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法騎士シリカと第14小隊  作者: ざくろべぇ
第6章  過去より巣立つ序曲~オーバーチュア~
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 魔物図鑑:第1話~第100話

第6章終了時点までに登場した、魔物達の紹介です。




~第1章~


【ゴブリン属】ゴブリン

コズニック山脈の深くない場所に出没する、子鬼のような魔物。

差し当たって大きな体でもなく、その手に握られた棍棒を振り回すだけの弱い魔物だが、角ばった筋肉は一般成人と比べれば強い筋力を持つため、戦う力を持たない人との喧嘩になれば充分な殺傷能力を持つ魔物である。ただ、騎士団で力を培っている騎士の相手になるかと言われれば、そこまででもない。


【ゴブリン属】コボルド

ゴブリンよりも一回り大きな魔物であり、棍棒ではなく剣を握っている。

身体能力はゴブリンと大きく変わらないが、手足が長いので総合能力は高い。討伐の難しい魔物ではないが、鉱山で発掘したい鉱夫達にとっては、護衛なしに遭遇してはいけない魔物である。


【獣人属】ワータイガー

一般の成人男性よりも大きな体躯を持ち、虎のような頭を持つ、二足歩行の獣人の魔物。

身体能力は普通の人間を遥かに凌駕するもので、どんなに鍛えた人間でも武器あるいは魔法を使わずに戦うのは自殺行為だと言えるだろう。腕力、脚力、瞬発力を生かして機敏にその腕と足を振るい、人間を殴り飛ばすだけの戦闘手段しか持たないが、人間相手ならその攻撃が一発当たるだけで再起不能に出来るので、それだけで人類にとっては脅威的な存在である。


【ゴーレム属】サイクロプス

コズニック山脈に生息する、全身を岩石で構築された巨人。

一つの眼球が岩石を寄せ集めて肉体を構築し、体躯を振り回して外敵、おもに人間を殴り飛ばす。眼球は魔力を捻出することが出来、そこから、着弾すれば火柱を伴う光弾を放つ攻撃手段も持つ。眼球を中心に肉体を構築する岩石を砕いてもダメージにはならず、その眼球を砕くなりして破壊することでしか、この魔物を討伐することは出来ない。


【亀属】ランドタートル

エレム王国西の海、その入り江に生息する魔物。

陸亀をそのまま大きくしたような体躯で岩肌の上を歩き、雄牛のような巨体にしてそれなりに動きも早い。体重を活かしての体当たりや、瞬発力に優れる首を伸ばしての噛み付きなどが攻撃手段。また、甲羅に守られた全身に対し、首が急所であるが、首の伸縮速度は恐ろしく速く、普通に首を横から切り落とそうとしても凄い速度で回避されるという。


【亀属】ヒュージタートル

ランドタートルの上位種で、それの倍ほどの大きな体を持つ。

特徴はランドタートルとさして変わらないが、逃げ場を許さない巨体での体当たりや、下位種よりも首を守る速度が高いなど、身体能力の高さだけでも下位種とはかけ離れて危険な魔物である。耐久力も高くなっており、ランドタートルなら受けて怯んだ雷撃魔法も、こちらは耐えて駆け続けることが出来る。ただ、甲羅に守られていない腹などの防御が弱いこともこの種族には共通する弱点で、そうした弱点を突くことが勝利への近道であると言える。






~第2章~


【小悪魔属】インプ

下級悪魔のような魔物であり、人の子のような小さな体で背中にコウモリの羽を持つ魔物。

力は弱いが飛空能力を持ち、空から火球を放つ魔法で人間を攻撃してくる。一匹が相手ならばさほど怖い魔物ではないが、群れをなすため隙を見せると集中砲火されるので、油断はできない魔物である。


【オーガ属】オーガ

大きな肉体と棍棒を武器に戦う巨人族の魔物。

騎士団としては、隊の中でも上位の実力を持つ戦士をこの相手にぶつけるよう戦陣を敷くため、一般にこの魔物の脅威で殉死者が出たケースは少ないが、言い換えればそれは若い騎士では討伐することが難しい魔物であるということである。大きな棍棒の一振りは、人間の体に当たれば間違いなく骨まで粉砕するパワーを持っている。上位種と比べれば動きも鈍く知能も高くないのがつけ入る隙だが、白兵戦の得意でない者は絶対に近付いてはいけない。


