終幕2
終幕2
近寄る間、花梨はそれしかすることを知らないようにずっと俺を見ていた。
中庭の、何かの花の匂いがする。
この世界はいつでも常春だ。花梨の世界のように冬枯れの景色になることはない。
綺麗に刈られた緑色の芝を踏みしめて、俺はゆっくり歩いて行った。
すぐ目の前、手を伸ばせばすぐに触れられる位置にまで来て、俺は立ち止まる。
目の前に花梨がいる。どこかに幽閉されもせず、すぐ触れられる位置に。それだけで、安堵で全身の力が抜けそうになった。
「花梨・・・」
思わず手が伸びそうになった。サイズが元に戻ると花梨が小さいのが可愛くて、つい腕に抱え込んでしまいたくなる。腕の中にすっぽり収まる感じがすごく好きだ。花梨が俺のになったみたいで、ガキっぽい独占欲が満たされる。
普段の俺だったら、きっと内心の欲求に逆らわずすぐにでも腕を掴んで引き寄せていた。花梨の無事に安心して、でももっと安心したくて。
実際、俺は今花梨に触れたくて仕方がない。そのはずなのに。
俺は、とっさに動きを止めた。
どうしてか、今の花梨は・・・何かがおかしかった。
どこか壊れた機械を髣髴とさせるような。
目的を忘れて、すべきことが分からずに停止してしまったように呆然とした表情で。
腕を掴んだ瞬間、驚いて身を翻して行ってしまいそうだ。
これは花梨なのに。なぜそんな風に思ってしまうのか分からない。
瞳に宿る光が、知らない人間を見るように冷たくて、余所余所しい。
「・・・花梨・・・?」
不安を振り払うように俺は硬直する花梨にそっと触れる。
花梨の腕は一瞬びくりと震えて強張った。振り払われるかと身を固くした時。
・・・急に花梨の体が弛緩した。
「・・・ザイ、お疲れ様。わ、すっごい汗!あはっクフミナも!」
花梨がおかしそうに目を細めた。途端に瞳に宿る親愛の篭った温かい気配。
俺は自分の口からほーっと息が漏れるのを感じた。呼吸が止まっていたらしい。
今の、何だったんだ?
花梨からはもうおかしな余所余所しさは消えていた。
「マラソンしてたって?相変わらずむちゃくちゃだよね素養審査って」
花梨はポケットのハンカチを取り出して俺の顔に手を伸ばした。
「?!」
ち、近い近い近い!顔が近いって!花梨は額に浮かんでいる汗を拭こうと伸びあがっている。
背伸びした様子がまたかわ・・・じゃねぇよ、ひ、人前でこんな近・・・いや、さっき思わず抱きしめ掛けた俺が言うことじゃねぇけどよ。
俺は間近に迫った花梨の顔を窺い見て、さっきまで感じていた高揚とは逆の意味でドキリと心臓が鳴る。
すぐ近くにある花梨の瞳はぼんやりと虚ろになっていた。半分眠りの世界にいるようなふわふわとした表情で、花梨は手を動かしている。きっと、俺との距離がここまで近いことも気が付いていないのだ。
余所余所しさはもうない。それでもやっぱり様子がおかしい。
「・・・花梨、何かあったか?」
声を掛けるとハッとしたように花梨の目が瞬いた。
「・・・え?何かって何が・・・」
俺の不審げな様子に、自分の様子が普段と違うことを花梨も自覚しているのか、思い当たったように頷いた。
「・・・うんとね、何か私、こっちに来てから随分深く寝入っちゃってたみたいで・・・」
