ドロローサへの道
「友達…?」
悠はベッドの上で首を傾げる。
「委員長。あんた、私以外に友達なんていたっけ…?」
「悠、あなたって、たまにさらっとヒドい事言うわよね。」
愛は、聡明そうな顔を若干引きつらせて言った。
「神薙透子さんだよ。視覚障害の。」
洪健が少し慌てた様子で割って入る。
「透子さんか…。」
悠は普段着の腕を組ませて、何やら考え込む。
瑞羽は横から三人に問いかける。
「その子、目が見えないの?」
「全く見えないわけではないそうです。」
洪健は言った。
「右眼が全盲で、左眼が少し見える程度で……ただ、見えるとは言っても、その物に凄く近付けないと見えない。離れると周りの明るい、暗いが分かるだけみたいです。なので、私達と同じクラスですが、別室で勉強しています。」
「なるほどね…。」
悠は、二人のやりとりをぼんやりした目で眺めている。
「…その透子さんと私とが、何の関係があるわけ?」
「勉強会よ、ユウちゃん。」
愛が秀麗な顔に笑みを浮かべて答える。
「皆で勉強しましょう。クラス全体の学力を底上げするのも、学級委員長の努めですから。それに彼女、普段あんまり他人との触れ合いがなくて寂しいみたいで。」
「……。」
悠は黙ったままうつむく。
視線を落とし、包帯で包まれた自分の傷だらけの腕を見つめる。
ドクンドクンと、心臓の鼓動と同期して伝わってくる鈍い痛みが服越しに、包帯越しに感じられた。
まるで溶け出す放射性物質の様に、それは悠の心の平穏の領域を侵した。
この痛みを感じているのは自分だけ。
長い道をたった一人で、十字架を背負い歩くのだと改めて思った。
やがて彼女は沈黙を割り、意を決したように告げた。
「良いわ。」
✝
翌日、良く晴れた青空の下。
土曜日の昼下がりに五人の少年少女達が、自然公園の入り口に集まっていた。
祝原悠、王洪健、天野愛、蔵岡瑞羽。
そして…
「神薙、透子です…。よろしくお願いします…。」
そう言って、儚げな淡い色合いをした瞳の少女は軽く、うつむく様にして会釈をした。
その日本古来の様式美が具現化したかの様な、古風な雰囲気の少女を目の当たりにして、瑞羽は呟く。
「…可愛い…。」