【狼属】ジャッカル

野生の狼とさして変わらない見た目の魔物。同属と結託して獲物を狩る野生動物とは違い、他種の魔物と手を結んで人間に襲い掛かるものが、この魔物と定義される。

能力そのものも野生の狼と大きく変わらず、素早い動きで人間に飛びかかり、喉笛を噛み千切ろうとする単調な魔物。ただ、牙の殺傷能力も速度もなかなかのものであり、戦士にとって討伐の難しい存在ではない方だが、油断していると足を掬われるので注意が必要だ。


【コウモリ属】ウェアバット

人の子ほどの体躯を持つ大きなコウモリの魔物。肉食動物であり、人間の肉を好んで食べたがることから魔物に分類されている。

空を飛び、鋭い牙で噛み付いてくる。攻撃手段はそれだけだが、人体に牙を突き立てれば引きちぎるぐらいの力はあるため、空から襲い掛かるこれを相手にするには広い視野が必要。地上のジャッカル、空からのウェアバットという連携を取られると面倒であり、人間にとってはこれが戦場に存在するだけで戦闘がややこしくなる魔物である。


【悪魔属】ガーゴイル

魔王マーディスの率いていた魔物の中で代表的なものの一種。人と同じだけの体躯で紫の肌、コウモリのような大きな翼を持つという、いかにも悪魔という風貌の魔物。インプ達のような子悪魔属とは種族として直結の関係はないが、あれらを率いる親玉であることがやや多い。

人を丸々飲み込めるほどの大火球を放つ魔法を得意とし、その魔法を詠唱する口は、人間と会話出来るほどの知能を伴っている。大きな翼で空を飛ぶことも出来、タイリップ山地においては狭い木々の間でも起用に高所を確保して、地上の法騎士との闘いを有利に進めた器用さも併せ持つ。身体能力も高いために隙が少なく、力量で劣る相手にまぐれで敗れることがない魔物だろう。


【ミノタウロス属】ミノタウロス

人類が恐れる魔物の中で最も有名なもの。雄牛の頭と巨大な体躯、大斧を武器に戦う極めて危険な魔物である。

小細工なしに高い身体能力のみを武器に戦う無骨な化け物であるが、剣を全身に突き立てられようとも急所でなければ倒れないタフネスを持ち、火球魔法などでは怯みもしない耐久性を持つ。武器なしに腕や脚を振り回すだけでも、人間に対してはどれも致命傷となるだけのパワーを持ち、闘い慣れたその動きは機敏で隙も少ない。まさしく戦士たる魔物の代表格と言え、並の人間の戦士では歯が立たない怪物である。これを単身で撃破出来れば戦士としては一人前とも言える基準にすらなっており、力が及ばないうちには絶対に戦ってはいけない化け物である。


【ギガース属】ヒルギガース

ミノタウロスと双璧を為し、人類に最も恐れられる怪物の代表格。巨大な肉体を持つが外観は人間と同じつくりをしており、筋骨隆々の肉体を持つ。

巨大な(いかり)と、そこから鎖で繋がれた鉄分銅を武器に戦う。鉄分銅は弾丸のように敵に向けて投げつけられ、人の頭に着弾すれば一瞬で粉砕するほどの破壊力を持つ。接近した人間に対しては、巨大な錨のような武器を振り回して応戦、あるいはその拳や脚を振り回して攻撃してくる。ミノタウロスにも言えることだが、その判断力によって攻守ともに優れた動きを成立させるので、戦慣れし始めた程度の戦士では、それを上回る実力で簡単にひねり潰してしまう。こちらも、単身撃破出来るのであれば、人に頼られる戦士としては充分な実力を持っていると言えるだろう。






~第3章~


【狼属】ヘルハウンド

真っ赤な体毛を持つ、子犬ほどの大きさの魔物である。

身体能力はジャッカルとさして変わらなく、体も小さいぐらいだが、口から吐き出す火球が武器となって人間を襲うため、あちらよりも攻撃のバリエーションは多い。近付けば鋭い牙で噛み付いてくるため、遭遇すれば対処法をしっかり練っておかないと、他の魔物達への対処と合わせて手を焼くことになる。


【怪鳥属】ヴァルチャー

鳥の姿をした魔物。人の屍肉を貪る性質を持ち、人間をまず絶命させようと襲い掛かってくる性別から、動物の鳥とは区別される。

噛み付いてきたりはしないものの、急降下しながら突き出してくるそのくちばしに頭を打ち抜かれると、戦場では命を落とす要因と直結する。他の魔物よろしく、群れを為して連携して襲い掛かってくるため、これ単体よりもその集団性を恐れるべき魔物だろう。また、空を飛ぶ他の魔物に比べて素早いため、いわば体当たりしか攻撃手段を持たない割に、対応はやや難しい部類に入る。