「寝入ってた・・・?」
花梨がコツコツとコメカミを叩く。
「うん・・・。何か私も経緯を思い出せないんだけど、この世界に転移してすぐ眠っちゃったみたいなの。ほら、そこのベンチで」
花梨が指を差したのは中庭に置いてある噴水近くのベンチだ。
そのベンチを見たまま花梨は言うの躊躇っている風に沈黙していたが、しばらくしてようやく俺を見上げた。
「それがさ・・・。ちょっと自分でも信じられないんだけど、さっき一瞬、一瞬ね?ザイのことが思い出せなかったの・・・・・・」
「・・・え?」
ヒュッと自分の喉が鳴った。
「なんっ・・・!思い出せな・・・っ?!」
「い、今はもう全然大丈夫だよ?!全然ばっちり思い出せる!ザイが初めて私の部屋来た時のことだって、学園祭のことだって・・・それからそれから・・・!」
花梨がいい訳をするように早口で捲くし立てる。
「道成寺さんが起こしてくれたんだけど、私、道成寺さんのことも一瞬虚ろにしか思い出せなくてさ。寝ぼけてる~って笑われちゃった。本当に笑っちゃう。ザイの顔をじっと見て、見覚えがある人だなーなんてずっと考えていたの。・・・あっはは、見覚えどころか、この数ヶ月ずっと一緒に暮らしてたっつーの!寝ぼけるにも程があるよね!?」
「花梨・・・」
「やっぱあれかな?ちょっと張り切ってバイトしすぎ?はは、やっぱり深夜帯のバイトは控えた方がいいよね。そういえばこの間も美里さんが・・・」
「花梨!」
ビクリと肩が震えた。
口を閉じた瞬間、あふれる不安を抑えきれなくなったように花梨は顔を歪める。
今にも泣きそうな花梨を見ていられなくなって俺は今度こそ腕の中に抱き込んだ。
ああ、やっぱり小さい。小さくて、華奢で。腕に収まっている様子が可愛くて、愛おしい。
でも。
こんな壊れそうな花梨は嫌だ。
「や、っぱり、おかしいよね・・・?私、どうしちゃったのかな・・・。すごく、ぼんやりして・・・ぼんやりなんてしたくないのに気づくとぼーっとしてて・・・っ」
花梨に何が起きているか分からないのは俺も同じだった。
何も起きなかったと信じたかった。
花梨を目の前にした時、引き離されたのに意味なんかなくて、無事で会えたと思いたかった。
けれど、そんな都合の良いことなんてあるわけないんだ。
「大丈夫だ・・・絶対元に戻すから・・・!」
「うん・・・うん・・・!」
花梨が震えてる。・・・いいや、俺の震えかもしれない。
絶対になんて、出来るかも分からない無意味な約束だ。俺はつい今まで引き離されて、花梨に害を与えられるのをどうにも出来なかった。
俺の出来ることなんて少なくて、守れる自信なんてなくて。
それでももう引き返せない。どんなに不安でももう前にしか進めない。
中庭の花の匂い。
柔らかい日差しと常春の気温。
その中にあって震えながら、俺たちは突如鳴り響いた号令を聞いた。
「ただいまより、素養審査を始める!」
中庭にざわっとどよめきが走った。
素養審査・・・?
ふわっとまた意識が拡散しかけたのを慌てて引き締める。
だめだ。気を抜くとすぐぼんやりしちゃう。しっかりしろ、これ以上ザイに心配かけてどうする?!
