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雷霆の一撃

クイナが投擲したナイフが、褐色をした巨人の表皮に吸い込まれて消えた。

直後、凄まじい閃光と共に、天地を轟かす様な爆音が響き渡った。

目の前の視界が白と黒に明滅する。

それは、影を引き裂き宇宙の最深すら照らして、暗黒の彼方に潜む最後の秘密すら、白昼の輝きにも匹敵するかの如くに輝く稲光の下に晒し上げる光輝。

悠と洪健は手を繋いだままで、灰色の雲の上でしゃがみ込み、震え上がった。

…空気中のイオンが励起され、周囲の空間を、淡く輝くオーロラが包む。

頭上を見上げれば黒雲が渦巻く中、深紅の色に染まった空がポッカリと穴を開けて、こちらを覗き込んでいた。


「うわぁぁぁ…」


たまらず悠は悲鳴を上げた。

洪健の手を離し、しゃがんだまま、両手で頭を覆う。

頭上から瑞羽の容赦ない声が飛ばされる。


「悠、最後を確認しない限り、敵から目を離しちゃ駄目よ。」


機械的かつ野性的な、冷静に徹した闘士の声。

悠は恐る恐る顔を上げる。

…優しい顔だ。

見上げて、悠はそう思った。

例えるならば、高みから見下ろしつつも、決して我が子を見捨てない雌ライオン。

しなやかな肢体をピンと伸ばし、瑞羽はしっかりと悠を見据えていた。

彼女は言う。


「これが薬師丸さんの“(スキア)”の能力。《獣神トール》よ。」


「獣神…」


悠は慄きつつも瑞羽と、クイナの横顔を順番に見る。

それは正に獣の様な、圧倒的な(パワー)だった。

洪健は立ち上がって言う。


「凄い…。」


彼が見据える先。

そこにある山のような物体を見て、悠は再び叫んだ。

中央が無残に潰され、噴火直後の活火山の様にひび割れと、崩壊の跡が縦横に走る。

巨怪かつグロテスクな生き物は、完全に息絶えていた。


「……。」


クイナは無言で立っている。

その右手には二本目のナイフが握られていた。

軽くため息をついて彼女は言う。


「…何か、呆気ないね、今回は。」


ごく短い沈黙の後、瑞羽もそれに応じて答える。


「…そうね。いつもだったら二、三発喰らわせているわよね…」


…腑に落ちない様子で考え込む。

灰色の雲の淵でひざまずき、下界の様子をつぶさに観察していた洪健が叫んだ。


「瑞羽さん、あれ!」


三人は彼に近寄った。

そして目撃する。

山間に打ち倒され、横たわる巨怪な生き物の遺骸の表面に、微細なひび割れが広がり、やがて淡くピンク色をした肉質の組織が噴き出し、広がっていくのを。

瑞羽は叫んだ。


「私に掴まって。逃げるわよ!」

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