【ゴーレム属】マグマゴーレム

サイクロプスの亜種であり、こちらは火山岩で肉体を構成する。

取り立てて特徴は変わらないが、眼球が持つ魔力は振り回す岩石に高熱を抱かせ、地面を殴った拍子に火の粉を撒き散らすなどして、攻撃範囲がサイクロプスよりやや大きくなっている。使用頻度は低いが、眼球から光弾を放つ攻撃も扱えるようで、サイクロプスより厄介な魔物であると言える。


【ドラゴン属】ブレイザー

小さな竜のような姿をした魔物。

空を舞い火を吹く攻撃で敵を狙撃するが、小さな体と言っても竜特有の身体能力は侮れず、騎士の剣を爪先ではじいて応戦するなどの守備力は持っている。鱗に覆われた全身の守りも決して柔らかいものではなく、自由に空を飛び回って地上を攻撃する手段を持ち、迫って討伐することが難しいという点において、その厄介さを特筆される魔物である。


【小悪魔属】グレムリン

インプよりも一回り大きく、青白い肌を持つ小悪魔の魔物。インプの上位種にあたるようで、下位種を率いて現れることも多い。

火球魔法を扱うインプとは異なり、落雷魔法を扱う性質を持つ。火球魔法の対処に惑う人間をそれで撃ち抜くか、自分より強い魔物の魔法を当てるためのアシストに使うか、手を組む魔物次第でその使い方を変える戦い方を好む。単体で怖いタイプの魔物ではないが、群れの中にあると嫌なタイプ。


【竜戦士属】リザードマン

トカゲのような頭部を持つ二足歩行の魔物で、全身を鱗で覆われ、剣と盾を持つ魔物。

修練を積んだ人間の戦士のように、合理的な武器と防具の扱い方を心得ており、加えて人間よりも高い身体能力を持つため難敵である。周囲に味方がいれば連携した攻めを見せることもあり、非常にある意味人間に近い魔物と言えるかもしれない。人間離れした身体能力を持つ、ミノタウロスやヒルギガースなどに比べると脅威性が薄れて感じられるため、あまり特筆して語られることのない魔物だが、本質的にはこれを相手にするのは、修練を積んだ人間を相手にするのと同じほどのリスクを伴うため、実績を伴ってきた腕に覚えがないならば、交戦は避けるべき魔物である。


【屍人属】デッドプリズナー

人間の腐乱死体が歩き出したような魔物。人によっては目にするのも嫌な存在だろう。

剣や斧など、無骨なぼろぼろの武器を扱うが、動きは鈍いため普通に対処しやすい。ただ、屍人の魔物特有の"急所"を破壊されないと動き続ける性質のため、討伐に時間がかかる。この魔物に多数押し寄せられると、その掃伐だけで体力を奪われるので、魔物達の親玉にもそうした使われ方をされやすい。


【騎人属】ケンタウルス

鉄兜と鎧、剣と盾を武装した人間の肉体を持つが、腰より下が馬の肉体となっている魔物。

その下半身が為す脚力は素早い動きを見せ、人間よりも高い目線からリーチの長い武器を突き出してくるその戦い方が、騎兵を相手にする難しさを人間達に強いる。また、走力に優れるため、人間の脚力では逃亡の計れない相手であり、これと戦えば勝つか殺されるかしかないため、戦場の厳しさを物語る魔物の代表格とも言えるかもしれない。人と会話するだけの知能と口、武器を巧みに操って人間を翻弄する動きを併せ、魔物達の戦士の中ではエリートに属する魔物だろう。


【魔術師属】ジェスター

道化のような姿を持つ魔法使いの魔物。

電撃球体を放つ魔法を得意とし、その威力は高い。その魔法を詠唱する口を持つため、恐らく人間と話せるだけの知能も持っているが、笑いながら人間を殺しにかかってくるばかりなので、人間と会話をしたという例は少ない。魔力によって空中を漂う能力があるため、それなりに空中の魔物に対する戦闘手段を心得ていないと、討伐することに手を焼いてしまう。


