有り得ないと思っていたよくある展開
「飯倉さんってどこから来たの!?」
「今彼氏いるの!?遠距離とか!?」
「あとでデートして下さい!!」
昼休み。本来なら教室はお楽しみのランチタイムの筈だが、今日は違う。クラスの男子が超絶美少女転校生、飯倉咲さんに恒例の質問タイムを繰り広げ、我先にと声を荒げている。その中には輝もいた。最後の質問は輝だった。なんだかすごく残念だ。
「すごい人気だなぁ」
「ああ渉。お前は行かないのか?」
「それを言うお前はどうなんだ?」
「あの獣たちにはついて行けない……(汗」
「俺もだ」
あの調子じゃ飯倉さんは昼飯ヌキだな。可哀相に……(-.-;)
それは質問している男子たちにも言えることだが、あいつらは本望だからいいだろう。
「諄君!」
「ん?寧々か。何だ?」
「一緒にお昼食べよう!」
「そうだな。学食行くか」
「うんっ!」
「おやっ?何かいい感じだな?」
「そうなのっ!!西口君。諄君がようやく私の彼s「渉!一緒に学食行こうぜ!」ごめん!ごめんってば!!許して諄君っ!!」
「ハハッ。相変わらずの夫婦漫才だな。お邪魔虫の俺は部活のメンバーと食べるから楽しんでこいよ」
「わかったよ。ほらっ行くぞ寧々」
「夫婦………諄君となれたら……………」
「………………」
ダメだ。こいつあっちの世界にトリップしてる。と、俺と寧々が教室から出ようとした時、驚くべき事、いや、後で考えると悲劇が起きた。
「ちょっと待って!!」
何だ?教室で誰かが叫んだぞ?チラッと教室を覗くと、大質問大会で騒いでいた獣たちが静かになっていた。
「どうしたの?諄君」
「いやわからん」
すると、あの超絶美少女転校生、飯倉咲さんがこっちに歩いてきた。
「久しぶりっ!!諄ちゃん!!」
「………………は?」
久しぶり?ヒサシブリ?HISASHIBURI?それって知り合い同士で使う言葉ですよね?俺って飯倉さんと面識あったっけ?いや、無いはず。
「すいませんが、人違いでは?」
「人違いじゃない!酷いっ諄ちゃん!あたしのこと忘れたの?」
「いやぁ………忘れたも何も、寧々知ってるか?」
「ううん、知らないけど…」
寧々とは小学校からの付き合いだから、飯倉さんと何かあるとしたら
「幼稚園……?」
「そうっ!幼稚園が一緒だった飯倉咲よ!『咲ちゃん』って呼んでたじゃない!」
「そんな、幼稚園のことなんて覚えてな……そういえばそんなこともあったような………」
「もうっ……でも会えて嬉しい!これで約束を守れる」
「はっ?約束?」
「えーっ!?約束も忘れたの!?酷過ぎるよ諄ちゃん……」
「っ!?ごめんっ!!俺が悪かった!約束は守るから泣かないで下さい!!」
こんな可愛い女の子を泣かしたら罪悪感で潰れちまうっ!!
「本当に?」
「ホントのホント」
「わかった。泣かない」
「それは良かった。それで約束というのは?」
「あたしをお嫁さんにしてくれることだよ!」
思考停止
……………………………………………………………………………………………………………………………えっ?
「……………………えっ?冗談ですよね?」
「もうっ諄ちゃんったらこんなこと冗談でも言わないって」
「「「「「「ええぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」
その時、女子たちの爛々といた歓喜と男子たちの絶望に沈んだ砲口で教室が揺れた。そして、隣の寧々が怖かった。