一人でいると不安が募るだけだけど、ザイがいると前向きになってくるから不思議だ。こんな風に私を大事に抱きしめているザイのためにも絶対に意識を手放したりなんて出来ない。
今はとりあえずものすごく眠いだけだ。これからどうなるか不安に思ったって仕方がない。
その時、どよどよと騒いでいた周囲が静まった。ピリリとした緊張感に包まれる。
私の視界はザイの胸で塞がって周りが見渡せないけど、誰か人が来たみたいだった。
ザイの腕が何かに驚いたように強張った。
「ザイ?」
「大事そうに抱えておるな」
抑揚のない声だった。
無感情さが招く、冷たい響き。
私は理解した。
入って来たのは、王妃だ。王妃が私の背後に、ザイの目の前に立っている。
「王妃・・・あんた、花梨に何をした・・・?」
ザイが唸るような低い声で言った。その声に強く籠っている怒りに間近で聞いた私はぞわっと鳥肌が立つ。
「ザイ、だめだよ」
顔を上げようとすると、ザイの腕にさらに力がこもって身動きできなくなった。
嵐の前の静けさのようにその場に不自然な沈黙が落ちた。爆発寸前の異様な緊張感を伴って・・・。
「・・・ふふ。勘違いするな。わらわは教えてやりに来ただけだ。その娘、記憶にあやふやなところがあるのであろう?」
「!!!」
ザイの腕に怒りとも怯えとも付かない震えが走った。
「・・・精々審査に真面目に取り組むのだな。その娘の記憶を正常に戻したければ・・・」
王妃はくつくつと忍び笑を漏らした。
「・・・っ言われなくても!あんたこそ、元から返す気がなくて俺に不利な審査なんてしないだろうな?!」
「わらわとて鬼ではないさ・・・。約束しよう。審査では決してお前が失敗するような真似はしないと」
それで会話は終わったようだった。
肌に感じる妙な威圧感(王妃の王族オーラ?)が引いて行くのにつれ、ザイの腕の力も緩んできた。
やっと周りが見渡せる。
ぐるりと首を回すと、ちょうど、遠ざかる王妃とお供数名の背中が見えた。
「私の記憶って・・・やっぱり王妃に取られてたんだね」
「ああ。・・・それに、わざわざああ言って来たからには、今回の審査の成否には花梨の記憶を取り戻せるかが掛かってる」
ザイはじっと私を見る。気負ったような表情だ。
私を見るザイの目は不安そうにユラユラと陽炎のように揺れていた。
「だーいじょうぶよザイ!ザイならやれるって!」
ばしっと腕を叩く。
「・・・ぷっ」
「・・・?」
突然噴き出したザイに私は首をかしげる。
「・・・元気になったみたいだな」
「・・・ですね」
現金なもので。人間、不調の原因がはっきりすると安心しちゃうよね。
だって取り戻せばいいんだって分かったからね!
それにその。
「・・・あのーザイ?そろそろ説明始まるみたいだし・・・」
「うん?」
私の様子が元気になったのがそんなに嬉しかったのか、穏やかな表情のザイが私の顔を覗き込むように見る。
「この体勢を改めないといけないかなーなんて・・・」
「!!!!」
ずざざっと化け物でも見たかのように飛びずさるザイ。
・・・何もそんな風に離れなくても。離れるよう促したのは私ですけどね?ちょっとさっきまで腕の回ってた場所が急に寒いと思っちゃったりして・・・。
元気になった一番の要因はザイが大事そうに抱きしめてくれたおかげなんだからね。分かってるかなそこのところ。
「わ、悪い!い、行こうか、さっさと・・・!」
「え、あ、うん」
リンゴのように顔を真っ赤にしたザイが説明のために設けられたステージへサカサカと早歩きし出した。今更ってタイミングで照れるよねいつも。
走って付いて行こうとしたその時、
『花梨様ぁ!!』
「・・・?」
誰かに呼ばれた気がして振り返る。
そこには青々とした綺麗な芝生が広がっているだけだった。
檀上に国王の姿が現れることはなかった。
説明は、本当に説明だけだった。王妃は来賓用の席に座っているだけで、説明する役を請け負ったらしい使用人風の男が淡々と審査の概要を説明しただけで開会式らしいものは終わってしまった。いつもに比べて人も格段に少ない。
「・・・で、要するに不思議石を砕けば良いと?」
中庭から王宮に移動しながら私はザイに聞く。
今候補者たちは思い思いに王宮を探索中だ。
「・・・正確にはササウキの石な」
審査のお題は、拍子抜けするほど平和なものだった。
王宮に散らばるそれぞれの担当のササウキの石を砕くこと。だそうだ。
王妃が始まる前にあんな意味深なこと言うから構えて損した。
ササウキに関しては候補者はみんな「ああ、あれね」って顔をするけれども、こっちはササウキとか言われても全然ピンとこない。