【悪魔属】ネビロス

ガーゴイルの上位種で、それよりも一回り大きな体躯を持つ。体色は深い緑色に変わった。

太い風の渦を放つ魔法を最たる攻撃手段とし、その威力は地面をも抉る破壊の砲撃を実現させる。さらには口から無数の火球を放つ魔法も使いこなし、接近する敵に対しては、自分を中心に爆撃を放つ魔法で押し返すなど、多芸にて隙のない魔物である。身体能力も非常に高く、強い戦士、術に秀でた魔導士の美点を両立したようなその戦いぶりは、自在に空を飛行する能力と併せ、この魔物を恐ろしき存在たらしめている。


【巨人属】トロル

ぼさぼさの髪の毛が特徴の、巨人の魔物の一種。

獄獣の率いる魔物達の例に漏れず、怪力と瞬発力で戦う能力を持つが、武器を手にしない代わりに地を揺らす魔法を得意とし、他の魔物と手を結んだ時、戦術に幅を持たせる魔物である。普通に戦ってもそれなり以上の実力を持つ上で、周囲の味方をサポート出来る戦い方を選べる存在というのは、どこで遭遇しても危険な存在である。概ねは自分以上の怪物と共に現れることが多いため、そちらに目を奪われがちでありそもそも侮っていけない単体であることが忘れられやすい厄介者と言える。


【オーガ属】オーガキング

下位種のオーガが小さく見えるほどの巨体を持つ大鬼の怪物。

その手に持つ金棒は人間の腕力では持ち上げられそうにもなさそうなものだが、それを容易に振り回すパワーを持つ。当人の実力も相まって魔物達の中では士官級の格を持つ魔物であり、多数のオーガやトロルなどを率いて戦陣に立つこともある。武器の扱い方も訓練を受けた戦士のように賢く、器用に攻防ともにを金棒一本で成立させる。それは剣など、人間の武器が自分の身を深く傷つけるものであると知っているがゆえであり、さして知性を匂わせることが多くはないが、間違いなく戦士としては練達の知性を持つ魔物であろう。 


【ゴーレム属】ゴグマゴグ

ゴーレム属の魔物の中でも他の追随を許さない巨体を持つ大型怪物。

5階建ての建物といい勝負をする巨体は、目にしただけで圧倒されるものであり、その巨体が振り回す腕の速度はたとえようもなく脅威的である。ゴーレム属特有の、眼球から放つ光弾の威力も下位種とは比較にならず、地面に着弾した瞬間に立ち上る火柱の勢いは凄まじい。巨体ゆえ、はずしようもないような巨大な腕を振り回す攻撃が回避しづらく、時にはその巨体を前に倒すだけでとんでもない広範囲攻撃を実現させてしまう。下位種と同じく眼球を破壊すれば討伐可能だが、下位種と比べて眼球があまりに大きいため、一撃にてとどめを刺せた下位種よりも耐久性でも優れる。また、眼球を魔法で狙撃されても魔力ではじき返す防衛手段も持ち、まずどうやってその眼球を破壊するか考えるだけでも気が遠い魔物だった。






~第4章~


【ムカデ属】センチペタ

大ムカデの姿をした魔物。

噛まれると痺れを伴うような毒を流し込まれるので、油断は禁物。獲物を見定めてからの動きは思ったよりも早いので、目にしたら近付かないようにした方が良い。地上のみならず柱の影などに潜んでいることもあるので、生息地ではうかつにものに手をかけないことも重要。


【サソリ属】アラクラン

大きなサソリの姿をした魔物。

尻尾の先に持つ神経毒は強力なものであり、小さいとはいえ刺されると厄介なことになる。解毒剤のひとつぐらいは持っていないと、あるいは一人で、この魔物が出没する場所には行かない方がいい。神経毒で動けなくなって無抵抗のまま、魔物達に食われるのは、即死するよりも恐ろしいことだ。


【芋虫属】クロウラー

人の頭も飲み込めそうなほどの大口を持つ芋虫の魔物。

砂漠においては突然地中から現れることもあり、普通に歩いているだけでも警戒心を怠れば、文字通り脚を掬われる魔物と言える。見えている状態で敵対するならそこまで討伐の難しい魔物ではないが、そういう意識でいると思ったよりも素早いその動きで、腕の一本持っていかれる恐れもあるので注意。


【蜘蛛属】タランテラ

人間の掌に収まらないほどの巨体をもつ大蜘蛛の魔物。

人間相手に致命傷となるような猛毒は持っていないようだが、発生する際には数が多い上に素早く、人によってはこれが多数で襲ってくる光景自体が精神攻撃になるので、ある意味では非常に厄介。何気に鋭い牙を持っているので、接近して噛み付かれるとかなりの痛手となり得る。多数のこれに囲まれないよう気を配るのは、砂漠の中においての常識と言われている。


