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帰宅後が一番しんどい…



今、俺は俺の住むマンションまであと2分というところを寧々と歩いている。ちなみに今日の学校でのことは最初こそクラスのみんなに驚かれたものの、毎日続くうちに当然の行事のようになってしまい、今や全校生徒の常識となってしまった。茶化されることがなくなったのは嬉しいのだが、どこか悲しい。


「諄君!あのね……」


「今日は俺の家はダメだぞ」


「まだ何も言ってないでしょ!?ふんっ!いいもんっ!どうせ合い鍵貰ってるし」


そうだった………俺のオヤジ、寧々に『息子をよろしく』とか言って合い鍵渡しやがったんだった。


「わかったよ」


「やった!諄君優しい!!大好きっ!!」


隣に部屋借りてるクセに、寧々のヤツ全く使ってないんだよな。何故か俺の家に寧々の部屋があるし。





「ただいま~」


「ただいま」


「何でお前が『ただいま』なんだよっ!?」


「そんなことより諄君」


こいつ、スルーしやがった。


「今日の夕飯は何にするの?」


「そうだな……今日は疲れたからカレーでいっか」


簡単だしね。ちなみに普段料理を作るのは俺。寧々の料理の腕は壊滅的なため俺がいつも作っている。


「で、寧々。いい加減手を離して」


俺と寧々は学校からずーっと手を繋いだまま帰宅していた。離したのは靴を履き替えるときと改札を通るときぐらい。


「やだ」


「やだじゃない。料理ができないだろ?」


「やだ」


「いやだから、やだじゃなくて」


「やだっ!!」


あら?なんだか寧々の様子がおかしい。いつもなら素直に手を離してくれるのに。


「どうしたんだよ?寧々。とりあえず夕飯食ってから話をしよう。なっ?」


「………………………」


そう言うと寧々はやっと手を離してくれた。すぐに料理の準備にとりかかる。一体どうしたと言うんだろうか?明らかにいつもと雰囲気が違う寧々に戸惑う俺。





カチャカチャ


「…………………………」


「…………………………」


只今食事中。いつもなら寧々が『あなた~はい、あ~ん』とか迫ってくるのだが、今日はひたすら無言を貫いている。


「「ごちそうさま」」


夕飯を食べ終わった俺と寧々。俺はいま二人分の食器を洗っている。


「ねぇ……諄君」


さっき俺が言った食後になったからか寧々が話しかけてくる。


「なんだ?」


「今好きな人いる?」


いきなりヘビーな質問だこと。思わず手が滑って食器を割ってしまいそうになったじゃん。


「い、いないよ」


「何で?」


「は?」


??????今の俺の返答に『何で?』って普通いいます?


「いや、何でって言われても困るんですが………」


俺は食器を洗い終わる。


「何で私のこと好きにならないの?私毎日こんなにアプローチしてるのに」


「それと好きになるかは別の話じゃないか……」


「じゃあ、どうしたら諄君は私に振り向いてくれるの?」


「それは…………」


ヤバい。寧々のヤツ、本気だ。今までこんなに迫ってくることなんてなかったのに。てゆうかいつの間にかリビングのところまで追い詰められている。


「私はこんなに諄君のこと好きなのにっ!!」


「おわっ!?」


俺は寧々に押し倒されてソファーに寝転がる体勢に、その上に寧々が俺に抱きつく形に。


「好きなの………諄君……………」


「え……あ………」


何でだろう。寧々に抱きつかれるのには慣れているはずなのにドキドキしてしまう。


「諄君は私のこと好きじゃないの?」


「お、俺は…………」


情けない。寧々はこんなに自分の気持ちに正直なのに俺は自分の気持ちすらわからない。


「……………………」


「……ごめんね」


そう言うと寧々は俺から離れて背を向けた。


「ごめんね諄君。どんなことしても諄君が私に振り向いてくれないから不安だったの」


寧々の背中が少し震えている。俺はそれを見ていてもたってもいられなくなり、寧々を後ろから抱き締めた。


「謝るのは俺の方だよ。寧々が苦しんでいる原因が俺なのに気づいてやれなくて」


「諄君……」


「でも同情なんかで寧々と付き合うなんてできない。寧々のことをちゃんと好きになったら付き合うってことで納得してくれないか?」


寧々は俺の腕を解いて、俺の方を向いてきた。


「ずるいよ諄君……そんな言い方されると断れないよ……。私のお願いを聞いてくれたら納得してあげる」


「?お願い?」


「うん。明日からまた仲良くしてくれること」


「そんなことお願いされなくても当たり前だろ?」


「えへへ」


寧々は俺の返答に満足した様子でまた俺に抱きついてきた。


「あとひとつ、一緒にお風呂入ろ?」


「それはダメです」










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