これはもし私がこっちに住むことになったら勉強の毎日だな・・・。ザイが私の部屋に来たばかりの頃やってたみたいに。ふふ。そう思うとちょっと楽しそうかもしれない。
私がニヤニヤしているのが疑問だったのか、少し不思議そうな顔をしながらザイが説明してくれる。
「ササウキっていうのは花梨の世界で言う雑草って感じの植物でどこにでも生えてるもんなんだが、これには一つ不思議な習性がある。種が出来て萎れる瞬間に、同時に石を吐き出すんだ。その石は写し石とも言われていて、石が吐き出される瞬間の周りの風景を記憶する」
「記憶する?」
「ああ。写し石は手に持つと石の記憶が頭の中に浮かび上がるんだ。綺麗な場所でササウキの花を栽培して周りの風景を石に記憶させてそれを売る商売もあるんだぜ」
ははあ、なるほど。うちの世界で言う所の観光名所の写真をポストカードにして売ってるみたいなもんかな。
「こっちには色々と変な植物が多いのねぇ・・・」
しみじみ言うと、ザイが首を傾げた。
「色々っていうほど変わった植物の話したか?俺。植物には詳しくねぇし、今が初めて位じゃねぇ?」
あれ。言われてみればそうかも。?何で色々知ってる気がしたんだっけ。
うーん。
「・・・何か記憶に引っ掛かるのか?」
「そんな気もするし、ただの勘違いかも・・・」
うう。あやふやで申し訳ない。
考え込むようにザイがあごに手を当てる。
「ササウキ草の石が風景以外のものを記憶するなんて聞いたことないけど、王妃のとこに出入りしてたっていうフェリテのこともあるし、もしかしたら石を砕けば花梨のあやふやしている部分が解放されんのかもな」
「・・・ふぇりてって何だっけ?」
ザイが少し困ったように眼尻を下げる。ああ、これも私忘れてるんだ・・・。
「・・・ごめん」
「謝ることじゃねぇよ。・・・俺こそごめん。守ってやれなくて・・・」
ああ、せっかく暗い雰囲気を脱したとこだったのに。
自ら引き戻してどうすんだ。
「ザイが探す石ってどんなんだっけ?!」
無理やり話を転換する。
「あ、ああ・・・俺はこの色の石だとさ」
ちょっと驚きながら、ザイはそう言って候補者に配られていた手のひらサイズのメモ紙を見せてくれる。
「うわあ!?」
紙を受け取った瞬間、中の絵が飛び出してきた!
「ああ、悪い!こっちの世界では絵の描いてある紙は飛び出してくるのが普通でさ・・・」
私の心臓も飛び出すかと思った・・・。
絵は飛び出すのが普通とか。相変わらずこの世界は非常識だ。
絵はホログラム映像のように目の前に浮かんでいる。
ビー玉のような青い石だ。これを探して砕かなきゃいけないわけだ。
「・・・・・・。」
おっかなびっくり絵に見入っていると、ザイが何やら難しそうな表情をしているのが目に入った。
「どうしたのザイ?」
「・・・いや、当たり前だけどさ。この世界と向こうの世界は違いすぎるなって改めて思ったつうか。大丈夫かと思って」
「大丈夫って?」
ここと私の世界が違うのはもう今まで嫌ってほど感じてきたことだ。もういい加減慣れてきたけども。
「この国の制度はみんな魔法が使えることが前提になってる。日常品も、道具も何もかもだ。使えない人間のことなんて考えられてない。もし、このまま花梨が住むことになったらすごく、きっと今想像してるよりもっと大変だって思ったんだ」
「・・・それは・・・そうかもだけど」
大変だってことは分かってたことだ。今思ってるよりももっとだって言われても、想像できない。
「・・・じゃあ、私が魔法使えるようになればいいんじゃない?」
「花梨が魔法を?」
思っても見なかったことだったのか、ザイが目を見開いた。私も返事に窮して思いつきで言った言葉だったけど、案外名案じゃない?これって。
「そうそう!私も使えれば問題ないじゃん!」
「なるほどな・・・魔力がなくても使える魔法・・・。制度を変えるのも急務だけど、そういうのを発明するのもありだな」
何やらザイは考え込みながら頷いている。
そうしてフッと意識せずに口に出してしまったように呟いた。
「どれも、時間が掛かりそうだけどな・・・」
そうこうして、私たちはビー玉・・・じゃなかったササウキの石を探して放浪し始めたわけだけれども。
「つってもこの広い王宮を探せって・・・」
「・・・考えただけでぐったりするね」
広い敷地をよく野球ドームいくつ分とかで表現したりするけど、それで換算していいレベルで王宮は広いのだ。
まー見つからないよね。全然。
大体ビー玉なんて小さいものどこにでも隠せるよね?!