【蜘蛛属】ビッグスパイダー

上記のタランテラとは打って変わり、人を背中に乗せられそうなほどの巨体となった大蜘蛛の魔物。

糸を吐いて獲物を捕らえるその攻撃手段も警戒すべきだが、何よりもその八本脚が器用に地面を駆ける動きが厄介な魔物である。天井や壁もその巨体で自由に走ることが出来、脚の数に応じて小回りも利き、その動きを捉えられなければすぐさま接近されて噛み付かれてしまう。毒性は強くないが、巨体だけに噛み付いた時に流し込む毒の量が膨大であるため、結果として人体には相当な悪影響を持つ毒を流し込む魔物であると認識していい。一度牙を突きたてられたら、死を覚悟しなくてはいけない存在である。


【芋虫属】ジャイアントリーチ

クロウラーの上位種とされ、人の頭を容易に飲み込めそうな大口と、下位種よりもさらに大きく長い体躯で、人間を頭からまるまる呑み込めそうな魔物である。ただし、風貌は下位種と違ってヒルのような口の形になっている。

頭から飲み込んだものを、口内の無数の歯ですり潰すため、食べられてしまったら一巻の終わりである。また、長く太い胴体部分は見た目に反して器用に動き、時にはくねらせ、その際に何かにぶつかろうものならそれなりのパワーを出すため、人間相手なら胴体をのたうつだけで攻撃手段となるだろう。素早く大口で呑み込みにかかってくる攻撃は脅威的だが、それに気を取られて胴体ののたうちに吹き飛ばされ、傷ついたところを飲み込まれた戦士も少なくない。単調なでかぶつだと侮っていると、その驕りにつけ込まれて命を落とすことになるだろう。


【創造生物種】メデューサ

魔物達の技術が生み出した合成生物。人間の胴体の倍はあるほどの太さの蛇の下半身を持ち、人間離れした腰から上の人間の姿を持つ怪物。女性的な上半身だが、髪の代わりに頭上では無数の蛇が息づいている。

火術の扱いに長けており、火球、火炎砲撃、爆発を起こすなど、多彩な攻撃手段を持つ。炎の壁を作って敵の攻め手を阻んだり、弾速に秀でた稲妻の槍を放つなど、状況に応じて使いこなす魔法の幅も広い。頭上でうごめく蛇は一定の伸縮自在のようで、近くに迫った人間に対してはその蛇を伸ばし、噛み付いたり巻きつけたりして攻撃することも出来る。最終的には、発生させた炎の壁の魔力を攻撃用に転じさせ、より高濃度魔力を伴う爆炎魔法(エクスプロード)を実現させるなど、練達の魔導士のような魔法さばきも見せた。素体となった人間ないし魔導士が、それなりに秀でた者であったのだろうと推察される。






~第5章~


【ドラゴン属】ワイバーン

ブレイザーの上位種。小さな竜であったそれとは一線を画し、大熊よりも一回り大きな緑の翼竜という、いかにもドラゴンといった姿になった。

口から吐く炎は広範囲を焼くものであり、上空から地表にその炎が届くと、草木などなくても一気に燃え広がるのが特徴である。手足の爪は鋭く、竜の怪力を伴うがゆえその爪で巨木の幹をも抉るほどのものであり、自らに武器を向かわせる人間に対し、その爪で応戦する力もある。また、竜の鱗は非常に硬いものであり、銃弾や矢を直撃させても、当たり方次第では体の中までダメージが通らないという守備力も持っている。加えて空を飛べる特性のため、この魔物との交戦が認められる者は人間の中にも限られてくる。力弱き者が立ち向かっても、殺されるだけだからだ。


【怪鳥属】コカトリス

ヴァルチャーの上位種にあたる鳥の魔物。

大鷲のような巨体で、くちばしを突き出しての体当たりしか出来なかった下位種とは異なり、その太い脚の爪も強力な武器になる。その巨体を枝に止まらせるほどの握力を持つ足は、人間の肉体に深々と爪を貫かせるものであり、捕まれば頭を巨大なくちばしで貫く追撃で命を奪われてしまう。広大かつ高い天井を持つとはいえ、地底遺跡の中でも自在に飛び回る器用な飛び方が出来、射手としても的が大きい割には狙撃の難しい対象である。


