登場人物&世界観紹介:第8章
第8章に登場した登場人物達や、舞台設定の紹介です。
【主要登場人物】
<近衛騎士ドミトリー>
魔王マーディスを討伐した勇者の一人にして、その4人の勇者の中でも燦然とその名を輝かせる人物。かつて魔王を討ち果たす剣を振り下ろしたのがドミトリーであり、現代の勇者と言えばまずこの人物である。
がたいの大きながっしりした肉体を全身鎧で包み、巨大な大剣を振るう豪傑。齢70を過ぎてもその肉体は衰えず、未だに現役で戦場の最前列を駆ける超人。
<勇騎士ゲイル>
騎士団の古参であり、槍の名手。
空を舞う翼を顕現する魔法を行使し、空の遊撃手として戦場を縦横無尽に駆け回る。その実力は60を過ぎた妙齢が築き上げてきたキャリアに相応しく、単身圧倒的な制圧力で敵軍に穴を開け、壊滅させられるほどのもの。
上背は高くないが、長年愛用して鈍色に色褪せた鎧は戦士としての歳月を物語るものであり、白髪混じりの頭に隻眼という風貌も、その風格に拍車をかけている。
<魔将軍エルドル>
獄獣、黒騎士、百獣皇に並び、魔王マーディスの側近であった魔物の一体であり、魔王マーディスの遺産と呼ばれる魔物の大将格の一体。
巨大な体躯の背にコウモリのような大きな黒翼、足先まで鋭い藍色の毛に包まれた下半身、恐ろしい形相の山羊の頭という、神話に現れる大悪魔の風貌を絵に描いたような姿である。鮮血色の筋肉に包まれた肉体は常に返り血を浴びたようで、見る者の心を恐怖に染め上げる。
岩石をも粉砕する凄まじいパワーを持ちながら、地獄の炎と風を操る魔法を得意とし、破壊的な炎の嵐で以って広範囲を火の海にする力を持つ。魔王マーディスの遺産の中では最も多くの人類や人里を滅してきた怪物であり現在の聖騎士ナトームの故郷を滅ぼしたのもエルドルである。シリカやクロムの手によって5年前に討伐されたはずの存在であったが、人智を超えた魔物達の力により蘇り、ラエルカンを再び滅ぼす決め手の一つとして、再び猛威を振るった。
<サイデル>
アルム廃坑の奥地に封印されていた大怪物。
その風貌を語るなら、無数の腕を持ちその手が鎌に変わった巨大ながしゃどくろとでも形容すべきか。竜のように巨大な体躯を引きずる姿が基本形態だが、それを構成する骨はすべてが本体であり、ひとつでも破壊されていない骨があると、そこから放つ再生魔力で復活するという、不死に近い生存力を持つ。
攻撃手段は、主核の髑髏頭から吐き出す凄まじい炎と、無数の骨を操って、その牙や刃で敵を傷つけるというものの二つ。また、放った炎で火柱や炎の壁を作り、獲物の動きを制限するという知能も持つ。そうして葬った対象の骨を我が物とし、自らの一部に変えるという吸収力も併せ持つため、非常に始末が悪い。
<アズネオン>
アルム廃坑の奥地に封印されていた魔物達の切り札。
丸裸の赤ん坊のような全体像、ただしその体躯は少年に相当する大きさ、頭部は人間の頭を溶かして二つ混ぜ合わせたようなものという異形。ぶっくりと膨らんだ腹も含め、真っ白な肌にはむき出しの血管が絡み付いており、見る者をぞっとさせる風貌である。
対象の無意識と記憶の底から、"自分を恨んでいるであろう者"の存在を掘り出し、それを具現化し亡霊としてこの世に召喚、使役し対象を攻撃させるという魔法を使う。浮遊能力を持ち、機敏な動きと魔法障壁の展開により敵の攻撃を回避しながら、高みから亡霊を召喚して戦うという立ち回りを得意とする。
<ノエル>
百獣皇アーヴェルの側近。