どういう風に置いてあるわけ?祭壇に飾ってあるように恭しく置いてあるの?それとも引き出しの隅とかに置き忘れたように置いてあるの?!
ヒント出して欲しいよほんと。
幾人かウロウロしている候補者も見かけたけど、みんな見つからずにげっそりしているように見えた。
「とにかく片っ端から回って・・・」
「あらあら、花梨ちゃん?」
「え」
次の部屋に行こうとした私たちに予想外なその人物の声が掛かった。
「美里さん?!」
ピンクのエプロンに少し恰幅のいい中年女性が、きらびやかな王宮の渡り廊下にどーんと仁王立ちしていた。
「ちょ、美里さん何してんの?!」
「それがねぇ・・・この王宮、面白いアトラクションが一杯あるでしょう?」
え、そんなものが?私は初耳だが・・・。
思わずザイを振り返る。ザイは無表情で首を横に振った。
うん、ですよねー。
「えーっと、美里さん。そのアトラクションの内容は?」
「私が引っ掛かったのは落とし穴よー。2階にいたんだけれど、穴に落ちたら一階のお部屋だったわ。下は、ええとなんて言ったかしらああ言うの。風船のお部屋?美里さん重いからもう、ものすごく割れたんだけど、床にまで届かない位敷き詰められててねー。もう出てくるの大変で大変で」
それはなんとも・・・とにかくお疲れ様でした・・・。
「なるほど・・・。審査妨害の罠が張ってあるらしいな」
ああ・・・平和な審査だと思ったのに落とし穴とは・・・。
それじゃあ美里さんはキールロアとはぐれたのか。
「美里さんキール君の所に戻らなくちゃと思うんだけどどこをどういったら2階かしら・・・ちょっと教えて下さらない?」
美里さんは女性にありがちな感じで普通に方向音痴だ。地図を渡すとグルグル回転させて現在地はどこかしらと言い続けながら彷徨い続けるタイプ。
「ザイ・・・審査の前に美里さんを・・・」
「ああ、かまわねぇよ」
言いきる前にザイは何が言いたいか承知してくれた。
ザイは私の記憶が掛かってるから、さっきからちょっと気負い気味ではあったのだけれど、美里さんのことは私の大事な人だって理解してくれているからか、二つ返事で快諾してくれる。
えっへへ、いいねこういうの。分かってくれてるって感じ。
「美里さん、2階までザイが連れて行ってくれるって!」
「ええ?でも、悪いわ。ちょっと道を教えてくれるだけで良いから」
「絶対たどり着けないでしょ美里さん。どうせ私たちも石を探すついでだし。ね?」
ザイを振り返るとうなずいてくれた。
「そう?・・・それじゃお願いしちゃうわね」
ニコリ、と笑みを浮かべた美里さんが一瞬別人に見えた気がして、私は一度瞬きをした。
もう一度見た美里さんはやっぱり美里さんで。
変な違和感に首をかしげる。
「・・・どうしたの花梨ちゃん?」
「え?・・・ううん何でもないよ」
歩きだしていた二人に小走りで駆けよりながら、いつまでもその違和感は消えなかった。
次で審査クライマックスで、最後にエピローグが入って終わるかと思います。後2回ほどお付き合いください。