【獣人属】ワーウルフ

ワータイガーの上位種で、数多くの魔物の中でも上位に食い込む実力者。

狼の頭を持つ大柄の二足歩行の獣人だが、武器も持たずに鋭い爪を持つ腕を振り回し、練達の戦士をも葬るだけの実力を持つ。爪が剣の代わりになるほど堅く発達しており、武器を握った人間を相手にしても、金属音を打ち鳴らして戦えるという魔物である。武器は身体能力とその爪だけという、特筆点の少ない魔物だと思われがちだが、逆にそれだけで人類の猛者を葬ってしまえる実力こそが、語るべくもない恐ろしさを形容していると言える。歴戦の法騎士や聖騎士であっても、少しの間違いひとつでこれとの戦いで命を落とし得るというのだから、並の戦士が立ち向かえるような魔物ではないことがわかる。


【蛇属】ヴァイパー

青大将のような蛇の姿をした魔物。

毒性は少なく、噛み付かれると肉を引きちぎりかねないその顎の力だけが脅威。ただし、蛇の形をした魔物の共通事項として、地表を這うため武器の軌道を向かわせにくいこと、意外に素早いこと、不意に飛びかかってくる瞬発力、壁や柱の影から飛びかかってくるなど、地味にいやらしい特性を数多く持ち合わせており、何気に手を焼きやすい魔物である。


【ムカデ属】シャークピード

センチペタの上位種で、大人二人ぐらいは背中に乗せて歩けそうな巨大なムカデの魔物。持つ毒の強さはさほどでなくても、噛み付かれると流し込まれる毒の量が多いため、結果として強力な毒性を持つ魔物と認識していいだろう。加えて素早く機敏な動き、それも地を這う動きゆえに武器を向かわせにくく、立地戦での戦い方を崩さないと戦いにくいのが厄介。しかも大型のくせに群れを成して襲い掛かってくるため、敵に回したくない魔物としては有力なものである。


【サソリ属】ゴールドスコーピオン

アラクランの上位種で、板金のような輝く外殻を持つサソリの魔物。大きなハサミは、人間の胴体を真っ二つに出来るほどのものであり、体躯もそれに伴い巨大である。

頑丈な装甲は人間の武器を殆ど通さず、討伐には関節や顔などの、装甲によって守られていない場所を狙う必要がある。大きな体を振り回すその攻撃をかいくぐって急所を狙うのは難しく、図体に反して想像以上に致命傷を与えるのが難しい魔物と定義されている。尻尾の針にも強力な毒を持っているが、そもそも針が大き過ぎて、これに体を貫かれると毒など関係なく死に至り得るため、その毒性はあまり特筆されない。


【狼属】サイコウルフ

ジャッカルの上位種ともヘルハウンドの亜種とも呼ばれる存在。青く光り輝く体毛を持つ狼の姿で、敵対する相手でなければ美しくも感じる風貌だ。

狼としての肉弾戦能力に加え、風の刃を飛ばして攻撃したり、敵の魔法を水柱を発生させて防ぐなど、魔力を使った合理的な戦い方が出来る魔物である。近付くまでが大変で、離れた場所からの討伐がやや手こずる対象であることから、美しい見た目に反して戦士には疎まれやすい。単体ではそこまでの脅威ではないと見ても、こうした魔力を扱う魔物は、他の魔物と連携した時にこそ怖さを見せるもので、戦場でこの姿を見かけたら、戦い方を考えさせられる存在である。


【蛇属】キングコブラ

ヴァイパーの上位種で、一回り大きい蛇の魔物。

蛇の魔物特有の討伐しにくさ、物陰から突然現れる怖さはそのままにして、膨れた腹にたくわえた毒が下位種よりかなり強くなっていることが、その怖さをさらに強調している。噛み付かれるとその毒により、熱病にうなされるほどの目まいを引き起こし、戦いどころではなくなってしまう。対処が遅れるなら、そのまま死に至るほどの強い毒だ。不意打ちにさえやられなければ怖くない魔物であるのは下位種とほぼ同じだが、その不意打ち一回が致命傷となり得るところが、この魔物が恐れられる所以である。


【熊属】グリズリー

大熊の姿の魔物。

武器を扱う獄獣の配下の魔物と異なり、武器など持たずに大暴れする百獣皇の配下達は、身体能力で言えばあちらを凌ぐものである。ワータイガーが速度と機敏さなら、こちらはパワーを司る百獣軍の魔物と形容することが出来、その腕に殴り飛ばされれば一撃で致命傷となるだろう。徒党を成して数で押す獣の軍団において、白兵戦を務めるこうした魔物がいると、空からの魔物、物陰からの魔物の脅威も増し、魔物達の軍勢の層を厚くするのである。


