い顔を返したが、それをフォローするかのようにアルミナが別の切り口から話を振る。


「シリカ隊長、じゃなくて、シリカさんでいいんだよ? シリカさんもそれでいいって日頃から言ってるし」


「俺達もそうしてるしな」


 アルミナに続く形でガンマもそれを押す。が、チータは少し考えたのち、


「いや、性に合わない。どうしてもじゃないなら、シリカ隊長と呼びたい」


「そうか。まあ、そこはチータに任せるよ」


 はっきりした主張にアルミナはちょっと困った顔を見せたが、シリカがそれでもいいと言った以上、それ以上は何も言えなかった。


 それを気にも留めない様子で、チータはシリカに目線を送る。さっきの問いに対する返答がまだ貰えていないからだ。


「ああ、まあ……第14小隊にはもう一人傭兵がいる。マグニスという者なんだが……」


 名前を口に出す前から、シリカはすでにちょっとげんなりした表情だ。何と言えばわからず困るシリカに助け舟を出す形で、クロムが横から口を挟む。


「マグニスは遊び人でな。シリカの命令も無視してどっか遊びに行っちまうことが多いんだよ。まあそういう奴だから、いなくてもあまり気にすんな」


「会えた時でいいんだよ。そのうちふらっと帰ってくるから」


 クロムの言葉に乗る形でガンマがその後ろに続く。さりげなく隊長を呼び捨てにしている者が約一名いたことにチータは眉を上げたが、空気が変わらぬということはこれが日常風景なのか。


「まあ、そういうわけだ……ここにいる者の顔と名前だけ覚えて貰えればいいよ」


 その言い方だと、マグニスという人物のことは覚えなくていいんですかとも解釈してしまえるが、もう言葉を選ぶのもわずらわしくなってしまったようなシリカの顔に、チータもまあいいかと軽く結論付ける他なかった。


「それじゃ質問タイムいってみようよ。せっかくみんな揃ってるんだからさ」


「そうだなー、チータって何歳なんだ? ユースよりちょっと背が小さいけど」


 こうした場で、積極的に空気を動かそうと口火を切るのは、今発言したアルミナとガンマの二人だと、概ね相場が決まっている。キャルを除けば一番背の低いガンマ、それも鎧を脱いでタンクトップ一枚になった姿は、その年にしては幼さが残る顔立ちなのも手伝って、随分子供っぽく見えるものだ。そこにしれっと身長の話をされ、お前に言われたくないよという表情をちょっと表に見せながらも、チータは淡々と言葉を返す。


「19」


「へえ、ユースと同じ年か。じゃあ俺より1つ上だな」


「すごい大人びてるから意外だったわ。私より絶対年上だって思ってたもん」


 近い年であることにガンマとアルミナが乗って、最年少のキャルがチータに対してぺこりと頭を下げる。アルミナやガンマのはしゃぎぶりよりもそちらの方に目がいったか、チータもキャルの方に頭を下げて返した。


「その杖から察するに、お前さんは魔導士か?」


「はい。あなたもそうですね?」


 クロムの問いかけにチータが二つ返事で答えた。やっぱりわかるか、と感心したようにうなずいて、クロムはその後に、


「魔法は使えるがたいしたもんじゃねえさ。基本、戦士枠として受け入れて貰えるとありがたい」


「なるほど。そう仰るのでしたらそう判断します」


 チータはクロムに対しては敬語で接するようにしたようだ。目に見えて最年長だとわかった側面もあったものの、どうも対等に話していいレベルの人間ではなさそうな気質は感じられたのだろう。


「なあユース。お前こいつに魔法を教えて貰ったらどうだ?」


「こら」


 無責任なことを言うクロムをシリカが引き止める。ユースの方を見ていたクロムは、シリカの方に向き直った。


「そろそろ構わんだろう。実戦で前に出る機会も、これまで以上に増えるだろうしな」


「それ自体は別にいいさ。だが、それで訓練が疎かになっては困るという話だ」


「それは昔のお前のことだろ」


「うるさい。経験則から同じ轍を踏ませないように努めて何が悪い」


 どうもクロムが相手だと話の主導権を掴めずにいるシリカを見るにつけ、チータの目にもこの小隊の裏番長が誰なのかが見えてくる。隊長を中心に完全な統制のとれた小隊であるという最初の印象が、この光景を見ていると徐々に考え改めるべきかと思わざるを得ない。


「導くのは結構だが、あまり束縛してやるなよ」


「むう……」


 ちらっとユースの方を見たシリカに、ちょっと委縮して肩をすぼめるユース。シリカとユースの間に限ってはまあ、決して揺らがない上下関係があるんだな、とはチータにもわかる。


「まあ、ユースがそうしたいと言うならもう止めはしないがな。その代わり、今までちゃんと出来ていたはずのことが出来なくなったりしたら――」


 わかっているな、とその後に付け足すシリカ。皆まで言わずとも、といった表情で、はいと答えるしかないユースだったが、少し離れてアルミナ辺りにも耳の痛い話であった。魔法にはやはり、憧れていただけに。


「まあ、そうした話は後で各々自由にして貰って構わない。今日のところは夕食でも食べながら、互いのことをもっとよく知ればいいだろう」


 そう言って、シリカは席をはずして台所に向かっていく。ほぼ準備を終えている夕食を仕上げ、食卓を完成させるためだ。意図を察したアルミナとキャルが、その後について歩いていく。






 第14小隊の7人で囲った食卓は明るいものだった。それぞれの出身地を語ったり、得意とする戦い方や武器を説明したり。概ね口を開くのはアルミナとガンマの役目だったが、その合間合間にシリカとユースが言葉を挟む形で会話は軽快に進む。そうした空気の中でクロムが一歩引いて見守り、口数の少ないキャルもクロムと似たような姿勢だった。


 歓迎される立場であったチータも、少しずつだが口が回るようになってきた。これから日々を共にすると決めた仲間との距離を縮め、理解しようと努める姿勢にも前向きになってきたようだ。新たな仲間を迎え入れた第14小隊の揃った日の末は、こうして更けていくのだった。


 一人、足りてないけど。

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