筋骨隆々の肉体に獅子の頭を持つ怪物であり、その高い実力を発揮する局面はまだ訪れていない。しかしラエルカン二度目の崩壊を促す侵攻においてはそれなりの活躍をしたらしく、猛者揃いのラエルカンを攻め落とした大将格として、実力のほどは匂わせている。アーヴェルには非常に丁寧な態度で接する一方で、燃え盛る都を眺めて満足げに笑うなど、残忍性も伺える。
【その他の登場人物】
<法騎士リビュート>
空の遊撃手、勇騎士ゲイルの部下。
空を舞い、熱のこもった気合と共に、得意とする氷の魔法で地上の敵を狙い撃つ。剣の腕も階級相応に高く、空に群れる魔物達の軍勢に切り込み、敵の陣を切り崩していく一番槍を務めることも多い。下記のシャルルとは年が近い盟友であり、最上官であるゲイルが隠居気味の昨今は、彼と二人で制空権を確保する指揮官を務めることが多い。
<法騎士シャルル>
空の遊撃手、勇騎士ゲイルの部下。
冷静沈着な男でありながら、強力な炎の魔法で空中から敵軍を猛襲する攻撃性に富む。剣の腕も確かであり、地上への援護射撃を果たしながら、襲い掛かる怪鳥を返り討ちにする手腕も見せている。上記のリビュートは付き合いの長い友人であり、性格はあまり似通わないながらも、互いに背中と命を預けて信頼し合える、強い絆を持ち合わせている。
<上騎士イッシュ>
エレム王国第44小隊隊長であり、ルザニアが所属していた部隊の指揮官。
二十代半ばに茶髪という、若い騎士としては強い特徴のない風貌で、騎士としてのこれまでの人生も平凡だった人物。出世は早くなかったが、年を追うにつれて実力をつけて昇格し、ルザニア含む部下からも信頼されていた普通の良き騎士であった。アジダハーカの急襲により、抗う暇すら与えられず若い命を散らせた。
<ゼルザール>
トロルやスプリガンの最上位種にあたるギガントスの魔物。魔王マーディス存命の頃から名を冠していた魔物の一体で、獄獣軍の魔物達を指揮する権限も持つ。
高い戦闘能力を持ちながら、人類の死角から地震魔法を放ち、敵の足並みを崩して配下にとどめを刺させる戦い方を好む。指揮とアシストに徹するその立ち回りが、厄介なこの魔物を長く生き永らえさせてきた。近衛騎士ドミトリーの圧倒的な実力の前にとうとう討たれたが、相手がそれでなければ、逃がさず討伐することも困難なことであっただろう。それだけの実力は持っていた怪物の一体である。
【舞台設定】
<アルム廃坑>
かつて魔王がコズニック山脈を支配する前には繁栄を誇った巨大な鉱山だった場所。金が採れた金鉱区、銀が採れた銀鉱区、ミスリル鉱などの武鉱石が採れた武鉱区に分かれており、それだけでも希少な金属がよく採出された名鉱であったのが計り知れる。
魔物達にとっても巨大な棲み処であり、近年では魔王マーディスの遺産達が拠点に構え、いわば魔王軍残党の要塞と化していた。その奥底には、人類の想像を超えた化け物も隠されており、魔王軍残党の掃伐を目指す人類にとっては、まさしく最後の難関と言うに相応しい伏魔殿だっただろう。魔王軍残党の猛者が騎士団を迎え撃ったアルム廃坑戦役は、後の歴史にも名高く刻まれるほどの死闘として、語り継がれていくことになる。
<ゾーラ湖>
コズニック山脈の奥地、アルム廃坑への進軍ルート上にある大きな湖。
そばには小さな洞窟もいくつかあり、山の奥地に進撃する人類軍にとっては、宿営地とするに適した場所。季節や天候、状況によってキャンプ様相というのは変わるものだが、どんな手段も取りやすい地相であり、水源もすぐそばにあるという好条件が揃っているからだ。