【ギガース属】グラシャラボラス

ヒルギガースの上位種。下位種の時点で怪物であったその魔物が、さらなる力を得た存在。巨大さを除けば人間的な外観だったのも、肌の色が紫色に染まっているのが魔物らしさを強調する。

武器はヒルギガースと変わらず、錨と鎖と分銅の一対だが、鎖がヒルギガースのそれよりも遥かに長く、その鎖は肉体に巻きつけられて鎧のように身を守っている。そして分銅を投げれば、その複雑に体に巻き付けられたように見える鎖も、滑車を滑る鎖のように勢いよく伸び、敵に分銅を届かせる仕組みだ。おそらくは小手先だけでなく、武器と魔物が独立した存在ではなく、魔力か何かで一体化しているものだと仮説が立てられているが、真相のほどは定かではない。ともかく、鎖の鎧や装備した手甲による守備力の増強、下位種よりもさらに強まった怪力と速度により、ヒルギガースを討伐した過去があることに胸を張っている程度の心意気では、一瞬で粉砕されてしまうような怪物である。


【ミノタウロス属】ビーストロード

ミノタウロスの上位種。白銀の体毛に全身を包み、雄牛の頭を持つ姿は、神話においては神獣と奉られる存在でもある風貌だが、その凶暴性は人類の恐怖の対象でしかない。

ただでさえ人間離れしていた下位種だったのに、それを遥かに上回る身体能力という時点で、もはや多くを語る必要はないかもしれない。下位種より更に柄の長いバトルアックスを悠々と振り回し、膝などを武装して固めた姿は、まさしく魔物達の猛将を思わせるものである。人間との戦い方にも合理的で、防具に守られた場所への攻撃は防がない、近い敵にはリーチの長い武器ではなく蹴飛ばして応戦するなど、敵を仕留められる攻撃と、無駄な防御を省いた動きを織り込み、極めてスマートな戦い方を実践する。知能が高いのも事実であるが、そう言うよりは、戦人の血が脈々と流れた魔物であると形容した方が適切かと思えるほど、戦いに特化した動きを得意とする魔物である。


【蛇属】アースヒドラ

ヴァイパーやキングコブラの上位種。木の幹にも負けず劣らずの太さを持つ、大蛇が5匹絡み付いたような体を持っている。

5つの頭は独立して動くが、体を通じて一体の魔物であるらしく、どこかが傷つくと他の蛇も表情を変えることからもそれがうかがえる。その5つの頭を一つの意志で操り、10の目が捉える視界から得る判断能力から、普通に5匹の魔物が連携を組むよりも完成された、連帯行動を可能とする。大蛇一匹ぶんの体だけでも相当なパワーを持っているのに、それが息を一つにして5つ同時に襲い掛かってくる光景は、初めて向き合う戦士には想像外のことばかりを目の前に見せてくる。岩石にも突き立てられる鋭い牙、巻きつけば人間など一ひねりの蛇腹を駆使して戦うこの魔物は、射程内に入った獲物を決して逃がさない。






~第6章~


【竜戦士属】ドラゴンナイト

リザードマンの上位種。騎士剣と盾を装備しているのは下位種と同じだが、鎧に身を包み、頭部も竜のそれとなり、背も随分高くなっているのが下位種との格の違いを見せている。実際のところ、数匹のリザードマンを率いて将となることも少なくないようだ。

特徴としては、純粋に騎士として強いと言うだけで片付く。剣の器用な扱い、状況に応じて攻め手を変えられる柔軟な思考力と、人間の騎士で言うところの"これが出来れば一人前"を当たり前のようにこなし、さらに身体能力の高さがその強さに拍車をかける、という調子である。また、人間と違って体表を包む鱗やその奥の筋肉も固く、防具なき場所に武器を食い込ませたとしても、一撃で仕留められないことも多く、それが独り立ちしたばかりの騎士の多くが葬られる要因となりやすい。


【創造生物種】ケルベロス

3つの頭を持つ、獅子にも勝る体躯を持つ巨大な狼の魔物。ジャッカルやヘルハウンド、サイコウルフなどの狼属の上位種とは分類されていないが、それらを率いる親玉となることも多いようだ。

