神の影
◆お詫びと訂正◆
第一話「無貌の神」にて、天野愛を生徒会委員長としていましたが、学級委員長の間違いでした。
お詫びをもって訂正させて頂きます。
よろしくお願いします。
悠の母親は立ったまま、死んだ様な目つきで彼女らを見下ろしている。
…明らかに疲弊しきった、病的な青白い顔。
この所の一週間の、生活の変化が外見に滲み溢れていた。
突然の警察からの連絡。
呼び出され病院に駆けつけると、可愛い一人娘である悠が傷つき、死ぬ直前の状態で寝かされていた。
突如として日常の1ページに挟まれる、狼狽と悲嘆。
やむおえず指の切断となり、夫と共に震える手で、手術同意書にサインをした。
手術が成され、かろうじて命に別状はない事が知らされ、回復後に帰宅した。
そして…
悠は変わってしまった。
“私は特別な存在になったの”
そう彼女は両親に告げて、そして不登校になった。
それだけではない。
ほとんど毎日家を抜け出し、怪しげな場所に出入りする様になった。
しかし、それだけで済むならば精神的なショックから来る、逃避と取れない事もなかった。
だが…
悠はそれに加えて自傷をする様になった。
他ならぬ可愛い一人娘の腕に…夜ごとに一本、また一本と、醜くおぞましい傷が増えていく。
…親として、耐えられない苦しみだった。
彼女は疲れ切った表情で、一人娘に告げる。
「天野さんと、王君だって。」
そう言って、食い入る様に見つめていた、悠の左腕から目を逸らす。
言うが早いか、彼女は早々に踵を返して立ち去った。
…深い溜息が、肩越しに聞かれた。
ドアの向こうから二人が入って来た。
一人は有名なカンフー俳優にも似た少年、王洪健。
もう一人は聡明そうな顔立ちと落ち着いた佇まいをした少女、学級委員長の天野愛だった。
一気に収容人数が増え、さほど広くない悠の子供部屋がたちまち、手狭になった。
悠が自分の左腕に包帯を巻き直す間、洪健は率先してクッションや座布団をかき集め、場を整えた。
天野愛は開口一番に瑞羽に告げる。
「始めまして。天野愛です。」
穏やかに微笑んで、そう自己紹介した。
「こちらこそ、始めまして。蔵岡瑞羽よ。よろしく。」
応じつつ弓の様に目を細めて、彼女の長い黒髪を、知性を感じさせる美顔を見つめた。
「ユウちゃん。課題持ってきたから、一緒に勉強しましょうね。」
下校後の荷物を少し慌ただしく置いて、愛は言った。
「…嫌よ。」
ブスッとした様子で悠は答える。
「記号やら数式なんて、見るのも嫌。」
「数学じゃないって。読書感想文。」
「はぁ?んなもん一人で出来るって…」
言い合う少女達の間に、王洪健が割って入った。
「良いじゃないか。皆で読書大会しよう。私だって感想書けるよ。小学生並みの感想だけど。」
意味ありげに言う彼に、悠は告げる。
「…出てってよ、皆。私瑞羽さんと話してたんだから。」
「じゃあユウちゃん。」
と愛。
「勉強しないなら代わりに、私の友達に会いに行ってくれない?」