3つの頭が持つ視野の広さはその巨体さばきを幅広くさせ、大きな肉体ながら、間近の敵が振るう武器を素早く回避するだけの能力を持つ。また、一つの対象に対し、3つの頭が順巡りに高速の噛み付き攻撃を放つ姿には、応戦する側も反撃の糸口がつかみにくくなる。正面広角度には隙がなく、あるとするならば側面からの攻撃に反撃手段を持たない程度の隙だが、大柄な肉体に反して機敏に跳躍するだけの能力を持っているため、攻められる一方で有効打を与えにくい魔物として有名である。


【巨人属】スプリガン

トロルの上位種。体躯は少しばかり大きくなった程度だが、地を揺らす魔力は向上しており、上位種を名乗るだけあって身体能力も上がっている。

地を揺らす魔法の震度が上がっていることは、想像以上にそれと戦う人間の足場を崩し、僅かに生まれた隙をすかさず突いて、一撃必殺の剛腕を振りかぶってくる戦術を得意とする。距離を詰められた状況で足を崩された戦士の致命的さは語るべくもあらずであり、その危機を咄嗟ないし幸運で免れたとしても、反撃したところでこの魔物は地の揺れを意に介さぬ動きが染み付いており、柔軟な回避を為すだろう。ともかく魔法の行使を許さぬ猛攻を重ねるなどして、一気に勝負を決める力量がないと死のリスクを不本意に強いられる魔物で、まさしくこちらの力量が問われる魔物である。ただ、それはこの魔物と一対一の場合であり、他の魔物とこれが手を組んだ時の危険性は、数段高くなってしまうだろう。


【屍人属】ソードダンサー

デッドプリズナーの上位種として扱われるが、風貌は全く異なる。人間の大人よりも頭ふたつぶんほど高い身長の、白骨だけが動き出したような風貌である。

単に白骨死体が戦士として動き出すように魔力を与えられただけではなく、6本の白骨の腕が背骨から組み立てられて伸びており、その6本の手が剣を持ち、多角から獲物を切り刻む戦い方を可能とする。剣を持つ腕を断てば敵の攻め手を減らせるが、それで相手にダメージが通るわけではないこと、さらに戦場ではこれを倒しても次の戦いがすぐ待っているので、そうした戦い方も疲弊を招くため、堅実だが得策とはされない。そもそも屍人属の魔物は、人類の体力を奪うことも目的で量産されたものであり、これを作った黒騎士ウルアグワの性格の悪さがよく出ていると言えるだろう。


【ゾンビ属】ギガースゾンビ

人間を素体に作った屍人属の魔物とは異なり、魔物を素体に作られた魔物の一つ。ヒルギガースの死体を素体に作ったらしく、巨体の腐り果てた風貌は、魔物ながら痛ましい。

生前のパワーは健在のようで、振るう四肢が繰り出す破壊力はそのままである。生前と大きく異なるのは、関節などが生前は曲がらなかった方向にも無理に回せるので、生きた魔物から想定できる動きとはかけ離れた行動が出来ることにある。また、生きた魔物ならば頭を切られれば絶命するが、すでに屍であるこの存在は、それだけでは動きを止めなかったりと、ゾンビ化することによってそうした強みを得た。ただ、ヒルギガースの持っていた分銅や錨を使う戦い方は忘れてしまったのか、金棒を振り回すなどの無骨な戦い方しか出来ない。そうした生前の強みを失ってしまっている点も多いため、百獣皇アーヴェルはこうした魔物のことを"失敗作"としているようだ。


【未分類種】ナイトメア

黒騎士ウルアグワの愛馬。真っ黒な全身で、蒼い色の炎で4本の脚を包み、空を駆ける不気味な馬である。同種の魔物も存在した記録がなく、唯一の存在であることから"未分類種"とされている。

人類との戦いの歴史はウルアグワに伴って長いが、どんな力を持っているのか未だに明らかではない。時に黒騎士ウルアグワが、地表から生える血のような色をした粘体を発生させ、人間を縛る奇術を使うことがあるが、それはウルアグワがナイトメアと共に表れた時しか見せない術であり、その術の本質はナイトメアの方にあるのではないか、という仮説がある程度である。様々な憶測が飛び交う中、結局は確信できる結論もなく、謎の多い魔物として定義されたままだ。ただ、黒騎士ウルアグワが動けなくした人間を生きたまま頭から食ったり、逃げ出した人間ばかりを殺さない程度に蹴飛ばすなど、その行動は嫌悪感を駆り立てるようなものばかりであり、主によく似て悪質な行動が目立つ魔物であることだけは確かである。

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